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2022.12.27

平気で「ケーキ」を買う人が知らない超残念な真実|「そんな"裏側"が…」日本人の盲点!驚きの実態


日本人が知らない「あまりに残念なケーキの裏側」は?(写真:kouta/PIXTA)※写真はイメージです

日本人が知らない「あまりに残念なケーキの裏側」は?(写真:kouta/PIXTA)※写真はイメージです

70万部の大ベストセラー『食品の裏側』の著者、安部司氏が開発したレシピ集『世界一美味しい「プロの手抜き和食」安部ごはん ベスト102レシピ』が9刷7万部を突破するベストセラーになり、話題を呼んでいる。

『食品の裏側』発売後、全国の読者から受けた「何を食べればいいのか?」という質問に対する答えとして、安部氏が自ら15年かけて開発した膨大なレシピノートの中から、「簡単に時短に作れるレシピ」を厳選した1冊だ。

いまなお食品添加物の現状や食生活の危機をメディア等で訴え続けている安部氏が「平気で『ケーキ』を買う人が知らない超残念な真実」について語る。

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「市販のケーキ」は添加物なしではできない?

私は長らく食品専門商社で添加物を扱っていました。そこで年末に突出して売れる添加物がありました。それは「乳化剤」です。

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「乳化剤」というのは油と水のような「本来混ざりあわないもの」を混ぜ合わせて均一にするもので、食感をなめらかにしたりするなど「さまざまな働き」があります。

では、なぜ年末に「乳化剤」が暗躍するのでしょうか。

それはひとえに「ケーキ」です。クリスマスはもちろん、最近ではお正月のお祝いにケーキを食べる人も増えています。

この市販のケーキに「乳化剤」が大量に使われるのです。

「乳化剤」は「クリーム」にも「スポンジ」にも「チョコレート」にも「バタークリーム」にも使われる「マルチで便利な添加物」なのです。「乳化剤なしでは市販のケーキはつくれない」と言っても過言ではありません。

もちろん、「乳化剤」だけではありません。市販のケーキには「大量の添加物」が使われていることが少なくありません。

今回は、この「乳化剤」を含め、「市販のケーキ」について考えてみたいと思います。

なお、ここで述べている「市販のケーキ」とは「大手メーカーの販売する大量生産品」を指していて、「街のケーキ屋さんが1つ1つ丁寧に手づくりしているもの」はこの限りではないことを最初にお断りしておきます。

大量生産品のショートケーキには「純粋な生クリームではないもの」が使われることも多い(写真:kouta/PIXTA)※写真はイメージです

大量生産品のショートケーキには「純粋な生クリームではないもの」が使われることも多い(写真:kouta/PIXTA)※写真はイメージです

「市販のケーキ」といってもいろいろありますが、今回はケーキの定番である「いちごの生クリームショートケーキ」を取り上げたいと思います。

みなさんが「生クリームのショートケーキ」だと思って食べているケーキのクリームが、「本当は生クリームではないかもしれない」と言ったら驚きますか?

「市販のケーキ」には「純粋な生クリームではないもの」が使われていることが、実に多いのです。

「生クリーム」ではなく「クリームもどき」が…

まず「生クリーム」とは何か。

食品衛生法では「クリームとは生乳、牛乳、または特別牛乳から脂肪以外の成分を除去したものをいう」と定義されています。

「乳脂肪分18%以上、乳脂肪以外の脂肪および添加物を一切含まないもの」だけを「クリーム」と呼ぶことができ、「クリーム」として販売できるのです。

ところが、「市販のケーキのクリーム」には、これを含んだ3種類があります。

(1) クリーム(純品)*「生クリーム」として売られているもの
いわゆる「生クリームだけ」のもの。

(2) クリーム+添加物 *「純乳脂」として売られているもの
「生クリーム」に「乳化剤」や「安定剤」などの添加物を入れたもの。

(3) クリーム+植物性油脂+添加物 *「ホイップクリーム」として売られているもの
「生クリーム」に「植物性油脂を乳化させてクリーム状にしたもの」を混ぜたもの。

規格があるのは(1)だけです。これだけが「生クリーム」と謳うことができます。

(2)は添加物を使っているため、「生クリーム」と表示できませんが、昔は「純クリーム」として売られており、最近は「純乳脂」として販売されていたりします。

(3)は「生クリーム」も一部には使われますが、ほとんどのケースで「植物性油脂」のほうが多く配合されています。後述しますが「植物性脂肪が27%」「生クリームが18%」といったように「『植物性油脂』のほうが多い」ものもあります。

もちろんこれも「(生)クリーム」とはいえず、「ホイップクリーム」などと謳って売られています。「生クリーム」っぽい感じを出したいのでしょう。

見た目は同じ「クリーム」ですが、実際には「3種類」あるのを知っていますか?(写真:セーラム /PIXTA)※写真はイメージです

見た目は同じ「クリーム」ですが、実際には「3種類」あるのを知っていますか?(写真:セーラム /PIXTA)※写真はイメージです

この「(2)純乳脂」と「(3)ホイップクリーム」には、もちろんそれぞれ「乳化剤」が使われています。

「(3)ホイップクリーム」は「乳化剤」がないとそもそもできません。

「乳化剤」を使うことで、口当たりがよくなり、「起泡性」といって泡立ちが良くなり、きめ細かなクリームができるからです。

この「(3)ホイップクリーム」ですが、表示が実にわかりにくい。

市販の「ホイップクリーム」の表示を見ると、「乳等を主要原料とする食品」と書いてあります。これを見たら、みんな「生クリームが主成分」だと思いませんか?

でも、今述べたように「ホイップクリーム」の主原料は「植物性油脂」です。

「ホイップクリーム」の主原料は「生クリーム」ではなく「植物性油脂」であることも多い(写真:フォトミー/PIXTA)※写真はイメージです

「ホイップクリーム」の主原料は「生クリーム」ではなく「植物性油脂」であることも多い(写真:フォトミー/PIXTA)※写真はイメージです

つまり、この表示は「乳製品を主成分としてつくった」という意味ではなく、簡単にいえば「乳製品の性質を"主要原料"としてつくった(一番多く使った"主成分"ではないけれど、メーカーとしてはこれを"主要の原料"と考えてつくった)」という意味なのです。

「あくまでメーカーにとって主要な成分である」ということをいっているのですが、こんな「消費者にとってわかりづらい表示」がまかり通っているのはおかしいと思いませんか?

「ホイップクリーム」の油の安全性は?

わかりづらい表示もさることながら、私が危惧しているのは「ホイップクリーム」に使われる「植物性油脂」の安全性です。

「植物性油脂」というと、たんに「なたねやコーンなどの植物から抽出した油」と思うでしょう。でも「植物性油脂」といっても、実際には「精製加工油脂」の可能性が考えられます。

「精製加工油脂」というのは、「植物性油脂」を高度に精製して人為的に加工を施したもの。「精製」とは、油に含まれる余計な成分を取り除くことをいいます。

マーガリンやショートニングなども「精製加工油脂」の一種ですが、食べる側としては「安全性の不安」がつきまといます。

というのも「精製加工油脂」は「加工」の工程で「水素添加」などが施されることで「トランス脂肪酸」と「ジヒドロ型ビタミンK1」が発生することが指摘されています。

「トランス脂肪酸」は動脈硬化や心臓病のリスクを高めかねない「健康に悪い油」です。また「ジヒドロ型ビタミンK1」は脳出血を促進させるリスクがあるとして安全性を疑問視する声もあります。

「ホイップクリーム」や「ショートニング」「バタークリーム」「マーガリン」などの乳製品には、この「精製加工油脂」が使われていることが多いのが実態だと思います。

そもそも、この手の「ホイップクリーム」は、安っぽい味がして私にはちっともおいしさがわかりません。「ホイップクリーム」のほうが「生クリーム」に比べると食感が重いので、それを好む人もいるのでしょうが……。

そして、大量生産される「市販のケーキ」には、この「ホイップクリーム」が使われていることが少なくないのが現状なのです。

ある一流ホテルのケーキも、やはり「ホイップクリーム」を使っているそうです。

つくっているシェフに直接聞いたところ、その配合は「植物性油脂が27%」で「生クリームが18%」だというのです。一流ホテルの中にも「『植物性油脂』の比重のほうが多いクリーム」を使っているところもあるということです。

「一流ホテルがこういうものを出すのか……」と驚きましたが、お客さんは「生クリームのケーキ」だと思って食べているのでしょう。

では、なぜ「生クリームだけ」でつくらないのでしょうか?

一番の理由は「コスト」です。「生クリーム」を使うより「植物性油脂」の入ったクリームを使ったほうが、はるかに安くつくのです。

「ホイップクリーム」を使えば安く、しかも「絞った形」が維持されヘタりにくい「固くてしっかりした形」がつくりやすい(写真:フォトミー/PIXTA)※写真はイメージです

「ホイップクリーム」を使えば安く、しかも「絞った形」が維持されヘタりにくい「固くてしっかりした形」がつくりやすい(写真:フォトミー/PIXTA)※写真はイメージです

もうひとつは「製造過程における利便性」です。

「生クリーム」だけだと、絞ったときにヘタって、形が保持しづらいのです。

これが「(3)ホイップクリーム」であれば、「乳化剤」の作用で、「絞った形」が維持され、「固くてしっかりしたデコレーション」がつくれるのです。

また冷凍して保管するときの「耐冷凍性」も、「乳化剤」を使った「ホイップクリーム」のほうが高いのです。クリームがヘタったりボサボサになったりするのを「乳化剤」が防いでくれるからです。

「スポンジ」にも使われる「大量の乳化剤」

クリームの「乳化剤」および「安全性」の話をしてきましたが、今度は「スポンジ」にも目を転じてみましょう。

ケーキの「スポンジ」をしっとりふんわりさせるためにも「乳化剤」が使われる(写真:kouta/PIXTA)※写真はイメージです

ケーキの「スポンジ」をしっとりふんわりさせるためにも「乳化剤」が使われる(写真:kouta/PIXTA)※写真はイメージです

「市販のケーキ」はスポンジにも「乳化剤」が使われます。これはもう絶対といっていいほど使われます。

まず「乳化剤」を使うことで、生地に「小さな泡」を立たせることができ、しっとりふんわりしたスポンジができます。

時々、市販のケーキで「口当たりが重いな」と感じるものがありますが、あれは「乳化剤」の使い方がヘタなのだと思います。

また「乳化剤」は、スポンジを冷凍する際にも不可欠です。これは後で述べます。

ちなみに「乳化剤」にも「グリセリン脂肪酸エステル」「カゼインNa」「レシチン」など、いろいろ種類があり、「クリーム用」「スポンジ用」と細かく用途が分かれているのを使い分けるのです。

たった1つのケーキに「クリームで10種類」「スポンジで10種類」、合計20種類ほどが使われることも珍しくありません。でも表示は「乳化剤」とひとこと書けばOKです。

クリスマスシーズンには、大量のクリスマスケーキが売りさばかれます。

「【前編】平気で『おせち』を買う人の超残念な盲点」「【後編】平気で『おせち』を買う人の超残念な盲点」でも述べたことと同じことですが、クリスマスケーキは「冷凍品」が多く出回ります。前日や当日につくっただけでは、大量の需要に供給が追いつかないからです。

【前編】平気で『おせち』を買う人の超残念な盲点 ※外部サイトに遷移します

【後編】平気で『おせち』を買う人の超残念な盲点 ※外部サイトに遷移します

この「冷凍ケーキ」には、2つの問題があります。

まず冷凍してしまうと、どうしても味や風味が落ちてしまいます。同じお店のケーキなのに、クリスマスに買うとイマイチおいしくないということも珍しくありません。

冷凍すると、品質も劣化します。業者は「スポンジは冷凍しても劣化しない」というけれど、スポンジのようにある程度水分のあるものはやっぱり「冷凍変性」します。

そして、これを防ぐために添加物が多く使われるのです。

ケーキを買うときも「表示」をチェックしよう

業界用語で「耐冷凍性」といいますが、「乳化剤」に加えて「加工でんぷん」や「トレハロース」「ソルビトール」などを併用して使うことで、この「冷凍変性」を防ぐことができるのです。

さらに、家庭で解凍したあとの日持ちを考えて「pH調整剤」も入れます。

だから「冷凍のクリスマスケーキ」は、「普通のチルド(冷蔵)のケーキ」より添加物が多い可能性があります。

今年、大量生産された「市販のクリスマスケーキ」を買うなら、ぜひ「食品表示」をチェックしてみてください。添加物がずらっと並んでいたりすることに驚かれるかもしれません。

大量生産された「冷凍品のクリスマスケーキ」には「添加物」も多く使われる(写真:shige hattori/PIXTA)※写真はイメージです

大量生産された「冷凍品のクリスマスケーキ」には「添加物」も多く使われる(写真:shige hattori/PIXTA)※写真はイメージです

ちなみに繰り返しになりますが、クリスマスケーキを冷凍販売するのはメーカーの話で、街のケーキ屋さんはケースバイケースだと思います。

私の妻は、少し前まで小さなケーキ屋さんを営んでいましたが、「冷凍はしない」というポリシーでやっていましたから、毎年徹夜でつくっていました。だから数がつくれず、50個がせいぜいでした。

うちはもう店を閉めてしまいましたが、「本物の生クリーム」と「いい素材」を使って、一生懸命つくっているケーキ屋さんも、日本中にたくさんあるはずです。ぜひ探してみてください。

それから、最後になってしまいましたが、ショートケーキといえば「いちご」についても、ひとこと触れておきたいと思います。

ショートケーキ、クリスマスケーキにはいちごが欠かせません。みなさんご存じのとおり、いちごは「春に実のなる果物」ですが、近年ではハウス栽培で一年中手に入ります。

このいちごは「皮をむかずに食べる果物」ですが、とくに「見た目」が重視されるため、ほかの野菜や果物と比べても、農薬が多く使われる傾向にあります。

「有機栽培のいちご」も存在しますが、数がすごく少ないですし、「見た目」が劣るため、クリスマスケーキなどの「デコレーション」には不向きだったりします。

いちごにはとくに「きれいな見た目」が求められるため、多くの農薬が使われる傾向にある(写真:フォトミー/PIXTA)※写真はイメージです

いちごにはとくに「きれいな見た目」が求められるため、多くの農薬が使われる傾向にある(写真:フォトミー/PIXTA)※写真はイメージです

私の住む福岡でも有機で栽培しているところがあるけれど、注文がまったく追い付きませんし、スーパーではなく「宅配」で売られていたりします。

スーパーでは「無農薬野菜」や「有機野菜」が一部の売り場で売られていたりしますよね。でも「有機栽培のいちご」「無農薬のいちご」を売っているのを見かけたことがある人は、すごく少ないのではないでしょうか。

それほど「いちごはとくに『見た目』が重視される果物」ですし「農薬なしでは『きれいな見た目』にするのが難しい果物」なのです。

「裏側」を知ったうえで「それでも買うか」を選ぶ

ケーキは子どもも大人も大好きだし、家族そろってお祝い事などに食べることも多いものです。

みんなが安心して、おいしく、楽しく食べられるよう、「ケーキ選び」にはぜひ慎重になっていただきたいと私は思います。

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『食品の裏側』 クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

「見た目が豪華」「有名メーカー」というだけで選ぶのではなく、私たちの知らない「裏側」で、いったい「何が使われている」のか、「どのようにつくられている」のか、ぜひそうした「食品の裏側」をひとりでも多くの人に知ってほしいと思います。

その「裏側」を知ったうえで、「それでも自分は市販品を買うのか」それとも「少し面倒だけど自分で手づくりするか」その「選択」をしてほしいと思うのです。

それに加えて、ケーキに関しては「植物性油脂」でつくられる「ホイップクリーム」なのに「乳等を主要原料とする食品」などという「消費者がわからないような表記」がまかり通っている、その「構造的な問題」についても、「本当にこれでいいのか」みなさんにぜひ考えていただきたいと思います。

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提供元:平気で「ケーキ」を買う人が知らない超残念な真実|東洋経済オンライン

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