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2023.06.07

【胃痛・胃もたれ】長引く・繰り返す根本原因3つ|重病「アラームサイン」があれば早めに受診を


胃もたれや胃痛、悩む人は少なくないようです(写真:プラナ/PIXTA)

胃もたれや胃痛、悩む人は少なくないようです(写真:プラナ/PIXTA)

「胃が痛い」「胃がもたれる」といった症状が続くと、食欲が出ないだけではなく、「がんではないか」と不安になる。市販の胃薬でよくなればいいが、やっかいな病気が潜んでいることもあり、注意が必要だ。また、長期間続く場合は、日本人の10人に1人はかかっていると言われる「機能性ディスペプシア」の可能性もある。
胃痛や胃もたれの原因、治療などについて、川崎医科大学 検査診断学(内視鏡・超音波)教授の眞部紀明医師に聞いた。

みぞおちのあたりがキリキリ差し込むように痛くなったり、若いころと違って食後に胃がもたれたり――。胃痛や胃もたれは誰もが経験する身近な症状なので、なかなか受診には結びつかない。どのような場合に受診したほうがいいのか。眞部医師はこう話す。

「胃痛や胃もたれに加えて、高齢である、体重が減った、便に血が混じる、黒い便が出る、貧血があるといった場合は受診を。これらの症状は“アラームサイン”と呼ばれ、胃がんや膵がん、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、膵炎、胆のう炎などの病気の可能性があります。血縁者に消化器系のがんにかかったことがある人がいる場合も、受診をおすすめします」

狭心症や心筋梗塞でも起こる胃痛

一方、60代以下で突然激しく胃が痛くなるような場合は、消化器系の病気以外も考えなければならない。「狭心症や心筋梗塞など循環器系の病気でも急性的な胃痛が起きることがあります」。

消化器の病気か循環器の病気か区別する方法として、以下を挙げる。

「消化器系の病気の場合は、食後など食事と関連して症状が出ることが多いのですが、循環器系の病気の場合は、運動時など体を動かしているタイミングで症状が出たり、同時に胸痛や左肩の痛みなどが出たりするのが特徴です」

また、症状が持続する場合では、糖尿病や甲状腺機能低下症など、消化器系以外の病気の可能性もある。こうした病気では、のどの渇きや頻尿(糖尿病)、疲労感やむくみ(甲状腺機能低下症)など、ほかの全身症状も出やすい。

病院の消化器科では問診で症状や病歴など、血液検査で貧血の有無などを確認するほか、腹部超音波(エコー)検査で胃の状態を診る。さらに前述したアラームサインがある場合は、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)を実施することもある。

眞部医師によると、以前は内視鏡検査をすると、胃潰瘍や十二指腸潰瘍など何かしらの病気が見つかる人が多かったが、近年その割合は大幅に減ってきているという。その大きな理由の1つが、ヘリコバクター・ピロリ菌(H.pylori)感染者の減少だ。

ピロリ菌は胃の中に棲みつく細菌で、過去、衛生環境が整備されていない時代に育った人ほど感染率が高く、現代は感染率が低下している。ピロリ菌に感染すると胃の粘膜が炎症を起こし、そのまま放置すると胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃がんなどを引き起こすことがある。

このため、ピロリ菌検査が陽性だった場合、飲み薬で除菌する(ピロリ菌関連記事:】胃がん原因の9割、感染ある人の特徴はこちら)。

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「よく『ストレスで胃に穴が開く』と言いますが、胃に穴が開く、つまり胃潰瘍の原因の多くはピロリ菌感染によるものです。ピロリ菌が胃の中に棲み続けることで、慢性的な炎症状態となり、ストレスなどの刺激で胃潰瘍となるのです」と眞部医師。

胃潰瘍や十二指腸潰瘍の減少によって相対的に増えているのが、「機能性ディスペプシア」だ。ディスペプシアはあまり耳慣れない言葉だが、「消化不良」を意味するギリシャ語が語源。2013年から健康保険による治療の対象となった比較的新しい病名だ。

働く世代に多い機能性ディスペプシア

機能性ディスペプシアは、検査で潰瘍などが見つからなかったにもかかわらず、慢性的に胃の痛みや胃もたれが続いている場合に診断される。従来こうしたケースは慢性胃炎とか、神経性胃炎と診断されてきたが、実は“内視鏡検査で確認できるような炎症は起きていない”ことが多かった。

機能性ディスペプシアは胃の症状で病院を受診した人のうち、約4~5割が当てはまるといわれるほど、患者数は多い。

機能性ディスペプシアの症状を引き起こす原因は主に3つある。それは胃腸の働きの低下、胃腸の知覚過敏、そしてストレスだ。胃腸の知覚過敏とは、胃酸などの刺激によって胃腸の症状が出やすくなっている状態をいう。

「どれか1つが原因となるわけではなく、この3つが関連しあって症状を引き起こすと考えられています。精神的、社会的ストレスが大きく関わるため、働き盛りの世代に多いという特徴があります」(眞部医師)

嫌なことがあったり、緊張する場面だったりで、胃が痛くなるという経験をした人は、少なくないはずだ。ではなぜストレスを感じると胃が痛くなるのだろうか。

「そこに出てくるキーワードは、“脳腸相関”です」と眞部医師は言う。

脳腸相関とは、胃腸と脳が相互に関連していることを示しているもので、脳が自律神経を介して、胃腸にストレスの刺激を伝えていると考えられている。その刺激によって胃腸の運動機能が低下したり、胃腸の知覚が過敏になったりする。

胃の痛みは知覚が過敏になっていることで、胃酸などに敏感に反応して起きていると考えられる。

また、機能性ディスペプシアは虐待など幼少期の成育環境が原因になるという報告もある。

では、胃痛や胃もたれが機能性ディスペプシアだった場合、どんな治療をすればよくなるのだろうか。

「最も大切なのは、生活習慣の改善です。とくに食生活の改善が重要で、それだけで症状がよくなる人もいます。あとで薬物治療についても触れますが、薬を飲んでも生活習慣を改善しなければ、効果は半減すると考えてください」(眞部医師)

胃が刺激に敏感な状態になっているので、食べ物を工夫することで、症状が和らぐ。脂肪分を多くとったり、食べ過ぎたりすると胃痛や胃もたれが出る人は、脂身の多い肉や揚げ物、炒め物、生クリームなどの高脂肪食を避ける、1回の食事量を少量にして分けて食べるといった対策が効果的だ。

ほかにも禁煙のほか、症状が強い場合は、胃酸の分泌を刺激するお酒やコーヒーを控える。

薬物治療では、まず消化管の動きをよくする消化管運動機能改善薬(アコチアミドなど)や、胃酸の分泌を抑える酸分泌抑制薬(プロトンポンプ阻害薬など)が使われる。

「胃痛がメインの場合は酸分泌薬を、胃もたれや早期飽満(ほうまん)感(食事をしてもすぐにお腹がいっぱいになる)がある場合は、消化管運動機能改善薬を使っていきます。やせ型の女性には、漢方薬の『六君子湯(りっくんしとう)』も適しています」(眞部医師)

1~2カ月服用して効果が見られなければ、抗不安薬や抗うつ薬、あるいはほかの漢方薬なども検討する。症状が改善されれば治療は終了となるが、機能性ディスペプシアは再発しやすいという報告もある。

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機能性ディスペプシアは放置しても、がんや潰瘍などを引き起こすようなことはないと考えられている。しかし、慢性的に症状があると生活の質が落ち、仕事を休まざるをえなくなることもある。食欲の低下で栄養が十分に摂れなければ、ほかの病気を引き起こす可能性もある。

市販の胃薬を使ってもいいか?

最後に、病院には行かず市販の胃薬で対応している人も多いだろう。そちらについても眞部医師に聞いた。

「胃痛や胃もたれについては市販薬も多く、それで症状が改善することもあります。市販薬を2、3回飲んで、その後症状が落ち着けばそれで問題ありません。薬をやめると症状が再び出る場合は、消化器科を受診することをおすすめします」(眞部医師)

(取材・文/中寺暁子)

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川崎医科大学 検査診断学(内視鏡・超音波)教授
眞部紀明医師

1993年、広島大学医学部医学科卒。2003年広島大学大学院修了。広島大学病院光学医療診療部などを経て、2018年から現職。日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医、日本消化管学会胃腸科専門医・胃腸科指導医、日本消化器がん検診学会認定医、日本超音波医学会専門医・指導医、日本ヘリコバクター学会H. pylori(ピロリ菌)感染症認定医。

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提供元:【胃痛・胃もたれ】長引く・繰り返す根本原因3つ|東洋経済オンライン

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