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2023.10.04

ひざ痛の治療が糖尿病も治してしまう納得の理由|患者が向き合わなければならない「本当の原因」


変形膝関節症の治療を進めると、糖尿病が治るというのは本当でしょうか(写真:buritora/PIXTA)

変形膝関節症の治療を進めると、糖尿病が治るというのは本当でしょうか(写真:buritora/PIXTA)

人生100年時代を迎え、多くの人がひざの痛みや歩行のトラブルを抱えています。60代から急に増える「変形性膝関節症」という病気が、長くなった「老後」という〝ご褒美時間〞の生活の質を低下させてしまう大きな原因の一つとなっています。

この変形膝関節症の治療を進めると同時に、糖尿病が治った人がたくさんいます。どういうことなのでしょうか。ひざ関節を専門とする整形外科医の巽一郎氏の著書『100年ひざ』から一部抜粋、再構成してお届けします。

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ひざ痛の保存療法が他の病気も治してしまう

変形性膝関節症はとても身近な病気で、病院にかかるなどはしていない人も含め、「70代女性の約7割が変形性膝関節症である」という調査結果もあるほど。とくに女性が要介護状態になる原因は、この病気と腰痛、それから認知症がとても多いです。

8月4日に配信した「『ひざの不調』70代女性の7割が悩む病気の正体」でも詳しく解説したように、この病気の原因を簡単にいえば、ひざの負担を大きくしている生活習慣があり、軟骨のメンテナンスも不十分。そこに老化が加わることで、ひざの軟骨が加速度をつけてなくなってしまうケースがほとんど――ということです。

『ひざの不調』70代女性の7割が悩む病気の正体 ※外部サイトに遷移します

一方、僕はひざの軟骨が全てなくなった患者さんでも「復活」する現実を見てきています。必要があれば最善の手術をしますが、拙著『100年ひざ』でも詳しく解説している、たつみ式・保存療法をお勧めしています。

たつみ式・保存療法とは、主には次の4つです。

(1)朝起きてトイレに行く前に足放り体操/暇があれば足放り体操

(2)体重を標準へ/戻し方は週一回絶食を提案

(3)歩き方/O脚の人は内もも歩き/X脚の人は一直線歩き/治るまでは杖をつく

(4)筋トレ/大腿四頭筋を鍛える/腹筋と骨盤底筋群も

こうした変形性膝関節症の保存療法に取り組んだ結果、ひざの痛みを解消したと同時に、糖尿病が治った人がたくさんいることに気づきました。

その人たちは「食べすぎ」をやめて、適正体重になった。血糖値が正常化し、糖尿病治療も卒業したのです。

変形性膝関節症の患者さんの約3分の1に「食べすぎによる体重超過→ひざの悪化」がみられます(西洋では7割くらいの患者さんが、体重過多が原因でした)。そしてそのさらに約半分の方は糖尿病の診断を受け、薬で治療をされています。

でも、保存療法によって体重が減ると、ほとんどの人が、ひざ痛と糖尿病の両方とも治ります。湘南鎌倉総合病院にいた15年間で、僕の患者さんで糖尿病が治り、薬がいらなくなった人は117人いました。この117名はなんと全員「糖尿病は治らない」と思って薬を飲み続けていた方々です。

ひざ痛と糖尿病は原因が共通(食べすぎ・急な体重増加)しているので、原因に対処する「保存療法」の末の、理にかなった結果です。しかし、ひざ痛がなかったら、おそらく糖尿病は治せていなかったでしょう。というのも、糖尿病の薬物治療は「対症療法」だからです。

経口血糖降下剤で糖尿病は治らない

糖尿病にはⅠ型とⅡ型があります。Ⅰ型糖尿病はインスリンをつくる遺伝子がもともとない人たちか、免疫異常によってインスリンをつくる膵臓β細胞が攻撃され、インスリンが分泌できない人です。

このⅠ型糖尿病は若くして発症しますが、全体の1〜2%です。残り98%はⅡ型糖尿病です。その原因は食べすぎで、インスリンをつくるのに疲れたり、インスリンがいつも出すぎて、それを受け取る細胞がインスリンを感受できなくなって起こります。

つまり原因は、β細胞が疲れてインスリンがつくれないか、たくさんつくり過ぎて飽和して機能していない状態です。この急激に増えている「Ⅱ型糖尿病」は、食べすぎによって起こっています。そのため糖尿病は「生活習慣病」のひとつとされます。

インスリンは血液中のブドウ糖を細胞内に取り込む仕事をしています。このはたらきがなくなると、血液中にブドウ糖はあふれているのに、細胞はそれを使えません。細胞はエネルギー源のブドウ糖が入ってこないため、エネルギー不足になります。

細胞内にはブドウ糖がなくて、細胞外の血液中にはブドウ糖が多い状態が続くと、浸透圧により細胞の中の水が血管へ引き寄せられ、おしっこが多くなります(多尿)。細胞は水がなくなり脱水が起こります。脱水症状とは、のどの渇き、口の渇き、乾燥した皮膚、倦怠感、頭痛、めまいなどです。重度の脱水症状では、意識混濁や低血圧といった深刻な症状へと進みます。

糖尿病の治療指針(ガイドライン)では、このⅡ型糖尿病に対して、飲むと血糖値が下がる「経口血糖降下剤」という薬を処方します。原因の食べすぎについて、なぜもっとアドバイスしないのでしょうか? せっかく「生活習慣病」というわかりやすいジャンルに入っているのに……。

原因の食べすぎを治さないで、治療指針(ガイドライン)に従って薬(経口血糖降下剤)を飲んでいると、どうなるか。この薬は5種類ほど作用が異なるものがありますが、どれも飲むと血糖値が下がります。どうやって下げるか?

腸からブドウ糖の吸収を減らしたり、肝臓で新たにつくられるブドウ糖の量を減らしたり、インスリンの分泌を刺激したり、インスリンの感受性を上げたり、炭水化物の消化と吸収を遅らせたりして、血糖値を下げるのです。

薬で血糖値が下がったら、からだはどう反応する?

もうこの先の説明の予想がつく読者もいらっしゃると思いますが、薬で血糖値が下がると、からだはその変化に対応して、元に戻そうとはたらき始めます。それは生命を安全に保とうとするはたらき(恒常性)であり、自然な反応です。

糖尿病と診断され、「血糖降下剤」を服用する

薬の作用で血糖値が下がる

脳が血糖値低下を認識。脳が死ぬ危険を感じ、血糖値を上げようとする

食欲が湧いてしまい食べる。出せないインスリンを出す

インスリン枯渇、インスリン効かず、血糖値が上がる

糖尿病になった最初の原因は「食べすぎ」なのに、その薬は「食べすぎ」を招き、悪循環へ入る可能性があるわけです。薬で一時的に血糖値が下がっても、また上がる負の連鎖を起こす。「生活習慣病」としながら、「おかしいやん!」と突っ込みたくなりますね。

Ⅱ型糖尿病になったら、完治はしないので、「血糖降下剤」で血糖値をコントロールし、合併症にならないようにしていく。負の連鎖に気がついたお医者さんは、このように自分を納得させています。

いまのところ、この「対症療法」が標準的な治療で、薬を飲み続けるということは、自然界にない化学物質(異物)を摂り続けることですから、肝臓や腎臓にも負担をかけます。

そうです、向き合わなくてはならないのは、本当の原因の「食べすぎ」なのです。

お薬より「からだが自分で治る力」を信じよう

糖尿病を抱えながらも、ひざ保存療法の実践で「週一断食」に取り組んだ人がいます。

その方は、その日は経口血糖降下剤を飲まず、低血糖発作を避けるため緊急用に飴も用意して水だけを飲む一日をがんばりました。最初の感想は、「やってみたら、無理と思っていた絶食も大したことないやん。水がおいしく感じました」とのこと。他の日も食べる量が減ってきて、食べすぎが自然におさまり、ダイエットに成功。

血糖値も正常に戻った患者さんは、「原因を治す」体験をしたのです。意識がそこにとどまれば糖尿病の再発はないでしょう。もちろんからだに悪い副作用は何もありません。一方、糖尿病の薬を3年以上も飲み続けた方は、5年以上飲んでいた人で断食を行った方の成功談を聞いて、慎重にトライされました。お水をゆっくり、多めに飲んで、緊張せずにゆったりした気持ちで断食を行うことがポイントです。

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『痛みが消えてずっと歩ける 100年ひざ』(サンマーク出版) クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

似たような対症療法の薬物治療の例はいくつもあります。

薬を処方されたら、どんな作用をもたらす薬かよく理解し、必要に応じて服用するのが自分のためです。

僕は、薬学部を卒業した後に、医学部に入り直して医者になりました。その専門知識をもとにしても、人が本来もっている「治る力」を化学物質でコントロールするのは、あくまでも一時的、最低限にとどめたほうがいい、と考えています。

またそれは薬だけでなく、手術などの医療行為においても同じです。

もちろん必要な手術もあります。僕も日々、最善の手術を行うために準備をしているし、自分が交通事故にあったときにも、必要な手術でいのちをながらえました。しかし、対症療法にすぎないものもあることを知っておきましょう。

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【あわせて読みたい】※外部サイトに遷移します

ひざが痛くなって歩けなくなる人と治る人の大差

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提供元:ひざ痛の治療が糖尿病も治してしまう納得の理由|東洋経済オンライン

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