2023.03.22
つらい腰痛を悪化させる人の「いけない対処法」|腰痛の専門家が教える意外なヒント
つらい腰痛を悪化させる「いけない対処法」と、安全に筋肉を柔らかくし、痛みを根本から取り除く「緩消法」を紹介します(写真:プラナ/PIXTA)
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「仕事続きで腰痛がきつい」「ぎっくり腰がやっぱりこわい」……。だいぶ春めいた日もあるとはいえ、朝晩はまだまだ肌寒いこの時期、多くの日本人を悩ませるのが腰まわりの不調。年度末、そして新年度に向けた動きが活発化する今、さすがに少しでも早くそのつらさから解放されたいものだが、自分なりの対処だけでは痛みはそうラクにはならない。
自ら開発した腰痛解消メソッドでアメリカの特許も取得している坂戸孝志氏は、「誤った対処を続けていると、さらなる腰痛の悪化につながりかねない」と語る。よかれと思ってやっていた処置が、実は腰痛を長引かせる原因になっているかもしれない、というのだ。
この記事では、『イラスト図解 9割の腰痛は自分で治せる』の著者・坂戸孝志氏に、腰痛を悪化させるかもしれない危険な対処法と、安全に痛みをやわらげる独自のメソッドについて解説してもらった。
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「痛み」を感じるしくみ
人は「痛み」を感じますが、そもそもなぜ感じるのでしょうか。腰痛を根本から改善するためには、まず痛みのしくみについて少し理解を深めたほうがよいでしょう。
人は、「痛み」を神経の神経終末(先端・末端)で感じとっています。少し専門的になりますが、神経終末で痛みを感じとるのは、ブラジキニン、たんぱく分解酵素、セロトニン、ヒスタミンなどの物質です。ただ、神経は痛みを感じとることはできても、痛みを体の外に出すことはできません。
(提供:KADOKAWA)
意外に思われるかもしれませんが、「痛み」を感じとる神経がある場所は、筋肉です。そのほか、靭帯、腱、脳や内臓に関連する膜などにもありますが、体の「伸縮できる部分」にあると考えるとわかりやすいかもしれません。
ですから、切り傷や打ち身、ウイルスなどによるものではなく、原因はわからないけれども「痛み」を感じるというときには、筋肉など神経のある場所に何らかの異常があると考えられます。
反対に、「痛み」を感じとる神経のない場所は、骨、椎間板(脊柱の骨の間にある円形の軟骨)、軟骨、毛、つめなどです。毛やつめの細胞は先端まで生きていますが、切っても痛みはありません。
なお、骨折したときの「痛み」は骨そのものではなく、骨折した部位の周辺の筋肉や膜が損傷して生じます。
実は「やってはいけない」対処法
切り傷や打ち身など原因が特定できるものを除けば、「痛み」を感じとるのは筋肉にある「神経」だということはざっとおわかりいただけたと思いますが、「痛み」とは簡単にいうと、「筋肉の緊張」、つまり「筋肉が硬くなっている状態」です。
では、その「痛み」をなくすにはどうすればいいのか。それは、緊張した筋肉を柔らかくすればいいのです。筋肉を柔らかくするには、筋肉から「緊張成分」(老廃物、カルシウムなど)を排出させる必要があります。
ここで、「よし、わかった! 筋肉を柔らかくすれば腰の痛みが消えるのか」と考えたかもしれませんね。でも、ちょっと待ってください。正しい知識もなく、むやみに自分で腰痛を治そうとすると、逆に悪化してしまう危険性があります。とくに次のような対処は多くの皆さんがよくやりがちですが、実は「NG!」なので気をつけてください。
×もむ
一般的に、筋肉をもむことをマッサージといいますが、緊張した筋肉を誤った方法でもむことで炎症が起こります。この状態を「もみ返し」といいます。腰の筋肉をもんで、もみ返しが起こった場合、最悪の場合、3日間程度立てなくなります。
×たたく
筋肉の同じ箇所を10回以上連続してたたくと、緊張した筋肉は反発を起こし、さらに硬くなります。長く肩たたきをすると痛みが増すのも、筋肉の反発から筋肉がさらに緊張するからです。
×強く押す
筋肉が緊張し、痛みがある場所を強く押した場合、激しく反発し、さらに緊張します。緊張している筋肉に対し、絶対に行ってはいけないいちばん危険な方法です。
×伸ばす
伸ばすことで柔らかくなる筋肉の状態とは、使って緊張した場合、運動後の「筋肉痛の状態」だけです。毎日痛みを出す筋肉を伸ばすと、さらに悪化します。最悪の場合、筋肉が断裂しますので、実は、これも絶対に行ってはいけません。
×注射(ブロック注射・トリガー)
痛みがあるときに病院で使われる注射の成分には、「筋肉がこわばる(硬くなる)」「腰痛」「発熱」という副作用があります。痛み止めで一時的に痛みが軽くなった場合、それを「治った」と錯覚しがちですが、結果としてさらに筋肉が硬くなり、痛みが増していきます。
×湿布・痛み止め
湿布や痛み止めも、副作用に「筋肉がこわばる」「腰痛」「発熱」があります。痛みは軽くなるもののその場しのぎで、さらに筋肉を硬くして痛みが増します。
このように、腰痛にはさまざまな対処法が考えられますが、一時的な効果はあったとしても、腰の深部の筋肉まで柔らかくすることはできません。やり方によっては、結果的に悪化させてしまう危険性もあります。
それでは、安易な考えで腰痛を悪化させることなく、筋肉を柔らかくして痛みを消すにはどうすればよいのでしょうか?
安全に筋肉を柔らかくする「緩消法」
私は試行錯誤の実験と研究を重ね、2007年に、筋肉内の緊張成分を安全に排出するメソッド、「緩消法」を考案しました。
この緩消法では薬や道具をいっさい使いません。筋肉を柔らかくする段階でのもみ返しもありませんし、一度柔らかくした筋肉は再度硬くなりません。ですので、悪化させずに筋肉を柔らかくすることができます。
緩消法は、手が動けば、老若男女を問わず誰でも簡単に行えます。今までに緩消法を行った最年少は3歳の男の子、最高齢は95歳の女性でした。なかには2分で痛みが消えたという方もいました。
ただし、痛みはほかの人にはわかりませんから、大事なのはあくまで自分で状態を感じながら、無理せず筋肉を柔らかくしていくこと。それがいちばん、安全なのです。
そして私は、この「緩消法」を利用し、たった1回、たった1日で腰の痛みやしびれが消え、二度と再発させないために、「腰痛緩消法」というメソッドを見いだしました。
今回はこの「腰痛緩消法」のうち、腰まわりの筋肉を柔らかくするための最初の2ステップを紹介しましょう。
腰かけて行う「緩消法」
ステップ(1) 腰まわりの筋肉を振動させる
まず椅子に腰かけます。このときには、ひざを90度に曲げることが大事です。
(提供:KADOKAWA、図版:関祐子・梔図案室)
図中の赤い囲みの部分、ももの外側を片足ずつたたきます。両足を同時に行うと腰の筋肉は振動しないので、必ず片足ずつ行ってください。
たたき始める場所は、ひざのお皿の部分が終わって、ももの筋肉が始まるところです。ひざ側から、徐々に足の付け根の方向へ。平手にして、小指側でたたきます。このとき、ももの筋肉を痛めないと判断できるくらいの強さでたたいてください。
1回、2cm程度ずつ移動しながら足の付け根までたたきます。この「ひざから足の付け根までの動作」を1回とします。足の付け根までたたいたら、もう一度、ひざのお皿の部分に戻り、繰り返したたきます。この動作を片足につき10回ずつ行いましょう。
ステップ(2) 腰まわりの筋肉を左右同時に柔らかくする
まず、足、肩幅より少し広めに開きます。立って行うと効率良くできますが、立てない場合は座ったままでもかまいません。
親指の先を、腰の緊張している筋肉に軽く押しあてます。筋肉が緊張していると、横から親指で軽く押すだけで痛い場所があります。わき腹の方向から真横に指を入れるなどして探してみてください。
(提供:KADOKAWA、図版:関祐子・梔図案室)
おさえた指を視点に、左側に上半身をスムーズに傾けます。このとき、図の(2)の傾き以上に傾けないでください。
1秒程度でスムーズに(1)の姿勢に戻ります。そのまま動作を止めずに、今度は右側に傾けます。そして(1)の姿勢に戻ります。
この左右に上半身を傾ける動きを、途中で止めずに1秒感覚でスムーズに行ってください。緊張している筋肉が柔らかくなるまでこれを繰り返します。
筋肉を柔らかくし、痛みを根本から取り除く
『イラスト図解 9割の腰痛は自分で治せる』(KADOKAWA) クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします
以上2つのステップを行うことで、横方向から指をあてることのできる緊張した筋肉を柔らかくすることができます。腰まわりの筋肉が柔らかくなるだけで、つらい腰痛も少しはラクになるはずです。
以上、この記事では、腰痛を悪化させる危険性のある対処法と、痛みを根本から取り除くための「腰痛緩消法」について紹介しました。
もんだりたたいたりするのは一時的には効果があるかもしれませんが、筋肉が柔らかくならない限り、腰痛を治すことはできません。なにかと忙しく、実は腰にも負担がかかり続けるこの時期、今回紹介した「腰痛緩消法」をぜひ実践してみてください!
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提供元:つらい腰痛を悪化させる人の「いけない対処法」|東洋経済オンライン