2022.08.03
パートナーをイラつかせない会話のポイント6つ|命令や決めつけは×、主語を「私」にするのが○
家事を協力してくれない夫にイライラ…。そんな問題を解決する対話の方法があります(写真:kouta/PIXTA)
「パートナーが家事を手伝ってくれない」「働き方やキャリアに口出しされる」「仕事と育児の両立がつらい」。こんな経験から「パートナーができたら、仕事と家庭、どちらかをあきらめなくてはいけない」と、考えてしまう人は少なくありません。
ですが、パートナーがいても、仕事と家庭を両立し、自分らしい人生を送ることはできます。そう語るのは、パートナーシップに関する社会課題を解決し、2人らしい生き方を支援する活動を行う、起業家のあつたゆかさんです。
あつたさんは「パートナーと家庭の共同経営者になり、フラットな関係で家庭の運営方針について相談する。そんな対話によって、2人は協力しあえる最高のチームになれます」と言います。あつたさん初の著書『仕事も家庭もうまくいく! 共働きのすごい対話術』から、そのヒントを紹介します(全3回、今回は2回目、1回目はこちらです)。
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1回目はこちら ※外部サイトに遷移します
「どうして毎日、こんなに遅く帰ってくるの?私も仕事で忙しいのに、なんで料理しなきゃいけないわけ?あなたもちょっとは手伝いなさいよ!」
「そんなこと言ったって、ふつうは女性が家事をするものだろ」
「なんでそうやって古い考えを押し付けてくるの?ふつうは男性ももっと手伝うべきでしょ!」
「残業で疲れてるのにうるさいなあ。いまは勘弁してよ……」
「いつもそう言ってばっかり!来週からは料理はあなたがやってね!」
家事に協力してくれない夫に、妻はかなりイライラしてしまっている様子です。それを受けて、夫も口調がかなり強くなってしまい、このまま話し合いを続けるのは難しそうです。
すれ違う夫婦に足りない6つのポイント
こういった会話は、ふだんは関係が良好な夫婦やカップルでも決して珍しくありません。「似たケンカをしたことがある」という方もいるかもしれませんね。
「なんでこんなに理解してくれないんだろう」「自分が我慢するか、相手の要求をのむしかないのかな」と思ってしまう人は多いのではないでしょうか。でもそれは、対話のポイントを押さえることができていないだけかもしれません。実は建設的な対話をするには、押さえるべきポイントがあるのです。
ポイント(1)「あなた」ではなく「わたし」を主語にして伝える
×「あなたもちょっとは手伝いなさいよ!」
○「少し手伝ってくれると私は嬉しいな」
「お前ももっとやれよ」「あなたっていつも非協力的だよね」と、命令されたり決めつけられたりするとムッとしませんか?
「お前」や「あなた」を主語にしたメッセージを「YOUメッセージ」といいます。威圧的で、相手のダメなところを指摘し、要望を押し付けているようにも聞こえます。これを、自分を主語にした「Iメッセージ」に言い換えてみましょう。
「仕事が繁忙期だから、あなたにこの家事をやってもらえるとうれしいな」「これを出しっぱなしにしないでもらえると助かるんだけど、どうかな?」
「手伝ってもらえるとうれしい」のは「私」の意見なので、命令のようには聞こえず、受け入れられやすい表現になっていると思います。「私はこう思う」と、あくまでも「私」を主語にして考えや要望を伝え、そのうえで「あなたはどう思う?」と尋ねると、相手の受け取り方も変わるでしょう。
疑問形は相手を責める意識が強く伝わる
ポイント(2)「疑問形」は非難に聞こえるので要注意
×「どうしてこんなに遅く帰ってくるの?」
○「最近帰りが遅い事情があったら教えてほしいな」
「私はよくパートナーに『なんで?』『どうして?』と聞くのですが、相手が黙ってしまいます」というご相談をよくいただきます。「なんでいつもできないの?」「どうして遅刻するの?」といった疑問形による問いかけには、要注意です。本当に理由が聞きたいというよりは、相手を責める意識が強く伝わってしまうためです。問い詰めるような口調は、相手に「責められている」という印象を与えてしまいます。
問題を解決するために本当に理由を聞きたいというときは、「帰りが遅くて心配なんだけど、理由を教えてくれる?」など、「Iメッセージ」で聞いてみましょう。
ポイント(3)「ふつうは」という言葉をいったん捨てる
×「ふつうは女性が家事をするものだろ」
○「2人らしい家事分担の形を見つけていこう」
「ふつうは結婚式をやるものなのに、どうして乗り気じゃないの?」「いまどきの男性は育休を取るのが当たり前でしょ」「結婚したら子供をつくるべきだよ」。パートナーと言い合いになったときに、こんなふうに自分の主張をぶつけてしまっていませんか?
でも、「ふつう」ってなんでしょう?
人は自分が育ってきた環境での常識や共通認識を基準にして物事を考えがちです。でも、自分の「当たり前」が相手の「当たり前」とはかぎりません。それなのに「パートナーなんだからこうするべきだ」「結婚していたら○○をするのがふつうだ」と言われてしまうと、価値観を押し付けられた相手は、自分を尊重されていないように感じてしまいます。
自分の常識を押し付けずに、あくまでも「私はこう思う」「あなたはどう思うの?」と、お互いの気持ちを伝え合ってください。パートナーと話すときは「ふつう」「〜すべき」「当然」という言葉はNGワードにしましょう。
ポイント(4)怒りではなく「一次感情」を伝える
×「なんで私が料理しなきゃいけないわけ?」
○「仕事が忙しいなか、家事の負担も大きくて実はしんどいんだよね」
「つい、パートナーに言いすぎてしまう」と悩む人は少なくありません。パートナーに怒りの感情をぶつけてしまいがちな人は、自分の弱さを素直に表現できるようになると良いでしょう。
怒りは「二次感情」と言われています。その根底には「さみしい」「悲しい」「つらい」というネガティブな一次感情が隠されていて、そこから「怒り」という二次感情が沸き起こってしまうのです。相手に耳を傾けてもらうためには、怒りではなく、一次感情を伝えるようにしましょう。
「なんで家事をやってくれないの?」「どうして結婚式の準備を手伝ってくれないわけ?」ではなく、「結婚式の準備を一緒に進めていけると思って楽しみにしてたのに、実際は私1人でやっていて寂しかった。一緒に準備を進めていけないかな?」と、一次感情をきちんと開示してみましょう。
イラスト:イタガキユウスケ
まずは肯定的なメッセージを伝える
ポイント(5)どんなときもまずは「肯定的なメッセージ」を伝える
×「疲れているのに、うるさいなあ……」
○「大変だったよね。いつもありがとう」
自分の話に耳を傾けてもらうためには、本題に入る前に、まずは「肯定的なメッセージ」を伝えてみましょう。自分の気持ちや要望を相手に伝えるのは、課題を解決して、今後も2人で良好な関係を築いていくためです。なので、問題点を指摘する前に、まずは問題になっている点以外の部分に感謝をしてみましょう。
「実は最近私も忙しくて、家事をもっと手伝ってほしいと思ってるんだ」の前に、「いつもお仕事お疲れさま! そんななかで相談したいことがあるんだけど……」と前置きを添えるだけで、聞き手側の印象もだいぶ変わりますよね。
ポイント(6)自分の要望を押し付けず相手の気持ちや背景を「きく」
×「家事は来週からこの分担でやってね」
○「お互い仕事も忙しくなってきたし、今後はこんな家事分担にしたいんだけど、どうかな?」
要望を一方的に押し付けないためには、相手の気持ちや置かれている状況を「きく」ことが重要です。人の話を「きく」ときには、3種類の漢字が当てはまり、それぞれ意味が異なります。
・聞く 音や声が受動的に自然に耳に入ってくること。
・訊く 質問などをして能動的に尋ねること。
・聴く 耳を傾け、相手に寄り添い、言葉の背景も理解しようとすること。
対話においては、とくに「聴く」が大切です。「私はAの方法がいいと思ってるんだけど、どう思う?」と、相手の考えや意見を心から「聴く」意識をすることが重要です。
もし「いや、Bの方法がいいと思う」と言われても、「なんでよ!」とイライラせず、「なるほど! どのへんがしっくりこないか教えてもらえるとうれしいな」と、相手を理解しようとする姿勢が大切です。
お互いの心境や立場をわかり合うことで、新しいアイデアや解決策が生まれるかもしれません。相手に寄り添いながら、一緒に問題解決に努める姿勢で聴き、信頼関係を築きましょう。
夫婦の「対立」が「対話」に変わる
この6つのコツを意識すると、記事冒頭で紹介した「うまくいかない会話例」は、こんなふうに変えられるのではないでしょうか。
「いつもお仕事お疲れさま!私も仕事が忙しくなってきて家事の負担が大きくなってきたから、少ししんどいなと感じていて……もう少し早く帰ってきてもらえるとうれしいんだけど、会社的にも繁忙期だし難しいかな?」
「いつもありがとう。大変だったよね。なかなか早く帰れなくてごめん。繁忙期がまだ続きそうだから、しばらく平日は早く帰るのは難しそうなんだけど、休日になにか代わりにできることはあるかな?」
「やっぱり忙しいよね。そしたら平日は私も家事を頑張りすぎず、週末に一緒に作り置きを作ったり、溜まってる掃除や洗濯をできたりするとうれしいんだけど、どうかな?」
「たしかにそれはよさそう!繁忙期が終わったら平日もうちょっと早く帰れるようになるから、そのときにまた家事分担を見直して、お互いの負担が偏らないようにしよう」
まずはお互いに、いつも頑張っている相手にねぎらいの言葉をかけましょう。それから「Iメッセージ」で自分の気持ちと要望を伝えるようにすると、パートナーの反応もかなり柔らかくなるはずです。
要望を伝えるときは二次感情である「怒り」ではなく、「家事の負担が大きくなってきたから、少ししんどくて……」と、自身が感じているつらさといった一次感情を伝えます。
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相談を持ちかけられたほうも、「正直に言うと難しいな……」と思った場合は、それを正直に伝えましょう。真っ向から否定したり、反論したりしてはいけません。希望を伝えて、相手がどう思うかをきちんと「きく」のがよいでしょう。
「こんなにうまくはいかないのでは?」と感じた人もいるかもしれませんね。この会話の特徴は、相手も6つのコツを意識してくれているということです。そのためパートナーとも、この6つのコツを共有しておけるとよいでしょう。
たとえ相手が非協力的であったとしても、まずはあなたが、1つでも意識して取り入れてみましょう。きっと、相手もその変化に気づき、コミュニケーションの仕方が変わってくるはずです。ぜひ、少しずつ取り入れてみてください。
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提供元:パートナーをイラつかせない会話のポイント6つ|東洋経済オンライン