2023.07.25
8月も続く?「体温超え猛暑」「記録的大雨」の今後|日本を襲う異常気象の原因をわかりやすく解説
猛烈な暑さや大雨、いつまで続くのでしょうか。気象予報士が解説します(写真:ABC/PIXTA)
まだ梅雨が明けていない地域もある(7月21日現在)というのに、各地で危険な暑さとなっています。
7月12日には東京都の八王子で最高気温39.1℃を観測。全国で今年初めての39℃以上となりました。そして翌週の16日には群馬県の桐生で39.7℃に達したのをはじめ、関東地方のいくつかの地域でも39℃以上が続出しました。
7月16日の最高気温(出典:weathermap)
危険なのは暑さだけではない
危険なのは暑さだけではありません。九州北部や中国地方、北陸では線状降水帯ができたり、普段は雨が少ない東北で梅雨前線が北上し記録的な大雨となったりしています。
そこで、猛暑と大雨の関係、今後の天気の傾向を解説します。
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7月12日、東京都心は最高気温37.5℃を観測しました。7月18日に再び37.5℃まで上がり、16日から18日まで3日連続の猛暑日でした。
東京の最高気温(出典:weathermap)
連日の暑さが体に堪えた方も多かったのではないでしょうか。
17日は、全国に915地点あるアメダスのうち、647地点で最高気温30℃以上の真夏日、195地点で最高気温35℃以上の猛暑日を観測しています。
当日、全国32都府県に「熱中症警戒アラート」が発表されていました。
熱中症警戒アラートとは、国際的に用いられている指標である「暑さ指数(WBGT)」を基にしたもので、暑さ指数(WBGT)が「危険」ランクの中でも特にリスクが高いときに出ます。
発表されている地域は、気温だけでなく湿度も高く、積極的な熱中症予防行動をとることが推奨されています。例えば、不要不急の外出を控える、屋外やエアコンがない屋内の運動は原則中止や延期にするなど、危険な暑さを避ける行動です。
積極的な熱中症予防行動
□どうしても急ぐ用事などがある場合以外は、外出を控えよう
□部屋の中でも、エアコンやクーラーなどを使って、涼しくして過ごそう
□のどが渇く前に、こまめに水分をとろう
□家族や身の回りの人同士で、熱中症に気を付けるように声をかけあおう ~熱中症になりやすい人(高齢者、子ども、障害のある人、体調の悪い人など)がいる場合は特に~
□身の回りの暑さ指数(WBGT)に応じて、屋外や空調のない屋内での運動は、原則、中止や延期をしましょう
環境省「熱中症予防情報サイト」を基に編集部で作成
猛暑の原因は太平洋高気圧
広範囲で暑くなった原因は、太平洋高気圧です。
7月17日の天気図(出典:weathermap)
太平洋高気圧の日本付近への張り出しが強まり、上空に暖気が流れ込んだことで厳しい暑さとなりました。山を越えた熱風が吹きおろす「フェーン現象」が加わり、さらに気温が上昇したところもあります。
大雨には、梅雨前線だけでなく太平洋高気圧が関係しています。
7月12日の天気図(出典:weathermap)
太平洋高気圧の周辺は、時計回りの風が吹いています。その風に乗って、南から雨雲のもととなる湿った空気が流れ込むことによって、梅雨前線の活動は活発になります。特に、梅雨前線の近くやすぐ南側は雨雲が発達しやすいです。
7月12日は、活発な梅雨前線のすぐ南に位置した北陸で雨が強まり、石川県と富山県に線状降水帯が発生しました。
3時間降水量は、石川県のかほくで176.0mm、富山で109.0mm。ともに観測史上1位です。
大雨の原因「線状降水帯」とは
7月10日は、活発な梅雨前線の影響で、福岡県と大分県に大雨特別警報が発表されました。
福岡県、佐賀県、大分県に線状降水帯が発生し、猛烈な雨が降って大雨災害の危険度が急激に上昇しました。3県では土砂災害、川の氾濫、浸水などが相次ぎ、1週間後の17日時点で9人の死亡が確認されています。
7月10日の雨雲(出典:weathermap)
赤い円で囲まれている部分が、線状降水帯です。
ところで、近年、よく耳にするようになった「線状降水帯」とは、そもそも何でしょう?
気象庁の定義は「次々と発生する発達した雨雲(積乱雲)が列をなした、組織化した積乱雲群によって、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することで作り出される、線状に伸びる長さ50〜300km程度、幅20〜50km程度の強い降水をともなう雨域」です。
同じ場所に発達した雨雲がかかり続けて、3時間降水量が200ミリを超えるような大雨となります。日本の集中豪雨の半分から3分の2が線状降水帯によるといわれています。
7月15日は梅雨前線が北上して、東北で雨が強まり、秋田県で記録的な大雨となりました。
48時間降水量(出典:weathermap)
秋田県内の仁別では、48時間降水量が400mmを超えました(最大値は16日14時50分までの48時間降水量415.5mm)。秋田県内の藤里、岩見三内、角館でも300mm超え、秋田でも200mmを超えて、観測史上1位を更新しました。
大雨によって、秋田県を流れる太平川など複数の河川で氾濫が発生し、広い範囲が浸水しました。秋田駅周辺の道は茶色く濁った水で冠水していて、川のように水が流れ、外を歩くことは大変危険な状況でした。
秋田県では、線状降水帯が発生したわけでもなく、大雨特別警報も発表されませんでした。
線状降水帯のように猛烈な雨が降らなくても、強まったり弱まったりしながら雨が降り続いてじわじわと降水量が増えた結果、記録的な大雨となることがあるのです。
梅雨明け後は一段と暑い予想
この先は、日本の南海上を中心に太平洋高気圧の勢力が強まり、全国的に厳しい暑さとなるでしょう。
気象庁の1か月予報によると、北日本、東日本、西日本、奄美・沖縄で、平均気温が平年より高い見込みです。特に8月4日にかけては、平年よりかなり高くなるでしょう。
1か月予報(平均気温)(出典:weathermap)
今は、平年並みだとしても十分暑い時期です。昼間だけでなく朝や夜の気温も高いことが予想されるので、時間を問わず熱中症対策に万全を期してください。
また、降水量は全国的に平年並みの予想です。ただ、気温が高いことは大気の状態が不安定になる一因なので、天気急変による強い雨や雷雨に注意しましょう。
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提供元:8月も続く?「体温超え猛暑」「記録的大雨」の今後|東洋経済オンライン