2022.11.18
海外で実証、「寝る前読書」のリラックス睡眠効果|適切な本を選べば68%ものストレス軽減
入眠するには科学的に実証された効果の高い方法がある(写真:Ushico/PIXTA)
厚生労働省の調べによると、全人口の5人に1人、2500万人以上の方が「不眠症」で悩んでいるとのことです。厚生労働省のe - ヘルスネットには「不眠症は国民病」とまで掲載されています。本稿では、『3分読むだけでグッスリ眠れる本』(弥永英晃著)より一部抜粋・編集のうえ、スムーズに入眠する技法の科学的根拠をご紹介します。
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人の心は大きく分けると、二つに分類できます。「意識」と「潜在意識(無意識)」です。
意識と潜在意識の割合は1:9です。意識は、私たちが意識できる領域の10%しかなく、潜在意識は私たちが意識できない心の領域の90%を占めます。つまり、私たちが「意識できる意識」は、全体の10%しかないのです。
ですから、10%の意識の力を使って、一生懸命に眠るように努力するのと、心のほとんどを占める90%の潜在意識を使って眠るのと、どちらが効率よく、合理的かというと、潜在意識にアプローチして眠ることです。
潜在意識がパワフルなわけ
意識と潜在意識の割合は1:9なので、圧倒的に力の差があります。つまり、意図的に潜在意識にアクセスすることができれば、そこに働きかけることでグッスリ眠ることができるのです。
そこで必要になるのが「イメージの力」です。
「イメージがどうして潜在意識にアクセスするのか?」と、疑問に思う方もいるでしょう。結論から言うと、人はイメージするとき、右脳を使ってリラックスしているからです。
トイレやお風呂に入ってボーっとしていたとき、突然、悩みの答えがひらめいたり、イメージが降りてきたりしたことはないでしょうか?古代ギリシアの賢人アルキメデスが、有名な「アルキメデスの原理」を発見したのも、お風呂に入っているときでした。
人は1日に14回程度、軽い潜在意識を使える状態に入っている(催眠状態)と言われています。それは、イメージを使って、脳派をアルファ波(リラックスしたときに出る脳波)にしているときです。
じつは「潜在意識は、現実と想像(イメージ)を区別できない」という特性を持っています。たとえば、今から目を閉じて、イメージの中で「梅干しを食べるのを想像して、口の中で噛んでみてください!」と言われたとします。実際にイメージした方は、体に反応が出たはずです。きっと、じわーっと酸っぱさを感じ、口の中に唾液が広がったと思います。
唾液が出たのは、イメージ=潜在意識は区別がつかない=体の反応として唾液が出るという現象を引き起こしたからです。
映画館で怖い映画を見たとき、実際には「それが作りモノである」とわかっているのに、心臓がドキドキしたり、冷や汗が出たり、手のひらに汗をかいたりするのはなぜでしょう?
それも「映画は作りモノ」と、脳ではわかりきっているのに、あなたの体には、実際にイメージと現実を区別できず、身体感覚として現れます。
想像でも、体は本当の生理的現象として反応してしまいます。「潜在意識は現実とイメージを区別できない」という特性がありますから、イメージを現実のように捉え、物語の中で想像したことであっても、まるで現実のように体が生理的反応を示すのです。
潜在意識が「暗示を受け入れやすい」のは夜
暗示とは、潜在意識に入り込み、行動や思考、習慣を変えていくポジティブな言葉です。主に催眠療法(ヒプノセラピー)などの心理療法で使われることが多く、催眠療法士が制作した暗示を、催眠状態下のクライアントに入れることにより、よい状況に変化させていけます。催眠療法では「暗示療法」とも呼ばれます。
暗示を受け入れやすくなるのは、人が「変性意識」に入っているときと言われています。変性という言葉の通り、変化した意識を指し、簡単に言うと催眠状態ということです。
「人は1日に14回程度、軽い潜在意識を使える状態に入っている(催眠状態)」と先述しました。普通に誰でも、自然にそのような状態になります。たとえば、夜寝る前と朝起きたときの半覚醒状態とでも言うべき「まどろみ」のボーっとしている状態です。実際の催眠療法では、専門の心理カウンセラーが、眠る前のボーっとした状態にクライアントを誘導します。
催眠療法は、海外の一流大学や有名な研究者が、実際に使っています。しかも、催眠療法は眠りだけでなく、多くの現代病の疾患にも効果を出しているのです。そのほんの一例を、以下にご紹介しましょう。
・エール大学で医学博士号を取得した精神科医のブライアン・ワイス博士は、催眠療法を使用して、クライアントの心理的治療をおこなっています。
・スタンフォード大学メディカルセンターのディビット・スピーゲル医師は、乳がん治療に対して催眠療法を使用しています。
・ハーバード大学医学部では、催眠療法が神経受容体を阻害することにより、痛みや苦しみに影響を与えるという研究を発表しています。
脳科学的に、あくびをしているなど眠そうな人物や、ふわふわリラックスしている人物や動物を見ると、脳の「ミラーニューロン」が反応して、自分も眠くなってしまうことがわかっています。
ミラーニューロンとは、他人の行動を見て、自分のことのように感じる脳細胞です。まるで鏡に映ったように、自分が同じ行動や反応をすることから、そう名づけられました。
「共感回路」とも言われるミラーニューロンは、イタリアのパルマ大学のジャコーモ・リッツォラッティ教授らによって発見されました。ミラーニューロンは、見たものだけでなく、言葉などからも影響を受けます。
「幸福ホルモン」であるセロトニンが分泌される
人は幸せな気分に浸っていると、脳の幸福ホルモン(セロトニン)が分泌されます。この本を読むことで、イライラや不安、落ち込みがなくなっていきます。
よい睡眠をとれば、成長ホルモンやリラックス作用のあるメラトニンが分泌されるので、そもそものイライラや不安を感じることが少なくなります。
2009年、イギリスのサセックス大学でおこなわれた研究で、読書には顕著なリラックス効果(ストレス軽減効果)があることがわかりました。なんと、68%ものストレスを下げるそうです。
同時に、心拍数を抑える効果や、気持ちの状態を切り替える効果があることも判明しました。さらに、読書によるストレス軽減効果を、音楽鑑賞や散歩などと比較した結果も公表されましたが、やはり読書の効果は極めて高いことがわかります。
では「寝る前に読むとよい本」はどのような本なのでしょうか。結論から言うと、退屈な本です。
大阪府立大学名誉教授であり、生活健康学研究所所長でもある医学博士の清水教永先生は「続きが読みたくなる本ではなく、退屈な本が睡眠にはベスト」と言っています。私も同感です。
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ミステリー小説など、冒頭から衝撃的な展開があって、その後も二転三転し、謎や事件が気になって、興奮してハラハラ、ドキドキ……。どんどんページをめくる手が止まらず、気がつけは徹夜で読み、夜更かししてしまった!
そんな経験をしている人は多いでしょう。こういう本は「眠ること」に関しては逆効果です。交感神経が活性化し、神経が興奮して、より眠れなくなります。思い出してください。
あなたが学生のころ、おもしろい場面も、怖い描写も、たとえ話の一つもない教科書を、一定の抑揚のないリズムで、ただ棒読みする先生の授業を聞いていると、ウトウトして眠くなり、寝てしまった人もいたのではないでしょうか?
伏線回収もなく、あざやかなトリックもなく、感情を強く動かす動機もなく、平坦で、最終的にはハッピーエンドで終わる物語が、眠るのに最適な本と言えます。
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提供元:海外で実証、「寝る前読書」のリラックス睡眠効果|東洋経済オンライン