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2023.01.12

「死への不安」を和らげるがん患者に贈る言葉5つ|こころのままに。mustではなくwantで行こう


がん患者の精神科医、清水研氏は4000人以上のがん患者やその家族と対話し、それぞれの苦悩と向き合ってきました。数えきれない対話の中から「がん患者のこころをささえる言葉」をご紹介します(写真:shimi /PIXTA)

がん患者の精神科医、清水研氏は4000人以上のがん患者やその家族と対話し、それぞれの苦悩と向き合ってきました。数えきれない対話の中から「がん患者のこころをささえる言葉」をご紹介します(写真:shimi /PIXTA)

日本ではがん告知から間もない時期に、うつ病や適応障害などの精神疾患になる人は5人に1人にのぼるといわれています。また、がん患者は体の痛みより、死への不安や生き方など「心の苦悩」が大きいようです。

清水研氏の専門である精神腫瘍学(サイコオンコロジー)では、「がんは人生そのものが脅かされる体験」と表現されます。それまで平和であった何気ない毎日が、がん告知を境に一変してしまったと感じる方も多く、今までは自分事として考えてこなかった「死」が切実な問題として迫ってくることになるからです。

清水氏は20年間、4000人以上のがん患者やその家族と対話し、それぞれの苦悩と向き合ってきました。数えきれない対話から、「患者さんとの共同作業で生まれた言葉」として61編の言葉を選び、『がん患者のこころをささえる言葉』にまとめました。そのなかから10編の言葉を2回にわたって抜粋してお届けします。今回は後編です。

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■悲しみには、こころの傷を癒やす力がある■

きちんと悲しむことで、
こころの傷を癒やすことができるのです。
つらいことがあったとき、
泣けると気持ちが和らぎます。
無理に泣こうとしなくてもいいですが、
泣くことができるのは、その人の強さです。

昔、「男は黙って○○ビール」というCMがあったそうです。そういうやせ我慢は一見強く見えるかもしれませんが、とてももろいものです。悲しみという感情は、「大切な何か」を失ったと感じたときに生じるものです。

一方で、その「悲しみ」にはこころの傷を癒やす力があることは、科学的にも証明されています。あなたもがんという病気になったことで、それまでの健康のイメージをはじめとして、さまざまなものを失ったと感じているのかもしれません。そんなときに悲しい感情が込み上げたら、それは我慢しなくていいのです。

今、目の前のことに集中しよう

■不安とうまく付き合うには■

不安になりやすい自分を意識するのではなく、
今ここにある感覚に目を向けましょう。

人間はいろいろなところに注意を向けている動物です。不安になっているときは、「将来はどうなるか」「検査結果はどうなるか」など、未来に注意が向けられています。

その不安になっている方が、お昼に美味しいご飯を食べているときには、その味に注意を向けています。会話をしているときは友達に注意が向いています。意識していませんが、実は人間の注意はいろいろなところに向いているのです。

そのことを自覚すれば、不安との付き合い方はうまくなります。そして、今ここにある感覚に目を向けるようにしましょう。

■人生を振り返り、その意味を考える■

多くの方は最期、「ありがとう」と言って、
亡くなっていかれます。
自分の人生を恨んだまま亡くなっていく方は、
不思議なほどいないものです。

人生のタイムリミットをリアルに突き付けられたなら、自分にとっての優先順位を考えるとともに、それまで取り組めなかったり、避けてきたりした人生の課題に向き合うことで、残された時間の過ごし方が変わってきます。

そして、人生最後の課題は、自分の人生を振り返り、その意味を考えること。その課題に取り組むなかで、人生そのものの見方が変わります。

■mustではなく、wantで行こう■

「こころのままに、行き当たりばったり」も
とてもよいと思います。
自分の心が何にわくわくするのか。
「want(~したい)」の声に耳を傾けてください。

記事画像

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もし、自分が今、窮屈だと感じているのなら、目的や時間の制限から少し離れてみましょう。もがいている自分のこころの声はなんと言っていますか? 私自身も「must(~しなければならない)」の自分へのささやかな反抗を開始した結果、自分のあるがままのこころを大切にするようになれました。

「ほんとうはやりたくないな」「めんどくさいなぁ」と思うことをやめていく。断っても影響が小さいところから、勇気を出して少しずつやってみると、こころが満たされる感覚が味わえます。そうすると、もっと積極的に変わっていきたいという気持ちが出てきます。

■医療者はあなたに救われている■

もし、家族に心配をかけたくない、
周りに話せる人がいないというときは、
どうぞ医療者を頼ってください。
がんと向き合っている患者さんや
そのご家族の力になれることが、
私達、がんを診る医療者の喜びです。

誰かの役に立てるということは、人に生きるためのエネルギーを与えてくれます。医療者はどんなに忙しくても、患者さんが「ありがとう」と言ってくれれば、また頑張ろうという気持ちになれるのです。

意外に思われるかもしれませんが、あなたが頼った医療者は、実はあなたに救われているのです。

清水氏のもとには、毎日さまざまな方が相談にこられます。お1人お1人の立場に身を置いて考えると、その大きなご苦労を思って、ため息が出ることも少なくないそうです。しかしやがて、がんに罹患された方はその人なりのやり方で現実と向き合い、それぞれの道を進んで行かれます。悲しさや悔しさの感情にふたをせず、吐き出して、前向きに生き抜いてほしいと、清水氏は願っています。

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提供元:「死への不安」を和らげるがん患者に贈る言葉5つ|東洋経済オンライン

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