メニュー閉じる

リンククロス シル

リンククロス シルロゴ

2022.10.18

【腰痛】まずは整形外科の理由、接骨院との違い|若い人と年配の人では腰痛の種類が違うことも


腰が痛いとき、どこで診てもらうか。意外と重要なポイントです(写真:Luce/PIXTA)

腰が痛いとき、どこで診てもらうか。意外と重要なポイントです(写真:Luce/PIXTA)

ある年齢になると、多くの人が気になり始めるのが腰痛かもしれない。

2019年の国民生活基礎調査の概要で、病気やケガなどで自覚症状がある人の割合をみると、男性では腰痛がもっとも多く、女性では肩こりに次いで腰痛が多いという結果だった。新型コロナによりテレワークが増えたことで、自宅でPCに向かい続け、腰痛がひどくなった人もいるだろう。

そこで、なぜ腰痛が起こるのか、どうしたら改善できるのかなどについて、整形外科クリニックを開業し、診療の傍らインターネットで情報提供を行っている整形外科専門医・Dr.Koalaさんに話を聞いた。

国民生活基礎調査の概要 ※外部サイトに遷移します

腰まわりに痛みを伴う腰痛は肩こりと並んで、誰にでも起こり得る症状といえる。腰痛の元となる病気は、本当にさまざまだ。例えば、長く同じ姿勢でいたり、前かがみなどの偏った姿勢をしたり、急に動いたりすることが引き金となって、腰が痛くなったことのある人もいるだろう。

腰痛の原因はさまざま

「若年者であれば、いわゆる腰の筋肉痛である『筋筋膜性腰痛症』が多いのですが、腰椎の後方部分が分離する『腰椎分離症』、腰の椎間板の中心にある髄核が飛び出て神経に触る『腰椎椎間板ヘルニア』など、診断や治療に注意を要する疾患もあります」(Dr.Koalaさん)

そして中高年以降は、椎間板が薄くなったり椎間関節の軟骨がすり減ることで慢性の腰痛が生じる「変形性腰椎症」、神経の通り道である脊柱管が狭くなり神経が圧迫される「腰部脊柱管狭窄症」といった加齢性疾患の頻度が高くなる。

また、高齢者では、骨の強度が落ちて腰の骨がつぶれる「圧迫骨折」などが腰痛の原因となっていることもあるという。

一般的には、若いほうが筋筋膜性の腰痛が起こりやすく、年齢を重ねるほど骨が変形することによって生じる腰痛が起こりやすい。

では、腰が痛いときはどうしたらいいのだろうか。

ちょっとした腰痛で病院にかかるのは大げさな気がして、躊躇する人もいるかもしれない。だが、Dr.Koalaさんは「腰痛で病院やクリニック(診療所)を受診するのは、まったく大げさではありません。まずは受診を」と話す。

「最初に病院の整形外科、または整形外科クリニックを受診していただきたい理由の1つめは、病院なら検査や治療の幅が広く、万が一にも重大な病気だった場合、すぐに治療を進めることができるためです」(Dr.Koalaさん)

整形外科で腰痛患者を診る場合、特に注意すべきなのが「レッドフラッグ」などといわれる、早急に対応を要する疾患だ。例えば、骨や軟部組織の腫瘍や他の部分にできた「がん」の骨転移などの悪性疾患、感染、骨折など。そのほか、外科や婦人科などの疾患が疑われる場合には速やかに適切な診療科へとつなげることができる。

「そしてもう1つの理由は、どんな腰痛でも、基本的に検査や治療が保険診療で受けられるためで、これも患者さんにとって大きなメリットです」(Dr.Koalaさん)

多くは痛みを取る治療がメイン

実際に整形外科を受診すると、問診で症状を聞き、必要に応じてX線検査やCT、MRIなどの画像検査、血液検査や尿検査などを行うことになる。そのうえで原因や病気に対応した治療が行われる。

「腰痛には痛み止めの飲み薬や貼り薬(湿布)を用いる薬物療法、コルセットを使った治療とともに、姿勢の改善などの生活の見直しを行います」(Dr.Koalaさん)

さらに、痛みのある場所に麻酔薬などを注入するブロック注射療法(【つらい痛み】鎮痛薬が効かない時にすべきこと参照)、運動機能の維持や改善を目的に運動・温熱などの物理的手段を用いる理学療法などが行われることもある。

「病院の整形外科では、薬物療法のほか、入院や手術が必要な場合も対応可能です。整形外科クリニックでは、薬物療法のほか理学療法も併用しているところが多いでしょう。大きな病院では、外来での理学療法を行っていなかったり、通院が大変になったりすることもあるので、薬物療法と理学療法が適応となる場合には、整形外科クリニックを選択する方法もあります」(Dr.Koalaさん)

腰痛では手術が必要になるケースも多い……そんなイメージを持つ人がいるかもしれない。だが、必ずしもそうとは限らない。

「例えば、MRIなどの検査で明らかに腰椎椎間板ヘルニアと診断された患者さんでも、必ずしもすべての患者さんが手術適応となるわけではありません。手術になるかどうかは、患者さんの症状やご希望などによって変わります。

極度の筋力低下が起きたり、膀胱直腸障害といって排尿や排便の感覚がなくなるような強い神経マヒが起きたりするようでしたら手術が必要になります。それ以外の場合は患者さんと相談のうえ、治療手段の1つとして手術を選択することもあります」

【つらい痛み】鎮痛薬が効かない時にすべきこと ※外部サイトに遷移します

こうDr.Koalaさんが言うように、実際に手術の適応になるのは腰痛の一部だ。加齢性の疾患である腰部脊柱管狭窄症も、狭くなった脊柱管は手術でもしないと広げることはできないが、単に安静や薬物療法、理学療法で軽快することも多いという。

また、治療と同じくらい必要なのは、腰痛になりにくい体づくりだ。

「腰痛の多く、特に筋筋膜性の腰痛はいったん安静にして、痛み止めや体操、生活改善などを行うことで軽快することが多いでしょう。安静というのは、寝たきりでいることではなく、痛みが出るような激しい動きをしないということです。急性の激しい腰痛では痛みが増強するので、筋力強化などの運動療法は勧められませんが、慢性の腰痛には運動療法も有効だといわれています」(Dr.Koalaさん)

慢性腰痛の予防では、腹筋や背筋を鍛えることが大事だ。ただ、腰痛がある人が自己流でトレーニングを行うと、悪化や再発の危険がある。腰に負担をかけないようなトレーニング法を整形外科医や理学療法士などに教わったほうが安心だろう。

接骨院、鍼灸院、指圧などは?

腰痛を抱えている人のなかには、整形外科ではなく、接骨院や鍼灸院、指圧やマッサージ、整体、ストレッチなどに通っている人も少なくない。

整形外科では先に述べたとおり、大きな病気がないか検査してもらえるうえ、治療法が豊富で、早く痛みを取ってもらえる。リハビリテーション室を併設した施設も多いので、姿勢や運動などの指導もしてもらいやすい。

一方で、話をゆっくり聞いてもらったり、患部をゆったりとマッサージしてもらえたりすることはほとんどない。

Dr.Koalaさんは、患者によっては会話やリラックスによる満足度が症状を緩和させることがあるため、 リラクゼーションなどの施術自体を否定することはないという。

「整形外科の検査で重大な病気が見つからないという前提であれば、あとは相性もあります。ゆっくり話をしながら施術してもらうことでリラックスできるようなら、何らかの施術院へ行くのも手です」

そのうえで各施設の違いについて解説してもらった。

「最もよく知られている接骨院(ほねつぎ)は、国家資格の柔道整復師が外傷によるケガの打撲・捻挫・挫傷の施術、骨折・脱臼の応急処置を行っているところです。指圧やマッサージは国家資格のあん摩マッサージ指圧師が在籍していることが多く、手を使って揉むなどの施術をするところと考えるといいでしょう。鍼灸院は国家資格のはり師・きゅう師が鍼灸を用いた施術を行うところです」(Dr.Koalaさん)

このほか、アメリカで考案された脊椎矯正手技療法であるカイロプラクティックや、整体やストレッチ、リラクゼーションを標榜する店舗もあるが、これらは日本では国家資格がない。

国家資格があるかないか

厚生労働省は、あん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師と無資格者との判別のためのリーフレット「あん摩マッサージ指圧、はり、きゅうを受ける皆様へ」を公開している。本来、医師以外が、あん摩マッサージ指圧、はり、きゅうなどを仕事として行うには国家資格が必要だ。

「あん摩マッサージ指圧、はり、きゅうを受ける皆様へ」 ※外部サイトに遷移します

記事画像

しかし、医業類似行為での健康被害の例を見ると、さまざまな施設において問題が起きていることがわかる。

記事画像

この連載の一覧はこちら ※外部サイトに遷移します

国民生活センターによると、整体やマッサージなど、器具を使用しない手技による医業類似行為を受けて危害が発生したという相談が、2007年度以降の約5年間で825件寄せられており、件数は増加傾向にある(国民生活センター「手技による医業類似行為の危害-整体、カイロプラクティック、マッサージ等で重症事例も-」)。

「医業類似行為は、資格のあるなしにかかわらず、施術者の個人の技術によるところが大きいかもしれません。いずれにしても、つらい腰痛を繰り返さないためには、日常生活で無理な姿勢を取らないよう気をつけ、程よく運動をして筋肉を保持しましょう」(Dr.Koalaさん)

(取材・文 / 大西まお)

「手技による医業類似行為の危害-整体、カイロプラクティック、マッサージ等で重症事例も-」 ※外部サイトに遷移します

参考:

柔道整復師法 ※外部サイトに遷移します

あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律 ※外部サイトに遷移します

Dr.Koala(ドクターコアラ)

整形外科専門医、医学博士。大学病院、市中病院に勤務後、整形外科クリニックを開業。診療の傍ら、インターネット上で情報提供を行っている。さまざまな分野の専門家との共著書に『子どもを守るために知っておきたいこと』(星海社)がある。

記事画像

【あわせて読みたい】※外部サイトに遷移します

【健康診断】40代以上なら絶対受けたい検査5つ

【健康診断】血圧、血糖、脂質のボーダーライン値

肩こりは「もんでも治らない」という驚きの真実

提供元:【腰痛】まずは整形外科の理由、接骨院との違い|東洋経済オンライン

おすすめコンテンツ

関連記事

65歳以降も学び続け元気な人と学ばない人の差|記憶力の衰えでなく好奇心の衰えこそが大問題

65歳以降も学び続け元気な人と学ばない人の差|記憶力の衰えでなく好奇心の衰えこそが大問題

【新連載】国がすすめる健康づくり対策とは?~健康日本21(第三次)を優しく解説

【新連載】国がすすめる健康づくり対策とは?~健康日本21(第三次)を優しく解説

視力と聴力が低下、軽視される「帯状疱疹」の恐怖|新年度の疲れに要注意、子どもも無縁ではない

視力と聴力が低下、軽視される「帯状疱疹」の恐怖|新年度の疲れに要注意、子どもも無縁ではない

「歳をとれば脳の働きは弱まる」と思う人の大誤解|新しい情報を入れれば一生に渡り変化し続ける

「歳をとれば脳の働きは弱まる」と思う人の大誤解|新しい情報を入れれば一生に渡り変化し続ける

戻る