2023.02.11
「すぐ行動できる人」「できない人」の意外な差|やれない原因「脳の準備不足」はクリアできる
「すぐやる人」とそうでない人の違いは脳にあるようです(写真:yoshan/PIXTA)
タイパ(タイム・パフォーマンス)という言葉が流行るなど、何をするにも「効率」が求められる昨今。そのような世相のなか、「わかっているけど、行動に移れない」「先送りグセがある」などといった悩みを抱え、息苦しさを感じている人も多いのではないでしょうか。では、どのようにすれば、すぐに動けるようになるのか?
「すぐにやれないのは、脳の準備不足が原因です」と話すのは、医学博士で「脳の学校」代表の加藤俊徳さん。『1万人を診た脳内科医がすすめる すごい行動力』を刊行した加藤さんに、「すぐやる人」になるためのコツを聞きました。
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「すぐ動ける」脳になるための鉄則
脳には1000億個を超える神経細胞があり、運動に関する細胞、聴覚に関する細胞、記憶に関する細胞など、同じ働きをする細胞同士が特定の部位に集まり基地を形成しています。
その脳神経の集団がある基地のことを私は「脳番地」と読んでいます。脳全体を地図に見立てて、脳の役割ごとに番地を割り振ったということです。
細かく分類すると120以上あるのですが、大きくは8つに分類されます。
(出所:『1万人を診た脳内科医がすすめる すごい行動力』)
運動系脳番地は、8つある脳番地の中で最も、「すぐ動ける」かどうかに関係しています。
赤ちゃんの脳もまず運動系脳番地から発達し、それに伴って他の脳番地も発達していきます。あらゆる脳番地と連携しているのが運動系脳番地なのです。
したがって、さまざまな脳番地の観点から「すぐ動ける」脳になるためには、運動系脳番地をまず動かす必要があります。そうすることで、脳番地が総合的に強化されます。
運動系脳番地を動かして「すぐ動ける」脳になるための鉄則は、大きく次の2つ。
(1) 「動き出すスイッチ」を押す
(2) 「シンプルな計画」をつくる
まずは(1)の「動き出すスイッチ」を押すこと。とにかく一歩動き出せば、物事は前に進みます。そして、動く時には、(2)の「シンプルな計画」をつくる。計画があれば安心して動けます。
逆に言えば、すぐ動けないのは、この2つができていないということです。これらの鉄則を身につけるための、シンプルですが確実に効果のある具体的な脳番地エクササイズの中から3つを紹介します。
脳番地エクササイズ1:とりあえず、その場で立ち上がる
「すぐ動く」ことができない原因のひとつに、普段から動いていない、ということが挙げられます。
普段使っていない筋肉を動かすには、運動系脳番地が強く命令を発しなければなりません。また、思考系脳番地で生み出される「動かそう」という意思の力も重要になります。
まず、カラダを動かす時に、脳がたくさんのエネルギーを消費するため、たとえ動いたとしてもすごく疲れてしまいます。
普段動いていない人はエネルギーを奪われることが感覚的にわかっているので、動く前から「疲れそう」「面倒くさい」という気持ちが先に来てしまい、ますます動かなくなり、運動系脳番地が未発達になるという悪循環にはまります。
こうした悪循環を断ち切るには、どんなことでもいいので、とりあえずカラダを動かすことです。
カラダを動かすことに意味を求めていると、いつまでたっても動き出せません。やる気がしない時は、何も考えずに、まずはカラダを動かすことを実践しましょう。
たとえば、座ったままでいないで立ち上がります。そして、立ったり座ったりを繰り返す。あるいは、座ったまま肩をぐるぐる回す、などなど。
みなさんも疲れた時などに何気なくやっていることかもしれませんが、こんなカンタンな動作でも、「動き出すスイッチ」を入れる立派なエクササイズになります。
立ち上がったら、室内を少し歩いて戻ってくるというのもオススメです。その場をいったん離れて戻ってくるだけで、「動き出すスイッチ」が入りやすくなるのです。ぜひ試してみてください。
脳番地エクササイズ2:場所を移動する
カラダを動かしても「動き出すスイッチ」が入りにくい時は、場所を変えます。思い切って外に出てしまうといいでしょう。とりあえず、心地よく過ごせるカフェなどに行ってしまうのです。
私は、お気に入りのカフェをいくつか持っていて、よくお店を転々と移動しながら仕事をしています。
おいしいコーヒーが飲めて、完全禁煙で、あまり賑(にぎ)やかすぎず、仕事に適したイスやテーブルがあるカフェです。お気に入りの場所なので、そこに行くことをいつも楽しみに思っています。
そして実際に行くと、気持ちが上がり、「この場所ですべきことをしよう」とスイッチが入り、集中して仕事ができます。
お気に入りの場所に行くということは、単に気分が変わる以上の効果があるのです。
昼休みなど時間がある時は、外に出て散歩をするのも効果的です。
外に出る回数が少ない人は、日に当たる時間が短く、血中のビタミンDが不足しがちになります。ビタミンDの不足は筋力の低下を招くだけでなく、骨粗しょう症、うつ病のリスクを高めることが指摘されています。
ビタミンD不足を防ぐためのカンタンな方法は、外に出ること。皮膚に日光を当てると、体内でビタミンDの合成が行われるからです。
そしてビタミンDが「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンの分泌量を増やしてくれます。
外に出て少し歩くことは、脳を動かすスイッチが入りやすくなるだけでなく、いろいろないい効果があるということです。
脳番地エクササイズ3:見た文字をそのまま書き写す
パソコンやスマホの普及によって、文字を書く機会がめっきり減り、普段はほとんど紙とペンを使わないという人も多いでしょう。
ですが、鉛筆などを使って文字を書くことは、普段動かしていないカラダと脳を動かすいいエクササイズになります。
それも自分で文章を考えるのではなく、本や新聞の文章、般若心経など、見本を見ながらそのままていねいに書き写すだけでいいのです。
普段書かない漢字や覚えていない漢字を書く際には、見本を見ながら正確に書こうという配慮が働きます。また、ていねいに書こうとすると文字の大きさや並びにも気を遣うので、手の動きを微妙にコントロールする必要があります。
いろいろなことに配慮する必要があるため、運動系脳番地だけでなく、視覚系脳番地や理解系脳番地なども働くことになり、脳全体が少しずつ活性化されていくのです。
ここでも、あれこれ考えずに手を動かせることをする、というのが「すぐ動く」を引き出すポイントになります。
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指先を動かすことに慣れてくれば、動きにスピードが生まれます。カラダと脳はつながっていて、特に手指は「第二の脳」と言われるくらい密接につながっているので、手を動かせばやる気もそれなりに出てきます。
動きやすい手を持つことで、いざやるべきことが生じた時に、「動き出すスイッチ」を入れやすくなるわけです。
人の話をそのまま書き写すというのも、いいエクササイズになります。この場合は、ていねいに書くのではなく、乱雑でもいいので一字一句漏らさずに書き取ることを目指します。
テレビのニュース番組でアナウンサーが読むくらいのスピードなら、何とか書き写すことができるはずです。
こちらは、運動系脳番地と聴覚系脳番地を一緒に動かす方法としてもってこいなので、ぜひやってみてください。
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提供元:「すぐ行動できる人」「できない人」の意外な差|東洋経済オンライン