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2023.04.01

ストレスは「発散するだけ」では不調が続く理由|「溜まる→発散する」という行動パターンは危険


ストレスは発散した「つもり」になっているだけのケースが多い(写真:プラナ/PIXTA)

ストレスは発散した「つもり」になっているだけのケースが多い(写真:プラナ/PIXTA)

ストレスが溜まり、メンタル不調に陥りそうなときはどうすればよいのでしょうか。カラオケで歌ったり、ひたすら寝たりすることでストレス発散を図っても、根本的な解決には至りません。本稿は『やってみたらわかった! 40代からの「身体」と「心」に本当に良い習慣』より、一部抜粋・再構成のうえ、メンタルを健康的に保つ方法について解説します。

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睡眠・運動不足はメンタルに悪影響を及ぼす

私たちは「心は心」「身体は身体」と分けて捉えがちですが、心と身体は深くつながっていて分けて考えることはできません。気分が落ち込みがちなときや、イライラするとき、感情のアップダウンが激しいときには、睡眠、運動、食事など身体の習慣が乱れていることが多いのです。

まず、睡眠不足が我々のメンタルに与える影響は大きく、仕事のパフォーマンスの悪化も招いてしまいます。睡眠が足りない状態だと意識に膜がかかったようになり、イライラして人の話をしっかり聞けなくなったり、読んでいる文章が頭に入らなくなったりします。そのような状況だと、重大な判断ミスを犯してしまうことも出てくるでしょう。

睡眠不足だと、目を覚まして起きていること自体にストレスを感じる状態になります。ストレスが強くなると自律神経が乱れ、ホルモンバランスが崩れ、落ち込みやすくイライラし、長期にわたるとうつにもつながっていきます。

運動の不足もメンタルに悪影響を及ぼします。定期的に運動をする習慣がある人と運動する習慣がない人では、ストレスに対する耐性が大きく異なります。筋トレや有酸素運動を行うと、エンドルフィンという快楽物質が分泌され、全身の血流も良くなることから、気持ちがリフレッシュされます。

さらに朝や日中に屋外で運動をして太陽の光を浴びることで、幸福ホルモンのひとつセロトニンが分泌されます。セロトニンは気持ちの充実、静かな幸福をもたらすホルモンで、夜になると代謝されてメラトニンという睡眠を促すホルモンが分泌され睡眠の質を上げてくれます。

また運動をすると身体が疲れるので深くぐっすり眠れるようになるのです。深く良質の睡眠をとることで成長ホルモンが大量に分泌され、気持ちがスッキリして爽やかに目覚めることができるようになります。

このように定期的に運動することでメンタルに良い効果が得られるのですが、現代に生きる我々は正反対の生活をしてしまいがちです。

さらに食生活の乱れ、特に糖質の摂り過ぎもメンタルに悪影響を及ぼします。情緒不安定、イライラ、ヒステリー、気持ちの落ち込み、集中できない、食後に襲ってくる耐え難い眠気などが代表的なものです。

糖質を食べて血糖値が急上昇すると、脳がドーパミンやセロトニンなどの快楽物質を分泌します。そのため我々は糖質を勢いよく摂ると気分が高揚したり、スッキリした気持ちになったりするのです。しかしその後、膵臓からインスリンが分泌されて血糖値が急降下することで、イライラ、落ち込み、怠さ、眠気などに襲われます。すると「もう一度良い気分になりたい」という気持ちになり、また糖質を求めるようになります。

こうして我々は、糖質を食べてはハイになり、そのあと落ち込んでまた糖質を求めるようになります。これが繰り返されることにより感情のアップダウンが激しくなり、情緒不安定、集中力が続かないなどの症状が出てくるのです。

メンタルの不調を抱える人は多いですが、日常の睡眠や運動、食事の習慣と関係が深いことに気づいていない人が多いのが現状です。ぜひ、ご自分の生活習慣に乱れがないかを見直し、改善できることから取り組んでみてください。

ストレスは「発散」するだけではダメ

あなたは日々のストレスをどうやって解消していますか? お笑い番組を見る? カラオケで歌う? それともひたすら寝る? 溜まったストレスを解消することは確かに大切です。

しかし、「ストレスが溜まる → 発散する」という行動パターン自体が危険な図式であることを理解してください。溜まっていくストレスをたまに発散して「なかったことにする」のは、本当の意味でのストレス「解消」にはなっていません。

どんなにカラオケで熱唱しようと寝倒そうと、ストレスの根本原因がなくならない限り、またストレスは溜まり続けます。週末にストレスを発散したと本人は思っていても、根本的な原因を取り除いていない場合には、表面的に解消した「つもり」になっているだけのケースが多いのです。

例えば、ソリが合わない上司の下で働いていたら、週末にストレスを発散しても月曜日になって出勤すれば、再びストレスの猛威に晒されることになるのです。

日本人は「耐えて忍ぶ」ことが美しいこと・良いこととする風潮がありますが、ストレスが溜まり続けると、身体やメンタルに大きな影響が出てきます。ですから、少しでも心身に変調を感じるなら、そのストレスの根本的な原因を取り除かなくてはなりません。

身体の病気ももちろん怖いですが、過剰なストレスに晒され続けることで「うつ」などの心の病気になることは、なんとか避けたいものです。

現代人は良くも悪くもストレスに対して一定の耐性ができてしまっていて、自分では気づかないうちに危険なレベルのストレスを抱えていることが多いのです。しかも日本人は真面目に我慢強く働く傾向にあるので、心が壊れてしまうまでやり続けることがあります。

身体もですが、心も一度壊れてしまうと治るまでに長い時間がかかります。その間本人もとても辛い想いをしますし、家族や周囲の人たちも大変な時期を過ごすことになります。眠れない、食欲がない、動悸が激しい、汗の出方がおかしい、腹痛が多いなどのサインが出るようになってきたら要注意です。

仕事上のストレスの多くは職場の人間関係と言われます。上司との人間関係に原因があるようなら配置転換を申し出るなり、転職するなりして環境を変えることが大切です。

長時間の残業が常態化しているなど、職場環境がブラックな場合も同様です。一時的な繁忙期ならまだしも、日常的に深夜まで残ることが当たり前になっている場合、上司なり経営陣なりが「それが当然」と考えている可能性が高いのです。

上司も経営陣も、あなたが健康を害するまで働いたとしても、最終的にあなたの「命」の責任はとってくれません。家庭に問題がある場合も相手から離れる必要があります。家庭内暴力はもちろん、不協和音が続く環境ならばその状態を黙認しているべきではありません。

強いストレスは「発散」ではなく根本原因の「解消」を目指す勇気を持ってください。あなたのメンタルはあなた自身しか守ることができないのですから。

ノートに感情や思考を書き殴る

メンタルを整えるために、毎朝の習慣にしてもらいたいことをご紹介します。それは私が「マインドダンプ」と名づけているノート術です。必要なのは、1冊の専用のノートと書き心地の良いペンだけです。

マインドは「感情・思考」、ダンプは「捨てる・吐き出す」という意味で、感情や思考を書き出して自分の中から外に吐き出す、という行為になります。自分のすべてをさらけ出す必要がありますので、家族も含め、絶対に他人に見られないようにしてください。

マインドダンプはパソコンやスマホなどのメモアプリではなく、紙のノートに手書きすることをおすすめします。タイピングやフリック入力に比べ、手で文字を書く行為は何万倍も多様な動きを必要とします。すると、脳の「側坐核」という部位が刺激され、ドーパミンが分泌され、ポジティブな気持ちになれるのです。

ノートとペンを用意したら、そのときにあなたの心に浮かんだ感情や思考を片っ端から書き殴っていきましょう。このときに大切なことは、どんなネガティブで暗い感情も、怒りや嫉妬といった他人には見せたくない想いも、躊躇せずに書き出していくことです。

実際にやってみるとわかるのですが、初日から数日間は、泣き言、怒り、愚痴、無力感、嫉妬などのネガティブな思考や感情が爆発するように出てきます。これは、今まであなたが「出してはいけない、なかったことにしよう」と頭や心の中に閉じ込めてきた思考や感情がダダ漏れになっている状態です。

我々はネガティブな思考や感情はあってはいけない、常に前向きにポジティブに生きなければいけない、と思い込まされています。しかし、感情には良いも悪いもなく、ただそこに存在しているものです。もちろん怒りに任せて他人を攻撃したり、人に迷惑をかけるような行為をすることは避けるべきです。でも、怒りの感情をなかったことにしようとしても、現実としてあなたの心の中にはあるのですから、とうてい無理なのです。

感情や思考が解決可能な「課題」へと変化する

我々は日々さまざまな課題に追われ、それらを論理的に組み立てて解決したいと願っています。しかし、怒りや嘆き、無力感などの感情が渦巻いていると、クリアな思考でものごとを整理することができず、ただ混乱してしまいます。

そこで、毎朝20分程度マインドダンプを繰り返します。すると、それらの渦巻いていた思考や感情が自分の中からノートに吐き出されて分離していくのです。

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思考や感情は自分の中にあるときはモヤモヤと形を持たず浮かんでは消え、消えては浮かぶを繰り返しています。それらを書き出すことで、曖昧だった思考や感情は「言語化」され、「具体化」されることになります。「具体化」された感情や思考は、解決可能な「課題」へと変化していきます。

ノートに書き出され、「課題」になった感情や思考を眺めていると、我々は自然と「どうやったら解決できるか」と考え始め、それはやがて実際に解決されていくのです。

1週間くらい経つと、ネガティブな吐き出しが少なくなり、より建設的な「課題」や「夢」「野心」などが顔を出してくるでしょう。パンパンに詰まっていたネガティブな想いが吐き出されたことで、脳にスペースができ、そのスペースにクリエイティブなアイデアが浮かび始めるのです。

そのまま毎朝の習慣にすることで、あなたはクリアな思考を持ち、行動できるように変容していくことでしょう。

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提供元:ストレスは「発散するだけ」では不調が続く理由|東洋経済オンライン

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