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2023.01.26

実は「糖質こそ健康にいい」と言える科学的な根拠|オートミールを食べても幸せホルモンは出ない


体だけでなく心の健康も重視する「ウェルビーイング」という価値観から、オートミールやフルーツグラノーラの「おいしさ」と「健康」の関係を紹介します(写真:Dragon Images/PIXTA)

体だけでなく心の健康も重視する「ウェルビーイング」という価値観から、オートミールやフルーツグラノーラの「おいしさ」と「健康」の関係を紹介します(写真:Dragon Images/PIXTA)

ここ数年、爆発的に普及したオートミール。「米化レシピ」なども人気で、ダイエットに興味を持つ層を中心に幅広く浸透しています。食物繊維が豊富で健康にいいイメージが先行するオートミールですが、実はある側面ではフルーツグラノーラのほうがさらに健康にいいとする研究が最近発表になり話題になっています。

ポイントとなるのは、体だけでなく心の健康も重視する「ウェルビーイング」という新たな価値観にあります。著名なマーケターである藤田康人氏の著書『ウェルビーイングビジネスの教科書』より、一部抜粋、加筆、再編集してお届けします。

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オートミールは幸せホルモンが出ない

オートミールはここ数年で人気が急上昇した食品の代表例です。

全国のスーパー、コンビニなど販売動向を調査している「インテージSRI+」によると、2021年対2019年比で、オートミールの売り上げは854%増という驚異的な数字を記録しています。

ここまで人気になった理由として、SNS発の情報で「ダイエットに効果的」「健康にいい」というイメージが流布され、テレビ、雑誌といったマスメディアもその効果を取り上げたことでコロナ禍でもヒットにつながったと言えるでしょう。

確かにオートミールは、「食物繊維が豊富」「血糖値が上がりにくい」などの特徴があり体の健康にいいのは間違いありません。一方でおいしさに欠けるという評価もある中で「心」の側面からひもとくと、必ずしも健康にいいとも言えないかもしれないようです。

大手菓子メーカーの「カルビー」と、幸せホルモン研究の第一人者である山口創・桜美林大学教授の共同研究で興味深い事実が明らかになりました。

朝食によく食べられる「オートミール」「パン」「ごはん」「フルーツグラノーラ」の試験食を、18歳~37歳の健康な女性12人に食べてもらい、朝食前後のαアミラーゼの変化量を調べました。αアミラーゼはストレスを測る指標になる酵素で、多いほうが高ストレスであると言われています。

その結果、オートミールが最も多くαアミラーゼが分泌されていることがわかったのです。

また、幸せホルモンとして知られる「オキシトシン」の濃度も、同じ条件で測定したところ、4つの食品のなかでオートミールが最低の値でした。オートミールはほかの3つに比べて味の満足感が低く、食べても幸福感を感じにくいということがその原因だと思われます。

なお、もっともαアミラーゼの量が変化せず、オキシトシンの濃度が高かったのがフルーツグラノーラでした。

フルーツグラノーラは、製造工程でグラノーラを焼き上げており、且つフルーツを添えています。このグラノーラとフルーツの「適度な甘さ」が、オキシトシン分泌に寄与したと考えられ、さらに、焼き上げた香ばしい「香り」も寄与していると山口教授は分析しています。

フルーツグラノーラはおいしさには定評がありましたが、オートミールと比較してカロリーや糖質が高いとされ、健康志向の高い人やダイエットに励む人からは敬遠されがちでした。

しかし、「心」のヘルスケアという側面からみれば、むしろ健康的という言い方も可能です。

おいしさと健康はトレードオフではない

食品には栄養機能、おいしさなどが関係する感覚・嗜好機能、健康の維持や向上に関する機能という、3つの機能があります。

近年、3つ目の「健康機能」に注目が集まりやすくなっています。「おいしさ」は長らく、情緒的な価値と考えられていました。しかし、今回の研究結果は「おいしさ」から導き出される幸福感が、健康効果を持つという新たな側面に光を当てました。

これまで、おいしさと健康は相反するものとして、トレードオフの関係にあると考えられてきました。「おいしいけど、健康に悪い」逆に、「健康だけどおいしくない」この2つの間で揺れ動いてきたのです。

技術の進歩で、糖分や脂肪分を抑えつつも「ある程度おいしい食品」をつくることも出来るようになりましたが、どうしても限界はあります。

しかし、新たな視点から、健康の要素に「心の充足」「幸福度」も加味すれば、今までにない展開が開けてきます。フルーツグラノーラの健康的な側面を強調した販売戦略が可能になるのです。

私は、今後、こうした手法が広く普及すると考えています。なぜなら、消費者の価値観が新たなフェーズに入ったからです。昭和の時代は健康よりもおいしさが重視され、平成に入ってからは徐々に健康に価値が置かれるようになっています。健康といえば、主に体の健康を指していました。

しかし、人生100年時代が叫ばれるようになってからは、「体が健やかなだけでなく、体も心も元気で、社会との関係も良好である」状態が理想とされる新しい価値観が広まりつつあります。100年幸せに生きようと思えば、体だけでなく、心も穏やかで、周囲との関係性も良好でなくてはいけないことは明白でしょう。

こうした価値観は「ウェルビーイング」と呼ばれ、欧米では一般的な価値観になりつつあり、日本でも急速に広まりをみせています。

これまで健康とトレードオフだと考えられていたおいしさですが、ウェルビーイングの視点だと相反するとは限りません。

おいしさで心が満たされるだけでなく、食を通じて家族や友人たちが集まり「人と人との関係性が生まれる」という価値が生まれるとすれば、それもウェルビーイングの一側面です。

ウェルビーイングに着目した先進ビジネス

先進的な企業はすでに、ウェルビーイングの価値に着目しています。

クラフトビール最大手の「ヤッホーブルーイング」は自社のビールの価値を「おいしさ」に加え、人と人とをつなぐコミュニケーションツールとして捉えなおし、定期的に大規模なファンイベントを開催。

ファン同士の交流を促し、ファンのコミュニティー化を進めていました。コロナ禍ではオンラインで同様の試みにチャレンジしています。

ビールを「周りの人と笑顔で過ごす時間に寄り添う」存在と位置づけています。

商品の価値を「おいしさ」だけではなく「仲間との交流で得られる心の充足感」を生み出すものとして再定義したのです。

ウェルビーイングに着目した事例はほかにもあります。

一世を風靡した「こすらず洗う」浴室掃除の洗剤もそうです。

浴槽に噴射して洗い流すだけというこの商品は「時間や手間を減らして、でも、確かなキレイを実現」をコンセプトに掲げていました。

単に労力が減るだけではありません。

「頑張らなくてもいい」という心理的な充足や「時間的な余裕を、家族や自分のために生かす」ということまで見据えた点がウェルビーイング的な商品と言えるでしょう。

ウェルビーイングで消費者との関係性を再構築する

ウェルビーイングでは、「自分らしく生きる」ためには体と心の健康、社会との良好な関係性という3つの要素を満たす必要があるとされています。

ここで勘違いしてはいけないことは、3つの要素をすべて満たさなければウェルビーイングビジネスではないと考えることです。

私は、そのどれか1つでも満たすことに役立つならそれはウェルビーイング的なアプローチであると考えています。

一見すると時代のトレンドに合わなくなったような商品でも、3つの要素のどれか1つに光を当てれば、消費者との新しい関係を構築することができる「付加価値」がつけられます。

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つまり、脂こってりの食事も甘さ濃厚なデザートも、体の健康から考えるとウェルビーイングとはいえないとしても、心が満たされたり、家族や仲間と食卓を囲んで楽しめるなら、とてもウェルビーイングな食品なのです。

もちろん、毎日体に悪い食事ばかりではいけませんが、日頃から健康に気をつけている人が、自分へのご褒美として生クリームたっぷりのパフェを食べたり、背脂の浮いたコクのあるスープのラーメンを食べたりするのは、不健康とはいえないと思います。

逆に、ストイックになりすぎて、どんなときも、我慢するほうがストレスになると思いませんか。そのスタイルのほうが、よほど体に悪いといえるでしょう。

仮にみなさんの会社が食品メーカーだとしたら、健康志向のヘルシー食品に加えて、おいしさにとことんこだわった食品を同時に提供しても、ウェルビーイングビジネスとしては成立します。その際は、「おいしさ」がウェルビーイングな視点から見て価値づけするための戦略を練ることが必要です。

ウェルビーイングとは、多様性の実現でもあります。さまざまなタイプのニーズに対して、選択肢を用意することこそ新時代の戦略です。ウェルビーイングをビジネスに生かすということは、消費者との関係性を「リデザイン」するということに、ほかならないのです。

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【あわせて読みたい】※外部サイトに遷移します

「体にいい食品ばかり」食べたがる人の深刻盲点

「健康維持にプロテイン」は逆に体壊す医学的理由

「オートミールにハマった人たち」に起こった変化

提供元:実は「糖質こそ健康にいい」と言える科学的な根拠|東洋経済オンライン

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