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2022.09.14

【健康診断】40代以上なら絶対受けたい検査5つ|眼底検査で全身病がわかる意外なメリットも


特定健診のなかには、がんの早期発見や予防につながるものもあります(写真:siro46/PIXTA)

特定健診のなかには、がんの早期発見や予防につながるものもあります(写真:siro46/PIXTA)

40〜74歳のすべての国民を対象に行われる特定健診。40代以上なら受けておきたい検査項目は5つがある。例えば、肝機能検査や眼底検査などだ。

そこで今回は、肝機能検査と、追加で受けたほうがよい4つの検査について、近畿大学医学部公衆衛生学教室主任教授の今野弘規(いまの・ひろのり)さんに聞いた。

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がん早期発見や予防につながる例も

特定健診は基本的にはメタボリックシンドローム(以下、メタボ)や生活習慣病の早期発見を目的としているが、検査結果ががんの早期発見や予防につながる場合もあるので、知っておきたい。

(1)肝機能検査

代表的なものが肝機能検査だ。「γ-GT(γ-GTP)」「ALT(GPT)」「AST(GOT)」の3つを測定するが、今野さんはこのうちALTとASTに注目する。いずれも肝臓の細胞に多く含まれている酵素で、肝臓の細胞が壊れると、血液中に漏れ出てくるため、数値が高くなる。

「メタボに直接関連するのはALTで、基準範囲は30U/l以下。ALTはコレステロールや血糖と異なり、明確な基準が定められていませんが、この値だけが高い場合は、脂肪肝の可能性があります。脂肪肝であれば、生活習慣の改善により、数値は下がってきます」(今野さん)

脂肪肝というと飲酒によって生じるイメージがあるが、最近はお酒を飲まない人の脂肪肝「NASH(非アルコール性脂肪肝炎)」が増えている。NASHはすでに肝炎を起こしている状態で、治療をせずに放置すると20~30%が肝硬変や肝がんに進行するといわれている。

ALTに加えてASTの値も高い場合は、肝炎の疑いがある。日本人の場合、肝炎の多くは肝炎ウイルスが原因。B型ウイルスやC型ウイルスによるものが多く、治療をしないでいると進行し、肝硬変を経て肝がんになる。

「特定健診では、肝炎ウイルスの検査は行いません。人間ドックなどで詳しい検査を受ける予定がない人は、この検査がウイルス性肝炎の疑いを見つける唯一のものになります」(今野さん)

B型慢性肝炎やC型慢性肝炎には抗ウイルス薬による治療が有効。ウイルス性肝炎が治れば、肝硬変や肝がんを予防できる。

「星の数ほどある病気のなかで、予防ができる病気は限られている。とくにがんは予防できるものは少ない。ぜひ、異常を見逃さないようにしてください」と今野さんは言う。

ASTは肝臓以外の臓器、心臓や筋肉、腎臓や膵臓などにも多く存在する。そのため注意が必要だ。山登りや筋トレをした翌日に測ると、筋肉からASTが大量に出て数値が上昇し、肝機能が見かけ上、悪く評価されることがある。健診の前にこのようなことをするのは避けたほうがいいだろう。

受けておきたいオプション検査とは

さて、特定健診にはこれまで紹介してきた必須の項目のほかに、「医師の判断に基づいて実施するオプション検査」がある。

それが、「貧血検査」と「心電図」「血清クレアチニン検査」、そして血清クレアチニン値をもとに算出される「eGFR(推算糸球体濾過量)」「眼底検査」の4項目だ(労働安全衛生法による法定健診には、貧血検査と心電図が含まれている)。

今野さんは、「貧血検査は医師の診察時に、めまいや立ちくらみの症状を訴えた人や、まぶたの裏(結膜)が白っぽいなどの兆候を医師が見つけた場合などに、追加されます。心電図は不整脈の自覚のある人、眼底検査は血圧が高い人などにすすめられます。受診者の訴えが検査を追加する判断につながるので、普段、気になる症状があれば、正直に伝えたほうがいいです」とアドバイスする。

(2)貧血検査

貧血の検査はメタボリックシンドロームや生活習慣病とは、直接関係ないが、「特定健診以前に実施されていた『老人保健法』に基づく基本健康診査では必須項目でした。多くの項目が削られるなか、それがオプションとはいえ、残された。それだけ重要な検査だと考えます」と今野さん。

貧血の検査項目には「ヘマトクリット値」「血色素量」「赤血球数」の3つがある。

ヘマトクリット値は血液中に赤血球が占める割合(%)で、基準値は成人男性で40~50%、成人女性で34~45%。血色素量は赤血球に含まれるヘムタンパク質(ヘモグロビン)の量を示す。男性は基準範囲が13.1~16.3g/dl で、女性が12.1~14.5g/dl 。赤血球数は男性400~539(×10⁴/mm³)、女性 360~489 (×10⁴/mm³) が基準値だ。

貧血の程度は通常、ヘモグロビン値で判断し、貧血の種類は赤血球数やヘマトクリットとの組み合わせで算出される指標(MCV、 MCH、 MCHC)で判断するという。

月経のある女性に貧血が認められる場合、鉄欠乏性貧血であることが多い。貧血になるとめまいや息切れが起こるが、慢性的に鉄欠乏が起こっているとそうした症状に慣れてしまい、異常に気付きにくい。婦人科疾患(子宮筋腫や子宮内膜症)が原因で貧血が起こっていることもある。

男性はもともと鉄欠乏性貧血にはなりにくいため、貧血の結果が出た場合、血液のさまざまな病気が疑われる。

「胃や大腸など、消化器からの出血が疑われることもあります。実際、私は貧血が見つかった方から、胃がんが発見されたケースを経験しています」(今野さん)

(3)心電図

心電図は脳梗塞や心臓病の原因となる心房細動をはじめ、さまざまな不整脈の発見ができる。「健診専門の医師であれば、動脈硬化の進行具合も心電図からチェックしてくれると思います。血圧が高めの人はぜひ受けてほしいです」と今野さん。

(4)血清クレアチニン検査

血清クレアチニン検査は腎臓の機能をみる検査で、老人保健法時代にあったものが2018年度からオプション検査として復活した項目。

近年、国民の10人に1人が発症しているとされるCKD(慢性腎臓病)は進行すると腎不全となり、人工透析などの腎代替療法が必要になる。CKDの最も多い原因は糖尿病。つまり、生活習慣が影響しているわけだ。

クレアチニンは体の老廃物の1つで、本来、血液の濾過によって尿の中に出てくる物質。これが基準値を超えて血液中に残っていれば、腎機能の低下が疑われる。

クレアチニンの基準値は、男性が0.65~1.09 mg/dl、女性は0.46~0.82 mg/dlだ。

そして、この血清クレアチニン値をもとに、1分間にどれだけの血液を濾過して尿を作れるかを示したものがeGFR(糸球体濾過量)だ。

「eGFR 45以下であればCKD(慢性腎臓病)の可能性が高くなります。ただし、CKDは年齢とともに少しずつ進行します。正常範囲であっても、毎年、しっかり確認し、低下のスピードが速くなってきたら、要注意。腎臓は高血圧や高血糖に弱いので、まずはこれらの改善に努めましょう」

眼底検査の意外なメリットとは

最後になるが、40代以降であれば、ぜひ受けてほしいのが、「眼底検査」だと今野さんは言う。

(5)眼底検査

眼底検査は眼球の奥にある眼底の血管の状態を、眼底カメラなどの検査器具を使って観察する。実は眼底検査は目の病気を発見するだけでない、意外な“メリット”があるという。 

「瞳の奥にある動脈は脳の血管からつながっており、『脳のきょうだい』と言われています。つまり、脳を見る代わりになる。眼底の血管が細くなったり、いびつになったり、出血が起こっていたりする場合、脳でも同じ状態が起こっていると考えられます」

同じ程度の高血圧の人でも、眼底検査の結果により、脳卒中を起こすリスクがより高いかどうかが判定できるという。

また、眼底検査では網膜や視神経、毛細血管などの異常から、糖尿病性網膜症や緑内障、加齢黄斑変性など、失明の原因になるような目の病気が見つかることもある。

死因の上位を占める脳卒中や心筋梗塞

メタボや生活習慣病によって起こる脳卒中や心筋梗塞などの合併症は、日本人の死因の上位を占める(2021年は心疾患が全死因の14.9%でがんに続いて第2位、脳血管疾患は7.3%で第4位)。

特に脳血管疾患の場合、たとえ命を取り留めても、手足のマヒ、認知症、構語障害、嚥下障害など後遺症により社会復帰が困難になってしまうケースもある。

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幸いメタボや生活習慣病は早期であれば元の健康な状態に戻ることが可能であり、これをやらない手はない。

「生活習慣の改善に取り組めば確実に効果が得られる。やり方がわからなければ、かかりつけ医や保健センターの保健師、管理栄養士などに相談するのもよいでしょう。もちろん、『要治療』と記載があったら、きちんと医療機関を受診することが大切です」

肥満や糖尿病、高血圧などは、新型コロナの重症化や後遺症と関連する基礎疾患でもあり、こうした健診を受けることの重要性はますます高まっている。自身のためにも、大事な家族のためにも、健診を大いに役立ててほしい。

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(取材・文/狩生聖子)

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近畿大学医学部公衆衛生学教室主任教授
今野弘規医師

1993年筑波大学医学専門学群卒業。大阪府立成人病センター集団検診第Ⅰ部医員、大阪府立健康科学センター健康開発部主幹兼医長、大阪大学大学院医学系研究科公衆衛生学准教授などを経て2022年4月より現職。専門は脳卒中・心臓病や糖尿病などの生活習慣病の疫学研究に基づく予防医学と公衆衛生。

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提供元:【健康診断】40代以上なら絶対受けたい検査5つ|東洋経済オンライン

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