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2024.01.10

血圧高め放置で「心筋梗塞リスクは約8倍」の怖さ|降圧薬の種類や使い方、やめ時を専門医に取材


20歳以上の日本人の2人に1人は高血圧といわれています。放置した場合のリスクや、知っておきたい降圧薬の知識を解説します(写真:nonpii/PIXTA)

20歳以上の日本人の2人に1人は高血圧といわれています。放置した場合のリスクや、知っておきたい降圧薬の知識を解説します(写真:nonpii/PIXTA)

20歳以上の日本人の2人に1人は高血圧といわれているが、4割以上が治療を受けていない(日本高血圧学会『高血圧治療ガイドライン2019』)。自覚症状がないため放置しやすく、血圧を下げる薬を飲み続けることに抵抗がある人も少なくない。

治療前の人だけでなく、治療中の人も知っておきたい、放置した場合のリスクや薬の知識について、東京都健康長寿医療センターの鳥羽梓弓医師に聞いた。

高血圧は「サイレントキラー」と呼ばれる。なぜなら自覚症状がないまま血管に負担がかかり続け、ある日突然、脳卒中や心筋梗塞など命に関わる病気を発症することがあるからだ。

高い人の心筋梗塞リスクは約8倍

正常血圧(上120mmHg/下80mmHg未満)を基準にすると、上が140~159mmHg、下が90~99mmHgの人は、脳心血管病(脳梗塞や脳出血、心筋梗塞など)を起こすリスクが約3倍、上が180mmHg以上、下が110mmHg以上の人は約8倍となる。

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鳥羽医師はこう警告する。

「脳卒中や心筋梗塞を起こすと、たとえ命は助かったとしても後遺症が残ったり、寝たきりになったりするケースもあります。また、高血圧によって腎機能が低下すると、生涯にわたって透析が必要になることもあります」

こうしたことを防ぎ、長く健康でいるためにも血圧をコントロールすることが大事だ。

「自覚症状がないと危機感を持ちにくいかもしれませんが、血圧が高い状態が続いているというのは、つねに全身の血管や心臓に負担がかかっている状態だと考えてください」と鳥羽医師は付け加える。

ここで改めて、どのような状態が高血圧なのか見ていきたい。日本高血圧学会による高血圧の診断基準は下記のとおりだ。

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病院で血圧が上がる「白衣効果」

医療機関と自宅で測定した場合では、基準値に差があることからわかるように、医療機関で測定すると緊張から血圧が上がる人がいる。これを「白衣効果」という。

鳥羽医師によると、医療機関でだけ高血圧になる人は、通常は薬による治療は必要ないという。ただ、将来的に血圧が高くなる可能性が高いので、自宅に血圧計がある人は、自宅でも定期的に血圧を測定するのが理想だ。

高血圧と診断されて受診しても、すぐに薬による治療を開始するわけではない。

高血圧と診断されたすべての人に不可欠なのが、減塩を中心とした食事療法、習慣的な有酸素運動を主とした運動療法、禁煙、減量など生活習慣の改善だ。こうした生活習慣の改善だけで、血圧が下がれば、薬による治療は必要ない。

また、薬物療法中も生活習慣の改善は必要で、薬の効果を高めるほか、薬を減量したり、やめたりすることにもつながる。

生活習慣を改善して1~3カ月様子を見ても血圧が下がらない場合、あるいは高血圧の程度や年齢、持病、病歴、喫煙習慣などによって、脳卒中や心筋梗塞などのリスクが高い人は薬による治療に進む。

血圧を下げる4つの薬の特徴

血圧を下げる薬は「降圧薬」と呼ばれ、『高血圧治療ガイドライン2019』では最初の治療で次の4つの中から選択することを推奨している。

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(1)~(3)は血管を広げ、(4)は血流を減らすことで血圧を下げる効果があり、いずれも脳心血管病を抑制することが明らかになっている。

それぞれの薬の特徴について、鳥羽医師はこう解説する。

「最も多く使用されているのが、カルシウム拮抗薬です。安価で降圧効果が高く、とくに高齢者に最初に使用されることが多いです。一方、50~60代の人には、副作用が少なく、ゆるやかに効果が表れるARBを最初に選ぶこともあります」

50~60代でも高血圧の程度が重ければ、最初にカルシウム拮抗薬を選択する。ACEI(ACE阻害薬)は空咳の副作用があり、降圧効果も高くないことから、最初から使用する頻度は減っている。高血圧の原因に塩分の過剰摂取が関わっている人は、利尿薬が効果的だという。

一般的には、これらから1種類を少量からスタートし、1カ月程度様子を見て、副作用が出る、あるいは効果が出なければ別の種類に変更するが、1種類だけで目標値まで血圧を下げられる割合は約4割未満(『高血圧治療ガイドライン2019』より)。

したがって高血圧の治療は薬の種類が増えやすい。

特に高齢者の場合はほかの病気で薬を服用していることも多く、薬の種類が増えるほど飲み間違えなど、管理が難しくなる。

そこで「ARB+利尿薬」「ARB+カルシウム拮抗薬」の2種類の配合剤、「ARB+カルシウム拮抗薬+利尿薬」の3種類の配合剤も登場している。

「配合剤は、薬の種類を減らせるメリットがあります。ただし、血圧を下げすぎるリスクがあるほか、副作用が出た場合にどちらの薬によるものかわからない場合も出てきます。2種類、3種類と併用して安全性などを確認したうえで、配合剤に切り替えるのが一般的です」(鳥羽医師)

先に挙げた4つの薬以外では、2021年からは心不全治療薬の「アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)」が、使えるようになった。

「高血圧だけが問題となっている人に最初から使用することはありませんが、慢性心不全や心肥大がある人には、向いている薬といえます」と鳥羽医師。

なお、薬を飲んでも血圧が下がらない場合、「2次性高血圧」といって、腎臓の病気やホルモン分泌の乱れなど、別のところに理由があって血圧が上がっていることがある。

鳥羽医師によると、若い世代の高血圧ほどこの割合が高いので、薬が効かない場合は、検査で病気が隠れていないかどうかを探っていくという。

血圧が下がれば薬はやめられるのか

降圧薬は、一生飲み続けなければならないという印象を持つ人も少なくない。確かに降圧薬によって血圧が下がったとしても、それは薬の作用であり、やめると再び血圧は上がる。鳥羽医師はこう話す。

「禁煙や減塩、減量など生活習慣の改善によって、血圧が下がれば、薬をやめられる人はいます。ただし、一度硬くなった血管はもとには戻りません。高血圧は動脈硬化を進め、動脈硬化が進むと、さらに高血圧になるという悪循環に陥ります」

動脈硬化がそこまで進んでいない、30代、40代のうちに、生活習慣の改善や降圧薬によって対策をとることが大事だという。

一番やってはいけないのは、血圧が下がったからと自己判断で薬をやめるという行為だ。脳心血管病のリスクを上げるだけでなく、治療を再開するときには薬を増やさなければならない、といったことも起こりうる。

知っておきたい降圧薬の副作用

では、降圧薬の副作用にはどのようなものがあるのか。

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とくに高齢者は薬によって血圧が下がりすぎて頭痛や動悸、めまいといった症状が出ることもある。

「血圧を下げ過ぎないためにも、降圧薬は少量から開始するのが鉄則ですが、そのさじ加減は難しい。例えば、体重が減った場合、血圧は下がりやすく、夏の間は血圧が下がるという人もいます。同じ薬を同じ量で続けるのではなく、血圧の変動に合わせて、こまめに調整することが必要だと思います」(鳥羽医師)

そのためにも頻繁な血圧測定は不可欠だという。

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誤解されやすいが、降圧薬の真の目的は血圧を下げることではない。それより大事なのは、動脈硬化や臓器の障害を防ぎ、脳心血管病を予防することだ。

「薬を漫然と飲むのではなく、定期的に首のエコー(頸動脈超音波検査)で動脈硬化の程度を調べてもらったり、心臓や腎臓などに問題がないか検査を受けたりすることが大事です」(鳥羽医師)

首のエコーについてはこちらをご覧ください(コレステロール高めの人、「肉断ち1カ月」のススメ) ※外部サイトに遷移します

(取材・文/中寺暁子)

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東京都健康長寿医療センター 循環器内科医長
鳥羽梓弓医師

2006年、千葉大学医学部卒。東京医科歯科大学大学院卒。老人医療センター(現:東京都健康長寿医療センター)にて研修、医員を経て2023年より現職。日本高血圧学会高血圧専門医・指導医、日本循環器学会循環器専門医、日本老年医学会認定老年病専門医・指導医、日本内科学会総合内科専門医。

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提供元:血圧高め放置で「心筋梗塞リスクは約8倍」の怖さ|東洋経済オンライン

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