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2023.02.14

医師に聞く「暖房なし」で朝までぐっすり眠る方法|深い睡眠に辿り着けるのは「入眠後4時間以内」


ぐっすり眠るための「暖房アイテムの正解」とは?(写真:Graphs/PIXTA)

ぐっすり眠るための「暖房アイテムの正解」とは?(写真:Graphs/PIXTA)

寒さの厳しい今年の冬。夜間や早朝あまりに寒くて眠れないという人もいるのではないでしょうか。さらに、寒さに加えて電気代の高騰も気になります。そんな今、ぐっすり眠るための「暖房アイテムの正解」を、2万人以上の睡眠の悩みを解決してきた睡眠専門医、白濱龍太郎氏の最新刊『ぐっすり眠る習慣』から一部抜粋・再編集してお届けします。

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節電に優秀なのは、昔ながらのあのアイテム

部屋が寒くてなかなか眠れない、夜中に何度も起きてしまう、そんな冬場の悩みが、わたしの睡眠専門クリニックにもよく寄せられます。

寒さをしのぐため、冬場でも室温は18度前後に保てるのがベストですが、それには一晩中暖房をつけている必要があります。とくに今年の冬は、電力逼迫に加え電気代も高騰し、毎晩暖房をつけっぱなしにしていては大変なことになってしまいます。

そんな時にぴったりな、電気代をおさえながらもぐっすり眠れるいい方法があります。

それは、部屋全体をあたためるのではなく、「ふとんの中」をあたためるようにすることです。自分が入っているふとんの中さえ適切な温度に保てていれば、寝室の空間全体をあたため続けなくでも、眠るのに問題はありません。このようなふとんの中の環境を「寝床内環境」といいます。

しかも、この「寝床内環境」を整えることで、睡眠の質も上がります。ふとんをかけて眠る場合、1年を通して、そのなかの温度は32〜33度、湿度は45〜55%であることが理想的だといわれています。

それにぴったりなアイテムが、ふとんの中を直接あたため、温度も調節できる湯たんぽや電気毛布、ふとん乾燥機などの暖房グッズです。

とくに、お湯を入れるだけでいい湯たんぽは、省エネ面でも睡眠面でも優秀です。寝るタイミングのおよそ2時間前、ちょうどお風呂に入るタイミングでふとんの中にセットすれば、眠りにつくときにはふとんの中がじんわり温まっていて、幸せな気分で眠りにつくことができます。

ただし、これらのふとんを温めるグッズは、必ず寝る直前には取り出すか、電源を切るようにしましょう。なぜなら、ふとんの中の温度は下がっていっても、逆に身体からは眠っている間に熱が放出されるので、自然に温かさをキープすることができるからです。

このように、省エネしながらでも十分、ぐっすり眠る環境を整えることはできます。ぜひ、毎日の習慣に取り入れてみてください。

靴下をはいて寝る人は損をしている

ふとんに入ったら湯たんぽを取り出すのは、身体から熱が放出される以外にも別の理由があります。

カギとなるのは、深部体温。深部体温とは、身体の表面ではない内臓など内部の体温のことをいいます。

人が眠りにつくとき、手足から熱が発散されて身体の深部体温が下がり、それによって眠気が増長されます。この深部体温が高ければ脳や身体の行動が活発になり、低くなれば眠くなるというのは人間の身体の基本的なメカニズムです。

この深部体温は、メラトニンの分泌によって変動します。メラトニンは、夜になると多く分泌されて深部体温を下げ、それにつれて眠気が訪れます。朝になって太陽光を浴びると、脳からの指令で分泌がストップ。自然と目が覚めて深部体温が上昇し始め、日中は高めのまま推移するというのが、深部体温の決まったリズムになります。

この深部体温は、先ほどからお伝えしてきた「ぐっすり眠る」という状態をつくるためにとても大切です。

人は、眠ってから深い睡眠(ノンレム睡眠)と浅い睡眠(レム睡眠)を繰り返していきますが、一番深いノンレム睡眠のステージまでたどり着けるのは、眠ってから4時間以内だけ。この「深睡眠(しんすいみん)」と呼ばれるステージに複数回到達できることを、わたしは「ぐっすり眠る」と表現しています。

その状態をつくるためには、眠り始めるタイミングで深部体温が下がっていることが重要です。逆に、その状態をつくれなければ、どんなに長く寝たとしても身体の疲れをしっかり取ることはできないのです。

この観点からみると、実は、ふとんの中をあたため続けるのはおすすめできません。自然な眠気をいざなうためには深部体温を下げなければいけないので、ぐっすり眠るためにはずっと身体があたたかい状態ではいけないのです。

ですから、あたたかくて気持ちいいからといって、湯たんぽを足に挟んだり、靴下をはいたまま眠ったりしていると、寝付けたとしても眠りは浅くなります。すると、何度も夜に目が覚めてしまったり、変な時間に起きてしまったり、朝起きたときにだるい感じが残ってしまったりするのです。

とくに冷え性の人は、深部体温のリズムが小さいという特徴があります。冷え症の人は血行が悪いために効率良く熱が発散されません。すると、深部体温の上下動の幅が小さくなり、そもそも眠気が訪れにくい傾向にあるのです。

効率的に深部体温のリズムを眠りに活用するには、寝る前に身体をあたため、ふとんに入ってからは熱を発散できるようにすることが大切です。

そのため、夜に冷え防止のために靴下をはくなら、ふとんに入る直前に脱ぐか、身体を中からあたため、血行を良くする工夫をしてみてください。

たとえば、眠りにつく約2時間前までにぬるめのお風呂にゆっくり浸ったり、生姜やトウガラシなどが使われた身体がポカポカする料理を食べたりと、血の巡りを良くすれば深部体温を上げることができます。そのあとで眠りにつけば、自然と深部体温が下がり、深い眠りに入っていくことができるのです。

「3秒で眠って」はできない

わたしのクリニックを訪れる方も、ここ数年で睡眠の不調を訴える人がぐっと増えました。とにかくみんな、元気がない。症状を自覚してクリニックに来てくださる人がこれだけ増えたのだから、「隠れ不眠」で少しの不調がある人はもっと増えているんじゃないかと危機感を持っています。

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ただ、どんな状況でもぐっすり眠れるかというと、残念ながらそう簡単にはいきません。わたしたちはまるで「ブレーキのついていないクルマ」のように、いきなり全力で走り出すことはできても、すぐに眠るのは難しいのです。この構造を理解していないと、いつでも休めると思って無理をしすぎてしまいます。

だからこそ、ぐっすり眠るにはその前の準備が大切です。同じく乗り物に例えるならば、「飛行機の着陸」。飛行機が空の上で徐々に高度を落として着陸態勢を整えるように、わたしたちも適切な段階を経て眠りにつく必要があります。

ほんの少しのことに気をつけるだけでも、睡眠の質は必ず高まります。寒い冬でも毎日ぐっすり眠って、元気に過ごしましょう。

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交通事故死よりも多い「ヒートショック」の恐怖

寝る前に厳禁「眠りの質を下げる」悪習慣3つ

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提供元:医師に聞く「暖房なし」で朝までぐっすり眠る方法|東洋経済オンライン

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