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2022.07.28

「第二次性徴並み」中年の大変化をどう受け入れる|「鏡の前が苦痛」35歳漫画家が美女を目指した先


中年の老化を受け止めるには、多くの過程を経る必要がある。写真はイメージです(写真:UYORI/PIXTA)

中年の老化を受け止めるには、多くの過程を経る必要がある。写真はイメージです(写真:UYORI/PIXTA)

漫画家の田房永子さんは、第2子を出産した35歳の時に「急激に見た目がオバサンになり、鏡を見るのが辛い気持ちがピークになった」という。加齢による体型の変化に気持ちが追い付かず、自分がうつった写真や鏡を見ることができなくなってしまった。

田房永子さんの著書『いつになったらキレイになるの?~私のぐるぐる美容道』(扶桑社BOOKS)では、「自分の姿を好きになりたい」と一念発起し、断食道場、エステ、パーソナルカラー診断、ZUMBA(ズンバ)などを体験し、奮闘する様子が描かれる。

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しかし本書は単なる美容ハウツーやダイエット成功体験談に帰結しない。田房さんは「ゆるふわコンサバ」になろうと訪れた美容院で「90年代風刈り上げヘアー」にしてもらってしまう。そんな自分に戸惑い「私が本当に好きなファッションって何だろう?」と自問自答する。

また、エステティシャンから「ずっとそんな脚でいいんですか?」と心ない言葉をかけられた時は、「本当になりたい自分って?」「モデルのような美女になりたいんだっけ?」と問い直す。そして「年齢を重ねていく自分の姿を気に入っておきたい」という自分の望みに気づき、その方法を模索するようになる。

自分が本当に好きなものや、やりたいことを実行するうちに、「年齢を重ねた今の自分に似合う服装」や、「将来おばあさんになったら身に付けたいもの」など、加齢を受け入れるヒントを見つけていく。そして現在43歳になった田房さんは本書の冒頭で「『結局(キレイには)なりませんでした』でも(中略)自分の姿がたまに好きにはなりました(サイコー)」と書いている。

加齢を受け入れ、自分が自分であることを楽しんで生きることは当たり前のようでとても難しい。これまで「若々しく美肌で痩せた美女を目指しましょう」という価値観に晒されてきた今の30代、40代の女性達には、さらにそれが困難なのかもしれない。田房さんはどうやって「自分の姿がたまには好きになれた」のか?

中年の老化は「第二次性徴」並みの衝撃

田房永子さんは35歳の時、ふとスーパーマーケットの鏡に映る自分を見て大きなショックを受けたという。

「まさに『オバサン』という感じ。二の腕や背中に肉が付いて『自分が思っている自分の見た目』と全然違うのが耐え難かったです。昔から自分の姿が好きな方ではなかったのですが、鏡や写真にうつった自分を見るのが苦痛になりました。

仕事と子育てで余裕がないのに『外見をなんとかしないと』と焦って追い詰められていました」

30代、40代になると白髪やシワが一気に増える。田房さんはそれを「第二次性徴」並みの変化だと話す。

「思春期に『第二次性徴』で大人の体へ大変化しますが、中年で起こる見た目の変化は『第四次性徴』と言っても過言ではないくらいだと思います。大人だってビックリするしショックです。でもそこに関しては事前に真面目に教えてもらう機会がないし、むしろコミカルに処理して受け入れなければいけないような空気があると思います」

太った自分をシャレにできない

外見の変化に対して、世間一般で「正解」とされているリアクションができないことが田房さんを一層悩ませた。

「ふくよかな体型の人が、自分の特徴を明るくコミカルに話したりすると、周りの人たちが思わずわーっと笑ってしまうことがありますよね。その笑いは見下しているのではなく、『この人は自分の特徴を自覚してるんだ』と、皆で現実を共有している安心感からくるのだと思います。

私は太ったことをシャレにできなかったので、そういう人がすごく羨ましかった。自分の体型を受け入れられないので『太っていない振りをしている人』みたいな感じでした。すると周囲もそこに触れないようにしなければいけないのでシリアスな空気になっていました。

さらに『今どき自虐する奴はイタイ』という空気があると感じていたので、そういうふうに逃げることもできませんでした。とにかく自分以外の全員が羨ましくて、『自分だけが醜い』と思い込んでいた30代後半はすごく辛い時期でした」

その頃、外見が「母にそっくり」になってきたことがショックを大きくした。田房さんは、著書『母がしんどい』(KADOKAWA/中経出版)などに描かれている通り、母親の過干渉から抜け出すために壮絶な体験をしている。

「中高生の頃に1番激しくやり合っていた頃の母と自分が似てきているのがすごく嫌でした」

自分が本当にやりたいことをやってみた

「ちょっとでいいから自分の姿を好きになりたい」という思いから、田房さんは痩身エステやパーソナルカラー診断、断食道場、加圧トレーニングなど様々な美容法に挑戦。その体験の中で生じた感情や自身の価値観に向き合い、「自分は本当に何がしたいのか」「これからどうなりたいのか」を考えて、本当の自分の気持ちに耳を傾けるようになる。そして「運動が不得意だけど卓球は好き」「音楽と一体化して踊ってみたい」という自分の欲求を叶える行動を起こすようになる。

「自分が本当にやりたいことをやってみたことで、『自分の中の自分が喜んでいるなあ』と感じたんです。自分の期待や欲望に応えることで、自分自身と信頼関係を築くことができたのだと思います。

『外側の自分』は社会の方を向いて行動しているので、つい自己成長や社会的成功のために効率のいい方に行ってしまいがちです。すると『内側の自分』が楽しいと思えることからズレてしまいます。私もそうやって、つい自分に対してスパルタになったり自分を責めたりしていました。

でも『内側の自分』に足並みを揃えると、外側の自分も明るくなってきました。体型のことも『色々やったけどすぐには痩せられないし、しょうがないか』と受け入れられるようになりました」

その頃、きれいな友人と過ごしたことが外見に対する捉え方が変わるきっかけになったという。

「モデルのような体型の友人と久しぶりに会った時、私とは骨格も何もかも面白いくらい違っていて、アーノルドシュワルツェネッガー主演の映画『ツインズ』(1988年)に出てくる兄弟みたいだなと思ったんです(笑)。

一人で考えている時は『美女にならなきゃ』と自分を責めていたけど、実際に美女に対面したら自分とあまりにも違うから『どうしてこうなれると思っていたんだろ?』とおかしくなってしまいました。美女と違うからといって自分がダメなわけじゃないし、自分を責めなくてもいいんだなと思うようになりましたね」

「ルッキズム」について考えるのは息苦しいけど大切

外見に悩みを抱える人は、美容広告によって「美の基準」を押し付けられるように感じたり、容姿をいじって笑いにするテレビ番組が辛いと感じることがある。最近はそういったルッキズム(外見至上主義)を批判する動きが出てきたが、田房さんはどう感じているのだろうか?

「昔からテレビの容姿いじり、特に薄毛の男性に対する扱いが『本当に酷いな』と感じていたので、『そういうのはダメだよ』という考え方が出てきたのはすごくいいことだと思います。そういう意味で、少し前までバラエティ番組を見られない時期があったんですけど、今は見やすくなってテレビが断然面白くなったと思っています。

新しい考え方なので、『ルッキズム的な発言をする側』として、自分が取り締まられるような息苦しさを覚える人も当然いると思います。そういう息苦しさも含めて皆で調節しながら『それはダメじゃない?』『そこはいいんじゃないかな』と考えることをやっていかなければいけないと思います」

田房さん自身は、「一般的な美の基準」とどう折り合いをつけ、年齢によって変化する外見を受け入れられるようになったのだろうか?

「美しさは人間が本能的に感じるものなので、そこは嘘をつけないと思います。それを無視して『全員美しいですよ』とは言えません。やっぱりガッキーは美しいし、広瀬すずちゃんはかわいい。

でもそれと同時に自分にフォーカスして、自分の歴史の中で体や見た目の変化を楽しんだり、慈しむような感覚を大切にするようになりました。『石田ゆり子さんって素敵だなあ』と憧れたり、『でも全然なれないじゃん!』と思う自分を面白がりながら年を重ねていけたらいいなと思っています」

1年に1秒でも自分を好きになれたら上出来

43歳になった今は自分の見た目に対して「いい感じに諦められるようになった」という田房さん。

「以前は自分の気持ちが重過ぎて言えなかったけど、今は『痩せた~い』と気楽に口にできるようになりました。

もちろん今でも痩せられるならすぐに痩せたいです(笑)。でも色々とやってみたことでそれは無理だと分かったので、『これ以上太らなければいいってことにしようか』と思えるようになりました。自分に足並みを揃えることは自分にしかできないので『これからは自分と一緒にやっていこう』と今のところは思っています」

自分の外見を受け入れた頃から、さらにもう1つの変化が起こっていた。

「自分のことを部分的に『かわいいな』と思えるようになりました。たとえば着替えている時にふと『自分の足の色っていいじゃん』と思ったりするんです。そういう機会が増えたことが心の栄養になっていると思います。

以前は足の色なんて気にも留めなかったし、そのくらい自分のことを見ていなかった。自分に対して酷い扱いをしていたのかもしれません」

部分的にでも自分の見た目を褒めることは容易いようで、謙遜を美徳とする教育を受けた私達にはハードルが高いのかもしれない。

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『いつになったらキレイになるの?~ 私のぐるぐる美容道~』(扶桑社) クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

「難しいですよね、だから『いつも自分を好きになろうよ!』なんて全く思いません。

自分の外見が辛いと感じる時期は誰にでもあると思うし、そういう時に無理に自分を好きにならなくていい。私がやってみたことも、やりたくないならやらなくていいし辛い時は自分の楽な方に行っていいと思います。私自身『水泳に行った方がいいけど今日は行く気しないな』と少しでも感じたら行かないし、行かない自分を責めないようにしています。

私に言えるのは『みんなかわいいから大丈夫、辛いのはしょうがないからバタバタしていこうぜ!』ということくらい。そんな中で、1年に1秒でも『自分の見た目のこの部分がいいな』と思えたり、楽しい瞬間があったら上出来だと思います」

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提供元:「第二次性徴並み」中年の大変化をどう受け入れる|東洋経済オンライン

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