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2022.02.16

「こじれた夫婦関係」修復できる・できないの岐路|プロである夫婦問題カウンセラーに聞いてみた


人生経験を積み重ねた大人同士の結婚でも、順風満帆というわけにはいかないことも……(写真:Fast&Slow/PIXTA)

人生経験を積み重ねた大人同士の結婚でも、順風満帆というわけにはいかないことも……(写真:Fast&Slow/PIXTA)

35歳以上で結婚した人たちを「晩婚さん」と名付けて、その結婚ストーリーと生活の現状を聞き取る本連載。今年1月で200回目を迎えた。夫婦揃って晩婚さんである取材先を含めると、200人以上の話を聞いてきたことになる。

筆者自身も再婚にして晩婚なので、インタビュー中に意気投合して雑談に突入することも少なくない。そんな取材先とはときどきメールで近況を伝えてもらったり年賀状を交換したりする付き合いが続いている。

人生経験を積み重ねた大人同士の結婚だけど…

彼らの多くは幸せな家庭生活を送っているが、中には不倫や離婚をしてしまったという報告もある。人生経験を積み重ねた大人同士の結婚だからと言って必ずしもうまくいくわけではないのだ。

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親子やきょうだい関係とは異なり、配偶者はもともと赤の他人。気持ちが離れると縁が完全に切れてしまいやすい。一度は人生のパートナーだったのに悲しいことだ。そして、今までは良好な夫婦関係を維持している夫婦であっても、一寸先のことは誰にもわからない。

夫婦関係がギクシャクしたとき、どうやって修復すればいいのだろうか。

近年は、客観的かつ中立的な立場のカウンセラーに電話やメールで相談できるインターネットサービスもあり、気軽に活用する人が増えているようだ。その1つである「エキサイトお悩み相談室」は2006年にサービスを開始し、累計相談件数は26万件以上に達する。コロナ禍もあって相談件数は急増しており、2019年と比較すると2021年は約2倍の相談が寄せられたという。

相談内容のほとんどは「人間関係」であり、配偶者を含む家族との関係に悩んでいる人が特に多いらしい。

夫婦問題カウンセラーのすみよしひさこさんはこの分野でのトップカウンセラーだ。夫婦どちらかの味方ではない第三者的アプローチを得意としており、相談者の4割は男性らしい。晩婚さん夫婦に起こりがちな問題と関係修復の方法について話を聞いた。

夫婦問題カウンセラーのすみよしひさこさん(写真:すみよしさん提供)

夫婦問題カウンセラーのすみよしひさこさん(写真:すみよしさん提供)

――コロナ禍で「おうち時間」が長くなって夫婦関係がむしろ悪くなってしまった、という相談が増えているみたいですね。

はい。24時間、家の中で一緒にいたら、仲のいい夫婦でもウンザリして当然かと思います。共働きの夫婦が1LDKの狭い家でそれぞれテレワークになり、リビングは妻が使っているので夫は玄関でノートパソコンを広げざるを得ない。そんな日常をむしろ妻のほうが苦にしている、というケースもあります。

「見たくないもの」を見てしまったその結果…

妻が子どもをしかりつける姿など「見たくないもの」を見てしまったり、在宅勤務になった夫は今まで通り家事をせずに、通勤しなければならない妻が改めて不公平感を持ったり……。

もっと深刻なのは、もともとあまり仲が良くなかった夫婦です。会社から帰ってくると「子どもにも冷蔵庫にも触るな」と妻からばい菌扱いされて、リビングにも入らせてもらえなくなったという男性もいます。コロナを理由にして、ますます相手を邪険にするケースです。

――コロナ禍は夫婦関係悪化の原因ではなくきっかけに過ぎないと感じます。いろんなケースがあるとは思いますが、関係を改善するにはどうしたらいいのでしょうか。

わかりやすくするために、関係修復をあきらめたほうがいい場合からお話しさせてください。どちらか一方が関係を修復する気持ちがまったくない、モラハラやDV、親が後ろで糸を引いている、などのケースです。

第1のケースでは、配偶者以外の異性が存在することが大半です。ちょっとした浮気や風俗店利用ではなく、不倫相手もしくは自分が本気になってしまう不倫です。

晩婚さん世代の男性が浮気するとき、社内の30代独身女性が相手だったりすることが少なくありません。結婚や妊娠に焦っている年齢なので、「奥さんと別れてください」と離婚届の書類を渡されたり、安全日だと言われていたのに急に妊娠を告げられたり。

男性も「嫁とはうまくいっていない。別れるつもりだ」などと調子のいいことを言ったりするので自業自得です。慰謝料を払って相手に謝罪するぐらいの勇気がなければ、奥さんとは離婚せざるを得ません。結局は不倫相手からも振られて、両方を失ってしまって苦しくて寂しい、という相談もあったりします。

――そんなときはどんなアドバイスをするのですか?

失ってしまったものを取り戻すことはできません。同じ過ちは繰り返さなければ、貴重な反省材料になります。次にいい人を見つけたときは気をつければいいのです。そして、不倫をしている他人にも、手痛い失敗例を伝えてあげられる存在になるよ、と話します。

私は不倫をやめなさいとは言いません。本人も苦しんでいて私に相談をしてくるので、そのつらい気持ちに寄り添うことが第一です。ただし、今までたくさんの不倫ケースを聞いているので、「こんなふうにバレて大変なことになってしまった人がいるよ」とは具体的に言っています。

例えば、同じ会社の男性とこっそり不倫していた女性の話。避妊薬の説明書を化粧ポーチの中に入れておいたら、幼い自分の子どもがポーチをいじって、旦那さんがいるところで説明書を出してしまったのです。当然、「どうしてこんなものを持っているのか?」となりますよね。

この不倫では、被害者である旦那さんのほうから相談を受けました。彼は奥さんを許したというので、「いったん許したのであれば、今後何があってもそのことを口にしちゃいけないよ」と伝えました。でも、本人はつらいですよね。妻はあの男とどんなことをしていたのか、などと想像してモヤモヤしてしまうようです。

DVやモラハラの場合も…

――関係修復をあきらめたほうがいい第2のケースはDVやモラハラですね。これは僕も理解できます。心身が追い詰められる前にとにかく逃げたほうがいい。第3の「親が後ろから糸を引いている」というのはどんなケースでしょうか。

晩婚さん世代でこれから結婚する男性に気を付けていただきたいケースです。結婚して子どもができたら里帰り出産をした妻が家に戻ってこない、という相談を何件も受けました。

多くの場合、妻の母親が後ろから糸を引いています。「帰っておいで。子どもはうちで育てるよ」と言うのです。子どもに一度も会わせてもらっていないという男性もいて、すごく落ち込んでいました。

勤め先や学歴が立派な人が「種」として狙われやすい傾向があり、モラハラをしていないのに「モラハラで怖い」と言いがかりをつけられた人もいます。結婚そのものよりも出産にこだわっていて、母親との関係が濃密すぎる女性には要注意です。

――では、関係修復が可能なケースとその方法について教えてください。

夫婦仲が悪くなっている原因が意思疎通の不全にある場合です。今は夫婦間であってもLINEなどオンラインでコミュニケーションをすることが増え、顔を合わせての会話が減っています。修復の余地が大いにあります。

女性からよく聞くのが、仕事場ではよく話しているはずの旦那さんが家庭ではほとんどしゃべらず、「何を考えているのかわからない」という相談です。この場合にまず考えるべきは、相手にとって「言いたいことを言わせてもらえない雰囲気になってしまっていないか」です。

例えば、旦那さんが家事や育児に関して「自分に何かできることはある?」と聞いたとします。そのときに「自分で考えれば」とか「見ればわかるでしょ」などと答えてしまったら、相手は余計なことは何も言うまい、と思うでしょう。

相手の気持ちを勝手に予想して結論づけない

――自分は機嫌よく心を開いているのに、相手がムスッとしていることもありますよね。友人知人なら距離を置けばいいのですが、家族は顔を合わせざるを得ないので嫌な気分になり、夫婦喧嘩に発展しかねません。どうすればいいのでしょうか。

相手の気持ちを勝手に予想して結論づけないことです。ムスッとしている理由をちゃんと聞けば、こちらのまったくの勘違いだったりすることもあります。

コツは、「自分はこういうふうに思われているようだけど、それで合ってる?」と答え合わせをする習慣をつけること。例えば、妻が夕食後の食器の片づけをプンプンしながらやっていたとします。自分の言動が原因かもしれないと思っても、「今日、何かあった? もしかして僕のことで怒ってる?」と穏やかに聞いてみることです。意外と自分のせいではなく、会社や実家で嫌なことがあったのかもしれません。

――なるほど。不機嫌な家族を目の前にすると自分が原因だと想像しがちですが、体調の悪さが原因だったりしますよね。夫婦のコミュニケーションを改善する方法が他にあれば教えてください。

生活習慣などで相手から何か言われたときに、すぐに反論しないこと。まずは「そうか。そういう考え方もあるね」と受けとめてください。ただし、賛同はしなくても構いません。相手の考えを肯定したうえで「僕はこう思うんだけど、どうかな?」と話せばいいのです。

独身生活が長かった晩婚さんは自分の生活の仕方がすでにできあがっています。お風呂上がりのタオルの使い方とかトイレットペーパーはシングルかダブルかなど、ちょっとした生活習慣でも変えにくいことが多いのです。相手との違いが明らかになったとき、「いい機会だから話し合おうよ。どちらのほうがいいのかな?」という姿勢がとれるといいですね。

――タオルの使い方やトイレットペーパーぐらいならば話せば折り合いをつけられそうですね。別々のものを使ってもいいですし。でも、お金の使い方や信仰などは大きな相違があると解決が難しい気がします。実際、金銭感覚の違いを埋められずに離婚してしまう夫婦は少なくありません。

お互いに話し合いができるならば関係修復は可能だと思います。でも、一方がまったく譲らなかったり頑なだったりすると、その相手は嫌になってしまいますよね。

働き方、お金、浮気に関する考え方などは結婚前にお互いの「当たり前」を確認しておくことをお勧めします。配偶者が他の異性がいる場に1人で行くだけでも嫌だという人もいれば、「体の関係さえなければ泊まりがけの旅行に行っても浮気じゃない」と考える人もいるからです。

自分の取扱説明書を相手に渡すつもりで取り組むとよいでしょう。日本ではまだあまり知られていませんが、アメリカなどでは「プリマリタルカウンセリング」といって第三者であるカウンセラーを間に挟んで結婚前に話し合うことが一般的に行われています。

離婚紛争での弁護士とは違い、どちらの側にも立たずに両者が言っていることの通訳や交通整理をするのがカウンセラーの役割です。関係性が悪化してから夫婦でカウンセリングに行くのは難しくても、結婚を予定している恋人と「もっと仲良くなるために行こうよ」という姿勢でならば受けやすいと思います。

「答え合わせ」の重要性

プリマリタルカウンセリングは面白そうな試みだが、すでに結婚生活を送っている既婚者にとっては「時すでに遅し」だ。結婚相手の意外な価値観や生活習慣にびっくり仰天しながらもなんとかやり過ごしていくしかない。

しかし、相手の気持ちを勝手に予想せずに「答え合わせ」をする習慣は今夜からでも実践可能だと思った。「あの人は自分のことをこう思っているに違いない」という決めつけが怒りを増幅させ、相手への態度も悪くなり、結果として関係性がますます悪化させたりする。それを避ける道はあるのだ。

他の人間関係とは違い、夫婦は2人きりになる時間が少なくない。それだけ仲違いもしやすいけれど、仲直りできるチャンスも多い。不機嫌な配偶者に話しかけるときは「なんであんなことで怒ってんだよ!」ではなく、「何かあった? あのことで怒っていると僕は思うけど、合ってる?」を口癖にしたい。

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提供元:「こじれた夫婦関係」修復できる・できないの岐路|東洋経済オンライン

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