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2023.06.03

誤解だらけ?「フィンランド式サウナ」意外な真実|"ととのう"に縛られない!本場「サウナ活用法」


すっかりグローバルトレンドとなった「フィンランド・サウナ」。本場フィンランドでのサウナの常識を解説します(写真:RossHelen/PIXTA)

すっかりグローバルトレンドとなった「フィンランド・サウナ」。本場フィンランドでのサウナの常識を解説します(写真:RossHelen/PIXTA)

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サウナブームが日本を席巻しているのは、今や誰の目にも明らかだ。「サウナ本場の国」北欧フィンランドにあやかり、「フィンランド式サウナ」を謳うサウナ施設も次々につくられている。

だが、果たしてどれだけの日本人が、フィンランド・サウナ本来の特徴を正しく把握しているだろうか。というのも、筆者が住むフィンランドに無数にあるサウナ室と、日本でフィンランド式サウナを謳うサウナ室とでは、得てして環境も入浴法も別物なのだ。

「フィンランド・サウナ」を曲解しているのは、決して日本人だけではない。「今やサウナは世界全体で1700万もあると推定されるが、国外で『フィンランド・サウナ』を名乗るサウナのほとんどは、実際にフィンランドで体験できるサウナとは全く異なったものになってしまっている」と、話題の新刊『「最新医学エビデンス」と「最高の入浴法」がいっきにわかる!究極の「サウナフルネス」世界最高の教科書』の著者カリタ・ハルユ氏(サウナ・フロム・フィンランド協会会長)も憂いている。

では、本当のフィンランド・サウナ体験の「必須条件」とは何なのか?

同書の翻訳を手掛け、フィンランド在住のサウナ文化研究家・こばやし あやな氏が、サウナ室のつくりから入浴法まで、本場フィンランドでのサウナの常識を解説する。

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「焼け石に水」のロウリュは好きなだけ

フィンランド・サウナ体験の最たる特徴が、ストーブの上で温められた石に柄杓で水をかけ、噴き出す熱々の蒸気(=ロウリュ)を浴びる入浴法だ。

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つまり、素肌がロウリュによって心地よく刺激され、身体がじんわり温まるのを楽しむリラックス法こそが、元祖サウナ浴なのだ。

だから、たとえば、赤外線サウナを「サウナ」と認めたがらないフィンランド人も多い。

サウナの国の民たちは「ロウリュこそがサウナの魂そのもの」だと主張する。

ロウリュというメソッドは、日本のサウナ室でも近年よく模倣される。

しかしフィンランド人がそれらを体験すると、戸惑うことが多いようだ。

その理由は、大きく2つ。

「入浴者が自由にロウリュできない」のと、「サウナ室が高温低湿すぎて、ロウリュ本来の心地よさが楽しめない」点だ。

本場フィンランドのサウナ。天井の低さが印象的(写真提供:こばやし あやなさん)

本場フィンランドのサウナ。天井の低さが印象的(写真提供:こばやし あやなさん)

日本の多くの施設が導入する、定時に自動で水をストーブに散布する「オートロウリュ」は、フィンランドでは見かけない。

入浴者自身が好きなタイミングで打ち水をする、いわゆる「セルフロウリュ」が絶対なのだ。

「セルフじゃないロウリュがあるのか!?」

筆者知人のフィンランド人は、日本のサウナ施設でセルフロウリュといううたい文句を耳にし、「セルフじゃないロウリュがあるのか!?」と困惑していた。

打ち水のタイミングは、人によるが30秒〜1分に1回(柄杓2〜3杯)は普通。頻繁なロウリュの熱気でサウナ内の空気を潤しつつ、体感温度を上げるのだ。

30秒〜1分に1回(柄杓2〜3杯)の「セルフロウリュ」をするのが一般的(写真提供:こばやし あやなさん)

30秒〜1分に1回(柄杓2〜3杯)の「セルフロウリュ」をするのが一般的(写真提供:こばやし あやなさん)

ロウリュのたびにびっしりと水滴が全身にまとわりつき、灼熱から肌を優しく守る。この潤いとともに心地よく発汗できるのも、フィンランド・サウナが「天然のビューティーサロン」と呼ばれるゆえんだ。

ちなみに、サウナの中に極力人工的な要素を持ち込みたがらないフィンランド人は、ロウリュ水に垂らして香り付けする「サウナアロマ」もあまり使わない。

公衆サウナで見知らぬ人同士がサウナに居合わせるときは、「ロウリュしてもいいですか?」と周りに一声かけてから、誰かが自発的に水を打つ。

老舗サウナでは、自分が退出するときに、残った客のために水をかけてロウリュをプレゼントする人情文化も残っている。

「サウナが高温であればあるほど、その後の水風呂や外気浴が気持ちいい」というのが、多くの日本人サウナ愛好家が好むスタイルであろう。

しかし、高温なサウナ室でさらに焼け石に水をかけると、発生するロウリュはもはや心地よさを通り越し、刺激が強すぎて痛く不快なものに変わってしまう。

つまり本来、「日本人のサウナに対する趣向」と「ロウリュ・メソッド」はあまり相容れないのだ。

日本のサウナでは「深呼吸」ができない?

フィンランド・サウナの平均温度は60〜80度ほどで、入室した時点では、やや物足りなく感じるかもしれない。

それでも最上段ベンチに座ると、天井付近にとどまるパワフルな熱気に身が包まれる(フィンランドでサウナ室を設計する際には、ベンチ最上段の面がストーブの石の位置より高く、かつ天井から110センチの高さに来るのが理想とされている)。

フィンランドでサウナ室を設計する際には、ベンチ最上段の面がストーブの石の位置より高くなるのが理想とされている(写真提供:こばやし あやなさん)

フィンランドでサウナ室を設計する際には、ベンチ最上段の面がストーブの石の位置より高くなるのが理想とされている(写真提供:こばやし あやなさん)

そして先に述べたように、フィンランド人はその位置から驚くほどの頻度でロウリュを行ない、心地よく体感温度を上げる。

「サウナストーブのいちばんの役割は、サウナ室を温めることではなく、力強いロウリュを出し続けられるように石をしっかり温めることだ」とハルユ氏も指摘する。

また、フィンランドのサウナ室の扉の下には10センチ程度の隙間が必ずあり、そこから外気を取り入れて、サウナ室に新鮮な空気がめぐる通気設計になっている。

このおかげで、サウナにどれだけ長居しても息苦しいと感じることはまずない。

室内が熱くなりすぎて酸素不足だと感じるようになったら、しばし扉を全開にしてしっかり換気を行なうことも重要だ。

つねにフレッシュな空気の流れ込むサウナでは、おしゃべりも楽しめるし、深呼吸をしながらリラックスできる。それは我慢とは無縁の心地よさだ。

もしあなたが、日本のサウナでは目鼻や肌がヒリヒリし、呼吸がしづらくて苦手意識を感じているなら、ぜひとも低温高湿で新鮮な空気に満たされたロウリュ・サウナを現地で一度体験してほしい。

サウナの心地よさの概念が大きく変わることだろう。

日本のサウナ室内では、壁にかかる12分計や砂時計で、自分の滞在時間を計測したり目標を立てたりする人が少なくないだろう。

入浴時間の目安が気になるあまり、「フィンランド人は何分・何回くらいサウナに入るのか?」と質問してくる人も少なくない。

フィンランドのサウナには「時計」がない

ところが、この質問を投げかけてすぐに具体的な回答を返してくれるフィンランド人は、ほとんどいないかもしれない。

なぜなら、そもそもフィンランドのサウナに時計が存在しないからだ。

代わりに、「その人が、その日いたいだけサウナにいればそれでいい」というのが、多くのフィンランド人からもらえる本質的なベストアンサーであろう。

フィンランドのサウナには「時計」が存在しない。それは「1セット何分」という外的な指標に縛られることなく、「その人が、その日いたいだけサウナにいればいい」という考えが根付いているから(写真提供:こばやし あやなさん)

フィンランドのサウナには「時計」が存在しない。それは「1セット何分」という外的な指標に縛られることなく、「その人が、その日いたいだけサウナにいればいい」という考えが根付いているから(写真提供:こばやし あやなさん)

フィンランド人は、サウナ浴を楽しむ時間が外的な指標に縛られることを、とにかく好まない。

だからこそ、サウナ室内に時計は必要ないと思っているし、入浴時間はその日の自分の体調や調子、サウナの設定環境と相談して決める。

端的に言えば、「出たくなったら出る」を繰り返しているだけなのだ。

友人と一緒にサウナに入るときも、どれだけ話が弾んでいても出たいほうが突然勝手に出ていくし、そのとき自分がもっとサウナにいたければ、無理に追うこともしない。

ハルユ氏は、「サウナは目標を達成するための場所ではなく、その日その瞬間に身体が発するメッセージに耳を傾ける場所だ」と主張する。

確かに現代生活においては、心拍や睡眠の深度さえもスマートウォッチなどの出す数値データに依拠し、自分自身で身体の声を聴く機会や能力が損なわれてしまっているのかもしれない。

サウナ室こそ、忙しい毎日の中でしばし歩みを止めて、自分自身にじっくり向き合い、「調子はどう?」と直接尋ねてあげるのに最適な場所なのだ。

日本のサウナでも、たまには時計を見ることを放棄して、サウナの熱の中で、時間の経過とともに「自分の身体が何をどう感じているか」……ということだけに意識を集中させる時間をつくってみてはどうだろうか。

また、サウナ初体験の人は、初心者の反応を見ながらペースを合わせられる人と一緒にサウナに入るのが安心だろう。

日本人のサウナ愛好家が必ず実践するのが、「ととのう」という言葉が含有する快感を求めて、「サウナ→水風呂→外気浴」の順番で行き来する入浴法だ。

日本のサウナ室の横には、キンキンに冷えた地下水や冷却水を貯めた「水風呂」があるのが当たり前。

だから、フィンランドにサウナ旅に来た人はしばしば面食らってしまう。なぜなら、フィンランド・サウナのそばには「人工的な水風呂」がないのが普通だからだ。

たとえば、自宅のサウナに入るときは、サウナ室を出てからシャワーで軽く真水を浴びて、ベランダで涼む。あるいは冬場は、庭に積もった雪にダイブして身体を冷やすこともある。

また、もしサウナが湖畔や海岸にあるなら、その「天然の水風呂」に飛び込む人も少なくない。

たとえ真冬であっても、(サウナの有無にかかわらず)凍った湖に穴を開けて「アイスホールスイミング」を楽しむのも、フィンランド人のあいだで根強く人気のある健康法だ。

凍った湖に穴を開けて「アイスホールスイミング」を楽しむのも、フィンランド人のあいだで根強く人気のある健康法(写真提供:こばやし あやなさん)

凍った湖に穴を開けて「アイスホールスイミング」を楽しむのも、フィンランド人のあいだで根強く人気のある健康法(写真提供:こばやし あやなさん)

「ととのい」知らずのフィンランド人

ただし、フィンランド人はサウナのあとに水風呂に入水するプロセスを、必ずしも必要としていない。

つまり、高温サウナから低温の水風呂をハシゴすることで得られるとされる「ととのう」感覚は、フィンランド人にとってはピンとこないものなのだ。

とはいえ、彼らも、サウナの合間に必ず屋外に出て、しばし自然の風や冷気の心地よさに身を委ねる「外気浴」の時間は大事にする。

フィンランド人は、サウナの合間に必ず屋外に出て、しばし自然の風や冷気の心地よさに身を委ねる「外気浴」の時間を大事にする(写真提供:こばやし あやなさん)

フィンランド人は、サウナの合間に必ず屋外に出て、しばし自然の風や冷気の心地よさに身を委ねる「外気浴」の時間を大事にする(写真提供:こばやし あやなさん)

だが、フィンランド語に「ととのう」に相当するようなサウナの快楽を言い表す共通語はないし、それを必要ともしていないのだろう。

なぜなら、サウナの入浴時間やロウリュの頻度が人それぞれであるように、「サウナによって得られる心地よさもまた、人それぞれでいい」と考えているからだ。

フィンランド人が思い思いのスタイルでサウナを自由に楽しんでいる姿を見ると、われわれ日本人は、画一的なサウナの楽しみ方やそのためのマニュアルに縛られすぎているのかもしれない、と思えてくる。

「ととのう」ことにこだわりすぎて疲れている人は、一度固定観念を捨てて、フィンランド人のサウナの楽しみ方を手本にしてみてはどうだろうか。

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提供元:誤解だらけ?「フィンランド式サウナ」意外な真実|東洋経済オンライン

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