2023.04.11
【捻挫】実は勘違いも多い!湿布の正しい使い方|足首のひねり「クセになりやすい人」の特徴は?
身近なケガの1つ、捻挫。症状や応急処置の方法、骨折との違いについて解説します(写真:jayzynism/PIXTA)
足首をグキッとひねったと思ったら、みるみる腫れて痛くなってきて……。こうした場合にまず疑われるのが、捻挫(ねんざ)だ。骨が折れていないことがわかると「捻挫でよかった」と安心して軽視してしまいがちだが、重症になるとなかなか痛みがとれなかったり、捻挫を繰り返したりすることもある。
捻挫の応急処置や受診の目安、治療について、帝京大学医学部整形外科学講座講師の松井健太郎医師に聞いた。
捻挫とは、関節をひねったことで起きるケガをいう。足首、ひざ、手首、肩、首など関節であればどこでも起きる可能性がある。車の追突事故などで起きやすいむち打ちも「頸椎(けいつい)捻挫」といって、捻挫に含まれる。
関節の中でとくに捻挫をしやすいのが、足首だ。骨同士をつなぎ、関節を支えている靭帯が損傷しやすいという。
ジャンプして着地したときなど、運動中に起きることが多いが、ヒールが高い靴を履いているときや、段差を踏み外したときなど、日常生活でも起こる。体重を支える足首は、直角になっているときは安定しやすいが、ハイヒールなどを履いて足の甲とすね部分の角度が広がると緩みやすく、不安定になってひねりやすいためだ。
とくに足首が硬い人(柔軟性がない人)は、捻挫しやすいといわれている。
さらにいうと、足首は内側にひねりやすい。骨格の構造上、足裏が内側を向くようにひねりやすいためで、外側の靭帯は内側と比べて全体的に弱いという性質もある。
そして、足首を内側にひねったときに損傷するのは、たいてい外側の靭帯だ。足首を内側に倒したときに支えているのが、外側の靭帯だからだ。足首外側にある靭帯の中でもとくに捻挫で損傷しやすいのが、脛骨(すねの骨)の外側にある腓骨(ひこつ:外くるぶしの骨)と足首の下部分にある距骨(きょこつ)をつなぐ「前距腓(ぜんきょひ)靭帯」だという。
捻挫の重症度は3段階
捻挫の重症度は、靭帯の損傷の程度によって以下の3段階に分けられる。
・靭帯が伸びている状態
・部分的に切れている状態
・完全に断裂している状態
主な症状は痛みと腫れで、内出血が生じることもある。損傷の程度が重いほど、症状も強く出る傾向がある。とはいえ靱帯はたとえ切れていても、普通に歩けることが多い。ちなみに、前距腓靭帯が損傷した場合は、外くるぶしの前側や下側に症状が出る。
痛みや腫れがあり、捻挫が疑われたら、まずどうすればいいのか。
「最も大事なのが、冷やして血管を収縮させて腫れを抑えたり、痛みの感覚を軽減させたりすることです」
「市販の湿布薬を貼るとひんやりした感触があるので、“冷やしている”と思われる方がいるのですが、それは誤解です。湿布は冷やすためではなく、炎症をとって痛みを抑えることを目的に使用するものです。まずは保冷剤などでしっかり冷やすようにしましょう」
と松井医師。保冷剤は長時間あてると凍傷のリスクがあるため、数十分冷やして皮膚の感覚がなくなってきたらいったん休み、熱感や痛みが出てきたら、再び冷やすというサイクルを繰り返す。また、患部を心臓よりも高い位置に保つと腫れがやわらぎやすい。
靭帯が伸びているだけ、あるいは部分的に切れているだけの軽症であれば、こうした応急処置をしつつ、2、3日様子を見る。それだけで症状が治まって日常生活にも支障がなくなり、靭帯も元通りになることが多い。
骨折との違い・判別は?
とはいえ、痛みや腫れの症状は、骨折でも起きる。
一般的に骨折は“歩けないほどの痛み”を伴いやすいが、骨がほとんどずれていない場合などは必ずしもそうではないので、判別してもらうためにも、念のため整形外科を受診したほうがいいだろう。
一方、靭帯が完全に切れていたら、医療機関での治療が必要となる。
捻挫の疑いで整形外科を受診すると、まずは骨が折れていないかどうかをレントゲン(X線)検査で確認する。しかし、レントゲンには骨しか写らないため、靭帯の状態まではわからない。
そこで近年普及しつつあるのが、超音波(エコー)検査だ。靭帯のほか、レントゲンに写らない程度の小さな骨折も確認できる。ただ超音波検査はまだ新しく、どの整形外科でも行っているわけではない。できないときは自覚症状や、ケガをしたときの状況を確認するなどの問診、触診などで診断していく。
捻挫の治療の基本は、ギプスやサポーターなどで患部を固定する保存療法だ。2~3週間程度固定して、症状がある程度治まってきたら、少しずつ動かしていく。
このとき、完治しないうちに捻挫をした場所に負荷をかけてしまうと、靱帯がゆるいままになってしまうため、捻挫を繰り返す要因になりやすいので注意が必要だ。
捻挫を繰り返す人のなかには、歩くときに足をかばうクセがついてしまう人もいる。“将来的に膝痛や腰痛、股関節の痛みなどにもつながる”ので、やはりしっかり治しておくことが大事だといえる。
捻挫予防のための生活の工夫や、予防法などについては、診てもらっている医師や理学療法士に聞いてみるといいだろう。
保存療法をして2〜3カ月経っても痛みが続いていたり、足首がガクガクしてゆるいような感覚があったりしたら、別の治療が必要になることもあると松井医師。
「靭帯が断裂したままであったり、捻挫を起こした結果、軟骨も損傷していたりする可能性があります。このようなときはMRI(磁気共鳴画像)検査で、より詳しく靭帯や軟骨の状態を確認し、場合によっては手術を検討します」
一般的に捻挫で手術をするケースは少なく、関節が不安定で捻挫を繰り返しやすく困っているケースや、痛みが続いて日常生活に支障が出ているケースのほか、スポーツ選手でパフォーマンスに影響が出ているケースなどに限られる。
捻挫の最新治療とは?
靭帯が切れている場合は、切れている部分をつなぎ合わせる再建手術を行う。捻挫をしてから時間が経っていて、靭帯の断端が縮んでいるような状態であれば、ひざ関節などにある靭帯を移植する手術が行われる。
近年、靭帯の再建手術は、関節鏡(内視鏡)を用いることが多い。先端に拡大視できるカメラがついた内視鏡を関節内に挿入して操作する。
従来は皮膚を3cm程度切開する必要があったが、関節鏡を使用するときは0.5cm程度の小さな穴を数カ所開けるだけでできるので、傷が小さく、回復が早くなる。さらに拡大視によるメリットも大きい。
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「関節鏡を使うと足首の内部の様子を詳しく見ることができ、MRI検査でも映らなかった靭帯や軟骨の状態がわかります。また、繰り返し炎症を起こすと滑膜(かつまく)という組織が増殖して、それが痛みの原因になることがあるのですが、関節鏡ではそれを除去できるというメリットもあります」(松井医師)
整形外科は捻挫や骨折などの外傷のほか、関節リウマチや骨粗鬆症、変形性股(膝)関節症など、幅広い運動器の疾患を診ている。
体の部位によっても「脊椎外科」「手の外科」「肩関節外科」「股関節外科」など多数の専門分野があるので、足首の捻挫は、「足の外科」を専門としている施設や医師のもとで手術を受けたほうがいいだろう。
(取材・文/中寺暁子)
帝京大学医学部整形外科学講座講師
松井健太郎医師
2003年、京都府立医科大学卒。筑波メディカルセンター病院、聖マリアンナ医科大学救急医学、埼玉医科大学総合医療センター高度救命救急センターなどを経て、2020年から現職。骨折治療、足の外科を専門とし、同院外傷センターで骨折を中心とする整形外科外傷マネージメントに取り組む。日本整形外科学会専門医。
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提供元:【捻挫】実は勘違いも多い!湿布の正しい使い方|東洋経済オンライン