2022.07.27
猛暑乗り切る強い味方「きゅうり」おいしく食す技|初心者も簡単!サラダと酢の物でさわやかに
猛暑を乗り切る「きゅうりのサラダ」(左)と「酢の物」(右)の作り方を伝授します
在宅勤務などによって、家で料理をする人が増えたのではないでしょうか。料理の腕を上げるために、まず作れるようになっておきたいのが、飽きのこない定番の料理です。料理初心者でも無理なくおいしく作る方法を、作家で料理家でもある樋口直哉さんが紹介する連載『樋口直哉の「シン・定番ごはん」』。今回は「きゅうりのサラダ」と「酢の物」です。
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きゅうりは塩分を多く摂りがちな夏に最適
きゅうりは夏になると食べたくなる野菜です。栄養面でもカリウムが多く含まれているので、塩分を摂りがちな暑い時期に食べたいところ。今日は「きゅうりのサラダ」と「酢の物」をご紹介します。
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同じきゅうりという食材を使うことで、西洋料理と日本料理の考え方の違いが理解できるはずです。
まずは「きゅうりのサラダ」から。おいしいきゅうりは緑色が淡く、形が整っています。
多少の曲がりは味に影響しませんが、あまりに曲がっているきゅうりは生育不良が疑われ、えぐみや苦みなどが強い可能性が高いです。また、トゲのある品種の場合、鋭いトゲは鮮度がいい証拠なので、見かけたらぜひ購入してください。
きゅうりは品種が多く、写真のようにとげのない品種もあります
きゅうりのサラダの材料(2人前)
きゅうり 1本
塩 0.5%
ヨーグルト 大さじ2
オリーブオイル 小さじ1
塩 小さじ1/8
こしょう 適量
きゅうりはよく洗い、両端を切り落とし、皮をむきます。ヨーロッパ圏やアメリカ圏できゅうりを料理する場合は、皮をむくのが普通です。
さまざまな理由が考えられますが、例えばアメリカでは、長期間の輸送に耐えられるように品種改良を進めたので皮が硬かったり、乾燥を防ぐためにワックスが塗られていたりする場合があるからでしょう。一方、日本のきゅうりは皮が比較的、やわらかく、風味もあるので、多少残してもおいしいです。
包丁でむくのは大変なのでピーラーを準備しましょう
3~4mm厚にカットします。5~7mmくらいの厚みでもおいしいですが、このあたりは好みです。
このきゅうりは種が大きいですが、一般的には種は小さいほうがおいしいとされます
きゅうりは水分が多い野菜なので、その扱いが重要になります。ここでは重量の0.5%の塩を振りました。
このきゅうりは1本150gでした
さらに氷を1~2個のせて、ラップをかけて、冷蔵庫で30分~1時間冷やします。これはフランス料理の巨匠、ジョエル・ロブションが推奨する下処理で、きゅうりの水分を抜きつつ、締まった食感を保つことができます。
氷はおまじない程度の効果なので、省略しても結構です
冷蔵庫から出したきゅうりをキッチンペーパーに包み、水分を取り除きます。強く押したり、潰したりするときゅうりの細胞が壊れ、味が抜けてしまうのでやさしく扱ってください。汗をふくような感覚で行いましょう。
ちなみにアメリカやヨーロッパのきゅうりであれば水分をぬぐう必要はありません
ヨーグルトドレッシングを作ります。ヨーグルト、オリーブオイル、塩、こしょうを小さな泡立て器で混ぜ合わせましょう。ヨーグルトと同量の生クリームを入れるとさらにリッチな味わいになります。フランス料理ではきゅうりを生クリームで和えたサラダが定番です。
今回のようにヨーグルトのみで和えると、現代的な軽い味わいになります。ポイントはこしょうで、その風味が味わいを引き締めてくれます。こしょうをカレー粉に変えても違った風味が味わえます。
こしょうはしっかり効かせましょう
しっかりと混ぜ合わせます
ドレッシングできゅうりを和えます。
この料理はできたてが一番で、作り置きはできません
器に盛り付けたら出来上がり。普段の料理に一品加えると食卓が華やかになりますし、カレーにもよく合います。きゅうりのカリカリした風味がおいしい一皿です。
出来上がり。冷やした白ワインと好相性です
さて、次に日本料理の定番、きゅうりの酢の物を作っていきましょう。ここで学べるのはやはり水分のコントロールと「きゅうりもみ」という技法です。きゅうりもみはきゅうり料理の基本。きゅうりに塩を加えて細胞を壊し、生とは別の食感に変えます。
しらすの分量は増やしても減らしてもかまいません
きゅうりの酢の物の材料(2人前)
きゅうり 1本(100~150g)
塩 1.5%
わかめ 10g
しらす 20g
★三杯酢
酢 大さじ1
しょうゆ 小さじ1
砂糖 小さじ1
きゅうりをスライスしていきましょう。1mmの厚さに切っていきます。スライサーを使ってもいいでしょう。
何本がそろえて切ると作業が早く終わります
きゅうりをボウルに移し、きゅうりの重量の1.5%を目安に塩を振ります。ここから15分、放置します。
塩はやさしく和えます
そのあいだにわかめの準備です。塩わかめであればボウルに入れて何度か水を変えながら洗い、乾燥わかめはひたひたの水で10分ほど戻します。
わかめは水を吸うと意外なほど増えるので、準備する量は気持ち少なめがおすすめ
さて、15分経ちました。きゅうりに塩が浸透し、しんなりしています。
15分以上置くときゅうりがやわらかくなるので、ごま和えなどが向いています
キッチンペーパーでもむように水分をとります。これがきゅうりもみです。
破れにくい不織布タイプのキッチンペーパーがおすすめです
ボウルに入れて、しらすやわかめを和えます。
しらすのにおいが気になる場合は酢で洗うといいでしょう
しょうゆ、酢、砂糖を混ぜた三杯酢を準備します。
ちなみに砂糖は時間を置けば溶けます
器に盛り付けた和え物に三杯酢をかければ出来上がりです。
三杯酢をかけるのは食べる直前に!
副菜としてあるとうれしいきゅうりの酢の物。しらすは省略することもできますし、わかめの量を増やしても大丈夫。料理は味の構造さえ守れば、おおらかに考えていいのです。
出来上がり。みょうがやネギなどを加えてもいいでしょう
西洋料理と日本料理のアプローチの違い
先ほどのサラダはきゅうりから水分を抜きすぎず、油(ヨーグルトとオリーブオイル)を使って味付けしました。この素材の味に「塩と油で調理していく」というアプローチは西洋料理の構造です。
一方、きゅうりの和え物はきゅうりに塩を振って水分と風味を抜き、そうしてできた隙間に味を付けていきます。この場合、塩分だけではなく、しょうゆに含まれるうま味成分も足されるので、味わいとしては豊かになります。この素材の味をいったん抜き、そうしてできた隙間に味を含ませていく……というのが日本料理の考え方です。
例えばふろふき大根のような煮物も一度、大根を茹でこぼし、味を抜いたところに出汁の味を含ませていきます。普通はそこにさらにしょうゆやみそなどのうま味を含む発酵食品を組み合わせるので、おいしさが担保されます。この違いはどちらが優れている、優れていないという話ではなく、風土がもたらす文化の差です。
いずれにせよ、きゅうりという同じ食材を使っても、組み立て方を変えれば食卓のバリエーションは広がります。西洋料理的なアプローチと日本的なアプローチ、どのように料理してもきゅうりのさわやかなおいしさは変わりません。
(写真はすべて筆者撮影)
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提供元:猛暑乗り切る強い味方「きゅうり」おいしく食す技|東洋経済オンライン