メニュー閉じる

リンククロス シル

リンククロス シルロゴ

2022.11.24

【男性更年期】30代でも発症、気付きのサイン6つ|「朝元気ない」「疲れる」はホルモン低下の兆候


人によっては30代から始まる男性更年期。気になる方は医師による自己チェック表で確認を(写真:プラナ/PIXTA)

人によっては30代から始まる男性更年期。気になる方は医師による自己チェック表で確認を(写真:プラナ/PIXTA)

中高年男性の6人に1人がかかるといわれる※ 更年期障害。男性ホルモンの減少によって現れる、女性の更年期障害と似たような心身の不調、症状を指す。

1979年に男性医学の父・熊本悦明医師が日本医学会総会で「男性にも更年期がある」と発表したとき、「生理のない男にそんなものはない」とキワモノ扱いされた。今ではその存在は事実として知られるようになってはきたが、まだまだ認知度は上がっていない。

今回はこの男性更年期障害の原因や兆候について、泌尿器科医の田村貴明医師(千葉大学大学院医学研究院泌尿器科)に話を聞いた。※2014年総務省統計より

関連記事:【男性更年期】今始めたいホルモンを保つ食生活 ※外部サイトに遷移します

働き盛りの40、50代は、体力や気力の衰えを感じても、疲れやストレスのせいにしやすく、男性ホルモンのテストステロンの低下を疑う人は少数派だろう。しかし、30代でもテストステロン低下によるプレ更年期が始まっている可能性があり、決して他人事ではないという。

「“朝起きられない”“疲れがとれない”“仕事に行きたくない”。この3つを頻繁に口にするようになったら、典型的な男性更年期のつぶやきなので、少し気にかけてほしい」と、田村貴明医師は指摘する。

単なる疲れ、ではない

「私自身、現在30代半ばですが、同年代の友人から“最近、眠れない”と相談を受けることが増えました。よく話を聞いてみると、“朝起きてもまったく元気が出ない”“仕事に行きたくない”“夜間にトイレに起きることが増えた”と、まさに男性更年期の症状そのものです。しかし、多くの人は仕事が忙しく、単に疲れが溜まっているせいだと思い込んでいます」(田村医師)

男性更年期は、正式には「加齢性腺機能低下症」あるいは「LOH症候群」という。

代表的な男性ホルモンであるテストステロンは精巣(睾丸)で作られ、性欲を高める、筋肉や骨格を作る、活力を増すなどの働きをする。分泌量は20代をピークに徐々に減り、重度のストレスがかかるとさらに低下する 。その影響で男性更年期障害が引き起こされる。

では、30代後半から50代にかけて、自身の不調の原因としてテストステロン低下を疑うべきポイントはどこにあるのか。

「一番わかりやすいのは、早朝勃起の有無です。これはエロチックな勃起とは無関係な“男の生理”であり、テストステロン低下の影響が鋭敏に現れます。また、陰茎の血管は心臓や脳の血管と比べて細い。朝立ちがないということは血管が硬くなりはじめている、いわゆる動脈硬化のアーリーマーカーです。放置していると、心臓や脳の動脈硬化へと進行していく恐れがあります」(田村医師)

このほかにも、以下のような症状が起きてくる。

身体症状:動悸、顔のほてり、発汗、頭痛、めまい、耳鳴り、筋量や筋力の低下、肩こり、腰痛、関節痛、手足のこわばりやしびれ

精神・神経症状:不眠、疲労感、くよくよする、不安感、集中力や記憶力の低下 性機能症状:性的欲求の減退、早朝勃起の減少

これらは単独ではなく、組み合わさって生じるが、特に男性では身体症状より精神・神経症状が強く出やすい傾向にあるそうだ。

注意したいうつ病との鑑別

注意したいのは、うつ病との鑑別だ。

「気持ちがふさぐ」「体がだるい」「眠っても疲れがとれない」といった症状が出た場合、うつ病かもしれないと思って心療内科に駆け込むケースもあるだろう。そこで抗うつ薬を処方してもらうことがあるが、実は「抗うつ薬を服用すると、テストステロン値が下がることがあるので注意が必要です」と田村医師は忠告する。

「個人的には、患者さんがうつ症状で心療内科へ足を運ぶのはよいことだと思っています。ただ、心療内科的なアプローチが奏功するケースもたくさんある一方で、抗うつ剤を複数処方されてもなかなか改善が見られないケースも確かにあります。これは、テストステロン低下によるうつ症状の可能性があります。心療内科の医師たちに男性更年期という概念がもっと広がれば、上手に連携して治療できるのではと期待しています」

ちなみに、テストステロン値を低下させる原因になり得る薬はほかにも報告されている。例えば、前立腺がんや男性型脱毛症の治療で使用される抗男性ホルモン薬、アレルギーの病気に使われる抗ヒスタミン薬、LDLコレステロールを下げるスタチン製剤、降圧剤などだ。ただし、これらに含まれる薬がすべてテストステロンの低下を招くわけではないので、専門医と相談することが大切だ。

本稿では、田村医師に男性更年期かどうかを見分けられる簡単なチェックリストを作っていただいた。上は本人が気にすべきこと、下は家族や仕事仲間、友人など周囲の人が気にすべきこと、になる。

男性更年期チェック表(周囲)

男性更年期チェック表(周囲)

「これらのなかに1つでも当てはまるものがあれば黄色信号です。ご自身が気付かなくても、家族など周囲の人の指摘が受診のきっかけになった方もいらっしゃいます。気になる症状があれば、がまんせずに男性更年期外来やメンズヘルス外来を受診してください。血液検査でフリーテストステロンを確認するのは、賢い健康管理法の1つといえるかもしれません」(田村医師)

テストステロンには、タンパク質にくっついているトータルテストステロンと、タンパク質から離れて血液中で動くフリーテストステロンがある。日本人の男性は加齢によって激減するのはフリーテストステロンというデータがあるので、こちらを重視している。

診断のポイントは自覚症状

男性更年期外来では、血液検査でテストステロン値を測定する。

『男性の性腺機能低下症ガイドライン2022』の診断基準では、フリーテストステロンが8.5pg/ml未満だと治療が必要な段階としている。だが、数値だけで判断できないのが男性更年期障害のやっかいなところだ。

「テストステロン値が基準より高くても症状が強く現れている方がいらっしゃいます。元々テストステロン値は個人差が大きく、個人でも体調や測定時間によって数値がバラつくのが特徴です。自覚症状が重要な診断ポイントになります」(田村医師)

そのため、田村医師は症状の程度をより詳しく知るために、海外で使われている男性更年期障害の質問票(AMSスコア)と熊本式健康調査票の両方を用いているという。

治療はホルモン補充と生活改善

治療の基本は、エンジンオイル的な役割をするテストステロン補充療法である。健康保険で認められているのは、テストステロン薬を2週間に1回、お尻や筋肉に注射するという方法だ。費用は1回数千円程度。田村医師曰く「軽い更年期障害であれば、2~3カ月で回復が期待できる」という。

一方、高齢だったり症状が重かったりする場合は、毎週の投与が必要になる。そうなると保険外診療になるそうだ。

「テストステロン補充療法に抵抗がある男性が多いことは承知しています」と田村医師。実際、テストステロン補充療法の長期継続は精巣を萎縮させ、自らのテストステロンを分泌する能力を奪う可能性があるという。

記事画像

この連載の一覧はこちら ※外部サイトに遷移します

「そのため、30代、40代の患者さんは、まずは自らのテストステロン分泌の機能を落とさないような生活改善からはじめ、様子をみながら漢方薬やサプリメント、テストステロンのクリームなどを使用していきます。患者さん一人ひとりに合った適切なやり方でテストステロンを上げて、元気を取り戻していただきたいです」(田村医師)

テストステロンを落とさないライフスタイルについては、次の記事で紹介する。

(関連記事:【男性更年期】今始めたいホルモンを保つ食生活) ※外部サイトに遷移します

(取材・文/熊本美加)

記事画像

千葉大学大学院医学研究院泌尿器科、みらいメディカルクリニック「元気ホルモンみらい塾外来」
田村貴明医師

泌尿器科専門医、ロボット(da Vinci)手術認定医、テストステロン治療認定医。所属学会は日本泌尿器科学会、日本癌学会、日本抗加齢医学会(日本アンチエイジング学会)、日本メンズヘルス医学会など多数。

記事画像

【あわせて読みたい】※外部サイトに遷移します

タブー視する日本人が知らない潤滑剤の真実

20・30代注意!「夫源病」の根深い病根の断ち方

女性に「いびき」が増える理由と具体的対処法

提供元:【男性更年期】30代でも発症、気付きのサイン6つ|東洋経済オンライン

おすすめコンテンツ

関連記事

視力と聴力が低下、軽視される「帯状疱疹」の恐怖|新年度の疲れに要注意、子どもも無縁ではない

視力と聴力が低下、軽視される「帯状疱疹」の恐怖|新年度の疲れに要注意、子どもも無縁ではない

「歳をとれば脳の働きは弱まる」と思う人の大誤解|新しい情報を入れれば一生に渡り変化し続ける

「歳をとれば脳の働きは弱まる」と思う人の大誤解|新しい情報を入れれば一生に渡り変化し続ける

カロリー削れば太らないと頑張る人を裏切る真実|エネルギーが過剰だから体脂肪が蓄積するのではない

カロリー削れば太らないと頑張る人を裏切る真実|エネルギーが過剰だから体脂肪が蓄積するのではない

「高齢者の運転事故」は糖質・塩分摂りすぎを疑え|「脳ドック」データでわかった意外な因果関係

「高齢者の運転事故」は糖質・塩分摂りすぎを疑え|「脳ドック」データでわかった意外な因果関係

戻る