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2023.02.23

専門医が指南、疲れた肝臓を蘇らせる「腸活術」|乳酸菌飲料より「納豆・キムチ」が体によい訳


腸内環境をよくすることは、脂肪肝の改善に大いに関わります(写真:elise/PIXTA)

腸内環境をよくすることは、脂肪肝の改善に大いに関わります(写真:elise/PIXTA)

長野県佐久市立国保浅間総合病院「スマート外来」では、患者の8割が3カ月で約5kgの減量と、脂肪肝の改善に成功しています。患者さんの成功事例を参考に、肝臓から脂肪を落とす食事の実践的な取り組み方を紹介します。

『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす食事術 予約の取れないスマート外来のメソッド』が大好評の肝臓外科医・尾形哲氏がこの度、『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす7日間実践レシピ』を上梓。本書から一部抜粋・再構成してお届けします。

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長期間の便秘が肝臓にダメージを与えていた

脂肪肝の背景には“腸内環境の乱れ”の影響が多々あります。腸内環境の悪化や、慢性的な便秘を起こしていると、腸内に毒素が増えます。この毒素が腸からつながる門脈を介して、肝臓に直接届くことで、肝臓はダメージを受けてしまいます。“肝臓の上流は腸”なのです。だから腸内環境をよくすることは、脂肪肝の改善に大いに関わります。

実際に、便秘を克服したことで脂肪肝が改善した患者さんの成功事例をご紹介します。

Sさん(女性・75歳)の腸は結腸から直腸まで便がびっしりと詰まっていて、CT写真からも便秘であることが明らかでした。そこで、腸によい食材を取り入れるとともに、腸内環境をよくする整腸薬と便を軟らかくする酸化マグネシウムを処方しました。

便秘解消に使われる便秘薬にはいくつか種類がありますが、腸を刺激してぜん動運動を促す「刺激性下剤」は注意が必要です。一時的な効果は高いものの、長期間使用すると薬効に対する耐性がつきやすく、薬を飲まないと便が出せなくなるリスクを伴います。薬局で市販されているものは「刺激性下剤」が主流ですが、安易に飲み続けてはいけない薬です。

Sさんには、副作用がほとんどない「非刺激性下剤」を処方し、便秘を解消して腸内環境をよくしつつ、肝臓の脂肪を落とす方針に決めました。

Sさんが食事で気をつけたのが、ご飯は60gまでに制限したこと。それから、野菜のボリュームを増やすとともに、腸によい納豆やみそ、ヨーグルトなどの発酵食品をとることでした。タンパク質については、歯が悪いこともあって納豆や豆腐などの大豆食品か、魚を食べることが多かったそうです。

すると、それまで週に1〜2回あればいいほうだったお通じが、ほぼ毎日出るように。今までの人生でこんなに便通がよかったことはないと、感激されていました。食事療法をはじめて3カ月で体重は4.8㎏減、6カ月後もマイナス5㎏をキープ。そして、心配された肝機能を示す数値も劇的に改善したのです。

Sさんのように、腸の不具合が肝機能低下に影響するのは、便秘によってその分体重が増えるという単純な話ではなく、肝臓と腸が切っても切れない深い関係にあるからです。

腸は食べたものを消化・吸収し、最終的に便として排泄する消化器官です。小腸で栄養が吸収され、大腸で水分が吸収されるといわれますが、最近の研究で、大腸でも腸内細菌が関与して栄養が吸収されることがわかってきました。

便秘によって大腸内に便が長時間とどまると、腸内細菌が便から栄養を吸収するため、エネルギー摂取が増えて脂肪が増えます。肝臓脂肪も例外ではありません。もちろん、その間に水分も吸収され続けるので、便はさらに硬く出づらくなって、便秘が悪化するという悪循環も生じます。

また、冒頭で申し上げたように、腸内環境の悪化で悪玉菌の働きが強くなると、腸内に増えた毒素が、血液とともに静脈のひとつである門脈を介して肝臓にダイレクトに送られるため、脂肪肝から、より危険度の高い脂肪肝炎を引き起こす要因にもなります。

各臓器には動脈から血液が流れ込んでいますが、肝臓にはそれとは別に、胃や腸、すい臓、脾臓などの消化管からつながる門脈からも血液が流入します。しかも、その量は動脈からの約4倍にもなるため、門脈から入り込む血液が肝臓に与える影響はとても大きいのです。だから肝臓をよみがえらせたければ、腸の働きを健全にしないといけません。

「発酵食品」+「食物繊維」で腸内環境を整える

このように、肝臓の健康を取り戻すには、腸内環境の改善が欠かせません。そこで取り組みたいのが「腸活」です。腸内に棲む腸内細菌のバランスを良好な状態にすることが、腸活の大きな目的です。具体的には腸内の有用菌であるビフィズス菌や乳酸菌などの微生物である「プロバイオティクス」を、食品から積極的にとることです。それが腸内で乳酸や酢酸などの酸を作り、悪玉菌の作用を弱めることがわかっています。

ただし、砂糖や果糖ブドウ糖を含んだ乳酸菌飲料は避けてください。60㎖と容量が少ない乳酸菌飲料でも、スティックシュガー(1本3g)3本分の糖分が含まれています。血糖値上昇のリスクだけでなく、果糖を飲料でとることで肝臓に負担をかけます。ヨーグルトも無糖のプレーンに限ります。サプリメントも同様に、肝臓には負担です。

それよりも、「プロバイオティクス」は、納豆やキムチなどの発酵食品からとるのが一番。推奨するプロバイオティクス食材は以下になります。

【プロバイオティクス食材】

・ナチュラルチーズ
・ヨーグルト
・漬けもの
・キムチ
・みそ
・納豆 など

また、腸内の有用菌のエサとなる食物繊維やオリゴ糖などの成分を「プレバイオティクス」と呼び、プレバイオティクスを含む食品の摂取も大切です。

代表的なプレバイオティクス食材は以下になります。

【プレバイオティクス食材】

・玉ねぎ
・ごぼう
・豆類
・さつまいも
・キャベツ
・ブロッコリー
・りんご
・きのこ類
・海藻類
・こんにゃく

さらに、「プロバイオティクス」と「プレバイオティクス」の両方を同時にとることで(=シンバイオティクス)、効果的な整腸作用がもたらされることも知られています。プロバイオティクスの「発酵食品」+プレバイオティクスの「食物繊維」は、最強の腸活コンビなのです。

野菜は2倍で肝臓も腸も元気になる

記事画像

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便秘の主な原因は食物繊維不足です。ご飯を減らすと糖質だけでなく、食物繊維の量も減り、便のカサも減らしてしまうので、しっかりした便が出にくくなります。

さらに、スマート外来で初診時に行うBDHQ(簡易型自記式食事歴法質問票)のアンケート結果では、肥満・脂肪肝患者の食物繊維量の平均は1日約10gでした。日本人の推奨食物繊維摂取量は約18gなので、半分程度しかとっていないことが判明しています。野菜の摂取を普段の2倍にとお伝えしているのは、これらのデータを根拠にしています。

最後に私がおすすめしている食物繊維が豊富な食材を紹介しましょう。

【毎日食べたい食物繊維の神セブン】

1 キャベツ
2 海藻類
3 きのこ類
4 ごぼう
5 ブロッコリー
6 こんにゃく
7 やまいも

腸によいものは、肝臓にもよいと覚えて、ぜひ「腸活」に励んでください。

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【あわせて読みたい】※外部サイトに遷移します

日本人なら簡単「最高の腸活」、食べ合わせ5品目

「体にいい食品ばかり」食べたがる人の深刻盲点

「代謝が悪い人」がやっている残念すぎる習慣

提供元:専門医が指南、疲れた肝臓を蘇らせる「腸活術」|東洋経済オンライン

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