2023.01.12
「在宅夫婦のランチ」夫は平気でも妻にはストレス|1時間以上前に「お昼、何?」に妻はうんざり
男性は「在宅ランチ問題」が見えていない(写真:プラナ/PIXTA)
コロナ禍で昼間も夫が在宅するようになったとき、「ランチストレス」に悩んだのは妻たちでした。夫には自覚すらなくても、妻にとっては大問題。ランチ1つでなぜここまで違うのでしょうか。『夫婦のトリセツ 決定版』より一部抜粋・編集のうえ、「男性脳」と「女性脳」が異なることから生じるすれ違いの原因をご紹介します。
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妻たちのランチストレスが話題に
コロナ禍でいきなり在宅家族になったとき、妻たちのランチストレスは、本当に大きくて、よく話題になった。私は、笑い事じゃないな、と思っていた。男性や、主婦でない女性には想像もつかない「ずーっと気になる」ストレスが、妻たちの脳をむしばむのが、私には手に取るようにわかったから。
たとえコロナ禍がなかったとしても、5G通信網が開通した2020年には、この国では、リモート強化策が推進される予定だった。人類がコロナに打ち勝っても、リモートワークはさらに進んでいくだろう。ランチ問題は、夫婦の問題にとどまらず、地域戦略として考えていったほうがいいと思う。
というのも――わが家は、東京は下町、蔵前界隈にある。この界隈は、昔は、帽子、靴、バッグ、ベルトなどの問屋と工房が立ち並ぶ、家内制手工業の町だった。このため、お惣菜を売る商店街が充実していて、お昼にちょっと歩いただけで、さまざまな出来立てのお惣菜を買えたのである。
私がお嫁に来た37年前には、お昼は商店街のお惣菜で済まし、その際に、魚屋にお皿を預けて、夕方、刺し身の盛り合わせや焼き立ての魚を取りに行ったりするような暮らしをしていた。
今思い出しても、黒川の母と一緒に、繁盛している商店街を歩くのは楽しかった。それぞれの店の店主たちと仲良くなり、子どもが走って見えなくなっても、「あの角にいるよ、大丈夫」と教えてくれるような温かな時空。
私は、もう一度、こんな商店街が復活してもよいのに、と思う。リモートワーカーたちの住む町に。あるいは、リモートワーカーの住むマンションに、毎日、お弁当やお惣菜を買えるカフェが併設されていてもいいかも。
在宅夫婦のランチ問題に社会が追い付いてくるのには、もう少し時間がかかるに違いない(とはいえ、そこに商機があるから、いつかはそうなってくるはず)。今は、その過渡期で、夫婦でなんとか乗り越えなければならないとき。
なのに、男性脳には「ランチ問題」が見えてさえいない。どうか、食周りの会話に気を付けて。次の3つを守れば大丈夫。
男性が気を付けたい3つのポイント
(1) 妻の「○○にしようか」「○○でいい?」に嫌な顔をしたり、ぐずぐずしたりしない。で、「いいね」や「そうだね」で受ける。受け入れないときは、その後に別提案をする。具体的な提案でなくても、「いいね、麻婆豆腐。けど、今日はもう少しさっぱりしたものがいいな」のように方向を示せればOK
(2) 時には自分からアイデアを言おう
(3) 昼食より1時間以上前に、「お昼、何?」「お昼、何にする?」とか聞いてはいけない
何も、夫たちにランチを作れなんて言ってない(してくれたら嬉しいけど)、せめて妻を追い詰めることばを言わないでほしい。そう願っているだけ。
共感型は、問題解決型からすると、なんともめんどくさい脳に見えるのに違いない。NOをNOと言って何が悪い、と。でもね、この脳だからこそ、家事のようなとりとめのないマルチタスクをすらすらと片づけて、物言わぬ赤ん坊を無事育てていくのである。
それよりなにより、あなたのNOに傷つく人だからこそ、あなたの食べたいものを「ずーっと気にする」人だからこそ、いじらしくて愛しくて一緒になったのでしょう? さばさばしていて、誰よりも強くて、あなたのNOに1ミリもめげず、明るく生きていける女性になんか惚れなかったでしょうに。惚れた責任をちゃんと取ってね(微笑)。
妻である人にも、一言だけ言っておきたい。
男性脳は、「自分の思い」を即座に顕在意識に上げられないのである。だから、即座に食べたいものも思いつかない。「何食べたい?」に、多少うろうろしても、温かく見守ってほしい。
女性脳は、生まれつき右脳と左脳の通信線が男性脳より多く、日常、右左脳が頻繁に連携している。右脳は感じる領域、左脳は顕在意識と直結している。つまり、「感じたことが、即、意識に上がる」のが女性脳の、生来の特徴なのである。
このため、周囲への観察力も圧倒的に高く、生半可な嘘は、鋭く見抜く。ある女性は、「油の匂いが違う」と言って、夫の嘘を見抜いた。「同僚とその辺の中華でご飯を食べてきた」と言ったけど、彼についていた油の匂いは高級中華の匂いだった、あれは、大切な人としか行かない店の匂いだ、と彼女は言った。
女たちの「感じたことが、即、意識に上がる」機能は、自分の気持ちにも働く。自分の気持ちが即座に言える。たとえば、恋人に「僕のどこが好き?」と聞かれたら、「その声と、つむじ」みたいに即答できる。だからこそ、それができない男性に、「あまりにも、心がない」と感じるわけだけど、それは濡れ衣なのだ。
男性に「私のどこが好き?」と尋ねるのは、女性に「あなたの体重は?」と尋ねるのと一緒。ありえない質問で、どう答えたらいいかわからず、一瞬、絶句するしかない。
男たちが「私のどこが好き?」に即答できない理由
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男たちが、自分の気持ちを即座に出力できない理由は、男性脳が、何万年にもわたって、過酷な現場にいたからである。狩りに出て、あるいは戦いに出て、危険な目に遭っているときには、自分の気持ちに触れて逡巡している暇はない。好むと好まざるとにかかわらず、その道を行かなければならない。時には、痛みも遮断して、成果をあげなければならないときもあっただろう。
そんな男性脳が、とっさに自分の気持ちを顕在化できないように、神経回路をなかば遮断していても、おかしくないのでは?
わが家の夫は、「私のどこが好き?」にまともに答えてくれたことはないけど、そのたびに私は、男性脳の何万年の過酷な暮らしを思っている。私は基本的に、男性脳を敬愛してやまないのだ。息子の脳も、そして、6カ月の孫息子の脳も。果敢にハイハイして、何でも飛びついて、がんがん振り回すその好奇心と冒険心に、心からのエールを送り、そして大人の男並みに敬愛している。たとえそれで、床が水浸しになり、携帯のガラスカバーが欠けたとしても。
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提供元:「在宅夫婦のランチ」夫は平気でも妻にはストレス|東洋経済オンライン