2023.07.04
夏かぜの代表「ヘルパンギーナ」は大人も要注意|高熱と喉の痛み「手指消毒では感染を防げない」
ヘルパンギーナという感染症をご存じですか?(写真:ucchie79/PIXTA)
長いコロナ禍が終わり、コロナ期間中は発生が見られなかったさまざまな感染症が、勢いを取り戻している。ヘルパンギーナや、溶血性連鎖球菌(溶連菌)による咽頭炎が増え、そして季節外れのインフルエンザ流行が続いている。ヘルパンギーナとはどういう病気なのか、今一度チェックしておきたい。
ヘルパンギーナはウイルスが原因
ヘルパンギーナ、手足口病、咽頭結膜熱(プール熱)などに代表される、夏期に流行するウイルス感染症を「夏かぜ」と呼ぶ。 ヘルパンギーナはコクサッキーA群ウイルス、手足口病は同じコクサッキーA群ウイルス、エンテロウイルスなど、いずれもエンテロウイルス属のウイルスが原因だ。感染経路は便中に排泄されたウイルスを口から体内に入れてしまうことで感染する糞口感染で、マスクは効果がなく、石鹸で手洗いをするしかない。コロナ禍中にアルコールによる手指消毒がすっかり定着したが、それでは感染を防げないので注意が必要だ。
ヘルパンギーナは、39〜40度の高熱と、喉の強い痛みと赤みで発病する。数日すると口蓋垂(のどちんこ)の周りに水疱ができ、それが破れ、とても痛む。水疱が治るまで1週間ほど痛みが続く。
手足口病は、熱は出ない事もあるが、手のひらや足のうら、唇に水疱ができる。水疱の部分を圧迫すると痛むため、歩いたりするのがとても大変だ。水疱は1週間のうちに赤みは取れ、茶色くなり、最終的には皮がむけて終わる。ヘルパンギーナと手足口病の中間のような、高熱が出て喉に水疱ができるけど、手足にも水疱ができるタイプ、手のひらでなく腕や肘のあたりに水疱のできるタイプなどさまざまだ。
共通しているのは、インフルエンザに対するタミフルのような、ウイルスの増殖を止める特効薬は存在しないことだ。熱ざましや痛み止めで症状を和らげつつ、塩気や酸味、辛みは避けて薄味で柔らかい物を選んで食事を摂り、水分を補給して治るのを待つしかない。症状が強いと食事を摂るのが困難となり、脱水など症状があれば入院して点滴することになる。
コクサッキーウイルスは、まれに心筋炎を起こす。心臓の筋肉の炎症で、急激に発症し、具合が悪くなり、致命的となる。昨秋からイギリスの南ウェールズでは新生児、乳児で心筋炎が多数発生したとの報告があり、心筋炎を起こしやすいとされるコクサッキーB群ウイルス4型が検出されている。同様の事は日本では報告されていないが、このタイプのウイルス感染が広まる可能性はある。
現時点で、日本、および欧米、インドの有力なワクチンメーカーではワクチンを開発していない。唯一、中国のワクチンメーカーがエンテロウイルス71型に対するワクチンを製造し、販売している。この型のウイルスは中枢神経合併症を起こしやすく、病原性が高いため、特別にワクチンが開発された。なお、このワクチンは他のエンテロウイルスに対する予防効果はない。
症状で見分けることは簡単ではない
高熱が出て喉の強い痛みを起こし、子どもに多い感染症としては、A群β溶血性連鎖球菌による咽頭炎も有名だ。これは診断してきちんと抗生剤治療をすれば、すぐに症状が軽快するし、後年になって合併するリウマチ熱(心臓の弁が炎症を起こして破壊されてしまう)を防ぐことになる。
クリニックでは綿棒で喉を拭って、抗原検査という検査キットを用いて15分ほどで調べることが可能だ。ただし、溶連菌にもC群やG群などキットでは検出できないタイプがあり、また溶連菌でない菌、代表的にはフソバクテリアが原因となっている場合がある。最終的には、喉の見た目などから総合的に判断して抗生剤治療することも多い。3日後くらいに水疱ができてきて、「ああ、ヘルパンギーナだったね」ということはしばしば経験する。
3年ほどウイルスにさらされていないため、ウイルスに対する免疫が低下し、子どもに限らず高校生や大人のヘルパンギーナも多い。実は、コロナウイルス感染症も高熱と咽頭痛で発症することが多い。数日たって水疱ができてくれば間違うことはないのだが、大抵の方は高熱に驚いて発症日や翌日に受診されるため、見分けることは困難だ。熱や咽頭痛に対して医師が処方する薬は同じであるため問題ないが、コロナ前であればこのようなことは起きなかったため、紛らわしいことこのうえない。
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提供元:夏かぜの代表「ヘルパンギーナ」は大人も要注意|東洋経済オンライン