2022.07.22
1日何度もToDoリストを見る人の仕事が遅い理由|成績TOP5%と残り95%の仕事のやり方の差
仕事が遅い社員と、仕事の早い社員の違いは“タスクマネジメント”にありました(写真:アン・デオール/PIXTA)
仕事が終わるのは、いつも夜遅い時間。サボっているわけではなく、一生懸命に働いているけれど、気がつくと時間が足りなくなっている……。働き方改革で、昔に比べて就業時間自体が短くなっていることもあり、このような悩みを持っているビジネスパーソンが増えているそうです。
『AI分析でわかった トップ5%社員の時間術』では、著者である越川慎司氏のパートナー企業の中で成績がトップ5%の社員が効率よく短時間で成果を出すために実践している時間術のうち、2.2万人の「一般的な95%の社員」で再現実験し、成果が見られたものについて紹介しています。本稿では同書より一部を抜粋し、トップ5%社員がやっている“タスクマネジメント”方法についてお届けします。
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メンバーを巻き込んで早く作業を終わらせる
タスクマネジメントについて95%社員と5%社員にヒアリングをしたところ、明らかにその定義が異なっていました。
95%社員の考えるタスクマネジメントは「自分が受け持つタスクを自分で実行し、期限内に終わらせること」、5%社員が考えるタスクマネジメントは「仕事を受けるかどうか考えることもタスクマネジメントの一部」とのことでした。
さらに5%社員は、仕事を受けた後に「自分でやること」と「誰かに依頼すること」を分けて管理していました。つまり、5%社員は、他人を巻き込んで仕事を依頼することもタスクマネジメントだと考えているのです。
「期限内にタスクを終える」という点では95%社員も5%社員も同じ考えですが、「タスクを実行するのは自分だけではない」というのは5%社員の特異点でした。
そしてもちろん、一方的に他人を巻き込んで仕事を依頼するわけではありません。依頼する相手のベネフィットと依頼内容の意義・目的をしっかり伝え、相手が納得したうえで仕事を振っています。また、依頼する仕事の主語は、「相手と自分を含めた私たち(We)」として話しかけるケースが多かったです。
・1つの課題を努力と根性で、1人で解決するパターン
・仕事の複雑さを理解し、適材適所で人を巻き込みながら解決するパターン
この2択であれば、後者の成功確率が高くなることは容易にわかるでしょう。
人を巻き込むには、高度なスキルが必要です。5%社員は、人を巻き込むコミュニケーションスキルを磨くことにも時間を費やしていました。巻き込み方のメソッドが確立できれば、より短い時間でより大きな課題を解決できるようになるからです。作業よりも、こうした時短の仕組み化に時間を費やすのも5%社員の特徴です。
やる気が削がれることは仕事から排除する
5%社員は、期限までに仕事を終わらせるために、タスク管理サービスのTrelloやMicrosoft To Do、Google Tasks、Notionなどを使って「いつまでに」「何をやらなくてはいけないか」を確認しています。
タスクマネジメントの一環として、すべてのメンバーがタスク管理ツールアプリを使って仕事を管理している組織もあります。しかしタスク管理は、やる気を下げるストレス要因にもなり得るものです。そこで、「やる気を削ぐものを避ける仕組み」が必要になります。
5%社員は、タスク管理ツールを見る頻度が95%社員より37%も低いことがわかりました。期限内にきっちりと仕事を終わらせるために、何度もToDo リストを確認しているかと思いきや、仕事中に1回、タスクが終わったときに完了ボタンを押すために1回の計2回ぐらいしか見ていないのです。
私は追われているタスクを忘れて周りに迷惑をかけることが怖いので、1日に3回も4回もタスクリストを見てしまいます。
しかし、5%社員の真似をして、「1日に2回しかToDo リストを見ない」というルールに変えたところ、5カ月経っても特に問題はなく、見えない不安に時間を費やしてしまっていたことに気がつきました。
5%社員はタスクを忘れないように、1日2回はToDo リストをチェックしていますが、それ以上チェックすると、自己肯定感が下がるとも捉えていました。期限つきの多くのタスクを眺めていると、精神的に追い詰められ、できていない自分を否定し、自己嫌悪に陥ってしまうことを理解していたのです。
そのため、必要以上にToDo リストを見たり、不安だからといって何度も確認したりすることはないそうです。
こうした自己嫌悪につながる可能性も排除できれば、不要な不安から逃れることもできるのです。
既刊『トップ5%社員の習慣』にも書きましたが、5%社員は、職場で座る時間が極めて短いです。職場デスクに座っている時間は95%社員より50%以上も短いのです。各部署に顔を出して誰かに積極的に話しかけたり、各部門を歩き回っていたりするからです。
そのため、喉が渇きやすそうですが、机の上にはドリンクが置かれていませんでした。オフィスに設置されたドリンクサーバー横の小さな紙コップ分、一口、二口程度の水分は置いてあるのですが、300ml 以上のドリンクは置かれていません。
また、在宅勤務の画像をいくつか確認したところ、5%社員は、机の上に500ml 以上のドリンクを置いていませんでした。自宅でもオフィスと同様に、一口、二口程度の水分を置いているくらいでした。
95%社員は、オフィス勤務でも在宅勤務でも500ml 以上のドリンクを置いていることが多かったので、5%社員の行動がユニークに思えました。しかし、5%社員は水分補給をしていないわけではなく、こまめに水分を補給しています。在宅勤務のときの5%社員は、むしろ水分補給をする頻度が高いのですが、机の上には水分を置かないのです。
この理由がわからずにモヤモヤしていた弊社のリサーチ担当は、29人の5%社員に追加ヒアリングをしました。すると、彼らは意図的に500ml 以上のドリンクを置いていないことがわかりました。
どっしりとドリンクを置いて仕事を始めてしまうと、立ち上がるきっかけがつかみづらく、さらに作業興奮で仕事をし続けてしまうことを恐れていたのです。
そして、「水分を補給するときは、立ち上がってキッチンや冷蔵庫まで行く」ということを習慣化していたのです。こうして5%社員は、オフィス・自宅問わずに自分を動かす仕組みを整え、時短にもつなげているのです。
贅沢キーボードで時短する
オフィスで仕事をする際は、パソコンやキーボード、マウス、デスク・椅子など、会社から支給された備品を使うことが一般的です。しかし在宅勤務になると、デスクや椅子、そして一部の備品などを自分で調達することになります。
職場で使っているノートパソコンを自宅に持ってきて在宅勤務する人もいますが、5%社員は、自分のお金でちょっとした投資を行っていました。
例えば、ノートパソコンに外部モニターをつけて、2つのディスプレイで作業効率を高めていました。
外部ディスプレイ以外の備品でみると、95%社員はウェブカメラや座布団などを自費で購入していたのに対し、5%社員はキーボードやマイクを購入していることがわかりました。
既刊『トップ5%リーダーの習慣』では、5%リーダーはマイクに投資をして、カメラにはあまりお金をかけていないことを紹介しました。
5%社員も同様で、マイクは5000円から1万円程度の「単一指向性コンデンサーマイク」を使用している比率が高かったです。
意外だったのは、マウスは安価なものでも、キーボードにはお金をかけていたことです。
ノートパソコンのキーボードをそのまま使うこともできますが、ノートパソコンのキーボードだと横幅が狭く、肩をすくめながら作業をすることになり、効率が落ちてしまいます。そこで5%社員は、ノートパソコン本体は専用のスタンドに立てかけ、キーボードは別途自費で用意したものを使用していました。
キーボードは、高価だけど高機能なものではなく、打鍵音が静かでボタンが大きめなものを選んで、打鍵ミスを少なくするように心がけていました。5%社員は最低限のショートカットキーを身につけているので、最低限の機能があれば、そつなく、そして快適に入力作業を行えるのです。
たしかに自分に必要なショートカットキーを知っていれば、マウスを使う頻度が少なくなるので、マウスへの投資は不要になります。一方95%社員は、在宅勤務で使うマウスに投資する傾向がありました。例えば、スクロール式のものや、ゲーミングマウスのような少し大きめでショートカットのボタンが沢山あるものです。
目的志向の5%社員は、どのような作業が多く、どこのストレスを減らせば集中力と行動継続力を強化できるかを考え、対策を打っていたのです。
「ちょっと外出」で生産性を上げる
5%社員は1つの場所にじっとしていません。よく歩きます。ウォーキングを日課にしている人は5%社員の23%で、95%社員の約6倍です。
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出勤時に1つ手前の駅で降りて、歩いて職場に向かうことを習慣にしている5%社員は多数います。テレワークでは、ウォーキングをしている5%社員が多かったです。ウォーキングしながら社内会議に参加したり、ジムのウォーキングマシンで歩きながら経営会議に参加したりするトップリーダーもいました。
精神科医に歩く効果を聞いたところ、動いていたほうが集中力と記憶力がアップするそうです。移動すると場所ニューロンという神経細胞がはたらき、集中力と記憶力を司る脳の海馬が刺激されます。
集中と継続を重視している5%社員が動き回っていたのは理にかなっていたのです。
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提供元:1日何度もToDoリストを見る人の仕事が遅い理由|東洋経済オンライン