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2022.10.26

和田秀樹「日本人は60代以降も肉を食べていい」|少しぽっちゃりぐらいが肌ツヤもよく活動的


「肉を食べすぎてはいけない」は本当なのか(写真:セーラム/PIXTA)

「肉を食べすぎてはいけない」は本当なのか(写真:セーラム/PIXTA)

「人生100年時代」と言われるようになり、シニア世代に入ってからの人生を心配する人が少なくありません。60代以降はどのような食事をするのがいいのでしょうか。高齢者専門の精神科医として6000人以上の患者を診てきた和田秀樹さんの著書『60歳からはやりたい放題』から一部抜粋してお届けします。

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小太りの人のほうが長生きする

歳を重ねると代謝が下がり、体が重くなりがちです。若い頃に比べて、体重が増え、日々ダイエットに余念がないという人も少なくないでしょう。

なぜ60代以降の人がダイエットをするのか。その要因の一つは、数十年前から盛んにいわれるようになった「メタボを避けろ」というスローガンにあります。「メタボ」とは、メタボリック・シンドロームの略で、内臓脂肪の蓄積によって、肥満症や高血圧、糖尿病などの病気を引き起こしやすくなることを意味します。2008年からは、メタボかどうかを診断する特定健康診査や特定保健指導がスタートしました。

内臓脂肪を過剰に蓄えるのはもちろん健康にはマイナスかもしれません。しかし、それ以上にメタボへの反動で「痩せなければ」と過度に考える中高年が増えることは問題だと、私は感じています。

なぜなら60代以降のダイエットは、決して健康には直結しないからです。「メタボ」と同時に、中高年の健康管理の指標の一つとして定着しているのが「BMI」です。BMIは「体重(㎏)÷身長(m)の二乗」で導き出される数値です。多くの場合、BMIの数値が、WHO(世界保健機関)による「普通」の基準となる18.5~25の間に収まるのが健康だと考えられています。

しかし、いざ統計データを見てみると、実はBMI25を超えた人のほうが、長生きする傾向があります。

2009年に日本で発表された研究結果では、40歳時点の平均余命が最も長かったのは、男女ともにBMI25~30の人でした。一方、最も平均余命が短かったのは、BMI18.5未満の人でした。両者の間の平均余命を比較すると、男女ともにBMIが高い人のほうが7年ほど長生きすることがわかっています。

2006年にアメリカで行われた国民健康栄養調査でも、最も長生きなのはBMI25~29.9です。これは日本では、「太り気味」とみなされる値です。一方、「痩せ型」とされる18.5未満の死亡率は、その2.5倍も高いという結果に。

中高年の場合、若い頃に比べると、代謝が落ちて脂肪がつくのは当たり前のこと。多少太ったとしても、それは自然なことだし、むしろ統計的には長生きする確率が高まります。もちろん、肥満といってもあくまで「小太り」程度がよいのであって、明らかな太りすぎは心筋梗塞などを引き起こす可能性があるので、体に悪いのは間違いありません。

BMIが35以上の高度肥満と呼ばれる人々の場合は、体重を落とすべきでしょう。ただ、そこまでいかない「小太り」くらいの人のほうが、長生きはするのです。ですから、過激なダイエットをして「痩せないとダメだ」と強迫観念に駆られる必要はまったくないのです。

実際に私が診療する方々を見ても、60代以降の人は、少しぽっちゃりしたくらいの人のほうが、肌ツヤもよく、活動的です。痩せている人はしわなども目立ち、少しやつれた印象を受けます。無理なダイエットによって低栄養の状態にさらされることのほうが、ずっと健康にはマイナスになるのだと心してください。

「肉を食べすぎてはいけない」にだまされるな

年齢を重ねるほどコレステロールが高まる「肉食」を避けるべきとする考え方があります。しかし、私はこれにも大きく反対します。反対する理由をご説明する上で、ここ十数年、世間に流布する「肉を食べすぎてはいけない」というキャンペーンが、どこからきたかを検証するところからスタートしましょう。このキャンペーンが始まったのは、日本ではなくアメリカです。

アメリカでは、心臓の動脈硬化が原因の心筋梗塞が多く国民病といわれてきました。アメリカは日本の何倍もの肉食文化が根付いているので、肉を食べる量を減らすことで、肥満が減り、また動脈硬化も遅らせ、ひいては心筋梗塞も減るので、平均寿命が一気に伸びます。だからこそ、「できるだけ肉を減らして、心筋梗塞を減らそう」とする動きが生じたのです。

ただ、同じことを日本人がやっても意味があるのかというと、はなはだ疑問が残ります。日本人の食生活が欧米化していることは間違いありませんが、肉を食べる量ひとつ見ても、日本人と欧米人でその量は大きく変わります。

死因にしても、日本人の三大死因はガン、心疾患、脳血管疾患。それぞれの割合は、ガンが31%、心疾患は15%、脳血管疾患が14%といわれています。ガンで死ぬ人が心筋梗塞で死ぬ人の12倍います。心筋梗塞で死亡する人の割合が欧米に比べると少ない状態で肉食をやめたところで、それほど影響があるとは思えないのです。

60代以降の日本人が肉を食べるメリット

60代以降の日本人にとって、肉食はむしろさまざまなメリットがあります。まず、高齢になると、気力の落ち込みや意欲の低下が進む傾向にあります。その理由の一つは、たんぱく質不足だと私は考えています。人間の精神状態を安定的に保つために大切なのが、セロトニンという「幸せホルモン」です。

セロトニンが正常に分泌されていると、意欲が高まり、不安が弱まり、前向きな日々を送ることができます。でも、セロトニンは年齢とともに少しずつ減少していくので、本来は年齢を重ねるほどセロトニンが増える習慣を増やすべきなのに、日本ではその対策がなされていません。

では、どうしたらセロトニンを増やすことができるのでしょうか。おすすめしたいのが、しっかりとたんぱく質を摂ることです。セロトニンの原料は、トリプトファンというアミノ酸の一種です。このトリプトファンは豆や乳製品、肉や魚などのたんぱく質に多く含まれています。

肉はコレステロールを多く含み、動脈硬化や心筋梗塞の原因になるので健康でいたいなら食べないほうがよいといわれることも多いのですが、食が細くなる60代以降の人がセロトニンを増やすために肉を食べるのは、非常に理にかなっていると私は思います。

実際、80歳にして3回目のエベレスト登頂に成功した登山家の三浦雄一郎さんは、500グラムのステーキをぺろりと完食するなど、積極的に肉を食べているそうです。三浦さんの例は特殊かもしれませんが、一度はだまされたと思って、肉をしっかり食べて、気分の変化を観察してみてください。

コレステロールも、肉とともに健康を阻害する「悪者」として知られています。ただ、コレステロールが本当に悪者なのか、いまだによくわかっていません。

かつて東京都老人総合研究所が、長寿者が多い東京都小金井市の70 歳の高齢者を対象に追跡調査を行った「小金井研究」で、コレステロール値と死亡率の関係性を調べたところ、死亡率が最も高かったのはコレステロール値が169未満のグループでした。反対に最も長生きするのは、男性は219まで、女性は220~249の正常よりもコレステロール値が高めのグループでした。

また、別のハワイの研究では、コレステロール値が高い人ほど、心筋梗塞などの虛血性心疾患は増えるものの、ガンになりにくいという調査結果が出ています。実際、肉食が当たり前になっている欧米諸国では、死因のトップが虛血性心疾患であり、ガンは少ない傾向にあります。

コレステロール値が低い=幸せではない

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先ほど、日本人の三大死因はガン、心疾患、脳血管疾患とお伝えしましたが、今の日本では、ステントやバルーンで冠動脈を広げたり、バイパス手術などの技術が大幅に進歩した結果、心筋梗塞は「死ななくてよい病気」になりつつあります。そう考えると、日本人の場合は、肉食でコレステロール値を高めたほうがガン予防になるので、よいのではないでしょうか。

うつ病などについても、コレステロール値が低いグループのほうがかかりやすいという調査データがあります。コレステロールには、脳へセロトニンを運ぶ役目があるため、血中に一定のコレステロール濃度が保たれていないと、セロトニンがうまく運ばれず、脳が機能しません。実際にたくさんの高齢のうつ病患者を診断してきて思うのが、コレステロール値が高い人のほうがうつからの回復が早く、低い人はうつの回復が遅いということです。

こうした事情を見ていくと、かならずしもコレステロール値が低いほうが幸せとはいえないように思います。

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提供元:和田秀樹「日本人は60代以降も肉を食べていい」|東洋経済オンライン

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