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2022.11.16

高コスパ!スーパーの肉で「絶品ステーキ」作る技|一工夫で大変身、ガーリックライスのレシピも伝授


工夫することで、家でも絶品のステーキが作れます

工夫することで、家でも絶品のステーキが作れます

在宅勤務などによって、家で料理をする人が増えたのではないでしょうか。料理の腕を上げるために、まず作れるようになっておきたいのが、飽きのこない定番の料理です。料理初心者でも無理なくおいしく作る方法を、作家で料理家でもある樋口直哉さんが紹介する連載『樋口直哉の「シン・定番ごはん」』。

今回は、年末のご馳走としておすすめの「ステーキ」と「ガーリックライス」です。

『樋口直哉の「シン・定番ごはん」』 ※外部サイトに遷移します

「肉選び」で目指す味が変わる

昔からステーキはご馳走。焼き方についてはいろいろな流派(?)がありますが、実はそれ以前の「肉選び」でも目指す味は変わります。

日本国内で流通している肉は大きく「輸入牛」「国産牛」「和牛」の3種類。輸入牛は脂が少なく、あっさりした味。国産牛は脂の少ないものから多いものまでさまざまですが、基本的には輸入牛よりも脂が多く、和牛はさらにその上。

ちなみに1991年の牛肉の輸入自由化以降、消費の主流は輸入牛。安価な輸入牛と差別化をはかるため、和牛の脂は増えていった経緯があります。最近の人気は脂の少ない赤身肉ですが、それでもある程度の脂肪交雑がないと焼いたときに硬くなりがち。

牛の硬さは部位によっても変わってきます。牛は体が大きく、その体重を支えるためにスネやモモといった下側の筋肉が発達しているからです。餌を食べるために首肉もよく動かすのでやはり硬く、こういった部位は煮込み料理に適しています。反対に腰のあたりの肉はやわらかく、ステーキやローストビーフなどに向いている部位。

今回はスーパーでアメリカ産のアンガス牛肩ロース肉を買ってきました。アメリカ産のアンガス牛は穀物飼育で、やわらかい肉質と穏やかな香りが特徴。例えば牧草で飼育されているオーストラリア産の牛肉と比べると違いがわかりやすいと思います。

同じ肩ロース肉が下の写真のように並べられていたら、どちらを選びますか。なんとなく筋が入ってなさそうな左側を選びがちですが、ステーキにするのであれば間違いです。

(外部配信先では画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

一般的に切り身の角が丸い肉は焼くと硬く、角が立っている肉は焼くとやわらかく仕上がります

一般的に切り身の角が丸い肉は焼くと硬く、角が立っている肉は焼くとやわらかく仕上がります

「肩ロース」は肩から背中にかけての頭に近い部分。左側の肉は牛肩ロースといっても首(ネック)寄りの部位なので、焼くと硬くなります。ステーキにするのであれば、どちらかというとリブロース寄りの右側の牛肉を選ぶのが正解です。

肩ロースは味が濃く、おいしい部位なのですが、肩を動かすための筋が中心に入っています。この筋はどんなに上手に焼いても硬くて、口に残ります。そのため、肩ロースは薄切りにしてすき焼きやしゃぶしゃぶにすることが多いのです(薄く切れば筋は気にならなくなります)。

下部が焼肉屋さんでおなじみのザブトンという部位です

下部が焼肉屋さんでおなじみのザブトンという部位です

そのまま焼いて、食べるときに外すのが一般的ですが、今回はあらかじめ除去してしまいます。包丁で切る、というよりも手で引っ張ればかんたんに外れるはずです。

ペティナイフのような先端が尖っている包丁が使いやすいです

ペティナイフのような先端が尖っている包丁が使いやすいです

やわらかいザブトンの部位を切り取りました。ザブトンはどんな肉でも脂肪交雑が入りやすい部位で、焼肉でもステーキでもおいしい部位です。

手で剥がれない部分だけ包丁で切ります

手で剥がれない部分だけ包丁で切ります

残りの部位も切り分けていきましょう。

左がロース芯につながっていく部位です

左がロース芯につながっていく部位です

筋と肉に分けました。

筋に肉が多少ついてますが、料理に使うので大丈夫です

筋に肉が多少ついてますが、料理に使うので大丈夫です

肉を観察して、筋繊維の太さをたしかめてください。筋繊維が太い肉は硬いので煮込み料理に向くからです。冷凍しておいて別の料理に使ってもいいですが、今回は一緒に焼いてしまうので、肉たたきでたたきました。

ネック寄りの肉は硬いので処理します

ネック寄りの肉は硬いので処理します

肉たたきがなければワインの空き瓶などでも代用できます。たたくことで筋繊維の一部が壊れ、食感が改善されます。

筋がとれたので、これをステーキにしていきます。その前にさきほど除去した筋でステーキしょうゆを作ります。

肉の処理が完了

肉の処理が完了

ステーキしょうゆの材料

牛肩ロースの筋  適量
酒        100ml
にんにく     1片
しょうゆ     100ml
みりん      50ml

牛肩ロースの筋を1cmくらいの大きさに細かく切ります。

小さく切ったほうが、味が早く出ます

小さく切ったほうが、味が早く出ます

切った筋と軽く潰したにんにく1片を小鍋に入れて、酒を注ぎ、中火にかけます。沸騰してきたら弱火に落とし、15分加熱します。

にんにくを1片加えて、酒を投入

にんにくを1片加えて、酒を投入

みりんを加えます。

酒とみりんは同時に加えてもかまいません

酒とみりんは同時に加えてもかまいません

しょうゆを加えます。みりんのアルコール分が飛ぶまで1分ほど煮ます。ザルでこして、粗熱がとれたら冷蔵庫で冷やします。牛の脂が表面に固まるので、スプーンなどで取り除いてください。出し殻の筋にはまだ味が残っているので、酒と砂糖、しょうゆで柔らかくなるまで煮ると酒肴になります。

しょうゆを入れてからは香りを残すために煮すぎないようにします

しょうゆを入れてからは香りを残すために煮すぎないようにします

これでステーキしょうゆの出来上がりです。ステーキに添えるほか、しょうゆの代わりに生姜焼きのタレに使うと味に深みが出ます。今日はこれをガーリックライスの味付けに使います。

冷蔵庫で保存。1~2カ月は持ちます

冷蔵庫で保存。1~2カ月は持ちます

ステーキ&ガーリックライスの材料(2人前)

●ステーキ

ステーキ肉     350g程度
塩         適量
オリーブオイル   大さじ1

●ガーリックライス

ご飯        300g
サラダ油      大さじ2
にんにく      2片(薄切りにする)
ステーキしょうゆ  大さじ1
鰹節        4g

大葉 3〜4枚
黒胡椒 適量

牛肉に薄く塩を振ります。ふつうステーキを焼くときは「常温に戻す」という調理工程を踏みます。常温に戻す、とは20℃程度の室温に肉を30分〜1時間程度置き、肉の温度を上げる工程です。しかし、厚さ1.5cmまでの肉であれば冷蔵庫から出し立ての肉のほうが上手に焼けます。

ステーキの基本は表面に香ばしい焼色をつけつつ、中心温度を60℃前後にすること。そのためには調理開始の温度が低いほうが温度が上がる時間を稼げる=肉の表面をよく焼けるからです。

ステーキしょうゆを添えるので塩味は軽めに

ステーキしょうゆを添えるので塩味は軽めに

中火で十分に熱したフライパンにオリーブオイル大さじ1をひき、牛肉を入れます。時々、牛脂を使うことが推奨されますが、焼きはじめの油はどんな種類でもかまいません。たとえ牛脂を使っても、オリーブオイルを使っても加熱によって香気成分は揮発するからです。

そのため今回は使いませんが、牛脂の甘い香りを肉にまとわせたい場合は仕上げに加えるのが効果的です。

表になる面から先に焼きます

表になる面から先に焼きます

火加減は中火のまま30秒経ったら裏返します。昔は「肉は強火で表面を焼き固めて肉汁の流出を防ぎ、裏返すのは一度だけ」というのがステーキのセオリーでしたが、現在は調理科学の第一人者であるハロルド・マギーが提唱する「Fast-Flip Method」(頻繁に裏返す方式)を採用するとよりジューシーに焼けることがわかっています。

『マギー キッチンサイエンス』(共立出版)には「(肉の焼き色を優先する場合は)1回か2回裏返すだけ」に「軟らかさとジューシーさを優先するのであれば、1分ごとに裏返す。頻繁に返せば両面とも熱を吸収したり放出したりする時間がない。肉は早く焼けるし、外側に火が通り過ぎることも少ない」とあります。

まだ焼き色が薄いですが、焦らなくても大丈夫

まだ焼き色が薄いですが、焦らなくても大丈夫

また、30秒経ったので裏返しました。ステーキを焼くのに適したフライパンの表面温度は220℃前後。オリーブオイルの発煙点(煙が出て分解がはじまる温度)が210℃なので、煙がうっすら上がるくらいが適温です。煙がたくさん出るようであれば温度が高すぎるので火を弱火に落とします。

ただ、日本国内で流通しているガスコンロにはSiセンサーという鍋底の温度が上がると自動的に火を弱火にするセンサーがついているので、中火のままの火加減でも温度コントロールをしてくれます。30秒経ったら裏返すことを計5回(トータル2分30秒)繰り返しましょう。

オリーブオイルを使うとフライパンの表面温度がわかりやすいです

オリーブオイルを使うとフライパンの表面温度がわかりやすいです

時間になったので取り出します。ただ、まだ焼き上がりではありません。

きれいな焼き色がつきました

きれいな焼き色がつきました

温かいところで肉を休ませます。高温で焼く方式の場合、熱が中心に伝わるまで時間が足りないので温かい場所で休ませる必要があるからです。肉の表面の温度が内側に移動し、外側の温度は下がります。温度が下がるにつれて肉の構造は硬くなり、水分保持力が上がります。したがって肉を休ませると切りやすくなり、切ったときに流れ出る肉汁の量も減ります。

五徳の上に置いたバットに肉を並べ、上からもバットを被せます

五徳の上に置いたバットに肉を並べ、上からもバットを被せます

レストランのキッチンにはコンロの上の棚など40~45℃くらいの温かい場所があるのですが、家庭ではこの温度を確保するのがむずかしいところ。そこで、さきほどまで調理した五徳の上にバットを置くと、バットの底が手で触れるくらいの温かさになるはずです。この温かい状態で肉を休ませているあいだにガーリックライスを作りましょう。

アルミホイルで覆ってもいいでしょう

アルミホイルで覆ってもいいでしょう

にんにくは薄切りにし、ご飯は電子レンジなどにかけて温めておきます。

フライパンにサラダ油とにんにくを入れて、中火で加熱します。泡立ってくるので弱火に落とし、薄く色づくまでさらに加熱します。

フッ素樹脂のフライパンが便利です

フッ素樹脂のフライパンが便利です

ご飯を加え、にんにくを混ぜ込むように炒め、ステーキしょうゆで味付けします。

にんにくは焦げやすいので注意

にんにくは焦げやすいので注意

仕上げに鰹節を加えたらガーリックライスの出来上がりです。

鰹節は小分けで売られているフレークタイプを使うか、600Wの電子レンジに30秒かけ、手で細かく砕いたものを使います

鰹節は小分けで売られているフレークタイプを使うか、600Wの電子レンジに30秒かけ、手で細かく砕いたものを使います

肉の繊維の方向を見極め、断ち切るようにスライスしましょう。

休ませたことで均一に火が通っています

休ませたことで均一に火が通っています

ご飯の上にステーキを並べます。香りの食材として太めの千切りにした大葉をちらし、黒胡椒をひきました。

切れる包丁でスライスすると繊維が壊れないので肉汁の損失が防げます

切れる包丁でスライスすると繊維が壊れないので肉汁の損失が防げます

ステーキしょうゆを添え、好みで肉にかけながら食べましょう。安価な肩ロースですが、筋を取り除いているので、豪華な仕上がりです。ステーキしょうゆを手作りすると鉄板焼屋さんで食べるような深い味わいが得られます。

出来上がり。わさびを添えてもいいでしょう

出来上がり。わさびを添えてもいいでしょう

(写真はすべて筆者撮影)

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提供元:高コスパ!スーパーの肉で「絶品ステーキ」作る技|東洋経済オンライン

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