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2023.12.21

コレステロール高めの人、「肉断ち1カ月」のススメ|知っているようで知らない「善玉」「悪玉」の違い


コレステロール値が要注意の数値を超えたら、どうしたらいいのでしょうか(写真:takeuchi masato/PIXTA)

コレステロール値が要注意の数値を超えたら、どうしたらいいのでしょうか(写真:takeuchi masato/PIXTA)

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中年期に差しかかると、健診で数値が引っかかりやすい身近な項目の1つがコレステロールだ。しかし、善玉、悪玉などの名称は聞いたことがあっても、その役割や、なぜ下げたほうがいいのかという理由について知る人は、意外と少ないのではないだろうか。

元帝京大学医学部長で、長年、わが国の循環器内科分野をリードしてきた、寺本内科・歯科クリニック内科院長の寺本民生さんにコレステロールとの正しい付き合い方、怖がり方についてアドバイスをもらった。

コレステロールは、ヒトの体に存在する脂質の一種だ。

体を構成する細胞膜の約50%はコレステロールからできているだけでなく、細胞は自分でコレステロールを合成することもできる。性ホルモン、ステロイドホルモン、食事の中の脂肪を吸収しやすくする胆汁酸も、コレステロールを原料としている。

体にとってはとても重要であり、コレステロールがないと人は生きていけない。しかしその一方で、生活習慣病の1つである脂質異常症の原因としての側面もあり、悪いイメージがある。

悪玉 善玉といわれるワケ

コレステロールの7〜8割は、体内にある糖や脂肪を材料にして肝臓で合成され、残りの2〜3割は食べ物などから取り入れられる。

そして血液を介して全身に運ばれていくが、コレステロールは脂質なので、血液中には溶け込まない。そこで、タンパク質という“乗り物”に乗ってリポタンパク質という状態で、血液中を移動する。

血液中にあるコレステロールは、大きくLDL(低密度リポタンパク質)とHDL(高密度リポタンパク質)に分けられる。本稿では、前者をLDLコレステロール、後者をHDLコレステロールを呼ぶ。

LDLコレステロールは血液を介して全身に運ばれ、細胞膜やホルモンの材料となるが、食事の量が多すぎたり、脂質、特に動物性脂肪が多い食事を摂りすぎたりすると、処理しきれなくなる。そして、動脈の壁にくっついて溜まりはじめる。

このLDLコレステロールが動脈硬化の原因となることから、「悪玉コレステロール」といわれている。

一方、HDLコレステロールは動脈壁にくっついているコレステロールを除去・回収する役割を果たしている。このため「善玉コレステロール」と呼ばれる。

つまり、LDLコレステロールが増えすぎるだけでなく、HDLコレステロールが少なすぎるのも、動脈壁のコレステロールの回収がうまくいかず動脈硬化につながるので、問題となる。

要注意なコレステロール値

寺本さんによると、生まれたばかりの赤ちゃんのLDLコレステロールは、50〜100mg/dL程度だ。それが長年の食生活により少しずつ増えていき、多くの人は140mg/dL近くまで上がるそうだ。

現在のLDLコレステロールの基準値は140mg/dLで、それよりも高い数値の状態が持続すると、動脈硬化によるさまざまな病気が発症する危険性が高まってしまう。

現在、コレステロールに関する健康診断の基準値は、LDLコレステロールのほかに、総コレステロール、HDLコレステロール、Non HDLコレステロールがある。Non HDLコレステロールは、総コレステロールからHDLコレステロールを差し引いた数値をいう。

「詳しいことは省きますが、コレステロールの中にはLDLコレステロール以外の悪玉コレステロールも存在します。悪玉の総和をシンプルに知ることができるのが、Non HDLコレステロール値です」と寺本さん。

また、血液検査でコレステロールを調べる場合、空腹時に採血する必要があるが、Non HDLコレステロールは食後に測っても値が左右されないという利点がある。

そのため、日本動脈硬化学会『動脈硬化性疾患予防ガイドライン』(2017年版)から、総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロールに加えて、Non HDLコレステロールも重視するようになり、健診で調べることが推奨されている。

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では、健診の結果でLDLコレステロールが高めであることがわかったら、どうしたらいいか。寺本さんは言う。

「基本的に、LDLコレステロール値が180mg/dLくらいまでは薬物療法はせずに、生活指導をしながら経過を見ます。180mg/dLを超えてくると薬物療法が必要です」

健診結果で、140mg/dL以上を“受診勧奨”としているのは、「食事に注意するなど、悪化させないよう指導を受けるべき」という意味だという。

基準を超えたらまずは“肉断ち”

健診で悪い数値が出ても、「コレステロールぐらいで薬を飲むのは嫌」と、医療機関を受診しない人もいるが、よほど数値が悪くない限り、初診でいきなり薬物療法とはならない。「きちんとした説明もなく、いきなり薬を飲めという医師だったら、別の医療機関を受診したほうがいい」と、寺本さんは話す。

「例えば当院の場合、LDLコレステロール値が150mg/dLぐらいなら、『1カ月実験しましょう』などと話し、まずは”肉断ち”、正確に言うと“脂断ち”をしてもらいます」

肉断ち(脂断ち)とは、赤身と脂身が分かれている豚肉は脂身を捨てて赤身だけ食べる、脂を取り除きにくい霜降りの牛肉や、脂と赤身が混じっているひき肉は控える、というもの。

肉断ちの期間は1カ月で、1カ月後に再度、血液検査をして、どの程度数値が下がったかを見る。

「ゴールを決めると意外とできるものです。下がった人は食事でコントロールできるわけですから、薬物療法をしなくても大丈夫です。その後は3〜6カ月に1度、数値を140〜150mg/dLでコントロールできているかを調べていきます」(寺本さん)

動脈硬化そのものは症状がないためか、検査結果の数値が高くても今ひとつピンとこない人もいるだろう。そんな人たちに受けてもらいたいのが、頸動脈エコー(超音波)検査だ。

実は、寺本さんら専門医はLDLコレステロール値が高めの人に、この検査を受けることを勧めている。

「頸動脈は首にある動脈で、動脈のなかで最も体の表面にあります。しかも太い血管なので、超音波検査を行えば動脈硬化が起こっているかが一目でわかります。頸動脈に問題があれば、体中に動脈硬化が起こっている可能性が高いです」

頸動脈エコーの写真。左側が健康な人、右側は動脈硬化がある人の頸動脈。矢印のところが動脈硬化(画像:寺本さん提供)

頸動脈エコーの写真。左側が健康な人、右側は動脈硬化がある人の頸動脈。矢印のところが動脈硬化(画像:寺本さん提供)

動脈硬化を目で知る効果は大きい。寺本さんは「血管の状態を見てショックを受けた患者さんは、これから注意しようと思ってくれます」と話す。頸動脈エコーは健康保険で受けることが可能だ。

LDLコレステロール値が高いということは、徐々に動脈硬化が始まっているという証拠。狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの病気の発症リスクが高まり、30年ぐらい後に発症……という経過をたどる。

日本人男性がこれらの病気を発症する年齢は、ほぼ70代。逆算すると40歳前後でコレステロールの値の高さを指摘されたら、「まだ大丈夫」ではなく、今から対策を講じるべきだろう。

なお、女性がこれらの病気を発症するのは男性より遅く、80代くらい。これは女性ホルモンのエストロゲンがLDLコレステロールの生成を抑えたり、余分なLDLコレステロールを肝臓に戻したりする作用があるため。

エストロゲンの分泌がほぼなくなる閉経以降は、LDLコレステロール値は上がりやすいので、そのあたりから注意が必要になる。

スタチンがLDL値を下げる理由

食事指導でも数値が改善しない場合は、「スタチン」というコレステロール値を下げる薬を服用する。

なぜスタチンがLDLコレステロールを減らすのか。その仕組みについて、簡単に説明しよう。

スタチンは肝臓でコレステロールを生成するのを阻害する薬だ。その結果、肝臓にあるコレステロールの量が減る。たが、肝臓にはコレステロールの量を一定に保つメカニズムが備わっているため、肝細胞の表面にあるLDL受容体を増やして、血液中にあるLDLコレステロールを取り込む。

その結果、血液中にあるLDLコレステロールが減る、というわけだ。

このLDL受容体は1974年に発見され、発見者のアメリカの遺伝学者マイケル・ブラウンとヨセフ・ゴールドスタイン博士は、1985年にノーベル生理学・医学賞を受賞している。

現在、わが国で使われているスタチンは、全部で6種類ある。ストロングスタチンのほうが効果は高いが、年齢やコレステロール値の高さ、ほかの生活習慣病の有無、肝機能などを考慮して、決まる。

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スタチンを使い始めた初期には、ごく稀に横紋筋融解症(骨格筋を作る細胞が溶けたり壊死したりする症状)という重篤な副作用が起こることがある。その他の副作用としては、じんましんや筋肉痛、肝機能が悪くなる、などがある。そのため、最初の3カ月は毎月医療機関を受診して、効果と副作用を見ていく。

休薬を試してもらうことも

寺本さんのクリニックでは、3カ月以降は2カ月に1度、3カ月に1度……と受診間隔を空けていくそうだ。また、1年分のデータを蓄積しておき、そのデータを患者に渡すという。

「いつ数値が上がっているかが一目でわかるので、自身のモチベーションにもなる」と寺本さんは言う。

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薬を一生続けるかという問題について、寺本さんは「希望する患者さんには、1カ月の休薬を試してもらっている」というが、やめると数値が上がる人が多いそうだ。

「ただ、70代以降は減らしてもいい。今のスタチンの半減期(血中薬物濃度が半分になる時期)は30時間くらいなので、1日おきに服用するという使い方もできます。高齢者では場合によっては服用しないですむこともある」(寺本さん)

(取材・文/伊波達也)

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寺本内科・歯科クリニック院長
寺本民生医師

1973年、東京大学医学部卒業。茨城県日立市日立総合病院、小平記念東京日立病院内科を経て、1976年、東京大学医学部附属病院第一内科医員。1980年、アメリカシカゴ大学留学。1990年、同医局長。1991年、帝京大学第一内科助教授。1997年、帝京大学内科教授。2001年、同主任教授。2010年、同医学部長。2013年、同臨床研究センター長。2013年より現職。日本医学会副会長、日本動脈硬化学会名誉会員、その他数々の学会の評議員、理事を歴任。『コレステロール値が高いと言われたら読む本(早わかり健康ガイド)』他、著書多数。

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提供元:コレステロール高めの人、「肉断ち1カ月」のススメ|東洋経済オンライン

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