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2023.05.20

腰痛で悩む人が知らない「痛みを防ぐ体の使い方」|柔軟性を高めておきたいのは「腰」ではなかった


日本人の3割が悩んでいる腰痛。予防や痛みを軽くする体の使い方、ストレッチを紹介します(写真:buritora/PIXTA)

日本人の3割が悩んでいる腰痛。予防や痛みを軽くする体の使い方、ストレッチを紹介します(写真:buritora/PIXTA)

テレビや雑誌などのメディアで健康情報を発信するトレーナーの坂詰真二さんが、疲れない体、引き締まった体、自信がもてる体をつくるメソッドを伝授する本シリーズ。今回のテーマは体の不調を和らげて、コンディションを整えるトレーニングの2回目、「腰痛を予防、軽減する」です。

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日本人の3割が抱えているともいわれる腰痛 。その原因にはさまざまなものがありますが、原因となる疾患が画像診断などで特定される割合は何%程度でしょうか?

A 85%程度

B 50%程度

C 15%程度

原因が特定できない腰痛もある

正解はCの15%です。

病院で行われるCT(コンピュータ断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像診断装置)、X線などの画像検査で、背骨の変形や神経の圧迫などの問題が認められるもの、あるいは内臓の疾患などによって痛みが発生しているものは、「特異的腰痛」 と呼ばれます。それ以外の、原因がハッキリと特定できないものを「非特異的腰痛」といいます。

医学雑誌『JAMA』に掲載された研究によると、特異的腰痛は全体のわずか15%にすぎず、非特異的腰痛が85%を占めるといわれています。

What can the history and physical examination tell us about low back pain? JAMA 268: 760-765, 1992

What can the history and physical examination tell us about low back pain? JAMA 268: 760-765, 1992

少し古いデータになりますが、日本整形外科学会の「腰痛に関する全国調査」(平成15年)によると、日本で腰痛の症状を有する人は3000万人いると推計されています。また、厚生労働省が実施した「平成28年 国民生活基礎調査」のなかの「病気や怪我の自覚症状」という項目において、男性では1位が腰痛、女性では2位に腰痛が挙げられていました。

このように腰痛を抱える人が多い最大の原因は、私たちが2足でまっすぐ立っているからと考えられています。

私たちの体を横から見ると、支柱である背骨は上半身の重心位置よりも後方(背中側)にあるため、腹部と胸部の重量によって常に背骨は前方に引っ張られる形になっています。立っていても座っていても、ふと眠りそうになったときに、上半身が大抵、後方ではなく前方に倒れてしまうのはこのためです。

その背骨を真っすぐに立てる役割をしているのが、上半身の後方にある強力な背筋群(脊柱起立筋、横突棘筋:おうとつきょくきん、腰方形筋など)です。背筋群は体を横にしていない限り、常に一定の力を出して背骨を支えなければならないため、疲労を起こしやすいのです。

さらに、2足で立つことによって、筋肉だけでなく腰椎や、腰椎と腰椎の間にあるクッションである椎間板の負担も大きくなります。

ギックリ腰や腰部の骨折などで歩くどころか立つこともままならない場合でも、腕と脚で体を支えて四つ這いになれば、移動ができます。このことから、四足歩行動物の腰の負担は、ヒトに比べて極めて小さいことがわかります。私たちは二足歩行と引き換えに腰痛のリスクを負ってしまったといっても過言ではないのです。

腰に負担をかけないための方策

腰痛が宿命だからといって、「あっても仕方ない」とあきらめる必要はありません。日常生活で少し気をつけることで、腰痛を軽減したり予防したりすることは可能です。

まず、立っているときはできるだけ背すじを伸ばして、上半身を床と垂直に保つよう心がけましょう。

スウェーデンの整形外科医アルフ・ナッケムソンは、椎間板(第3腰椎と第4腰椎の間の椎間板)にかかる圧力を測定することで、姿勢によって腰にかかる負担を数値化しました。すると、立った姿勢のときに椎間板にかかる圧力を100とすると、背中を丸めて前傾したときの負担は1.5倍にもなっていました。

前傾して荷物を持った場合、腰の負担は2~2.5倍に跳ね上がります。下にある物を持ち上げようとした拍子にギックリ腰になりやすいのは、このためです。

荷物を持ち上げる場合は、背すじを伸ばしてできるだけ上半身は床と垂直に保ち、膝と股関節の曲げ伸ばし、つまり下半身の筋肉を使って起き上がりましょう。こうすれば椎間板だけでなく、腰の筋肉の出力も最小限に抑えることができます。

また立った姿勢で荷物を持ち歩く際には、支点となる脊柱と力点となる荷物の距離を近づけるため、体に密着させておくことも大切です。

料理をする、洗濯物を干す、掃除機をかけるといった家事をする際には、どうしても前かがみになりがちです。このようなときは足を前後に開いてできるだけ上半身を横に向けると、腰の負担は軽減されます。こうすると上半身を支えるときに腹筋群も働くため、背筋群の出力が半分近くまで減るのです。

椎間板にかかる圧力は仰向けに寝ることで4分の1ぐらいに軽減しますから、立ち仕事をしている人は休憩時間にはイスに深く座って背もたれを倒し、足を台の上に乗せ、仰向け姿勢に近づけて休むようにしてください。

座り方にも注意が必要です。

現在は、仕事でも移動でもくつろいでいるときでもイスに座る時間が極端に長くなっていますから、座り姿勢にも注意が必要です。普通にイスに座ると、椎間板にかかる圧力は5割増しになります。

腰の負担を最も減らすには、イスに深く座って、背もたれに寄り掛かって上半身の重さを預けることです。ただし、この座り方だと作業を行いにくいのが難点です。パソコン操作などをする際には、イスに浅く座って足を手前に引き、膝を股関節よりも下げ、背骨を床と垂直に保ちます。こうすると骨盤と背骨のポジションは立った姿勢に近づくので、腰の負担は同程度まで下がります。

ナッケムソン(スウェーデン)のデータを基に筆者作成

ナッケムソン(スウェーデン)のデータを基に筆者作成

股関節の柔軟性が大事な理由

もっと積極的に腰の負担を減らす方法があります。それは股関節を柔らかくすることです。

立った姿勢でも座った姿勢でも前傾姿勢をとる際に、股関節を動かさずに背骨を基点に体を曲げようとするから腰に大きな負担がかかります。背骨を真っすぐにしたまま、股関節を基点にして前傾をとれば、腰の負担は立ち姿勢とほとんど変わらなくなります。

プロゴルファーが片足を上げながら、背すじを伸ばして前傾してカップのボールを拾い上げるのは、カップに近づかないというマナーへの配慮もありますが、動きの軸を股関節にすることで腰への負担を減らしているのです。

股関節をしっかり曲げるためには、お尻にある大殿筋と太ももの裏側にあるハムストリングスという筋肉を柔らかくするストレッチが必要です。本稿の最後にイスに座ったままできるストレッチを紹介しますので、股関節を柔らかくして体の基点を股関節に移していきましょう。少しずつ腰の負担が減ってくるのを感じることができるはずです。

立った姿勢にしても前傾にしても、常に背骨を真っすぐに保つことは大切ですが、その姿勢を保つと背骨を支える腰の筋肉が緊張し続けて血行が滞り、疲労物質が蓄積して、やはり腰の疲労と痛みを引き起こしやすくなってしまいます。

このとき、腰の筋肉を伸ばして緊張をリセットするストレッチが有効なのですが、ここで1つ問題があります。腰の筋肉を伸ばすには背中を丸める必要がありますが、腰痛を持つ人のなかには、このポジションを取ると痛みが増強しやすい人が多いのです。この場合は、背骨を横に曲げることで腰を伸ばす方法がお勧めです。こちらも後ほど紹介します。

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腰痛に限りませんが、体の痛みにはストレスも大きく関係しています。強いストレスを感じる人ほど痛みの感じ方も大きくなる傾向があります。

ストレッチは局所的に筋肉をリラックスさせるだけでなく、ストレスを和らげる働きもありますので、今回紹介するストレッチをできるだけ頻繁に行うようにしましょう。

腰痛予防のストレッチ2種類

今回は股関節の柔軟性を高めるストレッチと、腰の緊張をほぐすストレッチを紹介します。まずは試してみて、腰などの痛みが強まる場合は、このストレッチは行わないでください。

■お尻ともも裏の柔軟性を高めるストレッチ

(1)安定したイスに浅く座り、一方の足を前に出して足首を曲げ、膝を軽く曲げる。背すじを伸ばして両手を太ももの上に置く
(2)両手を少しずつ前に移動させながら、背すじを伸ばしたままお尻を突き出すように前傾する。お尻と太もも裏に適度な張りを感じる位置で手を止め、ゆっくりと呼吸をしながら10秒キープする。左右の足を入れ替えて同様に行い、これを左右交互に各3セット行う
※背中が丸まると、お尻と太もも裏が伸びなくなるので注意

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■腰の緊張を和らげるストレッチ

(1)安定したイスに浅く座って足 を大きく開き、背すじを伸ばして手を膝側に近い太ももの上において肘を伸ばす
(2)一方の肘を曲げて太ももに乗せ、もう一方の手を膝を押しながら、脇腹を伸ばすように上体を横に倒す。腰に適度な張りを感じる位置で、ゆっくり呼吸をしながら10秒キープする。元の体勢に戻ってから逆側も同様に行い、これを左右交互に各3セット行う
※上半身を真っすぐに伸ばしたまま横に傾けても腰は伸びないので注意

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提供元:腰痛で悩む人が知らない「痛みを防ぐ体の使い方」|東洋経済オンライン

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