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2023.05.18

「運動してダイエット」が見落とす"不都合な真実"|その反動で食欲が増し太ってしまうこともある


運動の反動で食欲が増すことも!?結局「正しいダイエット」とは何なのでしょうか(写真:mits/PIXTA)

運動の反動で食欲が増すことも!?結局「正しいダイエット」とは何なのでしょうか(写真:mits/PIXTA)

日々の疲れや身体の不調、どうすれば回復できるのか知りたくても、世の中には情報がありすぎて、何を見たらいいのかわからなくなってしまいます。そこで、疲労についての研究と、都内で疲労と睡眠に特化したクリニックの運営を行う医師の梶本修身氏が、100 冊の健康書のなかから「すごい回復法」を厳選した『疲労回復の専門医が選ぶ健康本ベストセラー100冊「すごい回復」を1冊にまとめた本』(ワニブックス)を上梓。疲労回復や疲れにくい体づくりのメソッドを伝えています。

本稿では、疲労にも不健康にもつながる肥満を解消するための「正しいダイエット」について、同書より一部抜粋、編集のうえお届けします。

『疲労回復の専門医が選ぶ健康本ベストセラー100冊「すごい回復」を1冊にまとめた本』 クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

前回記事:「間食をしない人」はやせられない"超盲点な真実" ※外部サイトに遷移します

冷たい水を飲むだけでやせる?

1日2リットルの冷たい水を飲むだけで66キロカロリーを消費できる。知っていましたか? 冷蔵庫の温度と同じ4℃の水を飲めば、お腹のなかで体温と同程度にまで温まります。人間がポットになってせっせと温めているわけです。そのときにエネルギーが使われるということ。

ここでちょっと待ってください。「だから、温かい水よりも冷たい水を飲んだほうがお得ですよ」とはいえません。確かに、水を飲むだけでエネルギーを消費できるのはお得です。でも、冷たい水は交感神経を刺激しますから、健康にいいとはいえません。目先のメリットだけではなく、トータルで考えると、導き出される答えはちょっと変わってくるのです。

ダイエットのメソッドについても、そういう視点で見極める必要があります。

「ダイエットしよう!」と思い立ったとき、まず考えるのは食事を減らすことでしょうか。食べる量を減らせばやせる。それは事実です。

でも、現実はというと、その考え方では失敗する、と『運動指導者が断言! ダイエットは運動1割、食事9割』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者で、フィットネストレーナーとして多くの人にダイエット指導をしてきた森拓郎さんはいいます。

タイトルのとおり「あなたがもし太っているなら、その原因は、食生活であることがほとんど」と指摘しつつも、ただ食べる量を減らしてもうまくいかない、と。なぜでしょうか。

食べる量を減らせばお腹が空くので、間食に手が伸びます。また、ダイエット中の人の食生活でありがちなのが、「朝はドーナツ1つだけ」「ご飯を食べると太るから軽いパンを食べている」など、食べる量自体は減らしていても、太りやすい食べ物を食べているパターンなのだそう。それでは結局やせるのは難しい。

1日3食しっかりバランスのよい食事をとったほうが腹持ちがよく、消化吸収もよくて内臓にも負担をかけないのでラクにやせられるというのが森拓郎さんの答えです。

なおかつ、食事を減らしていったんは体重が減ったとして、「その生活を一生続けられますか?」と問いかけます。

太る傾向のある人、リバウンドしやすい人は「ダイエットに成功したら、また前のように好きなだけ食べられる」と勘違いしている、と。1年かけてつくった体は1年以上キープして初めて「成功」といえるのであって、続かないダイエット法はムダと言い切ります。

腹筋ではお腹周りの脂肪は落ちない

循環器内科医の池谷敏郎先生も『内臓脂肪を落とす最強メソッド』(東洋経済新報社)で、食事を抜くダイエットでは内臓脂肪は減らない、むしろ増える恐れもあると指摘しています。

極端に食事を減らすと、脂肪と一緒に筋肉も落ちてしまいます。すると食事制限をやめたときに、筋肉の減ってしまったところに脂肪がつきます。

『内臓脂肪を落とす最強メソッド』より

内臓脂肪はお腹周りにつく脂肪で、内臓脂肪が増えると高血糖、糖尿病、高血圧などの生活習慣病を引き起こしやすくなるのです。

さらに、筋肉がなくて脂肪ばかりがついた状態は「サルコペニア肥満」と呼ばれ、そのリスクについても警鐘を鳴らします。通常の肥満よりも生活習慣病になる可能性が高く、なおかつ、筋肉が減ることで運動機能が低下し、将来的に寝たきりや要介護になるリスクも高まってしまう、と。

こう聞くと、「高齢者の話?」と思うかもしれませんが、池谷敏郎先生は、無理なダイエットを行った結果、肥満体には見えなくてもぷよぷよの体を持った「サルコペニア肥満」になるケースが増えている、と語ります。

つまり、脂肪を落とすにしても、筋肉は残したままでなければ「やせたけど健康ではない」状態になってしまうのです。こうしたパターンは男性でも多々あります。

では、「腹筋をすればいいの?」と思うかもしれません。これもほぼ間違い、と池谷敏郎先生。ひざを固定して頭の後ろで腕を組み上半身を起こす、いわゆる腹筋運動は、内臓脂肪を落とす効果はほとんど期待できず、主に太ももが鍛えられるだけで腹筋もつきにくい、とのこと。 

とはいえ、運動の効果を否定しているわけではありません。内臓脂肪を落とす方法としては食事が9割だけれど、健康的でメリハリのある体をつくる最後の仕上げとして運動も取り入れたほうがいいというのが池谷敏郎先生の考えです。

運動の反動で食欲が増すことも

ダイエットは食事が9割という点は、森拓郎さんも池谷敏郎先生も共通です。30分ランニングをしても、消費するエネルギーは200キロカロリーほど。つまりは、おにぎり1個分程度です。食べたぶんを運動で帳消しにすることはまず不可能ですから、運動でやせるという作戦はほぼ無理です。

実は、水泳は逆効果で、むしろ食事量が増えることが多いという研究結果もあります。水泳は全身運動で、しかも冷たい水に浸かるので、それだけでもかなりのエネルギーを消費します。冷たい水を飲むと、温めるためにエネルギーを使うのと同じですね。だからこそ、水泳はやせるはずですが、現実は、急激にエネルギーを消耗するからこそ、その反動で食欲が増して食べてしまう。それが人間なのです。

そこで、食事にフォーカスしたダイエットを提唱しているのが、女性専門パーソナルトレーナーの石本哲郎さんの『筋トレなし、食べてやせる! 神やせ7日間ダイエット』(KADOKAWA)。

食事、筋トレ、有酸素運動の3つをセットで行えば、最も効率よくダイエットができると前置きしたうえで、ただ、筋トレや有酸素運動などのトレーニングを指導してもあまり体が変わらない女性もいる、と語ります。

そもそも筋トレは、筋肉に強烈な刺激を与えることで体が変わっていくもの。しかし、それにともなった食事管理ができていないと、筋トレをがんばっても、望んでいたようなボディメイクができないどころか、体調を崩して、むしろマイナスになる方も少なくありません。

『筋トレなし、食べてやせる!  神やせ7日間ダイエット』より

この本で提案しているのは、1日3食の2パターンの固定メニュー。ストレスなく続けられるように1日3食しっかり食べることが大前提で、そのほうがリバウンドしにくいと石本哲郎さんはいいます。

3食の具体的な中身まではここでは紹介できませんが、鍵を握るのが、タンパク質・糖質・脂質の三大栄養素のとり方です。まずタンパク質は筋肉を落ちにくくするために欠かせません。ただ、多すぎると腸内環境が悪くなるので、1食20~30gを目安にしているとのこと。

糖質はとりすぎると脂肪としてたくわえられる一方で、エネルギー源の糖質が補給されなければ、体を動かすパワーがなくなり、代謝が落ちてしまう。「糖質摂取のコツは、いつとるかのタイミング」と、朝食と昼食では糖質をしっかりとり、夕食ではカットするプランになっています。

最後の脂質は「質がすべて」と石本さん。ムダな脂質は除いてDHA・EPAなどの良質な脂質をとることが大切といいます。

本能に反しているから続かない

『医者が教えるダイエット 最強の教科書』(ダイヤモンド社)の著者、医師の牧田善二先生が正しいダイエットの一歩目として挙げるのは「1日に摂取している糖質量を知る」こと。実際、現代社会では糖質過多になりやすいもの。その理由を、「脳が糖質中毒に冒されているから」と次のように説明します。

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『疲労回復の専門医が選ぶ健康本ベストセラー100冊「すごい回復」を1冊にまとめた本』(ワニブックス) クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

私たちはエネルギー源として糖質を使っているので、生まれながらにして「糖質を摂取するように」プログラミングされている。

だから糖質をとらないでいると血糖値が下がってイライラし、猛烈に糖質を食べたくなる。そして食べれば脳の「報酬系」が働き、ドーパミンが出て幸せを感じる。そうやって人類は命をつないできたものの、現代社会は、いくらでも糖質をとれる状態にあり、しかもほかの食品に比べて安い。結果、糖質中毒に陥りやすい条件がそろってしまっている。

この糖質中毒から脱してリバウンドしない体を手に入れるにはどうしたらいいのか。そのコツがまとめられています。

そもそも食べることは人間の本能。一方で、食べる量を減らすことは本能に入っていないので、ダイエットはなかなか続かないのです。「やせたい」という願望は今でこそ多くの人が共通して抱いている思いですが、ここ数十年の間に後天的に考えるようになった、人間の本能に反したこと。

だからこそ「続けにくいんだ」と理解したうえで、自分にできそうなこと、続けられそうなことからやってみましょう。

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提供元:「運動してダイエット」が見落とす"不都合な真実"|東洋経済オンライン

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