2023.06.29
食物繊維の「知られざる健康効果」と上手なとり方|医師解説"第二の脳"「腸」を整えストレスも緩和
「食物繊維」の健康効果と、おすすめの食品を紹介します(写真:zon/PIXTA)
生活習慣病、血管、心臓など内科・循環器系のエキスパートで、「心臓の名医」として知られ、日々多くの患者と接する医学博士の池谷敏郎氏。
テレビ番組『あさイチ』(NHK)、『世界一受けたい授業』(日本テレビ)やラジオ番組などに多数出演し、楽しくわかりやすい解説が好評を博している。
過去15キロ以上の減量に成功し、そのメソッドを全公開した15万部のベストセラー『50歳を過ぎても体脂肪率10%の名医が教える 内臓脂肪を落とす最強メソッド』に続き、『60歳を過ぎても血管年齢30歳の名医が教える「100年心臓」のつくり方』を上梓した。
「人生100年時代」を最期まで満喫できるかどうか健康長寿のカギを握る「『心臓の健康』にいい生活」を、運動、食事、メンタルなど、あらゆる観点からアドバイスする1冊で、発売後わずか6日で3刷2万部を突破するなど、大きな話題を呼んでいる。
その池谷氏が、「『食物繊維』の知られざる健康効果と、おすすめの超簡単なとり方」を解説する。
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「腸」を整えるとストレスが緩和される理由
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みなさんは、「ストレスでお腹を壊した」という経験はありませんか?
じつは、これは脳が自律神経を通じて腸に影響を及ぼしているのです。
「腸脳相関」という言葉があり、腸は「第二の脳」というぐらい、この2つは関係しているとされます。
「相関」というからには逆もあって、腸内環境をいい状態にしておくことで、ストレスに強くなるともいえるわけです。
だから腸内環境を整えることは「自律神経の乱れ」を防ぐことになり、ストレスに伴う「交感神経の緊張」を緩和して、「心臓の健康」にもつながるのです。
腸内環境を整える食べ物はいろいろありますが、代表的な成分は「食物繊維」です。
ストレスで自律神経が乱れることにより、頭痛、耳鳴り、肩こり、動悸、食欲不振、吐き気、下痢、便秘など全身にさまざまな影響が出てしまう(イラスト『「100年心臓」のつくり方』より)
「食物繊維」の中でも、とくに「水溶性食物繊維」は腸内で善玉菌のエサとなり、発酵されて「短鎖脂肪酸」となります。
「短鎖脂肪酸」とは 「酪酸」「プロピオン酸」「酢酸」などの「有機酸」のことで、とくに「酪酸」は腸上皮細胞の最も重要なエネルギー源であり、抗炎症作用など優れた生理的効果を発揮します。
また「食物繊維」は、糖や脂質の吸収をおだやかにし、コレステロールを吸着して排出するなど、「肥満」「脂質異常症」「糖尿病」などの予防にも役立ってくれます。
「食物繊維」を効率よく摂取!おすすめ食材は?
腸内環境を整えるだけでなく、さまざまな面で健康にやさしい「スター成分・食物繊維」が効率よく摂取できる、私の「おすすめ食品と食べ方」を紹介します。
食物繊維を多く含む食べ物として、ごぼう、モロヘイヤ、きのこ類、こんにゃく、豆類、海藻類などが挙げられますが、なかでも私が日ごろから積極的に食べて、おすすめしているのが「大豆」です。
「大豆」には「食物繊維」だけでなく「オリゴ糖」が入っています。「オリゴ糖」は、「食物繊維」と同じく、腸内で善玉菌のエサとなるものなので、ダブルの効果で腸内環境にいいのです。もちろん大豆ですから、たんぱく質も摂取できます。
では、手軽に食べられておすすめの、大豆食品を3つ紹介しましょう。
食べごたえあって低糖質が嬉しい「蒸し大豆」
【1】「蒸し大豆」
私のお気に入りの「大豆食品」は、「蒸し大豆」。これはもう、私の定番。なくてはならないアイテムです。
大豆は自分で煮ると大変ですが、「蒸し大豆」ならパックから出せばすぐ食べられるのでとても手軽です。
大豆には、腸にやさしい食物繊維、オリゴ糖が豊富に含まれる。さらに、たんぱく質、ビタミン、ミネラル、イソフラボンなども摂取できる。手軽なパック入りの「蒸し大豆」がおすすめ(イラスト『「100年心臓」のつくり方』より)
しかも、蒸すことで栄養が逃げず、ふっくらおいしいのです。水煮でもいいのですが、栄養分が流出してしまっているのがちょっともったいないです。
「蒸し大豆」はなんといっても低糖質で、食べごたえがあるのが利点です。
私は、ご飯のチョイ足しにして糖質オフにしたり、ヨーグルトやサラダにトッピングして食べたりしています。
それに加えて、とくにおすすめなのが、スープに加えること。
最近は、コンビニなどでさまざまなインスタントスープが売られていますが、おかずと考えると少し物足りないこともあります。
コンビニなどで売られているインスタントスープに、「蒸し大豆」を加えることで、食物繊維、たんぱく質、ビタミン、ミネラル、さらには骨にいい「イソフラボン」まで摂取でき、栄養バランスも向上します。
加えて、嚙みながら豆を食べることで、完食するまでに時間がかかり、空腹感も和らぐうえに腹持ちもいい。「蒸し大豆入りインスタントスープ」は「最高の間食」として重宝します。
【2】「大豆ミート」
「大豆ミート」 は、いま注目されている食品です。文字通り、大豆でできたお肉の代用食品ですが、通常のお肉と比べて脂質、カロリーも少なく、ダイエット効果も期待できます。
また、肉に含まれる動物性脂肪には、腸の悪玉菌を増やすマイナス面もあるので、肉に代えて「大豆ミート」を摂取することで腸内環境の改善が期待できるのです。
日本でも市場拡大が予想される注目食品
肉の代用品といっても、最近のものはビックリするくらいおいしくて、本物の肉と見分けがつかないほどです。ちゃんと繊維まで肉に似せて、嚙みごたえのあるものに仕上がっているのです。
欧米では「大豆ミート」をはじめとした「プラントベースミート」が市場を急拡大していて、スーパーにはいろいろな製品が並んでいます。日本でも大豆ミートはさらに伸びていくと思われます。
水で戻して使う「乾燥タイプ」、そのまま使える「レトルトタイプ」などいろいろありますが、普通の肉を調理するのと同じように使えばいいだけなので簡単です。
最近では、「大豆ミート」でつくったハンバーグやハムなども売られています。
私は「大豆ミート」には以前から注目していて、それに関する本も出しているほどです。
【3】「大豆フレーク」「おからパウダー」
「大豆フレーク」と「おからパウダー」もおすすめの大豆食品です。
コーンフレークならぬ「大豆フレーク」は 、大豆をフレーク状にしたシリアル。「おからパウダー」は、豆腐をつくるときの搾りかす「おから」をパウダーにしたものです。
どちらも「食物繊維」を非常に豊富に含むほか、「ビタミンK」や「鉄分」「葉酸」「カルシウム」など、不足しがちな栄養素がぎっしり詰まっています。
「大豆フレーク」は、コーンフレークのように、そのままミルクや豆乳をかけたり、ヨーグルトに混ぜたりして、手軽に大豆を摂取できるので気に入っています。
「おからパウダー」は、ヨーグルトやスープ、カレーなどに、サッとかけるだけ、混ぜるだけでOK。クセがないので何にでも合い、満腹感が増します。
朝食にも重宝!手軽で栄養満点の「大豆食品」
「医師が警告!「朝食を食べない人」が超危険な根拠」でも紹介しましたが、「大豆フレーク」をヨーグルトにトッピングしたものは、私の定番の朝食のひとつです。「蒸し大豆」を入れることもあります。
「医師が警告!「朝食を食べない人」が超危険な根拠」 ※外部サイトに遷移します
健康を守るために、朝食は必ずとりたいもの。簡単なものでいいので、不足しがちなビタミン、ミネラル、食物繊維、たんぱく質をとることを心がけたいものです。これらの栄養をすべて含む「大豆食品」は、朝食にもぴったりです。
「食物繊維」のほかにもさまざまな栄養を効率よく摂取できる「大豆」は、まさに「スーパーフード」。
今回紹介したように、「健康にやさしい食品」を簡単においしく食べられる工夫を、自分の生活に合った方法で実践してみてください。
そういった「日々の小さな心がけ」が「100年もつ心臓」をつくり、「人生100年時代」を健康で楽しむことにつながると私は医師として確信しています。
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提供元:食物繊維の「知られざる健康効果」と上手なとり方|東洋経済オンライン