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2022.08.05

降水確率30%でも大雨になることがある理由|傘を「持つ」「持たない」の境目を気象予報士が解説


降水確率50%と80%で強く雨が降るのはどっち?(写真:bee/PIXTA)

降水確率50%と80%で強く雨が降るのはどっち?(写真:bee/PIXTA)

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8月3日、東京は朝から晴れて、最高気温が36.1℃まで上がりました。ただ、午後は天気が急変。午後2時頃から東京都心に雨雲が発生し、さっきまで晴れていたのに急な雷雨となったのです。この日発表された午後の降水確率は20%でした。

みなさんは、降水確率が何%だったら傘を持っていきますか?

家を出かけるときに青空が広がっていて、降水確率も低いので傘を持たずに外に出たら、急に雨が降ってきたという経験はありませんか?

私たちにとって身近な降水確率とはそもそも何なのか、降水確率の生活への活かし方を解説します。

【降水確率50%とはどういう意味?】

降水確率というのは、書いて字の如く、「雨(または雪)が降る確率」です。

それでは、降水確率50%というのは、雨が降るか降らないか五分五分かというと、違います。

降水確率は、その予報を100回出したら1ミリ以上の雨が何回降るかという確率なのです。例えば、降水確率50%は、この予報を100回発表すると約50回は1ミリ以上の雨が降るということです。

「1ミリ以上の雨」というのがミソ

「1ミリ以上の雨」というのがミソで、霧雨のような雨は含まれないこともあります。

そのため、降水確率50%のとき、五分五分以上の可能性で雨は降ります。

【降水確率と雨の強さは関係ある?】

降水確率50%と80%では、雨が強く降るのはどちらでしょう?

降水確率が高いほうが強く降りそうな印象を持たれる方もいるかもしれませんが、降水確率と雨の強さや降水量は関係ありません。

先に述べたように、降水確率というのは、1ミリ以上の雨が降る確率なので、1ミリ以上であれば10ミリでも50ミリでも同じ扱いです。

降水確率が高いと、雨が強く降り、降水量が多くなるのかと連想してしまいがちです。

実際、私が講演会で「降水確率50%と80%では、雨の降り方はどうでしょう?」とクイズを出すと、悩んだり間違えたりする方が結構多いです。降水確率というのは私たちにとって身近な数字ですが、その定義や正しい理解は意外と浸透していない数字でもあります。

降水確率と雨の強さや降水量は関係ない、と覚えておきましょう。

【何%で傘を持っていく?】

かつて、私が所属する(株)ウェザーマップの気象予報士に「降水確率何%以上で傘を持っていきますか?」というアンケートが実施されたことがあります。

アンケートを実施した千種ゆり子気象予報士から、結果を提供してもらいました。

気象予報士は20%以下でも2割弱が傘を持って家を出る

記事画像

「一般論として、降水確率何%以上で傘を持っていくことを勧めますか?」

「30~40%」と回答した気象予報士が圧倒的に多く、約7割でした。

例えばテレビの天気予報など、一般向けには、降水確率が30~40%以上で傘を持っていくように伝えている気象予報士が多いようです。

それでは、気象予報士自身はどうしているでしょうか。

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「あなた自身は、降水確率何%以上で傘を持っていきますか?」

最も多かった回答は「30~40%」で、4割以上でした。「0~20%」でも傘を持つ気象予報士が2割弱います。合計すると、6割以上の気象予報士が降水確率40%以下で傘を持っていくことがわかります。

一方、3割以上の気象予報士は降水確率が50%以上ないと傘を持たないという結果が出ました。ただ、中には傘が嫌いで土砂降り以外は持たないなど、傘を持つ=雨が降ると思っているわけではない人もいるようです。

また、「降水確率より雨雲レーダーで判断する」「発雷確率や上空の寒気などの大気の安定度を確認している」など、降水確率だけで判断しないという声もありました。

私は、夏以外は30~40%以上で傘を持っていきます。

たとえ降水確率が30%以下でも、傘を持ったほうが良い日があります。特に夏は、降水確率だけで判断できないことが多い季節です。

降水確率が低くよく晴れていても、天気が急変して急な強い雨、いわゆるゲリラ豪雨に見舞われることがあるからです。

天気急変で5000人以上が帰宅困難に

実際に、天気が急変して大雨になった事例を振り返ってみましょう。

2017年8月19日、東京都世田谷区で「たまがわ花火大会」が予定されていました。

当日の朝に発表された東京の天気予報は「くもり」で、午後の降水確率は30%です。

雲が多いながらも晴れ間があり、東京の最高気温は30.3度で真夏日になりました。暑い中で、屋台の準備が行われたり、場所取りをする見物客が訪れたりしていたそうです。

ところが、午後5時頃から雷を伴った雨が降り出し、花火大会は中止になってしまいました。

世田谷では1時間に38.0ミリの激しい雨が観測され、雷鳴が何度も何度も轟き、ひょうが降ったとみられます。

また、練馬では1時間50.0ミリの非常に激しい雨が降り、観測史上2位の記録となりました。

2017年8月19日の天気図(出典:weathermap)

2017年8月19日の天気図(出典:weathermap)

当日の天気図です。上空に流れ込んだ寒気が一因となり、局地的に積乱雲が発達しました。

2013年8月15日は、長野県諏訪市で「諏訪湖祭湖上花火大会」が開催されました。4万発もの花火が打ち上げられる全国的に有名な花火大会の1つで、長野県外からの見物客も多く、毎年50万人ほどが訪れていたそうです。

当日の朝に発表された長野県中部の天気予報は「晴れ時々くもり」で、午後の降水確率は30%でした。

よく晴れて諏訪の最高気温は33.7度まで上がっていましたが、花火大会が始まる前の午後4時前後から急な雷雨となりました。

その後、雨の降り方が弱まったため、花火大会は予定通り午後7時から開始されたそうです。

しかし、始まって30分ほどで再び雨が強まり、非常に激しい雨が降ったのです。諏訪のアメダスでは1時間74.5ミリの雨を観測し、今でも観測史上1位の記録となっています。

花火大会が中止になっただけではなく、JRなどの公共交通機関が運転を見合わせ、高速道路は通行止めとなってしまい、5000人を超える見物客が帰宅できずに公共施設で一夜を過ごしました。

夏は、降水確率が低くても急な強い雨や雷雨になることが、他の季節よりも多いです。

このような雨は局地的な現象で、降水確率は低くなりがちです。降水確率20%で、局地的な雨が降ったこともあります。

日中気温が上がることで上昇気流が発生して、積乱雲ができて、局地的に急な雨が降るというメカニズムです。

気温だけでなく湿度も高いときや上空に寒気が流れ込んでいるときは、一層天気が急変しやすくなります。

それでは、天気予報が当てにならないのかというと、そういうわけではありません。

気象キャスターの解説にヒントがある

降水確率の数字や天気マークだけを見るのではなく、私たち気象キャスターの解説にいつもより耳を傾けていただけたらと思います。すべてを捕捉できているわけではないですが、数字やマークで表現されていない急な雨の可能性がわかっている場合も多いです。

天気予報で「大気の状態が不安定」「晴れていても天気が急変するおそれがある」「雨マークはないけれど雨が降る可能性がある」などと伝えている日は、降水確率が低くても念のため傘を持っていくことをおすすめします。

【天気急変のサイン】

大気の状態が不安定なとき、晴れていても天気が急変し、急な強い雨、雷雨、降ひょう、竜巻などの突風が吹くおそれがあります。

積乱雲が近づくサイン(出典:気象庁HP)

積乱雲が近づくサイン(出典:気象庁HP)

天気を急変させる積乱雲が近づくサインは、主に以下3つです。

・真っ黒い雲が近づいてきた

・雷の音が聞こえてきた

・急に冷たい風が吹いてきた

このようなときは、今晴れていても、まもなく天気が崩れる可能性があります。速やかに頑丈な建物や自動車など、安全な場所に避難しましょう。

ただ、実際には3つのサインに気付かないことも多いかと思います。

また、気付いたとしても、積乱雲が自分のほうに向かって来ないかもしれません。

そんなとき、便利なのが雨雲レーダーです。

気象庁の雨雲の動き(出典:気象庁HP)

気象庁の雨雲の動き(出典:気象庁HP)

気象庁のHPなどでは、現在の雨雲の様子と今後の雨雲の動きの予想を見ることができます。

上手に使って急な雨から逃れましょう。

【詳しい降水確率の見方】

降水確率は、午前と午後の2つに分けて表記されることもありますが、より詳しく知ることができます。

気象庁の天気予報(出典:気象庁HP)

気象庁の天気予報(出典:気象庁HP)

気象庁のHPでは、6時間ごとの降水確率を提供しています。

また、「Yahoo!天気・災害」など、1時間ごとの降水確率を見られるサイトやアプリもあります。
例えば、雨のマークはないけれど、降水確率が正午までは0%、午後3時以降は30%だったら、午後3時からは天気が急変して雨が降るかもしれない、と備えることができます。

降水確率を正しく理解して、最適な情報を得ることで、みなさんの生活に役立ててください。

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提供元:降水確率30%でも大雨になることがある理由|東洋経済オンライン

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