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2023.01.26

定年後、ギスギス夫婦とのびのび暮らす夫婦の差|70代で元気な人が実践「つかず離れず婚」のススメ


定年後の70代夫婦がのびのびと幸せに暮らすためには「つかず離れず」がいいそうです(写真:kou/PIXTA)

定年後の70代夫婦がのびのびと幸せに暮らすためには「つかず離れず」がいいそうです(写真:kou/PIXTA)

定年して人生の新しい幕を開けた70代の方が幸せな毎日を過ごすための夫婦関係の楽しみ方とは? 医師の和田秀樹さんは、高齢者を診てきた経験から70代以降の夫婦が幸せに暮らすための方法として、「つかず離れず婚、親子婚、恋人婚、熟年離婚」の4つを挙げます。本稿では同氏の著書『70代は男も女もやりたいことをおやりなさい』を一部抜粋し再構成のうえ、和田氏が最もポピュラーだという「つかず離れず婚」についてお届けします。

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多くの人にフィット「つかず離れず婚」

定年後の70代夫婦がのびのびと幸せに暮らすための方法として、最もポピュラーなスタイルと言えるのが、1つ目の「つかず離れず婚」です。

これは、夫婦の関係性が近すぎず、かといって遠すぎず、〝ほどよい距離感〟で暮らすライフスタイルです。

夫と妻、というよりも、一つ屋根の下に暮らす「同居人」、あるいは「友人」としてお互いを捉えるほうが、ストレスなく暮らせる場合もあります。

一時期、「卒婚」という言葉が流行りましたが、そのスタイルに近いかもしれません。離婚はしないまでもお互いのことに干渉せず、それぞれが自分の暮らしをエンジョイする。孤立するのではなく、お互いが自立しながら必要な時に支え合う、個立した生き方です。70代ともなれば、そうした大人の関係性を築いていくのも格好いいものではないでしょうか。

おそらく8割がたの夫婦は、この「つかず離れずスタイル」がフィットすると思われるので、大幅にページを割いて紹介したいと思います。
私が、この「つかず離れずスタイル」を提案したい大きな理由は、日本人の夫婦の関係性があまりにも近すぎると感じるからです。

欧米では、ひとりの男、女として愛し続ける努力をしている夫婦が多いように思います。一方、日本人の場合は結婚して子どもが生まれると、互いをお母さん(ママ)、お父さん(パパ)と呼ぶようになって、まるで自分の母親・父親であるかのような錯覚を起こすことさえあります。

妻は何かと夫の世話を焼いて、喉が渇いていそうならササっとお茶を出し、出勤前にはアイロンでワイシャツのしわを伸ばす。夫のために日々一生懸命です。

でも、「夫のため、家族のために」と、やってあげればあげるほど、「私ばかりがやっている」「なんでありがとうの一つも言えないの?」と不満を募らせる人も多いのではないでしょうか。

夫は夫で、かいがいしく自分の世話をしてくれる妻に新婚時代こそ喜びと感謝を感じていたものの、それがいつしか当たり前になり、自分の思う通りにやってくれないと不満が出るようになる。「俺は妻や子どものために我慢して働いているのに……」と、怒りを増幅させる人も少なからずいることでしょう。

「相手のために」と思うほど、期待もどんどん膨らんで、その挙句、自分の思う通りに振る舞ってくれないと、怒りがふつふつと沸いてくる。こうした近づきすぎた関係性は、決して心地よいものとは言えません。

だとすると、一線を引いて、相手に何も期待しない、求めないほうがストレスもなくなるし、気が楽というものです。

「相手に期待しないなんて、愛情が薄いんじゃないか? ドライで冷たい関係性になるんじゃないか?」と思う人もいるかもしれませんが、それで自分自身に我慢やストレスを強いて、病気になってしまったら元も子もありません。

距離を置くことが「夫源病」の一番の薬

定年前は、夫が毎日出勤していたので、妻は日中、息抜きやリフレッシュができました。夫も会社に行くことで、家庭のストレスや細々した問題から逃れられていたことでしょう。

でも、仕事を完全リタイアして、24時間夫婦が顔を突き合わせるようになれば、いくら仲がよくてもさすがに息が詰まりますし、相手の嫌なところも目につきやすくなります。言わなくていい小言をつい言ってしまうことだってあります。

以前、タレントの上沼恵美子さんが、夫の定年退職を機に「夫源病(ふげんびょう)」を患ったというニュースが話題となりました。

「夫源病」とは、夫の言動によるストレスが原因で、めまいや動悸、胃痛、不眠、気分の落ち込みなど妻の心身に不調をきたす病気です。男性更年期外来を開設する、医師の石蔵文信氏が名付け親であると言われています。

この病の解決策は、ズバリ、夫と距離を置き、適度にストレスを発散すること。

上沼さんが旦那さんと別居をして、距離感をとったことで楽になったという記事を見かけました。「相手と物理的に離れる」「接する時間を短くする」ことが最良の薬になることを証明してくれています。

ただ、心身ともにつらいのは、夫も同じです。女性の更年期障害と同様、男性ホルモンが著しく減少することによって、男性更年期障害(LOH症候群)を引き起こす場合があります。

これは、漫画家のはらたいらさんが告白したことで、その病の存在が知られるところになりました。意欲低下や行動力の減退など男性ホルモン減少の症状に加え、ほてり・発汗・睡眠障害・抑うつ・イライラ・不安感など、女性の更年期障害と同じような症状が出ることがあります。

体がしんどくて、何をするにも億劫なのにもかかわらず、妻からは「寝てばかりいないで、たまには掃除でもしてよ」などとうるさく言われてしまう。これでは、休まるはずの家が針のむしろになってしまいます。

男性ホルモンの影響がある上に、年齢的にも夫のほうが年上のケースも多いですから、悲しいかな、妻よりも先に老いを感じていることもあるでしょう。妻は、夫がつらそうに見える時はあれこれ求めず、そっとしておくのが得策です。

ともあれ、定年後の夫婦がストレスなく過ごすためには、お互いにとって心地いい「つかず離れずの距離」をとることが一番。一定の距離をとることで、心に余裕が生まれ、相手に対する感謝の気持ちがよみがえるようになります。また、相手の嫌な部分が小さくなり、逆によい面が見えてくることもあります。

自分の望む形をメモに書いてみる

これまでの近づきすぎた関係性を改め、いざ「つかず離れず婚」にチャレンジするにあたり、大事にしてほしいことがあります。

それは、「相手とどういう距離感なら心地いいか?」「家事や家のことなど、どこまでなら気持ちよくできるのか?」、自身の望みを明確にすることです。

例えば、このような形で望みをメモに書いてみるといいでしょう。

・夕食以外は自分の食べたいものを自由に食べたい
・食事は各自、別々にとるようにしたい
・何を食べたか、どこに行ったか、お互い詮索しないようにしたい
・炊事、洗濯、掃除など家事は完全に分担したい
・寝室を別にしたい
・起床や就寝時間はそれぞれ自由にしたい
・泊まり以外の外出は相手の同意を得ず、自由に出かけたい

「こんなに自分の望みばかり考えて、わがままじゃないか?」なんて思わなくて大丈夫です。

相手がどう思うか、できるかどうかは一旦脇に置いて、自分が本当はどうしたいのか、何をしたくないのかを先に考えてみてください。こうして希望を整理するだけでも、スッキリするはずです。

ただ、望みが明確になったとはいえ、何も言わずに始めると、相手も混乱するでしょう。不要なケンカや軋轢を生むハメになり、それはそれで面倒です。自分の希望は何らかの方法で相手に伝えることをおすすめします。

いざ実行するにはどうするのがいいのか。話を切り出した際に、すんなり同意してくれるとは限りません。当然、相手の性格やこれまでの関係性によっては、なかなか聞き入れてもらえない場合もあるでしょう。

いずれにしても大事なのは、「自分はこういう理由で〇〇したい」と、キッパリ宣言してしまうことです。なぜなら、相手が納得するまで話し合いを続けていたら、何も変わらないまま、年月だけが過ぎてしまうからです。

相手に「こうなってほしい」と言うのではなく、「お昼はこれからは外で食べることにする」などと、自分のやりたいことを伝えるのもいいと思います。

宣言するタイミングで、次回記事で解説する「プチ家出」を実行するのも選択肢の一つです。

「つかず離れず婚」を楽しむコツ

ここからは、「つかず離れず婚」を楽しむための具体的な方法やコツについてお伝えしていきます。

本書では生活の中のちょっとした工夫から、大がかりな改革案まで幅広く紹介しています。ご自身の望む暮らしをイメージする上で参考になさってみてください。

なかには、すぐにでも生活に取り入れられるアイデアも見つかるかもしれません。

70代夫婦は寝室を分けて熟睡しよう

「もし夜中にお互いの体の異変があったら……」と、同室に寝るシニア夫婦も多いでしょう。でも、夫婦それぞれ別室に寝たほうがかえって熟睡できて、体調がよくなることがあります。

なぜなら、相手のいびきや寝返りの振動が気にならない上に、エアコンの温度や電気の明るさも自分好みに調整できるため、睡眠の質が上がりやすくなるからです。

老年精神科医として、多くの高齢の患者さんと接していると、「以前よりも寝つきが悪くなった」「途中ですぐに目が覚めてしまう」など、睡眠にまつわる悩みを抱える人を非常に多く見かけます。

人は寝ている間に疲労回復や体内の細胞の再生・修復が行われます。言い換えると、質のよい睡眠がとれないと免疫力が低下する恐れがあります。

ですので、特に睡眠の悩みを抱えている方は、自分がよく眠れる環境を整えることが何より大切です。

寝室を分ければ、就寝時間や入眠までの過ごし方を相手に合わせなくていいのも大きなメリットの一つ。寝る直前まで映画や読書を楽しみたい人もいれば、早々に電気を消して爆睡したい人もいますから。

お互い元気に過ごせる今のうちに、夫婦で寝室を分ける喜びを味わい、プライベートタイムを堪能してみてはいかがでしょう。

一部屋を分けるセパレート寝室もあり

いきなり寝室を分けることに抵抗がある人や、空き部屋がない場合は、一つの部屋を仕切りで分けるという方法もあります。

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例えば、ベッドや布団の間にパーテーションや収納棚を置いて、空間を2つに分ける。いわゆる「半個室」状態をつくるのです。

そうすれば、ひとりの空間が確保できて、睡眠の質もある程度保たれますし、完全に別室ではないので、お互いの存在を感じられるメリットもあります。

プチリフォームにはなりますが、寝室の中央に可動式の間仕切りを設置して、寝る時だけ扉を閉めるというワザもあります。

相手との空間を時々仕切って、時々つながる。ほどよい距離感を求める人に打ってつけです。

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【あわせて読みたい】※外部サイトに遷移します

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提供元:定年後、ギスギス夫婦とのびのび暮らす夫婦の差|東洋経済オンライン

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