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2023.01.13

「今日1日」に集中するだけで幸福になれるワケ|「マルチタスク」だと生産性が40%低下する?


24時間を上手に使うことができれば、人生は豊かなものになります(写真:mapo/PIXTA)

24時間を上手に使うことができれば、人生は豊かなものになります(写真:mapo/PIXTA)

今日という1日。この24時間。それは、あらゆる人に平等に与えられている唯一のものです。性別や容姿、年齢、能力、資産、社会的地位などは人によって異なりますが、1日の長さだけは、誰にとってもまったく同じです。

同時に、「24時間をどう使うのか」という問いは、人類にとって永遠の課題です。
私たちは、どうすれば一度しかない24時間を充実したものにできるのか。
明治大学法学部教授、言語学博士の堀田秀吾氏の最新刊『24 TWENTY FOUR 今日1日に集中する力』から一部を抜粋・編集してお届けします。

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人生とは、今日この24時間のことである

「今日、この24時間をどう使うのか」という問いは、人類にとって永遠の課題です。

紀元前に生きたローマ帝国の哲学者セネカは、自身が記した『生の短さについて』の中で、「何かに忙殺される人間の生きる生がどれほど短いか」と、つねに時間に追われている私たちにとって、非常に耳の痛い言葉を残しています。

ゲーテは「人間は現在がとても価値のあることを知らない」、ミケランジェロは「時間の浪費ほど大きな害はない」と語り、アメリカの著述家デール・カーネギーは「人生とは今日この日のことである」、アメリカ合衆国建国の父の一人であるベンジャミン・フランクリンは「今日という1日は、明日という日の2日分の値打ちがある」と述べています。

結局、死を迎えるまで、私たちにできることは、今日1日をどう生きるかだけ。

そして1日の積み重ねが、人生そのものです。

ですから、充実した24時間を過ごし、結果を出す人と、時間をムダにする人では大きく人生に差がついてしまうのです。

多すぎるタスクと情報が「集中力」を奪う

おそらくみなさんの中には、日々「やるべきことに集中できていない」「24時間があっという間に過ぎていき、何一つやるべきことを達成できていない」といった思いを抱えている人がたくさんいるはずです。それはなぜか。

現代社会には、私たちがやるべきことに集中するのを妨げるものがあまりにもたくさん存在しているからです。

人生を安全に、効率よく進めたいと思うほど情報を求め、SNSやニュースに没頭してしまい、そしてやるべきことに集中できなくなります。

また、人は不安を感じるとやるべきことが手につかなくなります。

友達のメール、LINE、連絡でスマホが鳴るたびに作業を中断してしまうでしょう。

人間関係で起きた問題やストレスもあなたから集中力を奪います。

会社での人間関係で疲労してしまえば、自分のことに集中できないのは当然です。

多すぎるタスクも問題です。

マルチタスクは、生産性が40%低下し仕事を終えるまでの時間を50%増やします。

ネガティブなニュースは、あなたから正常な判断を奪い、85%の人が簡単にフェイクニュースにだまされるという研究結果もあります。

暴言を吐く人がいると、クリエーティブに働くことはできません。

数え上げたらきりがありませんが、私たちから時間を奪い、ビジネスや人生にネガティブな影響をもたらすものは限りなく存在します。

では、24時間をどう使うことが、ビジネスの成功や充実した人生につながるのか。

どうすれば、今日を自分のために使ったことになるのか。

24時間を最も有効に使う方法は世界中の叡智により明らかになっています。

答えは、「今、目の前のことにただ集中すること」。

未来のためでもなく、生産性や効率化を求めるためでもなく、ただ、目の前のことに集中する。

さまざまな研究や実験によって証明されたこの答え。

肝心なのは、ではどうすれば24時間に集中できるのかです。

24時間に、自分が本当にやるべきことを選ぶ方法として、まずおすすめしたいのが、時間管理のマトリックスを作り、あなたが今抱えているタスクを可視化し、優先順位をつけることです。

集中して物事に取り組むには「シングルタスク」

たとえば、次の分類はタスクを緊急度と重要度に基づいて4つに分類した、シンプルな時間管理のマトリックスです。

これは、リーダーシップ論の権威であり、『7つの習慣』の著者でもあるスティーブン・コヴィーが提唱したものをベースにしたもので、4つの領域の優先順位と特徴は、以下のとおりです。

・第Ⅰ領域=最初に取り組み、早めに完了させるべきタスク。重要度が高く、緊急度も高い。先延ばしにしていた重要なタスクなどもここに入る。
・第Ⅱ領域=期限を決めてスケジュールに入れ込むべきタスク。重要度が高いにもかかわらず、緊急でない(時間的制約がない)ため、放置されたり優先順位が下がったりしやすい。
・第Ⅲ領域=ほかの人に任せるか、辞退するべきタスク。緊急性は高いが重要度が低いため、優先順位を下げたり、ほかの人に任せたりすることが可能。
・第Ⅳ領域=後回しにするか、完全にやめるべきタスク。取り組んでもほとんど意味がないどころか、重要度の高いタスクの邪魔になるため、時間を割いてはいけない。

時間管理のマトリックスは、そもそもは大規模な施策やチームを管理し、スケジュールを効率化しなければならないプロジェクトマネジャーなどが利用するのに適したものです。しかし、これを「タスクの優先順位を決める方法」としておすすめするのは、みなさんにぜひ、会社の経営者やリーダーがトップダウンで方針を決定するように、全体を見渡しながら、自らが集中するべきタスクを選び、注力してほしいと考えているからです。

24時間を意味のあるものにするためには、自分が自分自身の経営者、リーダーとなり、トップダウンでやるべきことや進むべき方向を決める必要があります。

周囲の環境や、周囲の意見、求めるものからボトムアップ的に決めてはいけません。

たとえば休日の1日を、しっかり体を休めるために、SNSを断って自然の中で過ごしたり、ずっと読みたかった本を読んだり、目的に向けての勉強をしたりして過ごすのは、自分自身がトップダウンで決めた24時間の過ごし方だといえるでしょう。

また、生産性の下がるマルチタスクを行うのではなく、自らの意思で決めたシングルタスクを行うことに価値があるのです。

もう1つ、目の前に集中するために知っておいてほしいことがあります。
目の前のことに集中することは、人生の幸福度を上げてくれるということです。

これは、ハーバード大学の心理学者、キリングワースとギルバートの研究によって明らかにされています。

キリングワースらは、オリジナルのiPhoneアプリを使い、13カ国の、18歳から88歳までの5000人を対象に、「今、何をしていますか?」「今、どんな気持ちですか?」「今やっていること以外のことを考えていますか?」といったさまざまな質問をし、回答を集めました。

その結果、46.9%の人が、何かをしているとき、そのこととは関係ないことを考えていること、そして、今やっていることと考えていることが違うときは、一致しているときよりも幸せを感じていないことがわかりました。

つまり、目の前のことに集中できていないとき、人は幸せを感じづらく、集中できているときには幸せを感じやすいのです。

この結果を受け、キリングワースとギルバートは、科学誌『Science』に掲載された論文で、「幸福に必要なことは、心身が今に集中することである」と述べています。

今日の24時間にやるべきシングルタスクを決め、集中して取り組むこと。

私たちに確実にできるのはそれだけであり、その積み重ねの結果として、仕事の成功や、充実した幸福な人生がもたらされるのではないかと私は思います。

世界の叡智が示す「最高の24時間の過ごし方」

筆者が求めたのは、世界中の一流研究機関の研究者たちによって行われてきた実験、研究を紹介しながら「今日1日に集中するにはどうすればいいか」を一緒に探っていくことです。

「人生の選択肢に悩んだらどうすればいいか」

「せわしなくあらゆるタスクで埋められている日常をどうすればいいか」

「やるべきことが見つからないときは」

「不安やネガティブな感情に支配されたら」

「パフォーマンスが上げられないときは」

「集中力が保てないときは」

「幸福を感じられないときは」

「人間関係に悩んだら」

など、誰もが知りたい答えについて、あらゆる分野の研究からひもといています。

たとえばこんな研究結果があります。

「人生の選択肢をコイン投げで決めてでも、進んだほうが幸せである」
シカゴ大学スティーヴン・レヴィットの実験

「マルチタスクを行うと、シングルタスクと比較して、生産性が40%低下し、作業ミスが50%増加する」
ワシントン大学メディナらの指摘

「作業が2.8秒中断されると、ミスの発生率が2倍になり、4.4秒中断されると、ミスの発生率が4倍になる」
ミシガン州立大学のアルトマンらの研究

「85%の人はフェイクニュースに騙される」
キングストン大学ヘンダーソンらの研究

「直接暴言を吐かれた人は作業の処理能力が61%、創造性が58%低下する」
ジョージタウン大学のポラスとエレズの研究
(筆者:もし、職場に暴言を吐く人がいるならクリエーティブな作業は難しいでしょう)

「不安を感じても「自分は今、興奮(ワクワク)している」と言い換えればパフォーマンスは改善する」
ハーバード大学ブルックスの実験

「人の幸福と健康を高めてくれるのは、家柄や学歴、職業、家の環境、年収や老後資金の有無などではなく、質の良い人間関係である」
ハーバード大学ヴェイラントらの研究

人間が思いつくことは、たいてい研究されている

先に上げた研究は、私たちが「次にするべきこと」を明確にしてくれ、時間のコントロールを自分自身の手に取り戻す方法を教えてくれています。それはつまり、他人の目や多すぎるタスク、迷い、ストレスを振り切り、「今日1日」に集中して最大限の結果を手に入れる方法であるといえます。

仕事のパフォーマンス、将来への不安、人間関係での悩み、あらゆる問題が山積みですので、何か1つをクリアすれば、すっきり目の前のことに集中できるようになるというようなことはありません。

ですが、「人がこういうときはどうしたらいいんだろう?」と悩むたいていのことは、実はハーバード大学やオックスフォード大学、スタンフォード大学、シカゴ大学ほか、世界中の大学や研究機関が研究済みだったりします。

おおまかにいえば、人間が思いつくことは、たいてい研究されているというのが筆者の実感です。

ですので、研究や実験から「答え」や「対応方法」を学んでしまえば、一度しかない大切な24時間に集中しやすくなるのではないでしょうか。

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24時間を最高のものにするステップはなにか。

思考と行動を変えるにはどんな習慣が役に立つのか。

結局、人間はどう生きれば幸せなのか。

そのあたりの漠然とした問いにも、しっかり答えが用意されています。

アメリカの企業家、ヘンリー・フォードが言うように「たいていの成功者は他人が時間を浪費している間に先へ進む」のであり、スティーブ・ジョブズが言うように「この地上で過ごせる時間には限りがある。本当に大事なことを本当に一生懸命できる機会は、2つか3つくらいしかない」のです。

ぜひ、あなたの大切な24時間を、充実したものにしてください。

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提供元:「今日1日」に集中するだけで幸福になれるワケ|東洋経済オンライン

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