2023.12.26
忘年会太りに!「スクワット」の効果的なやり方|スクワットを1分間することのデメリットとは
スクワットは1分間以上やってはいけない? 効果的なスクワットのやり方をご紹介します(写真:xquang/PIXTA)
忘年会続きで体重が気になっている人も多いのではないでしょうか。寒くなり、カラダを動かすことが減った人も多そうです。健康維持のためには運動が必要で、活動量が多い人は少ない人に比べて、循環器病や認知症などのリスクが低いことも報告されています。
自宅でできるうえ、筋肉が多く集まる下半身を動かすため、効率がいいと人気の「スクワット」。ただし、「30秒以上のスクワットは挫折しやすいうえ、ケガのリスクも高い」と、フィットネストレーナーとしても活躍する整形外科専門医の吉原潔さんは言います。健康効果を得られて、安全に続けられるスクワットはあるのか、吉原さんの著書『ドクターズスクワット 医者が考案した「30秒で運動不足を解消する方法」』より、本文を一部引用・再編集してご紹介します。
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30秒と1分、効果的なのはどっち?
Q.スクワットをするとき、より効果的なのは?
(1)30秒スクワットをする
(2)1分スクワットをする
私がよく、患者さんにする質問です。できるだけ長くやったほうが、効果がありそうですよね。30秒だと物足りなく思えるでしょう。
では、今からその場でスクワットを1分やってみてください。かなりキツいでしょう。
次に、30秒ならどうでしょうか? ちょっとキツく感じると思いますが、十分にできると思います。
実は、最初の質問の答えは、「(1)30秒スクワットをする」です。
なぜ、スクワットは30秒だけやったほうが効果的と言えるのか、その答えをお伝えする前に、なぜ、1分間ではダメなのか。その理由からお話ししましょう。
スクワットを1分間することのデメリットは、大きく2つあります。
1分間以上のスクワットはデメリットしかない
まず、キツいので続かない、つまり挫折しやすいということです。スクワットをやったことがある方ならわかると思いますが、立ったところから腰を落としていく最中に、脚がプルプルと震えたりしますよね。それだけ筋肉には強い負荷がかかっているという証拠で、つまり、キツいということです。キツいと、「今日は疲れているから……」などと言い訳をして、やらない日が増えていきます。
そして、2つ目のデメリットは、ひざや腰を痛めやすい、ということです。
一般的なスクワットのやり方は簡単なようで、やってみると意外に難しいもの。インターネットなどで紹介されているスクワットのやり方を見ると「両足を肩幅より少し広めに開き、つま先とひざの方向を同じにして、背すじを伸ばしたまま太ももと床が平行になるまで腰を落とす」とあります。
これをそのとおりに再現することは実はなかなか難しい……。
なかでも難しいのは、腰を落とすときの姿勢でしょう。背すじを伸ばしたまま安定して腰を落としていくのにはけっこう筋力が必要で、ふだん運動をしていない方や高齢者は背中が丸まり猫背になったり、バランスをくずしたりしてしまいがちです。
この傾向は、キツいと感じるほどに強くなります。先ほどやっていただいた1分間のスクワットは、キツいですよね。すると途中からフォームがおかしくなり、うまくできないと腰やひざを痛めたり、転倒したりしてしまう危険性があるのです。
ですから、スクワットをするなら、30秒だけ。ちょっとキツいけど、正しいフォームで最後までできる。それくらいが、挫折せずに続けられます。続けられる、ということは効果が得られる、ということでもあります。もちろん、体を痛めるリスクも減ります。
Q.スクワットをするとき、正解はどっち?
(1)ひざが、つま先より前に出ないようにする
(2)ひざが、つま先より前に出てもよい
一般的なスクワットのやり方を紹介しましたが、「スクワットはしゃがみ込んだとき、ひざがつま先より前に出ないようにしましょう」と言われたり、本やインターネットで見たりしたことがあると思います。
実は、これ、大きな間違い。つまり、質問の答えは②。ひざは、つま先より前に出てよいのです。
整形外科医も誤解の多いスクワット
スクワットは人気の運動であるがゆえ、間違った情報があふれています。驚くことには、整形外科の学会資料にも、誤って書かれているのです。
パワーリフティングという競技をご存じでしょうか? そのなかの種目にスクワットがあるのですが、選手たちは何百キロもあるバーベルを扱います。そしておもしろいように、選手のひざは共通してつま先より少しだけ前に出ています。これこそ、安全に立ち上がるための正しいフォームなのです。
逆に、ひざを前に出さないことに固執すると、つま先が浮いてかかとに重心がかかります。すると、尻もちをつかないようにバランスをとることで腰には大きな負担がかかってしまいます。
ひざの位置は、上半身をどのように傾けるかで変わってくるので、ひとまとめにしてひざをつま先より前に出さないと強調すべきではないのです。
もし、ひざに注意したいのであれば、一つだけ。関節をねじって痛めないように、つま先と同じ方向を向くようにすることです。
1分間スクワットをすることのデメリットをお話ししましたが、誤解しないでいただきたいのは、スクワットほど効率よく筋肉を鍛えられて、健康効果の高いものはほかにないということ。
事実、スクワットは「キング・オブ・エクササイズ(エクササイズの王様)」といわれていますが、それにはこんな理由があります。
スクワットをやってほしいこれだけの理由
理由(1) 大きな筋肉をまとめて鍛えられるから効率がよい
スクワットで鍛えられる筋肉は、
・大腿四頭筋…太ももの前に位置する、体の中で最も大きい筋肉
・臀筋…お尻の筋肉で、2番目に大きい筋肉
・ハムストリングス…太ももの裏に位置し、4番目に大きい筋肉
・脊柱起立筋…体幹(胴体)を支える重要な筋肉
大きい筋肉の周りには、連動して動くたくさんの小さい筋肉がついています。大きい筋肉を動かせば、小さい筋肉も自然と鍛えられるのです。
大きい筋肉を、これほどいっぺんに動かせる運動はスクワット以外にはありません。たくさんの筋肉を鍛えることのメリットを詳しくお話ししましょう。
理由(2) 体と心を元気にする成長ホルモンの分泌を促す
スクワットをすると、筋肉内で乳酸という物質が発生します。
乳酸には「成長ホルモン」の分泌促進作用があります。成長ホルモンは、子どもの成長のためだけに働くホルモンではありません。筋肉を増やす、糖や脂質の代謝を促進する、免疫機能や認知機能の亢進など多くの作用を持つことがわかっています。
分泌量が減ると気分が落ち込みやすくなり、イライラしやすくなるなど、心の健康も害されます。
スクワットは体だけではなく、心の健康を保つうえでも有効なのです。
理由(3) 注目の若返り物質「マイオカイン」が出る
マイオカインという言葉を聞いたことがありますか? マイオカインは筋肉から分泌されるさまざまなホルモンの総称で、全身によい影響をおよぼすため「若返りホルモン」とも呼ばれています。まだ解明されていない部分も多いのですが、
・糖尿病、高血圧、動脈硬化を予防する
・体脂肪の燃焼を促進する
・認知症を予防する
・大腸がんのリスクを下げる
といった作用がわかってきました。スクワットでたくさんの筋肉を刺激して、マイオカインをしっかり分泌させていきましょう。
30秒以上はやらない!究極のスクワット
ここまで読んでくださったあなたは、スクワットのよさが十分におわかりになったかと思います。1分より、30秒やったほうが結果としてよいということも納得いただけたでしょうか。
ですが、まだ解決していないことがありますね。
「体を痛めずにできる、正しいスクワットはあるのか」ということです。整形外科の学会資料にも誤ったやり方が書かれているのは、先ほどお伝えした通りです。
そこで、数々の問題点を解消すべく、私が考案したのが30秒しかやらない「30秒スクワット」です。
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30秒スクワットのやり方は、驚くほど簡単です。
しゃがんだ状態から立ち上がる、という動作を30秒でくり返すだけです。
一般的なスクワットは立った状態から始めますが、30秒スクワットは最初にしゃがみます。その理由は、しゃがんでいて立ち上がる、というのは日常でよく行う動作なので、迷うことが少ないからです。ですから、ふだん運動をしていない方でもスクワットの方法を気にせず、まっすぐに立ち上がるだけで、自然に正しい方法になるのです。
もちろん、筋肉に適度な負荷を与えられるという点も留意しました。負荷が強すぎると腰やひざを痛めるリスクが高まってしまいます。とはいえ、まったくキツさを感じないようであれば効果が期待できません。そこで、私自身がいろいろなトレーニング方法を試した末に考案したのが、キツすぎない、でも適度な負荷がかけられて効果が得られる30秒スクワットなのです。
なお、30秒間で、何回やるかにこだわる必要もありません。回数をこなそうとするよりは、1回1回を丁寧にゆっくりやるほうがよいでしょう。30秒スクワットは1日30秒行うことを目標にします。
やり方は、こちらから確認できます。
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提供元:忘年会太りに!「スクワット」の効果的なやり方|東洋経済オンライン