2024.01.22
「就寝前のガム」が良質な睡眠に効果的なワケ|知ってますか?「リベンジ夜更かし」の恐怖
日中に自由な時間を得られなかった人が、夜更かしをして自由な時間を獲得する…そんな「リベンジ夜更かし」の習慣から抜け出し、眠りに集中する方法をご紹介します(写真:プラナ/PIXTA)
「残業が長引いてしまって、見たいドラマが見られなかった」「寝る前にSNSをチェックしなきゃ」「子育てに追われて日中は自分のしたいことができなかった」
こんな思いから、寝床の中で睡眠時間を削ってまでスマホに触っていた、という経験は誰にもあるのではないでしょうか。このように、日中に自由な時間を得られなかった人が、夜更かしをして自由な時間を獲得することを「リベンジ夜更かし」といい、翌日の集中力の低下など、心身にさまざまな悪影響を及ぼす行為として問題視されています。
どうしたらやめられるか? 自律神経研究の第一人者として知られる順天堂大学医学部教授・小林弘幸氏の著書『自律神経の名医が教える集中力スイッチ』より、一部引用・再編集して、眠りに集中し、「リベンジ夜更かし」の習慣から抜け出す方法を紹介します。
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現代病の「スマホ依存」がもたらす大きな代償
健康の基本中の基本、一丁目一番地は睡眠です。質の高い睡眠がとれていないと、心身にさまざまな悪影響を及ぼします。
夜更かしは万病のもと――そう表現してもいいすぎではありません。
夜更かしが習慣化すると、体内時計の夜型化が進み、朝の目覚めが悪くなります。これが、疲労、倦怠感、無気力などにつながっていくのは火を見るよりも明らかです。睡眠不足は脳の活動を減退させるので、集中力や注意力の欠如、情緒不安定、判断力の低下など、メンタル面にも多大な影響を与えます。
睡眠不足の理由はいろいろあります。ストレス、運動不足、飲酒、喫煙、生活習慣の乱れなどです。そして最近は、ここにスマホ依存に端を発する「リベンジ夜更かし」が加わってきた印象を受けます。
これは現代病のひとつということができ、関連するニュースをよく目や耳にしますし、実際に私のところにも多くの相談が寄せられています。
リベンジ夜更かしは、日中に自由な時間を得られなかった人が、夜更かしをして自由な時間を獲得する行為のことで、「○○したかったのにできなかった」という思いから生まれる欲求不満やストレスを、寝る前に(おもに布団にもぐってから)解消させようとすることを意味します。
日中は勉強や仕事が忙しくて自分の時間を作れなかったという人たちが、帰宅して家事、食事、入浴といった〝なすべきこと〞をひととおりこなし、ひとりになれたタイミングで、SNSやネットニュースのチェック、動画の視聴、ネットショッピング、読書、音楽鑑賞などに興じるわけです。
その瞬間、おそらく心は満たされることでしょう。しかし、一日(点)ではなく、日常生活という長いスパン(線)で考えると、リベンジ夜更かしは歓迎できる行為とはいえません。翌日以降に、大きな代償を払う必要が出てくるからです。
結果的に、学生は成績の低下、不登校、留年などを、社会人は遅刻や欠勤が増えるといった状況をまねき、今や社会問題のひとつになりつつあります。
プラス思考であっても結果はマイナス
ポーランド国内の大学生や一般人766名を対象としたオンライン調査によると、男性よりも女性、高齢者よりも若者、働いていない人よりも働いている人、非学生よりも学生が、夜更かしをしがちだそうです。
リベンジ夜更かしをしてしまうと、翌日のパフォーマンスの質は一気に落ちます。そうなると再び「日中にやりたいことができなかった」となり、またしても夜更かしをしてしまうという、負のスパイラルに陥りやすくなります。
最悪の場合、うつ病になってしまうことさえありますし、睡眠不足が高血圧、糖尿病、心筋梗塞、脳梗塞、がんなど、ありとあらゆる病気のリスクを高めることもわかっています。
リベンジとは、相手から傷つけられたり不当な扱いを受けたりしたことに対し、仕返しをする行為を意味しますが、日本ではスポーツの試合で負けた相手に次の試合で勝利を収めることや、失敗したことやうまくいかなかったことに再挑戦して成功することなど、前向きな意味合いで使用されるケースも目立ちます。
リベンジ夜更かしも、仕返しや復讐といった後ろ向きの意味合いではなく、失ったものを自分の努力で取り戻すという、どちらかというとプラス思考から生まれる行為に対して使われている印象です。
しかし、たとえプラス思考から生まれる行為であったとしても、それがまねく結果は明らかにマイナスです。いいことなど、ひとつもありません。
自覚のある方は、まずは眠ることに集中し、じゅうぶんな睡眠時間を確保すること、そして、規則正しい生活をすることを心がけましょう。
リラックスするために口にしたいものとは?
リベンジ夜更かしをしてはいけない――そういわれても、自らの意思ですぐにやめることは難しいでしょう。忙しい現代人にとって、ひとりになれる貴重な時間は寝る前だけというケースも多いですからね。
スマホを手放すのが不安という方も多いはず。「SNSのコメントやメッセージに全部返信するまで寝られない」という、重度依存症と表現してもいい若者も少なくありません。
だから私は、「眠りに集中すること」を推奨しています。自分の体を意識的に、リベンジ夜更かしをできないような状態にもっていくのです。
「あれもしたい、これもしたい」と思っていても、知らず知らずのうちに眠りに落ちてしまったら、リベンジは叶いませんからね。
まず、その日のすべきことをすべて終えたら、「これから休息モードに入る」というスイッチを入れましょう。自分に「今から休む」といい聞かせたり、誰かから「休め」といわれたりしても、気持ちの切り替えはなかなかうまくいかないものですが、そのきっかけづくりならできます。
推奨できるのは、ノンカフェインのお茶やコーヒーを飲んだり、ガムを噛んだりすること。これらが体にモード切り替えの合図を送ってくれ、さらには体をリラックスさせる役割を担う副交感神経を優位にし、自律神経を整えてくれます。良質な睡眠を得るためには、自律神経が整った状態であることが不可欠といわざるを得ません。
とくに効果的と考えられるのが、ガムを噛むことです。咀嚼などのリズム運動は、幸せホルモンといわれるセロトニンの分泌を促し、リラックスした状態のときに発生するα波が出ることも判明しています。
セロトニンは、睡眠ホルモンといわれるメラトニンの原料になるので、体がより眠りを求める状態になっていくのです。
また、自律神経を整え、心身ともにリラックスした状態にいざなってくれる要素のひとつに「香り」を挙げることもできます。
おすすめは、アロマやお香をたくことです。人間はいい香りをかぐと交感神経の働きが抑制され、副交感神経が優位な状態になると考えられています。やさしい音色の音楽をかけるなどして、リラックスできる雰囲気を作ると、さらに高い効果が期待できるでしょう。
アロマやお香以外では、ハーブティーやコーヒーから立ち込める香りをかぐのもOK。また、ガムを噛んで、鼻腔から直接香りを感じるのも効果的です。
眠りに集中するためのもうひと工夫
万全を期すために、もう一段階、工夫をこらすようにしましょう。リベンジ夜更かしを習慣化させないために、手を打てるところはしっかりカバーすべきです。
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良質な睡眠を得るためには、自律神経が整った状態が理想的であることは先に述べたとおりですが、それを強力にバックアップしてくれるのが入浴です。
ベストは就寝の1時間30分ほど前にお風呂に入ること。40度くらいのややぬるめのお湯に15分程度つかるのがおすすめで、そうすると深部体温が上昇します。
深部体温とは、臓器など体の内部の体温のこと。これが上がった状態から下がった状態へと移行すると、人間は眠気を感じるようになるのです。
お風呂から上がった直後は、まだ深部体温は上がったまま。当然、眠気を感じることはありません。しかしそこから1〜2時間かけて、深部体温は一気に下がります。すると、眠気のピークが訪れるのです。
このしくみを利用し、逆算して入浴することによって、質の高い睡眠を得ることができます。そしてそれに連動するかたちで、自律神経も整うのです。
このように、眠りに集中するための方法を効率よく実践すれば、スマホを片手にお布団に入ったとしても、すぐに目がトロンとしてきて、SNSどころではなくなるでしょう。
リベンジ夜更かしの多い生活から抜け出し、日々のパフォーマンスを上げるために、先に紹介したガムを噛むなどの方法と組み合わせながら、積極的に取り組んでみてください。
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提供元:「就寝前のガム」が良質な睡眠に効果的なワケ|東洋経済オンライン