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2023.05.31

【胸やけ】デスクワークで姿勢悪い人を襲う不調|「お腹周りの脂肪」や「骨粗鬆症」もリスク因子に


胸がムカムカする胸やけ。脂っこい食事以外の原因で起こることもあるようです(写真:Xeno/PIXTA)

胸がムカムカする胸やけ。脂っこい食事以外の原因で起こることもあるようです(写真:Xeno/PIXTA)

胸のあたりが熱くしみるような感じがしたり、重苦しくなったりする胸やけ。同時に酸っぱいものがこみ上げてくるような症状が出ることも。高齢者に多い症状といわれるが、40~50代でも見られるため、「食道がんでは?」と心配になる人もいるかもしれない。
胸やけを起こしやすいタイプや日常生活での対処法、治療などについて、川崎医科大学 検査診断学(内視鏡・超音波)教授の眞部紀明医師に聞いた。

胸やけとは、みぞおちのあたりから胸の中心付近にかけて起こる、やけるような感じや痛み、不快感をいう。眞部医師は、「脂っこいものや刺激物を食べ過ぎたときに一時的に起こることがありますが、時間の経過とともに治まれば、問題はありません」と言う。

一方、数週間以上症状が続く場合は、何らかの病気が考えられる。

胸やけがあるときにまず考えられる病気が、胃酸や胃の内容物が食道に逆流することで起こる「胃食道逆流症」だ。胸やけのほか、酸っぱい液体がこみ上げてくる「呑酸(どんさん)」も起きやすい。

通常、胃と食道のつなぎ目には下部食道括約筋という筋肉があり、その働きで胃酸は食道に逆流しない仕組みになっている。たとえ逆流したとしても、食道の蠕動運動(ぜんどううんどう:伸びたり縮んだりして食べ物や飲み物を食道から胃に送る動き)によって、すぐに胃に戻る。

40~50代の男性と高齢女性に多い

こうした逆流を防止する機能がうまく働かないのが、胃食道逆流症だ。患者数は増加傾向にあり、成人の10~20%は発症していると推測されている(『胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2021』より)。眞部医師によると、なかでも多いのが「40~50代の男性と高齢者、とくに女性」だそう。

男性の場合は食事の乱れが大きな要因で、肥満も関係する。これについては後述する。「一方、高齢者では加齢で食道の運動機能が低下する方もおり、逆流しやすくなるといわれています。また、高齢女性に多い骨粗鬆症になると、背中が丸くなって胃が圧迫されるため、逆流しやすくなります」と眞部医師。

この場合、「食道裂孔(れっこう)ヘルニア』といって、胃と食道のつなぎ目が上にせり上がった状態になり、下部食道括約筋がうまく働かなくなっていることもあるという。

しかし、なぜ食事の乱れが胸やけの原因になるのか。眞部医師の解説によるとこうだ。

高脂肪食は消化が悪いため、胃酸の分泌が増え、胃に長くとどまりやすい。その結果、胃酸の逆流が起こりやすくなる。また、寝る前に食事をすると、胃の中に食べ物がある状態、つまり胃酸が分泌している状態で横になるため、物理的に逆流が起こりやすい。

肥満の人はこうした食生活の乱れに加えて、お腹周りの脂肪によって胃が圧迫されやすい状態になっていることも原因となっている。

症状が軽く、食生活や肥満が原因となっている場合は、食生活の改善や減量でよくなることもある。ポイントは以下の3つだ。

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寝るときには枕を少し高くすると、逆流を予防できるといわれている。また、日ごろの姿勢も意識したい。

前屈みの姿勢で悪化することも

「農業を営む方で、毎年田植えの時期になると、胸やけがひどくなるという患者さんがいらっしゃいます。前かがみの姿勢が胃を圧迫し、症状を悪化させていました。長時間デスクワークをしている場合も背中が丸くなりやすく、胸やけを引き起こす可能性があるので、姿勢を正すことを意識してほしいと思います」(眞部医師)

胃酸の逆流は、胸やけだけではなく、食道炎を引き起こすことがある。

胃酸は食べ物の消化を助けるほか、呑み込んだ細菌やウイルスなども殺すため、酸性が強い。胃の粘膜は影響を受けないように粘液によって守られているが、食道はそうした仕組みがない。このため、食道に胃酸が逆流すると食道の粘膜が傷つき、それが続くと粘膜がただれて食道炎を起こすというわけだ。

胃食道逆流症のうち食道炎がある場合は「逆流性食道炎」とも呼ばれる。

食道炎を放置すると食道が狭くなったり、粘膜が変性する「バレット食道」になったりする危険性がある。バレット食道は、食道がん(腺がん)のリスクになるといわれる。日本人にはまれだが、男性、喫煙習慣、肥満がリスク因子になるとの報告がある。

食道炎があるかどうかを確認するには、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)が必要だが、胸やけで受診しても問診と薬の処方で終わり、内視鏡検査までしてもらえるケースは少ない。

「高齢者のほか、体重が急に減った、食べ物が詰まる感じがする、便に血が混じる、黒い便が出る、貧血といった症状は、“アラームサイン”といって、食道がんや胃がんのサインでもあります。こういうケースでは、ほかの重大な病気の有無を確認するためにも、内視鏡検査を受けたほうがいいでしょう」(眞部医師)

ほかにも、狭心症や心筋梗塞などの循環器系の病気では、胸やけなどの症状が出ることもあるので注意が必要だという。

一方、胸やけで受診して胃食道逆流症と診断された場合、前述した日常生活の改善と、胃酸の分泌を抑える「プロトンポンプ阻害薬」の服用が基本的な治療となる。症状が強い場合は、より強く胃酸の分泌を抑える「カリウムイオン競合型アシッドブロッカー」を使用することもある。

「原因が胃酸の逆流であれば、これらの治療で8~9割の人に効果が出ます。服用して2~3日後にある程度症状が軽減し、2週間~1カ月で症状はなくなります。軽症の場合は一度服用をやめ、再び症状が出たときだけ服用を再開しますが、重症の場合は炎症を抑えた状態を維持するために、症状がなくなってからもしばらく薬を服用してもらいます」(眞部医師)

薬を服用しても症状が改善しない場合は、胃酸の逆流以外が原因となっている可能性が高い。「効果がないのに薬を服用していても副作用が出るだけです。詳しい検査を受けることをおすすめします」と眞部医師は言う。

なお、胸やけが軽い場合は、胃酸の分泌を抑える市販薬でも効果があるとのこと。いくつか種類があるので、薬を選ぶときは薬局やドラッグストアの薬剤師に相談するといいだろう。

胃酸と関係なく起こる胸やけも

胃酸の逆流が原因ではない胸やけとして、近年注目されているのが「機能性胸やけ」だ。

「24時間食道インピーダンスpHモニタリング検査」といって、胃酸の逆流の有無や程度を評価する検査方法が開発されたことで、胃酸の逆流がなくても胸やけが起こることがわかってきた。

鼻からチューブを入れて先端部を食道に留置し、24時間のpH(酸性、アルカリ性の程度を示す値)の変動を記録する。チューブの挿入時だけ軽い痛みや違和感が出ることがあるが、その後は小型の測定器を携帯して、食べる寝るなどの普通の生活ができる。

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「機能性胸やけは、空気の逆流や食道のけいれん、知覚過敏などが関連し、ストレスなど精神面の影響も大きいと考えられています。治療は確立されていませんが、抗不安薬や抗うつ薬でよくなることもあります」(眞部医師)

食道pHモニタリング検査はどの医療機関でもできる検査ではない。胃食道逆流症の治療を受けても効果がない場合は、食道pHモニタリング検査ができる消化器内科や内科、消化器科を受診してほしい。

(取材・文/中寺暁子)

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川崎医科大学 検査診断学(内視鏡・超音波)教授
眞部紀明医師

1993年、広島大学医学部医学科卒。2003年広島大学大学院修了。広島大学病院光学医療診療部などを経て、2018年から現職。日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医、日本消化管学会胃腸科専門医・胃腸科指導医、日本消化器がん検診学会認定医、日本超音波医学会専門医・指導医、日本ヘリコバクター学会H. pylori(ピロリ菌)感染症認定医。

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提供元: 【胸やけ】デスクワークで姿勢悪い人を襲う不調|東洋経済オンライン

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