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2023.08.22

ひざが痛くなって歩けなくなる人と治る人の大差|メカニズムを理解せず痛みだけを止めるのは禁物


「ひざの痛み」といっても、痛みの原因はそれぞれ異なります(写真:C-geo/PIXTA)

「ひざの痛み」といっても、痛みの原因はそれぞれ異なります(写真:C-geo/PIXTA)

人生100年時代を迎え、多くの人がひざの痛みや歩行のトラブルを抱えています。60代から急に増える「変形性膝関節症」という病気は代表例といえるでしょう。

この病気をはじめとするひざの痛みが出た際に、「痛み止め薬」のみで対処したらどうなるか? ひざ関節を専門とする整形外科医の巽一郎氏が警鐘を鳴らします。著書『痛みが消えてずっと歩ける 100年ひざ』から一部抜粋、再構成してお届けします。

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「ひざの痛み」に対症療法を続けるとどうなる?

ひざ痛の原因を突き止めることなく、痛み止めという対症療法を続けるとどうなるか、変形性膝関節症の約9割を占める「内側の軟骨」がなくなる例で見ていきましょう。

大腿骨と脛骨の間の隙間がひざ関節です。ここに関節軟骨と半月板があります。

レントゲン写真では、腓骨に近いほうの隙間が「外側ひざ関節」、腓骨から遠いほうが「内側ひざ関節」です。健康な人のひざをレントゲン写真で見ると、外側ひざ関節と内側ひざ関節の隙間は均等で、約10㎜くらいです。

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軟骨の成分は7〜8割が水分なので、レントゲン写真には映りません。僕たち医師も、初診ではひざに体重がかかった状態(立位)でレントゲン写真を撮り、大腿骨と脛骨の間の隙間の量を軟骨の量と考え、診察の参考にします。

内側変形性膝関節症の初期の人の場合、ひざのレントゲン写真では内側ひざ関節の隙間がやや狭くなり、内側の軟骨が減ってきているとわかります。これが脚変形の始まりです。

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歩行時に、体重は軟骨が減ってきている内側ひざ関節にかかってきます。しかしまだ軟骨は残っていますから、歩いてもあまり痛みはありません。ただし、軟骨に挟まれた半月板は、居場所が狭くなっているので傷つきやすくなっています。このため、初期のひざ痛は内側ひざ関節の「半月板損傷」によることが多いです。

変形性膝関節症の初期から、歩き方を変えることなく、そのままの日常を送ると、軟骨はどんどん削られ、変形性膝関節症は進行してしまいます。

変形性膝関節症の中期の人のレントゲンでは、関節の隙間がなくなっていて、荷重がかかると、大腿骨と脛骨がぶつかってしまうことがわかります。ひざ関節は外側に飛び出て、足はО脚変形となります。

ひざの内側軟骨がなくなるО脚変形は、両ひざがどんどん離れていくので、安定感があります。ひどくО脚の状態になられた奥様をお連れになった男性が「妻はひざが離れているので、お股の間から向こうの景色がよく見えます」と冗談を言われます。

X脚→ハサミ歩きになる人も

約9割がひざの内側の軟骨がなくなると書きましたが、ひざの外側の軟骨がなくなるのが全体の約1割。ひざの外側の軟骨がなくなると、ひざ関節は内側に入ってきて、足はX脚変形となります。両ひざがX脚変形になると歩きにくく、はたから見るとハサミ歩きと言われます。

О脚もX脚も、どちらの変形も中期になって、内側もしくは外側の軟骨がすべてなくなると、骨どうしがくっつきます。ちょうどぶつかる部分の骨はひときわ白く「石灰化」しているのがわかりますが、それは微小骨折が起こったり、治ったりを繰り返してきた歴史です。折れたところが治るとき、他の部分より多くカルシウムがつくので、石灰が沈着して強度を増すのです。手術でそこを開いたら、大理石のように硬い骨になっています。

微小骨折はカルシウムが沈着することで補修されると、痛みが取れます。 しかし、痛みが軽くなったと思って活動すれば、軟骨はないために、治ったすぐ近くに再び微小骨折が起き、痛みが出る。そんな繰り返しなので、変形性膝関節症の痛みには波があるように感じる人もいます。

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痛みの波は一日の間でもありますし、一年の間にもあります。朝はとっても痛かったけれど、昼前には楽になったわ、とか、2月から4月までは痛くて外出できなかったけれど 5月からラクです――など、さまざまですが、それは微小骨折の起きる量と場所、修復がすんだ量と場所とで変わってくるからです。

中期になると、低いイスから立ち上がるときなどに〝ゴリゴリ〞と骨どうしが当たる音がするようになります。「微小骨折」が起き、激痛を伴うため、歩くのが嫌になる人が増えます。またО脚変形が進むので、一歩体重がかかるごとにひざ関節は外側に押され内側の軟骨が減る速度が加速されます。半月板は居場所がまったくなくなってしまい、内側に脱臼しています。脚変形が進んだら、そのまま歩いていてはダメなのです。

X脚変形の方も同様に、中期になると、骨どうしがゴリゴリと当たります。X脚の人の場合は、ひざ外側の軟骨が先になくなり、当たっているのは外側の骨どうしです。体重が乗ると、ひざは内側へ移動して、外側ひざ関節はどんどんすり減っていきます。

「微小骨折」が痛い理由

「微小骨折」は骨がガシャンと割れて離れたものではなく、髪の毛くらいのひびが入った だけ、ひざの表面を覆う骨皮質が傷ついただけです。骨皮質には骨膜という薄い組織があり、そこに痛みを感じる知覚神経があるので、たいへん痛いわけです。でも骨は離れていってないので、痛みさえ抑えることができれば歩けます。

この段階で、痛み止めを使って歩くか、骨皮質のひびを治してから歩くかで、その先の状況は大きく変わります。仕事に出ることも大切ですが、私は拙著『痛みが消えてずっと歩ける 100年ひざ』でも詳しく解説している、たつみ式・保存療法をお勧めしています。

たつみ式・保存療法とは、主には次の4つです。

(1)朝起きてトイレに行く前に足放り体操/暇があれば足放り体操
(2)体重を標準へ/戻し方は週一回絶食を提案
(3)歩き方/O脚の人は内もも歩き/X脚の人は一直線歩き/治るまでは杖をつく
(4)筋トレ/大腿四頭筋を鍛える/腹筋と骨盤底筋群も

変形性膝関節症の中期――ひざ関節の内側か外側の軟骨がすべてなくなり、骨どうしが当たった状態――になると、整形外科の教科書には手術しかないとあります。僕も20年ほど前には、中期の患者さんには痛み止めが効かなければ「もう手術しかありません」と答えていました。

しかし、中期以降の患者さんでも、痛みなく歩けるようになることを知った今では、この段階ではまだ手術の話はしません。本当のところは、中期以降に痛み止めを常用することで、ひざの状態を悪化させているのだとわかったからです。

痛みだけ止めて、これまでと同じ活動していると、軟骨の修復メカニズムは追いつかず、末期にまで進んでしまう。ここでの痛み止めの使用はひどいときだけに留めて、軟骨再生の体操を行い、治癒していく間、軟骨を守ることができれば、手術を避けて痛みなく歩けるようになります。

この中期が、ひざの運命の分かれ道というわけですね。

「骨欠損」まで進んでしまうと末期状態

変形性膝関節症の末期になると、レントゲン写真では、脛骨がすり減って大腿骨がめり込んでいるのがわかります。「骨欠損」と呼ばれる状態です。

ここまで変形が進むと、ひざの中にある4つの靭帯のバランスも悪くなるため、歩行が不安定になります。

軟骨には知覚神経がないので、完全になくなるのは簡単なことですが、普通は骨が欠損する状況までにはいたりません。それは骨の膜には知覚神経が分布し、守っているからです。

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骨が欠損するくらいの衝撃は、本当は痛くて痛くて、一歩も歩けないほど。しかし、優秀な痛み止めを常用してしまっていると、痛みが発生しないために、こんな骨欠損の状態まで進行してしまうのです。

また中期以降は内側の軟骨がなくなり、ひざの位置はからだの外側へと移動してしまうため、体重はひざの関節からかなり離れた内側にかかることになります。それを支えようとして、大腿骨はねじれ、脛骨と腓骨は倒れてますますO脚に。歩くときに毎度体重の5倍の力が内側にかかることで、この病気の原因となった内側の大腿骨と脛骨は加速度を増して傷んでいきます。

末期になってしまうと、手術などで治せても、術後の経過がかんばしくないこともあります。それは相当に進んだ骨欠損のためです。

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提供元:ひざが痛くなって歩けなくなる人と治る人の大差|東洋経済オンライン

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