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2022.09.16

「仕事中毒だと脳が老化する」脳科学者が言うワケ|「無趣味」は認知症発症につながる危険性がある


無趣味であることは認知症の発症にもつながると言われているそうです(写真:Ushico/PIXTA)

無趣味であることは認知症の発症にもつながると言われているそうです(写真:Ushico/PIXTA)

コロナ禍のなかで日常生活の送り方も変わり、充実した「お家時間」を過ごしている人も多いのではと推測しがちですが……「趣味はなんですか」と問われたときに、「無趣味」と答える人の割合も増えているようです。

実は、この状態が長年にわたって続くと将来的に認知症の発症につながる危険性があることがわかっています。

脳科学者・西剛志氏の著書『80歳でも脳が老化しない人がやっていること』から、いつまでも若い脳の状態を保つ方法について、一部抜粋・再構成してお届けします。

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脳のピークは何歳なのか?

年齢を重ねるごとに、次のような傾向になる人がいます。

●周りが気にならなくなる

●記憶が曖昧になる

●同じ主張をくり返す

●感情的になる

こうした行動をついついとってしまうのは脳の老化現象の一種であり、私はこれを「老人脳」と呼んでいます。

「脳の老化」というと、自分には関係ないと思う人もいるでしょうが、想像するよりずっと早くからそれは始まっているのです。

 実は、私たちの脳は30代から少しずつ萎縮が始まっており、なんの対策もせずに過ごしていると、60代半ばくらいにはMRIの画像ではっきりわかるくらいの脳の萎縮が起きてしまいます。

具体的に能力別にピーク年齢をあげてみます。

◎情報処理能力  18歳
◎人の名前を覚える力  22歳
◎顔を覚える力  32歳
◎集中力  43歳
◎相手の気持ちを読む力  48歳
◎語彙力  67歳

大人数のアイドルグループのメンバーの顔が全く覚えられなくなった。
なんてことは、30代半ば以降の人にとっては自然の流れなのです。

ですが、語彙力のように50代以降でも伸びていく能力もあります。なによりも、日々の習慣(思考×行動)の積み重ねにより「老人脳」を遠ざけることはできます。

趣味が多い人は脳が老化しにくい

趣味は人生を楽しむ要素というだけでなく、「認知症の予防効果」もあることがわかっています。実は、趣味の数が多い人ほど認知症を発症しにくいというデータがあるのです。

ですから、仕事を引退してより自分の時間がもてるようになる65歳以上の方には、特に趣味を持つことをおすすめしています。

前述の研究では、男性の場合は、趣味が5つ以上ある人は認知症発症が一番少なく、女性の場合は趣味が4つの人が一番発症が少なくなっています。

趣味が多いと認知症になりにくい理由は、楽しいことに打ち込んでいると「打ち消し」効果でストレスが解消されるからです。ストレスは認知症やうつのリスクを高めることがわかっていますが、趣味に打ち込む人はストレスを感じにくいため、脳が老化しにくいのです。

ある調査によると、生きがいを感じるトップ3は、「趣味に熱中しているとき」「子どもや家族、友人と接しているとき」「美味しいものを食べているとき」だそうです。趣味に打ち込んでいる時間に生きがいを感じる人は世界的にも多く、そのことが脳の認知機能にいい影響を及ぼしています。

また、趣味はひとつよりも2つ3つと数が多い人のほうが認知症が少ないのは、「快感を感じる回数が多いほどストレスが解消される」「社会との接点を趣味でつくっている」「新しいことに挑戦している」などの理由があると考えられます。

周りを見回してください。趣味が多い人って、いきいきしている印象がないですか? 

「長生きしたけりゃ、趣味をたくさん持つ」これも、脳を元気に保つ秘訣です。

趣味を持つ、始めることは何歳からでもできて意味があることなので、自分だけでなく、周りの年配者にも認知機能を上げる習慣としてすすめてほしいです。

趣味があったほうがいいとわかっていても、どう見つけたらよいのかわからない。

そんな人のために、だれにでも簡単にできる「西式 やりたくなる趣味を見つける方法」をお伝えします。

まず、趣味全体を俯瞰して、感情が動いたものを見つけてもらいます。趣味を見つけるときに大切なのは「心がフフッと喜ぶこと」を選ぶこと。小さな感情の動きの中に自分に合った趣味が隠されているからです。

具体的な方法は、この順番に進めてください。

やりたくなる趣味の見つけ方

(1) 下記にある「心がフフッと喜ぶ7分野※」をチェックする

(2) その中から心が動くものを探す

(3) 心が動いたものをすべて手帳などに書き出す

(4) 「自然系」で「山」に心が動いた場合、山に登る、山の写真を見る、登山グッズの店に行ってみるなど、いろいろ思い浮かぶことがあります。
それをすべて手帳などに書き出します

(5) 書き出したことの中から自分がやってみたいと思う順に番号を付ける

(6) 番号の若い順に行動に移していく

※書籍内では21分野を紹介

<心がフフッと喜ぶ7分野>

・自然系:山、海、水、花、植物、動物、景色、風、土、火、宇宙
・運動系:スポーツ、ダンス、ストレッチ、球技、アウトドア、ゴルフ
・音楽系:クラシック、POP、ジャズ、鼻歌、作曲、演奏
・言葉系:会話、子ども、語学、本、手紙、ラジオ、文学
・鑑賞系:芸術、コンサート、映画、演劇、博物館、世界遺産、鳥、魚
・美容系:ファッション、髪型、おしゃれ、ネイル、マッサージ
・文化系:歴史、伝統、職人技、お寺・神社

こうすることで、趣味になる可能性のある領域を俯瞰することができます。あとは実際にやってみて、本当に合うかどうかを判断していくと、自分の趣味が決まっていきます。

「生きがいはなんですか?」

そう聞かれて、あなたならどう答えるでしょうか? 即答できた人は、脳の認知機能が衰えにくい人です。

アメリカで「生きがいと脳の関連性」を調べたこんな研究があります。

調査内容

250人の高齢者を10年にわたり調査し、亡くなったときに脳を解剖。
すると、生前に生きがいを持っている人と持っていない人で明らかな違いが判明。
生きがいがある人は、脳が萎縮していても認知機能が高い。

「生きがい」があるだけで脳は大きく変化する

「生きがい」はこういうものじゃいけないという形はありません。その人が心からそう思えればなんでも大丈夫です。

植物を育てたい、切手を集めたい、ゴルフを極めたい、孫を育てる助けをしたい……、本当になんでもいいのです。

たとえば、アイドルを応援することが生きがいだというならそれでいいですし、スポーツのサポーターを本気でやるのもいいと思います。旅行を生きがいにするのもいいですね。旅行に行くという目標を設定するだけで実は認知機能が上がることがわかっています。

旅行の計画があると、その旅行に行くまでの間、なんだか頑張れたり元気が出たりしませんか? あの感覚です。計画を立てただけで脳の前頭前野が活性化しています。

また、大きな生きがいではなく小さく達成しやすい生きがいのほうが、前頭前野の先端にある前頭極と呼ばれる領域が活性化することもわかっています。

反対に生きがいがないと、脳の機能は下がってしまう可能性があります。

特にコロナの影響などで、外に出ない、運動もしない、さらに生きる目標もないとなると、脳にとってはマイナスが幾重にも重なってしまいます。認知症のリスクも当然高まります。

生きる目標を日常の中に組み込めるといいですね。

年間の目標であれば、旅行とか、コンサートに行くとか。日常の目標であれば、「この仕事が終わったらケーキを食べよう」とか。

毎晩の晩酌を楽しみに働いている人もいますが、これも脳科学的には正しい行動です。老人脳を改善したり、予防できる効果が期待できます。

そのほか、認知機能を上げるには、「部屋の室温」「ウォーキング以外の運動習慣」「スマホとの付き合い方」などいろいろな方法があります。

毎日ひとつ、何か新しいことをする

私の知人で、毎日ほんのちょっとのことでもいいので、「いままでやっていなかったことをやる」と自分に課している人がいます。大変なことのように思えますが、考え方次第で誰にでも取り組めることかなと思います。

たとえば、

・スーパーやコンビニで買ったことがないお菓子を買う
・家の近所でも通ったことがない道を通ってみる
・見たことがないテレビ番組を見てみる
・レストランでなかなか頼むことがないメニューを注文してみる

など、なんでもいいのです。

その知人の話を聞いて、この人は「脳にいい暮らし方」を知っているなと思いました。

私は常々、新しいことに取り組むことは脳にいいという話をクライアントにしていますが、それを習慣化することが簡単ではない人もいるようです。そういう人の話を聞いていると、「新しいこと」というのをちょっと大げさに考えすぎてしまっていることがあります。この知人のように、「ちょっとしたこと」で十分です。それだけで脳は変化します。

たとえば、散歩や通勤で歩いている人であれば、その道を毎日変えてみる。

図書館に行く、書店に行くという習慣をつけることも脳にいい行為です。

実は、読書の習慣がある人ほど健康寿命が長くなるという研究報告もあります。

記事画像

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「新しいこと」は、行動を変えるだけでなく、環境を変えることでもOKです。花やグリーンを部屋に飾ってみる、部屋の模様替えをする、寝る部屋を変えてみる、枕の位置を逆にしてみる……ちょっとしたことでいいので、ぜひ実践してみてください。

日々の生活習慣で脳の認知機能が大きく変わることをいくつかお伝えしましたが、今回紹介したこと以外にも「睡眠の質を高める、片足で立つ、手帳をつける、利き手と反対の手で作業する」など、変化するための方法が数えきれないほどあります。

いくつになっても、日々変化をおそれず、新しいことにチャレンジしてください。その気持ちが、あなたを脳の老化から遠ざけてくれるはずです。

記事画像

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提供元:「仕事中毒だと脳が老化する」脳科学者が言うワケ|東洋経済オンライン

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