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2022.07.19

「あおり運転」2輪車や大型車から見た乗用車の姿|混合交通では他車とのコミュニケーションが重要


乗用車のドライバーからはうかがい知れない大型車、2輪車をめぐる「あおり/あおられ運転」の実態とは? (写真:ヨシヒロ/PIXTA 、node/PIXTA)

乗用車のドライバーからはうかがい知れない大型車、2輪車をめぐる「あおり/あおられ運転」の実態とは? (写真:ヨシヒロ/PIXTA 、node/PIXTA)

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昨今、よく話題になる「あおり運転」。ほかの車両の通行を妨害し、重大な交通事故にもつながる危険な行為だ。この問題をとことん考える短期集中連載の第3回。第1回「あおり運転『あおられる側』が意外と知らない事実」、第2回「あおり運転に怒り覚える人に知ってほしい対処法」に続く最終回は、あおり/あおられ運転にまつわる2輪車、大型商用車の実情や、あおり/あおられ運転から身を守る先進安全技術について考えてみたい。

乗り物ごとに、あおり/あおられ運転の違いはあるのだろうか。交通コメンテーターとして日々、2輪車、乗用車、大型車を運転している筆者の経験則からすると、乗り物によってあおり/あおられ運転の違いは確かにある。

2輪車は車体が小さいため、後続車からすると車間距離の感覚が乗用車と異なる。よって接近されやすく、結果、あおられたと感じるライダーは多い。

「あおり運転『あおられる側』が意外と知らない事実」 ※外部サイトに遷移します

「あおり運転に怒り覚える人に知ってほしい対処法」 ※外部サイトに遷移します

死角に入ることがある2輪車に注意

また、2輪車は車両重量が軽いので加速力だけでなく減速力も優れているというイメージが先行しているのか、高速道路で追い越し車線走行時に危険なタイミングで割り込まれることもしばしば経験する。

割り込む側からすると悪気はなく、減速できると考えて車線変更を行っている。よって、とくに2輪車は他車の死角に入らない防衛運転が大切だ。

自転車を含めた2輪車の急制動時は、前輪1輪が主となって止まる力を生み出すため前のめり傾向になり、車体の安定性が悪化する。今でこそ排気量に応じて2輪車(新型車)にも急ブレーキ時や低摩擦路におけるブレーキ操作で、車輪がロックして滑ってしまうのを防ぐABS(アンチロック・ブレーキ・システム)の装着が義務化されたが、4輪車に対して制動力では物理的に不利だ。また、2輪車の制動力はライダーの技量によるところも大きい。

2輪車があおり運転の当事者になることがゼロであるとは言わない。しかし、あおり運転≒命の危険となることから、割合からすれば少ない。それよりも車両の間をすり抜けるジグザグ走行のほうが自動車のドライバーからすれば危険に感じる。

筆者は1993年から(一財)全日本交通安全協会の2輪車安全運転推進委員会で指導員として、ジグザグ走行の危険性をつねに受講者の方々に説いているが、ドライバーの死角から突然、2輪車に追い抜かれて驚いたドライバーも少なくないはずだ。

筆者は過去に大型商用車の開発に従事していたが、その経験からすると、大型車は車体が大きいため、後続車からすると前方視界が遮られることから同じく接近されやすい。また、車両と積荷を含めたGVW値で25tにもなる大型トラックは重いため乗用車ほどの加速力が生み出せない。

一転、ブレーキ力は強力だ。乾燥したアスファルト路であり、空荷(GVWで12t前後)であれば減速度にして0.8程度(乗用車の急ブレーキとほぼ同一)は出せるし、大型観光バス(車両+乗員乗客合わせ16tほど)でも同じく力強く止まる性能をもっている。

しかし、荷物を積んでいれば荷崩れ抑制の問題から、乗客が乗っていれば車内事故抑制の観点から、それぞれ急ブレーキが踏めないのが実情である。

その大型トラックや大型観光バスから、あおり運転を受けたという声を耳にする。確かに自車背後に背の高い大型車が迫ってくれば、ゆっくり近づいてきたとしても威圧感があり怖いと感じるドライバーもいるだろう。

大型車は車体が大きいことから前方の交通状況がわかりづらい(写真:筆者提供)

大型車は車体が大きいことから前方の交通状況がわかりづらい(写真:筆者提供)

ただ、乗用車と同じ感覚で大型車の前に割り込めば、先の理由から強いブレーキが掛けにくい状況にあるため、どうしても割り込んだ車両との車間距離が短くなる。

このとき、大型車を運転するプロドライバーとしても接触や追突はなんとしても避けたいから、通常時よりも強めのブレーキ(減速度にして0.4~0.6程度)を掛けるが、割り込んだ車両との速度差が少ない場合は一時的とはいえ、車間距離が詰まってしまう。

降板路から登坂路へさしかかる場所も注意

別の理由から大型車からあおり運転を受けたとする声も聞く。それはサグ部で起こりやすい。サグ部とは、降坂路から登坂路へさしかかる場所をさし、ここを基点に車両の速度が落ちやすい。

下り坂から上り坂への転換点がサグ部と呼ばれ、速度が落ちやすく渋滞の基点となることがある(写真:筆者提供)

下り坂から上り坂への転換点がサグ部と呼ばれ、速度が落ちやすく渋滞の基点となることがある(写真:筆者提供)

大型車の場合、先を見越した予測運転が安全で、燃費数値のいい運転になることから、サグ部を見越して登坂路にさしかかる前にアクセルを少しだけ踏み込み、速度低下を抑制している(これを波状運転の抑制と言う)。物流業界において燃費数値の悪化は収入の減少を意味するし、運送会社によってはSDGsの観点から波状運転抑制を推奨している。

このサグ部にさしかかった際、前走車が乗用車で速度の低下に気がつかないとどうなるのか。結果はおわかりのとおり、あおり運転の構図になってしまう。ここでも双方に悪気はないが、前走車と後続の大型車ドライバーとのコミュニケーションが図れないため、“疑似的なあおり/あおられ運転”が発生してしまうのだ。

ただし平坦路で、明らかに威圧的なあおりを受けたと感じたら、第2回「あおり運転に怒り覚える人に知ってほしい対処法」でレポートしたように、すかさず進路を譲って危険から遠ざかるのがいいだろう。大型車は自重がかさばることから運動エネルギーが大きく、他車への加害性が物理的に大きくなる。

「あおり運転に怒り覚える人に知ってほしい対処法」 ※外部サイトに遷移します

乗用車と大型車の理想的な車間距離(画像:公益財団法人高速道路調査会)

乗用車と大型車の理想的な車間距離(画像:公益財団法人高速道路調査会)

ところで昨今では、車両に「SOSボタン」なるものがある。たとえば日産自動車では「SOSコール」としてボタンを押下するとオペレーターと会話が可能で、その場でのアドバイスを受けることができる。

もともとSOSボタンは、運転中のドライバーに発生した体調急変に対応する機能として誕生した。救急自動通報システム「D-Call Net」と呼ばれる通称AACN(Advanced Automatic Collision Notification)(参考記事「交通事故の救命作業を速める最新技術の実情」2018年)とも連動し、事故発生時には発生場所や衝撃値、さらにはエアバッグの展開有無、乗員位置情報などを警察や消防と共有し、迅速な出動要請へとつなげる人命救助装置として位置付けられた。

そのSOSボタンでは専用回線によるオペレーターとの会話ができることから、あおり運転時に、あおられたドライバーを落ち着かせるためにも活用できるとされた。

「交通事故の救命作業を速める最新技術の実情」 ※外部サイトに遷移します

あおり/あおられ運転は両成敗では解決しない

さて3回にわたってあおり/あおられ運転について考えてみた。あおった、あおられたという事象は確かに存在するものの、両成敗的な議論では解決しない、これが明らかになったと思う。

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同時に、回避術もいくつか示した。悪意をもったあおり/あおられ運転には太刀打ちできない一方で、自身の感情コントロールによって、危険から遠ざかることはできる。最終着地点ではないが、まずは身の安全の確保が先決。

「行ってきます」には、行って(ちゃんと)帰ってきます、の意味が込められ、「行ってらっしゃい」には、行って(何事もなく帰って)らっしゃい、の意味があるという。車での移動には喜びがある一方で、高い速度に身をさらす。だから危険が伴う。

道路は混合交通だ。よって、今さらながら他車(者)とのコミュニケーションが重要で、それを深めていく先にあおり/あおられ運転を限りなくゼロに近づける1つの回答があるのではないかと思う。個人的には、そうしたコミュニケーションの分野にも先進安全技術をはじめとしたテクノロジーが深く入り込んでいけばいいなと期待している。

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【あわせて読みたい】※外部サイトに遷移します

スピード違反がなくなる装置?「ISA」が義務化へ

あおり運転「あおられる側」が意外と知らない事実

マツダのエンジンを他社がまねできない理由

提供元:「あおり運転」2輪車や大型車から見た乗用車の姿|東洋経済オンライン

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