2023.02.22
脂のる今が旬「ブリの照り焼き」美味に作る簡単技|実は失敗が少ない料理、おいしさの分岐点は2つ
脂がのる冬に食べたい「ブリの照り焼き」の作り方を伝授します
料理の腕を上げるために、まず作れるようになっておきたいのが、飽きのこない定番の料理です。料理初心者でも無理なくおいしく作る方法を、作家で料理家でもある樋口直哉さんが紹介する連載『樋口直哉の「シン・定番ごはん」』。
今回は脂がのる冬に食べたい「ブリの照り焼き」の作り方を伝授します。
『樋口直哉の「シン・定番ごはん」』 ※外部サイトに遷移します
「養殖を使う」「加熱しすぎない」がポイント
冬はブリがおいしい季節、今日はご飯のおかずにぴったりの照り焼きをご紹介します。外食でもおいしい魚料理には意外と出会えないので、自分でつくるのが一番。
おいしさの分岐点は大きく2つあり、1つ目は「養殖」のブリを使うことです。昔、養殖のブリは臭みがあり、脂っぽい、と評価が低かったのですが、近年は産地の努力の結果、目覚ましく品質が上がりました。高価な天然物は当たり外れがありますが、養殖のブリは味や脂肪分が安定しているのがメリットで、とくに濃い目に味付けする照り焼きに向いています。
2つ目は「加熱しすぎには注意」という点。肉のタンパク質はおおむね60〜70℃の範囲で凝固しますが、魚はもっと低い温度で火が通ります。地上で生活する哺乳類や鳥類と比べると、冷たい水のなかで生活する魚類はより低い温度で生きる生き物だからです。
『マギーキッチンサイエンス』p205より一部引用
魚のタンパク質と温度の関係を『マギーキッチンサイエンス』から引用しました。表(※外部配信先では表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)にはこまごまとしたことが書かれていますが、押さえておくべきは魚のタンパク質の変化が45℃を超えたあたりからはじまる、ということ。
60℃を超すと筋繊維が収縮し、水分が押し出される肉と比べるとずっと低いので、同じように加熱すると魚は「パサパサ」になりやすいのです。
ちなみに安全性は65℃、1分以上の加熱で十分に担保できるので、表面には香ばしい焦げ目がつき、中心温度が上がりすぎない状態が理想です。「魚は低い温度で火が通る」という点だけ押さえたところで、料理に入りましょう。
ブリの照り焼きの材料(2人分)
ブリ(切り身) 2枚
サラダ油 小さじ1
しょうゆ 大さじ2
酒 大さじ2
みりん 大さじ2
砂糖 大さじ2
ししとうのおかか和え
ししとう 1パック
ごま油 小さじ1
鰹節 3g
しょうゆ 小さじ1
ブリの照り焼きの材料。写真は愛媛産の養殖ブリです
ししとうのおかか和えの材料。鰹節はパックでも結構です
まずはししとうのおかか和えから作っていきます。
魚料理の付け合わせを「あしらい」といいます。すだちなどの柑橘や大根おろし、生姜やみょうがの甘酢漬け、さつまいもや豆の蜜煮、佃煮などが定番で、添えることで味に変化がつき、ボリュームも出ます。
ブリの照り焼きのあしらいは大根おろしが定番なのですが、今日はししとうを添えます。
鰹節を乾いた鍋に入れ、中火にかけます。鍋をゆすりながら30秒から1分ほど煎ると乾燥して、手でパリパリと砕くことができます。乾煎りという技法で、鰹節から湿気を除き、香りを立たせる効果があります。
パックの鰹節の場合、この工程は省略できます
ししとうは硬い部分を取り除き、破裂防止のため包丁の先で穴を開けておきましょう。
ししとうがなければピーマンでも同様につくれます
ごま油小さじ1を引いたフライパンにししとうを並べ、中火にかけます。はじめのうちは触らないで片面に焦げ目をつけます。焦げ目がついたら裏返し、さっと炒めたら加熱終了です。
中火で焦げ目をつけます
ボウルで鰹節、しょうゆと和えます。ししとうは火が通ると意外なほどかさが減るので、しょうゆの量は控えめに。これだけでも立派な酒のつまみになります。
食べるときまで常温で置いておきましょう
いよいよブリの照り焼きを作っていきます。ブリの切り身には下身と上身がありますが、このあたりは好みです。しいていうならご飯のおかずにするなら脂の多い下身、酒のつまみにするなら上品な上身でしょうか。
焼く前に魚に塩を振ることもありますが、今回は脂ののったブリなので、そのまま焼いていきましょう。鮭やタラなど身が崩れやすく、パサツキがちな切り身の場合は少なくとも10分前には塩を振ってから使うと、焼き崩れも防げ、焼き上がりもしっとりします。このあたりはケースバイケースです。
サラダ油小さじ1を引いたフライパンに皮目を下にしたブリを入れ、中火にかけます。しっかり焼いた皮は歯切れもよく、おいしいもの。よく焼いてください。皮目に焦げ目がつく頃にはフライパンも適切な表面温度になっています。
皮から焼きはじめるのがコツ
皮目に焦げ目がついたら、盛りつけたとき、表になる面から焼いていきます。ここからはスピード勝負。ブリのタンパク質は50℃を越すと水分が抜けはじめますが、香ばしい焼き目も欲しいところ。そこでほぼ片面焼きのイメージで加熱していきます。
魚は片面焼きが基本です
焦げ目がついたら裏返し、ここでいったん火を止めましょう。脂が気になるようであればキッチンペーパーで除去します。
裏側は焼きません
砂糖と酒を加えてフライパンの表面温度をまず下げてから、みりんを加えます。調味料を加える順番も重要で、いきなりしょうゆを加えてしまうと焦げたり、香りが飛んだりしてしまうので、砂糖と酒を加えてフライパンの表面温度を下げてから、ほかの調味料を加えます。
このとき、火は消しています
しょうゆを加えたら再び中火にかけ、タレを煮詰めていきます。
調味料の割合はすべて同量にしていますが、好みで砂糖は減らしてもいいでしょう
スプーンでたれをかけ、濃度を確認します。鍋照り焼きはタレを煮詰めるほど味が濃くなりますが、冷めるととろみが強くなるので、完全にとろみがつく手前で火を止めましょう。
ブリの身にはすでに火が入っているので、この工程はあまり時間をかけないように
皿に盛り付け、付け合わせを添えます。ちなみにあしらいは右手前が日本料理の決まりです。
出来上がり
照り焼きは合理的な調理法で、調理料の味が素材にすべてつくわけではなく、鍋に残ります。そのため味の濃さを食べ手が調整できるので、失敗が少ないのです。また、調味料の味わいで素材の味をカバーできるので、安価な材料でもおいしくできます。ご飯のおかずの甘辛味は日本人の叡智。ぜひとも炊きたてのご飯を添えて、召し上がってください。
(写真はすべて筆者撮影)
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提供元:脂のる今が旬「ブリの照り焼き」美味に作る簡単技|東洋経済オンライン