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2022.12.08

身寄りのない「単身高齢者」が陥る社会的孤立|身元保証や死後の手続きを誰が担うのか


単身高齢者は孤立しやすい。日常生活や緊急時に頼る人が乏しい(撮影:今井康一)

単身高齢者は孤立しやすい。日常生活や緊急時に頼る人が乏しい(撮影:今井康一)

最も孤立に陥りやすいのが、高齢の単身男性だ。身寄りのない高齢者が増える中、家族に頼ってきた機能をいかに社会で担うかが問われている。特集「1億『総孤独』社会」の一覧はこちら。

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ウィズコロナの時代に入り、人との交流が少しずつ戻ってきた。コロナ禍では、人と人とのつながりを保つことが難しくなり、生きづらさを感じる人が増えていたので、状況が変わってきたことをうれしく思う。

とはいえ、地縁、血縁、社縁といった共同体機能が脆弱化する中、社会的孤立はコロナ禍前から問題にされていた。コロナ禍では孤立が一層深刻になり顕在化したが、社会の根底にある問題は変わっていない。本稿では、社会的孤立の実態と対策を探っていく。

「社会的孤立」とは、他者との関係性が乏しい客観的状態をいう。寂しいとか独りぼっちといった主観面を表す「孤独」とは異なる概念である。

重要な他者との関係性

もし、社会問題として「孤立」と「孤独」のどちらを重視すべきかと問われれば、筆者は「孤立」と答える。なぜなら、人は1人では生きられないからである。いざというときの支援を含め、他者との関係性は重要だ。

一方、「孤独」は主観によるため個人差が大きく、政策対応が難しい面がある。さらに、政策が主観に入り込む危うさもある。ただし、孤立や孤独を引き起こす要因は、重複する点が多い。

孤立の測定指標は定まっているわけではないが、先行研究を見ると、①会話の欠如、②「頼れる人」の欠如、③「手助けする関係」の欠如などが挙げられる。注目したいのは、「手助けする関係」の欠如が孤立指標になっている点だ。孤立を減退させるには、誰かのために何かをすることも重要になる。

ここでは、国立社会保障・人口問題研究所の「2017年 生活と支え合いに関する調査」に基づいて、孤立の実態を世帯類型別に見ていこう。まず、「会話の欠如」について、「2週間に1回以下」しか会話をしていない人の比率は、総数では2.2%なのに、高齢単身男性では14.8%に上る。

また、非高齢の単身男性においても1割弱と高い。現役期であれば職場における会話があるはずだが、無職の単身男性は、他者との会話が乏しいことも考えられる。

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次に「『頼れる人』の欠如」は、「介護や看病」「重要な事柄の相談」「日頃のちょっとした手助け」などの9項目すべてについて「頼れる人がいない」と回答した人の割合である。総数では1.7%であるのに、単身高齢男性、単身非高齢男性で高い比率になっている。

さらに、「『手助けする関係』の欠如」は、「家族・親族」「友人・知人」「近所の人」「職場の人」のそれぞれから、上記9項目中7項目について手助けを求められたときに、すべての人に対して全項目で「手助けをしない」と回答した人の割合である。総数では3.2%であったのに、単身高齢男性では2割弱、単身高齢女性と単身非高齢男性では約1割となっている。

総じて見ると、高齢と非高齢の単身男性において、会話の欠如、「頼れる人」の欠如、「手助けする関係」の欠如といった孤立に陥る人の比率が高い。とくに高齢単身男性では、上記の3指標ともに2桁を超える高い比率となっている。

では、社会的孤立は何が問題なのか。第1に、日常生活や緊急時において、必要な支援を受けることが難しくなる点である。とくに、社会的に孤立している人の中には、家族がいないか、あるいは家族との関係性が乏しい人が多い。

身寄りのない人の場合、病院同行や買い物支援などの生活支援、アパートへの入居や入院をする際に求められる身元保証、さらに本人が死亡した後の葬儀や家財処分などの死後事務を誰が担うのか。家族がいれば、多くの場合、家族が対応してきたが、身寄りのない高齢者には頼れる家族がいない。

生きる意欲や自己肯定感の低下

第2に、他者との関係性の欠如は、生きる意欲や自己肯定感の低下を招くことが指摘されている。実際、会話が少ない人ほど、自分のことを「価値がない」と考える傾向がある。生きる意欲や自己肯定感は、他者との関係性を通じて得ることが多いためであろう。

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第3に、経済的な厳しさに社会的孤立が加わると、生活困窮が一層深刻になる点だ。生活困窮が深刻化する前に支援につながれば、早期に生活再建を行える事例も少なくない。孤立しているとSOSを出す相手がおらず、深刻な状況に陥りがちである。

今後も未婚化の進展に伴い、中高年や高齢者で身寄りのない人が一層増えていくことだろう。未婚の単身者は、配偶者だけでなく子どももいないので、家族に頼ることが難しい。しかし、友人・知人などとのつながりを保っていけば、孤立を防ぐことはできる。

また、社会に求められるのは、「家族機能の社会化」である。家族機能には、生活支援、身元保証、死後事務などの手段的サポートと、たわいもない話をしたり、一緒に喜んだり悲しんだりする情緒的サポートがある。

前者の手段的サポートについては、すでにいくつかの地域で、地域のさまざまな関係団体が集まって、身寄りのない人を支えていくガイドラインを作る動きが始まっている。

また、情緒的サポートについては、身寄りのない人同士や、身寄りのない人と地域住民が支え合う「互助会」をつくる地域もある。こうした取り組みが、各地で少しずつ始まっている。

「伴走型支援」が有効

さらに、孤立者を支援する現場からは、つながり続けることを目的にした「伴走型支援」が有効との指摘がある。長期的に孤立して自己肯定感が低下している人は、自らの課題が見えないことも多い。このため、課題解決を目的にした従来の支援だけでは対応が難しい。

継続的につながり、時間をかける中で、本人が自分の課題や長所を認識し、周囲との関係を築いていく。その中で、別の展開が始まることもある。自己認識のためにも、「他者」という鏡が必要になるのだろう。政府には、こうした長期的につながり続ける支援への財政的な後押しを期待したい。

現代社会は「経済的な貧困」のみならず、「関係性の貧困」も大きな課題になっている。家族に頼ってきた機能を社会化することは、社会や地域のあり方を見直して、地域におけるつながりを再構築するきっかけになるかもしれない。

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特殊清掃現場があぶり出した「孤独死」の二極化

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提供元:身寄りのない「単身高齢者」が陥る社会的孤立|東洋経済オンライン

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