2022.12.16
【頭のかゆみ】気づくと手が…「かき癖」直すコツ|イライラやストレスが原因、病気で起こる事も
気がつくとかいている頭。この「かき癖」を直したい人、多いのではないでしょうか(写真:USSIE/PIXTA)
気がつくと頭をかいている。どうにも頭のかゆみが気になってしかたがない。とくに皮膚炎などがあるというわけでもないのに、ついつい頭に手が伸びて、かいてしまう。そうした癖に悩まされるということはよくあることだ。
頭皮はなぜかゆくなるのだろうか。頭皮がかゆくなる原因や病気などについて、皮膚科専門医の近畿大学医学部教授の大塚篤司医師に聞いた。
自分の頭にふと意識を集中させてみると、なんとなくどこかかゆかったり、ムズムズしたりするもの。頭には髪が生えているので、「毛が当たる場所など、刺激がある場所はとくにかゆみを誘発されやすい」と大塚医師は話す。とくに、イライラしたときに頭をゴシゴシこする癖がある人などは、それによって頭皮に傷がついてしまい、やがて湿疹になってかゆみが出るというパターンがあるという。
「ストレスが皮膚疾患に関係していることはよく知られています。イライラやストレスによって頭のかゆみは引き起こされやすい」(大塚医師)
取材皮膚科医も悩んだ「癖」
無意識に頭をかく癖がついてしまっている場合はどんな対処法があるのだろうか。自身も一時期、髪の毛を抜いてしまう「抜毛症(ばつもうしょう)」に悩まされたことがあるという大塚医師はこう話す。
「人間にとっては、なんでも『癖を直す』というのはやはり一番難しい。頭をかく癖のある人というのは、それが一種の快楽になってしまっています。私の場合は意識的なペン回しによって物理的に頭に手がいかないようにして、髪を抜く頻度はかなり改善しました。頭をかくよりも『楽しい、気持ちいい』となるようなものを見つけてみてください」(大塚医師)
ペン回し以外で大塚医師のおすすめは、「ビーズクッションを触る」。物理的に頭に手をいかせないことが大切だ。
「もしどうしても頭をかいてしまうという場合、頭のかき方のマイルールをあらかじめ作っておくといいですね」(大塚医師)
どうしてもかゆいときには、爪でひっかいたりせずに、指の腹で頭皮をこするように頭をかくといいという。そうすれば少しでも頭皮へのダメージを少なくすることができる。保冷剤をタオルで包んで当てるのも、一時的にかゆみを抑えるには効果がある。子どもの場合は、髪を切って坊主頭にしてしまうことで、頭をかく症状が治まることもあるという。
普段はそれほど頭がかゆくないという人でも、季節によっては頭のかゆみが出やすいということもあるかもしれない。
大塚医師によると、春はスギ花粉、秋もブタクサ花粉などの花粉症で目のまわりはかゆくなりやすいが、頭皮のかゆみの訴えは多くないという。頭皮のかゆみが出やすいのは空気が乾燥する冬や、暑さで汗をかきやすい夏だ。それぞれ、どう対処したらいいのだろうか。
「冬は頭皮が乾燥しないように、髪の洗いすぎは避けて1日1回までにしましょう。乾燥肌の人なら、頭皮の乾きが気になったら、肌用のローションで保湿してもいいでしょう。夏は汗をかくことによって、頭皮のかゆみが誘発されやすいです。汗をかいたら、こまめな洗髪で清潔を保つようにしましょう。シャンプーをよく泡立てて指の腹でやさしく洗うことができるなら、夏場は1日2回くらい洗髪しても大丈夫です」(大塚医師)
大塚医師によると、突起の付いた洗髪用グッズ(洗髪ブラシ)を使うのはNGだという。使い方によっては頭皮を傷つけてしまうおそれがあるためだ。頭皮を傷つけず、湿疹やかゆみを誘発させないためには、洗髪は「泡だけで洗う」のが正解だという。
寝る向きを毎日変えて枕も清潔に
頭皮のかゆみが何か病気のサインという場合もあるのだろうか。
「頭皮の皮脂のバランスが崩れて起こる脂漏性皮膚炎も、べたべたした脂性ふけとともにかゆみが出やすいです。尋常性乾癬(かんせん)の発疹もしばしばかゆみを伴います。水虫と同じカビの仲間である白癬菌が頭部に感染して起こるケルスス禿瘡(とくそう)は脱毛症状を伴いながら強いかゆみが出やすいです」(大塚医師)
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かゆみが病気によるものかどうかは素人にはわかりにくい場合も多い。かゆみに加え、ふけや脱毛を伴うなど、「何かおかしいな」と思ったら、早めに医師の診察を受けて診断を仰ごう。
日頃のセルフケアとして、頭皮のかゆみ予防にできることはあるだろうか。
「まず、清潔な枕で寝ることは大事です。せっかく毎日洗髪をして頭皮の清潔を保っていても、何日も枕カバーを替えずに汚れた枕で寝ていると、そこから雑菌が繁殖して、頭のかゆみの原因になりやすいです」(大塚医師)
寝るときの向きというのも大事だという。頭のどちら側かをいつも下にして寝る癖があるという人も多いだろう。この「寝る向き」も毎日ローテーションで変えたほうがいいと大塚医師は言う。
「いつも同じ向きばかりで寝ていて、頭の同じ場所がいつも枕に当たっていると、そこがいつも汗ばんで湿疹もできやすい。さらに、顔も枕に当たる側はしわにもなりやすいです。できるだけ寝る向きは日々ローテーションで変えることをおすすめします」
昨今はさまざまなヘアケア剤が市販されているが、その効果や頭皮への影響はどうなのだろうか。
「アルコール成分入りの少しスーッとするタイプの育毛剤は、脂漏性皮膚炎などの頭のかゆみを和らげてくれるようです。ただし、乾燥気味などで頭皮の状態が悪い場合だとかぶれやすくなるので注意が必要ですね。頭皮に湿疹などがあるときには、白髪染めなどの毛染め剤はかぶれの原因になるため、使用を避けましょう」(大塚医師)
帽子好きな人も頭のかゆみが気になる場合は注意が必要だ。帽子をかぶると汗がこもって蒸れやすいため、頭皮のかぶれや湿疹も生じやすくなる。できるだけ通気性のいい素材を選び、こまめに着脱するなどして、汗がこもらないようにすることがかゆみの予防には大切だ。帽子も枕と同様、洗濯などをして清潔を保っておきたい。
頭のかゆみは皮膚科専門医へ
どんな症状がみられたら病院やクリニックへの受診を考える必要があるのだろうか。
「かゆみで仕事が手につかないなど、生活に支障が出るほどかゆみが強いときは皮膚科を受診しましょう。また、頭皮から汁が出てきたり、かゆみが痛みに変わってきたりしたときにも受診してほしいと思います」(大塚医師)
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そもそも、頭のかゆみについて、「どこの診療科で診てもらったらいいのかわからない」という人もいるかもしれない。頭皮の診療は皮膚科の管轄だが、どの皮膚科でもしっかりと対応してくれるのだろうか。
「たとえば、内科や泌尿器科など、複数の診療科をいくつも標榜しているクリニックの皮膚科よりも、皮膚科専門の医療機関をおすすめします。皮膚科専門医であれば、皮膚のさまざまな症状、ケースでも経験や知識も豊富ですから、安心して受診できます」(大塚医師)
頭皮のかゆみで困っていたら、ぜひ一度、皮膚科専門医に相談してみてはどうだろう。
(取材・文/石川美香子)
近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授
大塚篤司医師
千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。
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提供元:【頭のかゆみ】気づくと手が…「かき癖」直すコツ|東洋経済オンライン