2023.01.11
1型糖尿病とは〜原因・症状・治療を分かりやすく解説〜
「病院で1型糖尿病と言われたけど、基礎的な部分をもう一度整理して知りたい」
そんなあなたの疑問に答えるため、本記事では1型糖尿病の原因・症状・治療についてわかりやすく解説していきますね。
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1型糖尿病とは
1型糖尿病は、膵臓のβ細胞(インスリンを出す細胞)が壊されてしまう病気です。膵臓からインスリンがほとんど出なくなるため、血糖値が高くなります。
1型糖尿病は世界的に見ても少なく、糖尿病全体の約5~10%の割合です。大人になってからも注意は必要ですが、子供など若い人を中心に発症します。
参考記事:インスリンとは〜糖尿病との関係・療法・注射の使い方を分かりやすく解説〜 ※外部サイトに遷移します
なぜ起こる?1型糖尿病の原因
1型糖尿病で膵臓のβ細胞が壊されてしまう原因というのはよくわかっていません。
ただし、1型糖尿病の原因としては『自己免疫(※)』や『遺伝』が関わっていると考えられています。
(※)免疫の反応が正しく働かないことで自分の細胞を攻撃してしまうこと
2型糖尿病との違い
下の表に、1型糖尿病と2型糖尿病の違いをいくつかまとめました。
参考記事:2型糖尿病とは〜原因・予防・治療のポイントを初心者向けに解説〜 ※外部サイトに遷移します
治る病気なのか
1型糖尿病は現在のところ、完全に治る治療法というものはありません。
治療はずっと続けていく必要があります。正しい治療を続けて、合併症を予防したり進行を防いだりすることで、1型糖尿病と上手に付き合っていくことが大切です。
症状について
下の表は、1型糖尿病で起こる代表的な症状と原因をいくつかまとめたものです。
※体内で作られる血糖値を下げるインスリンが不足し、血糖値が非常に高くなり体内のバランスが崩れる状態
原則、治療はインスリン療法
1型糖尿病はインスリンの分泌不足が原因であり、インスリンを補充することが必要です。そのため、治療はインスリン療法が中心になります。
インスリン療法には、『インスリン頻回注射療法』と『持続皮下インスリン注入療法』があります。
インスリン頻回注射療法は、1日原則4回(食事前+寝る前)のインスリン注射を打つ治療法です。
持続皮下インスリン注入療法は、インスリンポンプを使用して持続的にインスリンを注入したり、食事の前に追加でインスリンを注入したりする方法です。
低血糖に注意
1型糖尿病は血糖のコントロールが難しいため、インスリンの量が多かったり運動をしすぎたりしてインスリンが効きすぎると低血糖を起こしやすくなります。
そのため、低血糖の症状(頻脈・冷汗が出る・手が震えるなど)が起きた時に食べられるブドウ糖や飴・ジュースを常に持ち歩くことや、夜間に低血糖を起こしやすい場合や激しい運動をする前に予防的にビスケットなどを食べることが大切です。
参考記事:低血糖症とは〜原因・予防・対策から機能性低血糖まで幅広く紹介〜 ※外部サイトに遷移します
食事でのポイントは
1型糖尿病の場合、基本的には常識の範囲内で何を食べても大丈夫です。
ただし、生活スタイルや食事の内容によってインスリンの調整が必要なので、日頃の食事について主治医や栄養士と内容を共有しておくことが必要になります。
もし肥満がある場合は、適正体重に近づけるような食事療法をすることが望ましいとされますので、栄養士などに相談してみてください。
また、血糖値は炭水化物と大きな関わりがあります。炭水化物の摂りすぎ・抜きすぎには注意をしましょう。
1型糖尿病の寿命は伸びている
2015年にスコットランドで行われた調査によると、1型糖尿病の人はそうでない人に比べて平均余命が、男性で11.1年、女性で12.9年短いと報告されています。
しかし、1975年にアメリカで行われた調査では、1型糖尿病の人はそうでない人よりも寿命が27年短いと報告されており、大幅に寿命が改善されていることがわかります。
1型糖尿病が直接の原因というよりは、1型糖尿病による合併症が原因で余命が失われることが考えられるため、正しい治療を受けて合併症の発症や進行を予防していくことが大切です。
完治を目指し、最新治療薬にも期待
1型糖尿病の治療については、現在も様々な研究がされています。
先端治療としては、『膵臓の移植』や『膵島(インスリンを作る細胞)移植』などがあります。
これらは、成功すれば体の中でインスリンを作ることができるようになり、インスリン治療をしなくても良くなるというメリットがありますが、移植を受ける負担が大きいのと移植後の拒絶反応を抑えるための免疫抑制療法というものが必要です。
研究中の治療としては、iPS細胞(※)を使って膵臓のβ細胞を作るという『再生医療』や、1型糖尿病の原因である自己免疫を抑える治療である『免疫療法』などが研究されています。
その他に、自己免疫疾患の治療に使われているお薬が糖尿病に効果があるのではないかと研究をする動きもあるようです。
(※)自分の細胞を使って体のあらゆる細胞や組織になることができる細胞
1型糖尿病でよくある質問をまとめました
治療と仕事の両立は問題ないか
1型糖尿病でも、就職して仕事をすることは可能です。
たしかに、「仕事柄、外食が多い」「不規則な仕事でインスリンを打つのが難しい」などの問題が起きることがあるかもしれません。
そんな時は、職場の一部の人にでも1型糖尿病であることを伝えてサポートしてもらったり、自分の血糖値の変動を把握してインスリンを打ったり捕食をしたりするなど工夫をしてみてください。
また、主治医や家族・職場の人と相談しながら、対処法を考えていくことが大切です。
妊娠でのリスクはあるのか
1型糖尿病の方でも、妊娠・出産をされている方は多くいます。
しかし、血糖コントロールが悪い場合や合併症が進行している場合は、あなただけではなく、お腹の中の赤ちゃんにも負担がかかります。
そのため、日頃からの適切な治療・血糖コントロールと、主治医に事前に相談をし計画的に妊娠をすることが大切です。
子供の学校生活に制限はあるのか
学校生活に制限がかかるというよりは、皆で連携して対応していくことが大切です。
主治医・栄養士・医療スタッフ・担任の先生・保健の先生と連携を取り、「インスリンをいつ打つか」「低血糖になったらどうするか」「捕食はどうするか」「体育や部活動、課外活動のときはどうするか」など、さまざまな場面の対応を考えておく必要があります。
また、子供の学校生活に欠かせないのが友達との関わりです。学校の友達に、1型糖尿病について何を話すか・どこまで話すかを決めておくことが大切です。
1型糖尿病の有名人
1型糖尿病と上手に付き合いながら、さまざまなところで活躍している人たちは沢山います。
例えば国内では、トップスポーツの世界で大活躍の選手がいます。元阪神タイガースの岩田稔さん、ヴィッセル神戸のセルジ・サンペール選手などです。
また海外では、イギリスのテリーザ・メイ元首相が精力的に政治活動を行っています。
まとめ
それでは本日のまとめです。
以上です。
1型糖尿病と診断されて、悲観してしまったり受け止められなかったりするかもしれません。
でも、正しい治療をすれば何でもできること、これからの新しい治療に期待して、あなたが上手に1型糖尿病と付き合ってもらえればよいなと思います。
参考文献 ※外部サイトに遷移します
医療情報科学研究所(2019):病気がみえるvol.3 糖尿病・代謝・内分泌 第5版,メディックメディア,18-21
国立国際医療研究センター糖尿病情報センター(2016):1型糖尿病ってどんな病気?(検索日:2021.3.15)
国立国際医療研究センター糖尿病情報センター(2016):1型糖尿病の治療について(検索日:2021.3.15)
国立国際医療研究センター糖尿病情報センター(2016):1型糖尿病と付き合っていく(検索日:2021.3.15)
執筆者:副編集長 白石香代子
山口県立大学家政学部栄養学科卒業後、人材業界を中心にセールスやコンサルタントとして交渉力・語彙力など幅広いコミュニケーションスキルを培う。その後、中国大連にて日系企業のフードアドバイザー、日本人学校の食育セミナー講師として活動。現在、H2株式会社とクリニックでの栄養士業務、特定保健指導を兼任。その他、中国高齢者施設の栄養監修なども手掛けている。管理栄養士、東京糖尿病療養指導士の資格を保有。
記事提供:H2株式会社
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提供元:1型糖尿病とは〜原因・症状・治療を分かりやすく解説〜|【シンクヘルスブログ|H2株式会社】