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2023.12.15

仲良しの家族が「介護地獄」に陥りやすいワケ|待ち受ける「自滅型介護」から身を守る方法


老老介護も増えている昨今、どのようにして介護とともに暮らしていくかを考えなくてはいけません
(写真:kapinon/PIXTA)

老老介護も増えている昨今、どのようにして介護とともに暮らしていくかを考えなくてはいけません (写真:kapinon/PIXTA)

介護離職者が年に10万人を超える現状を踏まえ、厚生労働省は、11月20日に行った審議会で、40歳となった従業員全員に、介護休業などの支援制度を周知することを企業に対して義務づけるために、来年の通常国会に法律の改正案の提出を目指すという方針を打ち出しました。

「現役世代だけでなく、これから老老介護も増えていく中で、どう介護とともに暮らしていくのかが生活、人生をどう送るのかに大きくかかわってくる」と語るのは、自身で訪問看護ステーションを立ち上げ、介護の現場に携わった看護師の坪田康佑氏。同氏の著書『老老介護で知っておきたいことのすべて』では、介護で悲惨な状態に陥りやすい人には、ある特徴があるとあります。本稿では、同著から抜粋・再編集して、介護で苦労する人の特徴とその解決方法を紹介します。

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あなたは介護で苦労するタイプ?

いきなりですが、まずは次の質問に答えてみてください。

(画像:『老老介護で知っておきたいことのすべて』)

(画像:『老老介護で知っておきたいことのすべて』)

「はい」と答えた数はいくつだったでしょうか? 

5~6個の方は「要注意」、7~11個の方は「要改善」、12個以上の方は「危険」です。

いかがでしたか?

自分の体調管理や息抜きが苦手だと、介護がつらくなってしまうことは、皆さんも何となく想像がつくと思います。

加えて、何事も自分で抱え込み、「完璧」にやらないと気が済まないという方ほど、老老介護がつらくなってしまうのではないかと、私は感じています。

1、2、4、5、7、9の項目のいずれかに「はい」と答えた方は、そうなってしまう可能性があります。該当する方は、たとえ合計の数が4つ以下だったとしても、少し注意が必要かもしれません。

そもそも介護において完璧な状態なんてないと思いませんか?

また、常に今日と明日が同じとも限りません。昨日は気持ちよく出かけたけれど、今日は足の調子が悪そう。

昨日は食欲がなかったけど、今日はデザートまで完食した。というように、介護される側の体や心の状態は一定ではなく、日々揺れ動くもの。それぞれの状態や変化に応じて、どう介助すればいいのか、どんな食事を用意すればいいかという対処も違ってきます。

介護に完璧はありえない

こうすれば完璧という答えがあるわけではありません。

それにもかかわらず、完璧にやろうとすると、むしろできないと感じることのほうが多く、「介護者として完璧じゃない自分」という思いが際立ってしまい、自分1人で悩み、つらくなってしまうばかりです。

何事も完璧にこなすことなど、できるものではありません。やれることをやればいいのです。できないことばかりに目を向けるのではなく、ちょっとしたことでもできたことを喜び、自分を褒めてあげましょう。

そして、自分にできないことがあれば、周囲に頼ればいいのです。そう考えれば、気持ちがすっとラクになるのではないでしょうか。

完璧主義な人ともう1つ、家族への思いやりが強い人も危険です。

思いやりが行きすぎてしまうと、どうなるのでしょうか。

あれも、これも自分ですることによって疲れてしまい、「私がこれだけ大変な思いをしているのに、この人は何もしてくれない」という思いにとらわれてしまうのも、仕方のないことです。

そんな疲れ切った介護をされていると、介護される側も「『ありがとう』と感謝しているのに、その思いが伝わっていない」と感じるようになってしまう。そんな思いのすれ違いの中で、互いが見返りを求めてしまい「自分は相手をこんなに思いやっているのに」という、いわば「思いやりの一方通行」になっている例を数え切れないほど見てきました。思いやりの一方通行を進んだ先に待っているのは、「苦しみの袋小路」です。

思いやりが強い方にありがちなのが、つらいからといって、行政やボランティア、ホームヘルパー(在宅で生活している方々の家に訪問し、介護や生活援助を行う訪問介護員)といった「外の人たち」に頼ってしまうと「思いやりのない人と思われてしまうのではないか」「親戚や近所の人たちに介護を他人に任せている薄情な人間だとうしろ指をさされるのではないか」という妄想にとらわれてしまうことです。

そして、どんどん自分で抱え込んでいって介護の苦しみから抜け出せなくなってしまう。とりわけ高齢の方に「介護は、家族だけで行うもの」という昔の名残があるように感じます。

他人に頼ることの大切さ

「思いやりを捨てろ」と言っているのではありません。自分だけでなんとかしようと思わず、自分の家族、親戚、制度や道具などをどんどんと利用して、「あなたの持つ思いやりをさまざまな人を経由して届けることもしましょう」と言っているのです。

私が訪問看護ステーションを運営していたとき、こんなご夫婦の話を聞きました。

ケアマネージャーが作成したケアプランに沿って、毎週1回、訪問による身体介助と生活援助を依頼されていたのですが、ホームヘルパーのスタッフが調理や洗濯、掃除などの援助を毎回申し出ても、介護する奥さんがいつも「私がやりますから大丈夫ですよ」と援助の手を拒んでいらっしゃいました。

それでもケアマネージャーたちが「遠慮なくいつでも頼ってください」と粘り強くお伝えし続けたそうです。それが功を奏したのは、奥さんのお顔に疲労の色が目立ちはじめたころのこと。ようやく生活援助についても受け入れてくれるようになりました。

「こんなにラクをできるのなら、もっと早く甘えればよかったわ」

ほっとした笑顔でそう言われたときの表情が忘れられないと、ケアマネージャーはうれしそうに話してくれました。介護の目的は、介護を受ける方が、自分らしい生活を営めるようにすることです。

この原点に立ち返れば、周囲や地域の方たちは、介護サービスの力を借りることが「思いやりを減らすことにはならない」と思えるのではないでしょうか。なぜなら、介護・看護のプロフェッショナルに委ねたほうが、要介護者の本人にとってよりよい状況に改善できることが多いからです。

「家族のことは、家族が一番わかっている」。もちろんそうだと思います。しかし、あなたがよくわかっているのは、元気な頃の家族で、介護が必要な状態になったら、これまでとはまったく違った面も出てきます。

そんなときこそ、私たち介護・看護のプロフェッショナルの助けが必要なのです。介護、看護に従事している専門家たちは、身体・生活介助に関する知識・技術を専門的に学び、さまざまな利用者の介助を行ってきた経験がありますので、要介護者の接し方に長けているのです。

介護のすべてをあなたが背負う必要はありません。あなたの周りには、支えてくれる人や制度、物がたくさんあります。できるだけ、助けを借りられる人や物をあれこれ集めてできるだけラクをしながら、介護をしていく。それこそが、介護する側もされる側も幸せになる介護です。

実は、地域包括支援センターこそ、高齢者にとって最強の味方なのです。ではどんな手助けをしてくれるのか、どう活用すればいいのか、ポイントをわかりやすく解説しましょう。

地域包括支援センターは、いわば高齢者のための「よろず相談所」です。

社会福祉士、保健師(看護師)、主任ケアマネージャーが在籍していて、高齢者が住み慣れた地域でその人らしい生活を続けられるように、介護や介護予防、日常生活、認知症などに関する相談に無料で応じてくれています。

加えて、介護保険を利用する際に必要となる要介護認定の申請窓口を担い、申請後の要介護度に応じて、具体的なケアプランの作成や介護サービス事業者との調整などを担う居宅介護支援事業者(ケアマネージャーがいる機関)につないでくれます。

あなたの介護を助けてくれるものはたくさんある

利用できるのは、対象地域に在住する65歳以上の高齢者、またはその支援や介護に携わっている方です。

高齢者本人からの相談はもちろん、家族や友人、近所の方がその方の介護や気になることについての相談にも応じています。

自分の住んでいる地域にはどこにあるのかを知るには、市区町村の介護関連課に問いあわせをするか、インターネットで市区町村のホームページを確認すると情報が出ています。

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直接訪問して相談してもいいですし、電話での相談にも応じています。

利用対象の65歳以上になっても、「自分なんかが頼ると迷惑かも」「自分は大丈夫」と考えてしまう方が少なくないですが、介護について考えはじめたなら、やるべきことを整理するためにも、遠慮なく地域包括支援センターに相談してみてください。

本人が相談するのを拒んでいるなら、パートナーや家族、友人が本人に代わって相談できます。ただし、高齢者本人と離れて暮らしている場合も、相談先は高齢者本人が住む地域の地域包括支援センターなのでご注意ください。

どんな些細なことでも強い味方になってくれるはずですから、迷うことなく相談してみてください。地域包括支援センター以外にも、あなたの介護を助けてくれる制度、人、物はたくさんあります。いろいろなものの力を借りる。そのようなものの情報を集め、頼ることが、あなたの介護をぐっとラクにしてくれるはずです。

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提供元:仲良しの家族が「介護地獄」に陥りやすいワケ|東洋経済オンライン

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