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2023.09.27

医師が教える認知症、日常の兆候で早期発見のコツ|症候の出方はさまざま、細かな変化を見逃さない


認知症の早期発見には「症候」を見逃さないことが大切です(写真:Graphs/PIXTA)

認知症の早期発見には「症候」を見逃さないことが大切です(写真:Graphs/PIXTA)

認知症は一度発症したら回復するのが難しいので、早期に発見して治療することが重要です。日常生活にひそむ変化や加齢による「もの忘れ」との違いなど、要注意な認知症の症候をタイプ別にご紹介します。

※本稿は岩瀬氏の新著『認知症になる48の悪い習慣 ぼけずに楽しく長生きする方法』から一部抜粋・再構成したものです。

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認知症の早期発見は周囲の気づきが大切

認知症の早期発見のポイントは、日常生活での細かな変化──症状と兆候、つまり“症候”を見逃さないことです。「同じことを何度も聞く」「時間や日付をよく間違える」「食事をとったことを忘れる」など日常生活に支障をきたすようなことがあれば、要注意です。

発見が遅れると、治る可能性のある認知症、例えば正常圧水頭症でも、手術などの治療ができない場合もあります。本人や周囲の人が、少しでも変わった点に気がついたら、なるべく早く医師に診てもらいましょう。

しかし、認知症の症候が出ていたとしても、「もともとの性格だ」「加齢のせい」などと考える人も多く、認知症を疑うのはむずかしいかと思います。

公益社団法人「認知症の人と家族の会」が作成した「早期発見の目安」というものがあるので、それを認知症の可能性を考える手がかりにしてもよいかもしれません。

出所:『認知症になる48の悪い習慣 ぼけずに楽しく長生きする方法』

出所:『認知症になる48の悪い習慣 ぼけずに楽しく長生きする方法』

※外部配信先では図を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください

認知症の症候として、よく「もの忘れ」が挙げられますが、認知症の種類によって、症候の出方はさまざまです。

代表的な認知症の種類として、「アルツハイマー型認知症」「血管性認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」が挙げられます。ここではその4種類それぞれの症候について詳しく見ていきましょう。

忘れていること自体を忘れるアルツハイマー型

●アルツハイマー型認知症の症候

アルツハイマー型認知症は、軽度の段階から記憶を司る海馬が損傷するため、人、場所、時間に対するもの忘れ(見当識障害)の症状が顕著です。後述の長谷川式簡易知能評価スケールの設問においては、「遅延再生」という課題が早期から障害されます。新しく体験したことを覚えることができなくなり、忘れていること自体を忘れ、取り繕うようになります。

例えば、昼食で何を食べたかを忘れるのではなく、昼食を食べたこと自体を覚えていない、何度も同じ話をする、自分で片づけたことを忘れて探し物をしてしまうといった症状が見られます。人によっては、そのもの忘れをごまかすために取り繕った態度を取る場合があります。

また、症状が進行すると「もの盗られ妄想」を生じやすいのも、このアルツハイマー型認知症です。

出所:『認知症になる48の悪い習慣 ぼけずに楽しく長生きする方法』

出所:『認知症になる48の悪い習慣 ぼけずに楽しく長生きする方法』

●血管性認知症の症候

血管性認知症は、脳梗塞や脳出血、くも膜下出血といった脳卒中や、心停止、極度の血圧低下などによる脳損傷、脳の血管炎などが原因で起こります。そのため、こういった疾患をもつ人、もっていた人は特に注意する必要がある認知症です。

血管性認知症は、脳の損傷を受けている場所によって症状にムラがありますが、できることとできないことが明確で、これを「まだら認知症」といいます。

一見しっかりしているように見えても、新しいことが覚えられない、歩く・服を着るなどの簡単な日常動作ができなくなる、無気力になる、歩く速度が遅くなる、些細なことで急に笑ったり泣いたりする(感情失禁)といった症状が現れます。また症状が連続的でなく階段状に悪化していくのも特徴です。

●レビー小体型認知症の症候

レビー小体型認知症は、レビー小体として顕微鏡で捉えられる異常たんぱく質(αシヌクレイン)が、脳の神経細胞に溜まり、細胞を壊すことで起こる認知症です。

また、この認知症では、体の動きが緩慢になるパーキンソン症候群の症状、ないものが見えるといった幻視、レム睡眠中の行動異常などが見られます。例えば、足がふるえる、動きが遅くなる、実際にはないもの・いない人が見える、寝ている最中に突然暴れたりするなどがあります。

なおこのたんぱく質は脳に限らず全身の神経細胞に現れるため、自律神経も侵されることにより便秘、立ちくらみといった症状が見られます。

ほかの認知症で見られる記憶障害も現れますが、初期には目立ちにくいです。さらに、認知機能がよいときと悪いときが波のように変化するので、認知症と認識されにくく、ほかの精神疾患と誤診されてしまうこともあります。

認知症は脳の萎縮によっても起きる

●前頭側頭型認知症の症候

前頭側頭型認知症は、思考活動を支え人格を司る前頭葉や、言葉の意味などを把握する側頭葉が萎縮して起こります。

そのため、理性的な行動ができなくなったり、言葉が出にくくなったりします。真面目だった人が暴力や万引きなど反社会的な行動を取る、以前と人格が変わったように攻撃的な言動をする、言葉の意味がわからない、同じ言葉を繰り返す(滞続言語)、毎日同じ時間に同じ行動を取る(常同行動)といった症状が見られます。

反対に、無気力や無関心になることもあるので、そのような症候が現れた場合にも注意が必要です。

このタイプの認知症では、もの忘れや幻覚、妄想といった認知症によく見られる症状が中心ではないため、本人には自分が病気だという自覚が出にくいことで、認知症の診断が遅れてしまうこともあります。

このような症状や兆候が出ていた場合は、認知症を疑う必要があります。その場合、なるべく早く病院で診察を受け、認知症かどうか、別の病気の可能性がないかを正しく診てもらうようにしましょう。

ただ、すぐに病院へ行くのがむずかしいという場合もあるでしょう。その際は、簡易的な検査で認知症の疑いを発見できることもあります。

代表的な検査は「長谷川式簡易知能評価スケール」

代表的な検査には「長谷川式簡易知能評価スケール」というものがあります。日本国内の多くの医療機関でも使用されている、信頼性の高い認知症の簡易検査です。

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長谷川式簡易知能評価スケールは、精神科医の長谷川和夫先生によって開発されたもの。9つの設問に答えるという方法で、所用時間は10〜15分程度です。医師が効率的かつ公平に認知機能の低下を診断することを目的として1974年に開発され、1991年に一部改定を経て今に至るまで利用されています。

ただし、記憶に関係した評価項目を中心に構成されているため、初期段階では記憶障害が現れにくいレビー小体型認知症や、前頭側頭型認知症に対しては、あまり感度のよい検査でないと考えられるでしょう。なおMCI(軽度認知障害)の診断においても明確な基準がないとされています。

そして、このような検査はあくまでも簡易的な検査なので、これだけでは認知症の診断はできないということに注意してください。また、認知症でなくても、当日の体調や精神状態によって、点数が高く出たり低く出たりする可能性もあります。

そのため、簡易検査で問題がないという結果が出たとしても、本人やその家族、友人などの身近な人が気になるところがあれば、病院で診察を受けることが大切です。

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提供元:医師が教える認知症、日常の兆候で早期発見のコツ|東洋経済オンライン

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