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2022.06.22

長生きする地域の人が「食べないモノ」の共通点|ブルーゾーンの人は何を食べ何を食べないのか


健康に長生きするための食事術とは?(写真:IYO/PIXTA)

健康に長生きするための食事術とは?(写真:IYO/PIXTA)

加齢とともに心身の衰えを感じるのは当たり前。
年を取れば太るのは自然で、持病持ちになるのも仕方ない。

しかし、健康で100歳以上長生きする人々は多く存在し、今や決して特別な存在ではありません。食事とライフスタイルを見直すことで、誰もが天寿を全うするまで健康な人生を謳歌することが可能だと言うのは、ヒト体内の微生物と長寿に関する世界的権威である医学博士のスティーブン・R・ガンドリー氏です。

最新の研究と臨床データに基づき、健康に長生きするための食事術を紹介している同氏の新著『死ぬまで若々しく健康に生きる 老けない食事』から一部を抜粋し再構成のうえお届けします。

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老化にまつわる迷信

私のもとを初めて訪れる患者の多くは、「通常の」加齢に伴う複数の病気を抱えている。彼らは健康で長生きするために必要なことはすべてやっていると思い込んでいるため、自分の病気に戸惑うこともある。だが、若さを保つために行っていることが、かえって老化の原因になっているケースも多いのだ。

世の中には加齢に関する学説がさまざまあるが、間違っているものも多々ある。けれど、このような説でも私たちの文化に深く浸透しているため、表面だけを見ると筋が通っているように思えるかもしれない。私はこれを「老化にまつわる7つの迷信」と呼んでいる。ここではそのうち2つを紹介する。

迷信1 地中海食は長寿をもたらす

いわゆるブルーゾーンに住む人々には、上手な年のとり方について学ぶところが多いだろう。ブルーゾーンとは作家のダン・ビュイトナー氏による造語で、世界5大長寿地域のことを指す。

だが、こうした地域の特徴や共通点については、多くの場合、一部だけが真実であったり、まったくの迷信であったりする。ここでは、アメリカの人口から見ると10倍の割合で百寿者がいるという驚異的な地で何が起きているのかを見てみよう。

イタリア・サルデーニャ島のオリアストラ県、日本の沖縄、カリフォルニア州ロマリンダ、コスタリカのニコヤ半島、ギリシャのイカリア島がそれに該当する。ビュイトナー氏のリストにはないが、パプアニューギニアのキタバ島や、イタリアのナポリの南にある小さな町であるアッチャロリなど、住民が長生きで有名な地域もある。

ブルーゾーンのリストを見て、長寿地域の2つが地中海の島々にあることに気づき、穀物を含む地中海式の食事をするようアドバイスしている健康の達人をよく見かける。

だが、こうした文化をよく見ると、穀物が地中海式食事法のマイナス要素になっていることがわかる。つまり彼らは、穀物をたくさん食べているから健康で長生きなのではなく、穀物をたくさん食べているにもかかわらず健康で長生きしているというわけだ。

その証拠に、穀類を主食としているためにイタリア人の関節炎の発症率は全体的に高く、とくにサルデーニャ人は免疫疾患の発症率が高いと言われている。こうした長寿地域であっても、腸内微生物叢は穀物食に適応していない。

ブルーゾーンの人々の食生活はバラバラ

このようなグループの栄養パターンには重複する部分もあるが、実際にはブルーゾーンの人々の食生活はてんでばらばらなのだ。詳しく見てみよう。

● ロマリンダのセブンスデー・アドベンチスト教会の信徒は、大豆タンパク製の代替肉という形でナッツや大豆をたくさん食べている。この代替肉は、脱脂大豆粉に高温・高圧をかけて押し出して作られる。何年もロマリンダに住み、これを食べてきた私に言わせれば代替肉は「ミステリーミート(謎肉)」になりうる。見た目も味もスパムに似た「ワム」という商品もこの仲間だ。
豆好きの方は注意してほしい。代替肉は加圧調理された大豆であり、大豆のレクチンは加圧調理すれば破壊できる。つくづく、アドベンチストの人々は賢い。セブンスデー・アドベンチスト教会の信徒の大半はベジタリアンかヴィーガンだが彼らの食事は脂質が50%も占めている。どうやら脂質50%の食事が長寿につながるようだ。

● ニコヤ半島に住む人々の主食は、コーントルティーヤ、豆、米。

● 長寿を誇るサルデーニャ人は、海岸から離れた山間部に住んでいるため、魚はほとんど食べない。だが、ヤギのチーズやヤギの肉、ソバと小麦で作ったパン、膨大な量のオリーブオイルを摂取している。

● イカリア島の人々は、たっぷりのオリーブオイルはもちろん、ローズマリーなどのハーブや、スベリヒユという雑草をよく食べ、朝食時にはワインを飲むのが習慣になっている。

●50年以上前の伝統的な沖縄の食事では脂質はあまり摂られず(摂る脂質はたいてい豚のラード)、豆腐や米もほとんど食べられなかった。米も玄米ではなく白米だ。食事の約85%は炭水化物である紫イモで占められていた。

● キタバ島の人々はタバコが大好きで、タロイモ(炭水化物)とココナッツ(飽和脂肪酸)を大量に食べる。ところが、彼らはとても痩せている。心臓発作や脳卒中を起こす例も少なく、医療を受けずに90歳まで生きることも珍しくない。

● アッチャロリの人々は、アンチョビと大量のローズマリーとオリーブオイルを摂り、たくさんのワインを飲み、パンやパスタは食べないがレンズ豆は大好きだという。

さて、こうした人々の共通点は何だろう? 意外なことに、それは何を食べるかではなく、何を食べないかなのだ。だがそれを明らかにする前に、2つの地域(キタバ島と沖縄)の住民が大量に摂取している炭水化物の種類を見てみよう。

紫イモやタロイモは、通常の炭水化物ではない。レジスタントスターチと呼ばれるデンプンの一種で、腸内での働きがほかの炭水化物(トウモロコシ、米、小麦、果物など)とは異なる。

レジスタントスターチは、摂取するとすぐにブドウ糖(エネルギーとして燃焼されるか、脂肪として蓄積される)に分解されるわけではなく、ほとんどそのままの状態で小腸を通過する。これに含まれる糖分子はしっかり結合しているのでヒトの酵素では分解できず、だからレジスタント(抵抗力)の名がつけられた。

そのため、レジスタントスターチを大量に食べても、血糖値やインスリン値が上がることはない。これは2型糖尿病や肥満、加齢に伴う炎症を避けるために大事なことだ。また、レジスタントスターチは血糖値を急上昇させないため、通常のデンプンよりも満腹感が長くつづく。

だが、腸内細菌がレジスタントスターチを好むというのが、何より優れた点だろう。レジスタントスターチを摂取すると腸内細菌が増殖し、短鎖脂肪酸である酢酸、プロピオン酸、酪酸を大量に産生する。短鎖脂肪酸はミトコンドリアや腸壁を覆う腸細胞の理想的な燃料となる。

このようにレジスタントスターチは腸内細菌の数を増やし、消化と栄養の吸収を促し、腸内を覆う重要な粘液層を育む腸内細菌を成長させる。

何を食べるかではなく、何を食べないか

キタバ島と沖縄の人々が、通常の加齢に伴う多くの病気と無縁でいられるのは、酪酸の増加のおかげで腸内環境が悪化せずにすんでいるからでは? これに関しては決定的な証拠があるわけではないが、ほかのブルーゾーンの人々がオリーブオイルやスベリヒユ、ローズマリーなど、腸内環境を整える食品を摂取していることを考えると、筋が通っていると思う。

だが、先に述べたように、私は長寿者の真の秘密は、何を食べるかではなく、何を食べないかにあると考えている。彼らが食べないものとは、大量の動物性タンパク質だ。ブルーゾーンの住民の中には、動物性タンパク質を大量に摂取している人がほとんどいない。それが彼らの健康長寿の秘訣だと私は信じている。

8週間のランダム化比較試験では、被験者は30%のカロリー制限食(つまり、普段より30%カロリーを抑えた食事)を摂るという前提で、2つのグループに分けられた。

一方のグループはカロリーの30%を動物性タンパク質で摂取し、もう一方のグループはカロリーの15%だけを動物性タンパク質で摂取した。両グループとも、ほぼ同じ量(6.8kg)の体重減少が見られた。

ところが血液検査では、両グループに顕著な違いが見られた。動物性タンパク質の摂取量が少なかった後者のグループは、動物性タンパク質の摂取量が多かった前者のグループに比べて、炎症マーカーの数値が低かったのだ。また、タンパク質の総摂取量(植物性および動物性)と動物性タンパク質(魚のタンパク質を除く)の摂取量の両方が、炎症の増加と相関していた。

この知識をもとに、ブルーゾーンのリストをもう一度見直してみよう。サルデーニャ人は、日曜日や特別な日にだけ肉を食べる。沖縄の人々は、少量の豚肉を含む植物中心の食事をしていた。ロマリンダのセブンスデー・アドベンチスト教会の信徒は、ほとんどがベジタリアンで、ヴィーガンも多い。

ニコヤ島の人々は週に一度しか肉を食べない。イカリア島では、一家族が1年に1頭だけ動物を殺し、その肉を数カ月かけて少しずつ食べている。また、キタバ島やアッチャロリの人々は、タンパク質の摂取量がとても少なく、そのほとんどが魚である。

ここで、平均的なアメリカ人が2018年には100kgの赤身肉と鶏肉を食べたという事実と比較してみよう。これは歴史上かつてないほど多い数字だ。また、これには卵、牛乳、チーズなどの動物性食品は含まれていない。私たちがこれまで以上に急速に高齢化しているのも頷ける。

迷信2 鉄分をたっぷり摂ると血液が強くなる

加齢とともに貧血になりやすく、体が弱くなるのは、鉄分が不足しているからだって? 1950年代から60年代にかけてのアメリカでは、鉄分を豊富に含む滋養強壮剤「ジェリトール」が「鉄欠乏症」の治療薬として大流行した。だが、ちょっと待ってほしい。体内に蓄積された鉄分は、実は老化現象の促進に大きな影響を及ぼすのだ。

デンマークとスウェーデンの研究者が、献血を頻繁に行うと鉄分濃度が危険な域まで低下するかどうかを数百万人の献血者を対象に調査したところ、年齢やそのほかの健康状態を加味したうえで、献血回数の多い人は少ない人に比べて有意に長生きであることがわかった。

これは、献血によって体内の鉄分量が減少したためだ(同様に、女性が男性よりも長生きする理由として、女性は人生の約半分の期間、毎月かなりの量の鉄分を月経によって排出していることが挙げられる)。

鉄が私たちを老化させる理由

鉄の働きを調べた別の研究では、生後4日目のセンチュウに鉄を与えたところ、急速に成長し、すぐに生後15日目くらいの大きさになった。これは些末なことに見えるかもしれないが、センチュウの全寿命はわずか4週間ほど。

つまり、鉄を与えたことで、センチュウの寿命は約3分の1に短縮されたのだ。鉄が私たちを老化させるのは、ミトコンドリアの機能を阻害するからだ。

ご存じのように、鉄はヘモグロビンの構成成分だ。ヘモグロビンは赤血球に含まれる物質で、全身に酸素を運ぶ働きをする。また、ミトコンドリアは酸素を使って、ブドウ糖や脂肪分子を「分解」し、エネルギーを作り出す。

一見すると、血液中の鉄分が多いほど、ミトコンドリアへの酸素の供給量が増え、エネルギーの産生量も増えるように見える。だが、実はその逆のことが起きているようだ。

ワイオミング大学で行われた2018年の研究では、研究者たちがマウスのミトコンドリアを調べたところ、体内の鉄量が多いマウスはミトコンドリア内の酸素が不足していることがわかった。また、脳の神経細胞が失われるハンチントン病のマウスを調べたところ、そのマウスのミトコンドリアにも鉄が過剰に蓄積されていた。

ミトコンドリアの機能が低下したために、ニューロンが死んでしまったのだ。ミトコンドリアが酸素にアクセスできず、エネルギーを産生できなければ、細胞は死んでしまう。このことはパーキンソン病やアルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(略してАLS、ルー・ゲーリッグ病とも呼ばれる)などのほかの神経疾患を理解するための道筋を示している。

動物性タンパク質を減らすメリット

実際にヒトを対象とした研究では、加齢に伴い血液中の鉄量が増えると、アルツハイマー病の発症リスクが高まることがわかっている。また、アルツハイマー病ではない人でも、脳機能イメージング技術によって、認知機能障害と鉄分の蓄積との間に一貫した相関関係があることが明らかになった。

脳内の鉄分過多に関連したフェロトーシスという細胞死も新たに認識されつつある。

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さらに、鉄分が脳機能に及ぼす影響を調べた別の研究では、パーキンソン病患者が献血によって鉄分濃度を減らしたところ、症状が劇的に改善したという結果が出ている。鉄分は驚くほど老化を加速させる。そして動物性タンパク質にはこれが大量に含まれている。

だがもうひとつ面白い話がある。ブラジルの研究者が、鉄分濃度が高く、記憶障害の兆候があるラットに酪酸ナトリウムを全身に1回注射したところ、記憶力が回復したというのだ。

先述したように、腸内微生物叢に適切な食べ物を与えれば酪酸が産生され、それをシグナルとして姉妹であるミトコンドリアにエネルギー産生を活発化するよう指示が出る。

では、ミトコンドリアへの鉄の蓄積は、通信回線が乗っ取られたことを意味するのか。それとも、腸内微生物叢がより幸せで健康になれば、鉄による老化の影響から身を守れるということなのか。驚くべきことに、その両方なのかもしれない。

「牛肉や豚肉、ラムやそのほかの動物性タンパク質の摂取量を減らしてください」と言わなければならないのは、残念なことだ。しかし今までの説明で動物性タンパク質の摂取量を減らすことのメリットについては納得していただけたのではないだろうか。

(訳/川岸 史)

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