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2022.05.13

筋力UPを狙うなら「上げる」より「下ろす」が大事!|注目の「エキセントリック・トレーニング」とは


やみくもに筋トレをしてもダメ。効率よく筋力UPするにはそれなりのやり方がありました(写真:プラナ/PIXTA)

やみくもに筋トレをしてもダメ。効率よく筋力UPするにはそれなりのやり方がありました(写真:プラナ/PIXTA)

ウィズコロナの過ごし方が注目され、少しずつ以前の日常を戻している今日この頃。「前より体が重い」「以前のように動けない」など、体力の衰えを実感している人も多いのではないでしょうか。

テレビや雑誌などのメディアで健康情報を発信するトレーナーの坂詰真二さんが、疲れない体、引き締まった体、自信がもてる体をつくるメソッドを伝授するシリーズ。今回からの新シリーズでは、「そろそろ本気のトレーニング」をテーマに5回にわたってお伝えします。

生活様式の変化が起こってから2年あまり。増えた体重、出てきたお腹、たるんできたアゴ周りなどが気になっている方も多いことでしょう。

これらは、日常生活での運動量が減ることで徐々に筋肉が減り、基礎代謝が下がっていることが、大きな原因です。ですから、その逆をたどって熱発生装置でもある筋肉量を増やせば、基礎代謝が上がってエネルギーを消費しやすい体質に戻り、少しずつ体のたるみは解消できます。

そこで、クイズです。筋肉を鍛えて大きく強くするのは筋トレですが、その筋トレを効率よく行うために最も大切な要素は次のうちどれでしょう?

A 持ち上げる重量

B 反復回数

C フォーム

筋肉がほとんど増えない人に共通

答えは「Cのフォーム」です。正解できたでしょうか?

ジムで何時間もかけて何年、何十年と筋トレをしているにもかかわらず、筋肉がほとんど増えていない人に共通することは、「フォームの不正確さ」です。逆に短時間・短期間でもしっかり筋肉がついている人に共通しているのは、「フォームの正しさ」です。

重いものを持ち上げても、鍛えたい筋肉に負荷をかけるフォームになっていなければ意味はなく、それとは反対に、軽いものでも鍛えるべき筋肉に的確に負荷をかければ、驚くほど筋肉は発達するのです。

筋肉に効かない悪いフォームの典型は、以下の2つです。

A ダンベルやバーベルなどの重りをゆっくり持ち上げて速く下ろす
B 重りを床などに落とした際の反作用を利用して持ち上げる

両者に共通しているのは、重りを「しっかりと下ろしていない」という点です。

ジムに行かれたことがある方は、マシントレーニングやバーベルトレーニングで、1回ごとにガチャンガチャンと大きな音を出しながら重りを床に叩きつけるように落としたり、その際に床から受ける反作用を利用し、持ち上げる人を見かけたことがあることでしょう。

まるでバスケットのドリブルのように、1回ずつバウンドを利用して持ち上げているのです。騒音で周りに迷惑をかけるだけでなく、自身にとっても努力の割に効果が得られない残念な方法です。

「上げる」ことを意識しすぎるのはダメ

筋トレは「重りを持ち上げて、下ろす」という動作を繰り返すシンプルな運動ですが、こういった方々は持ち「上げる」ことばかりに意識がいって、「下ろす」ことに注力していないのです。

少し専門的な話になりますが、重りを持ち上げる際、筋肉は縮みながら力を発揮します。これを“コンセントリックな収縮”と呼びます。そして重りを下ろす際は、筋肉は伸びながら力を発揮します。こちらは“エキセントリックな収縮”と呼びます。

上体起こし(腹筋運動)では、上体を起こす際、お腹の腹直筋はコンセントリックな収縮をし、上体を床に下ろしていく際にエキセントリックな収縮をします。

努力の割に筋肉が鍛えられない人は、コンセントリックな収縮だけを意識し、エキセントリックな収縮をおろそかにしているのです。上体起こしでいえば、体を持ち上げることを重視するあまり、床にドスンと上体を落とし、その際に床から受ける反作用を使って起き上がってしまっているのです。

効率よく筋肉を鍛えるには、重りを下ろすエキセントリックな収縮が大事だということは、経験則からある程度知られていました。近年、エディスコーワン大学(オーストラリア)の野坂和則教授らの研究によって、それが科学的にも事実であることが明らかになってきました。

つまり筋トレは持ち上げるコンセントリック・トレーニングよりも下ろすエキセントリック・トレーニングが重要ということです。

同じ努力をするなら、最小限の努力で最大の効果を引き出したほうがいいですよね。それがエキセントリック・トレーニングなのです。

パートナーに重りを持ち上げてもらって、自分で重りを下ろせば完全なエキセントリック・トレーニングになりますが、パーソナル・トレーナーを雇いでもしない限り現実的ではありません。1人で行う場合には、「いかにコンセントリックな収縮ではラクをして、エキセントリックな収縮をしっかり強調するか」が重要なポイントになります。

現在、筋トレをしている方が、今すぐ簡単にエキセントリック・トレーニングに切り替えられる方法もあります。それは動作スピードを調整するという方法です。

従来の筋トレでは、重りを持ち上げるコンセントリックな収縮に2秒かけて、重りを下ろすエキセントリックな収縮に2~3秒かけるのがスタンダードな動作スピードです。

これをあえて、1秒以内にコンセントリックな収縮を終わらせ、エキセントリックな収縮を2~5秒かけてゆっくり行う。これでエキセントリック・トレーニングへと切り替わります。

腕立て伏せならこのやり方が「正解」

腕立て伏せなら、肘を曲げながら体を床に下ろしていく動作に2~5秒を費やし、肘を伸ばしながら体を持ち上げていく動作を1秒以内で素早く行うのです。下ろす際にはゆっくり静かに体全体を床にソフトランディングさせ、ひと呼吸ついてからスッと腕を伸ばして上体を起こします。

腕を伸ばすコンセントリックな収縮をする際にはフォームはあまり気にしなくてもいいのですが、腕を曲げる重りエキセントリックな収縮をする際には、鍛えるべき胸の大胸筋にしっかり負荷をかけていくため、以下の4点に注意をしてください。

(1)胸を張る(肩甲骨を収縮する)
(2)肩を落とす(肩甲骨を下げる)
(3)真横から見た際に前腕を床と垂直に保つ
(4)頭からかかとまでをまっすぐ伸ばす

動作速度を変える以外にも、さまざまな方法でエキセントリック・トレーニングをすることができます。次から具体的な方法を紹介しますので、ぜひ実践してみてください。

■エキセントリック・スクワット(太もも前の大腿四頭筋とお尻の大殿筋を鍛える)

(1)両手を太ももにおき、上体を前に倒す際の勢いを利用して、息を吐きながら1秒で立ち上がり、腕を前に伸ばす(コンセントリックな収縮)
(2)息を吸いながら2~5秒かけて膝と股関節を同時に曲げてイスに座る(エキセントリックな収縮)
※この動作を6~10回繰り返し、60秒程度の休息を挟んで3セット行う。2~3日の休養を挟んで週に2回行う

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■エキセントリック・シットアップ(お腹の腹直筋を鍛える)

(1)仰向けに寝て膝を立てたら頭上に腕を伸ばし、その腕を前に振る勢いを利用して、息を吐きながら1秒で上体を起こす(コンセントリックな収縮)
(2)息を吸いながら2~5秒かけて背中を丸め、背中の下部から順番に床に下ろしていく(エキセントリックな収縮)
※この動作を6~10回繰り返し、60秒程度の休息を挟んで3セット行う。2~3日の休養を挟んで週に2回行う

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エキセントリック・トレの注意点

最小努力で最大の効果が得られるエキセントリック・トレーニングですが、1つだけ欠点があります。それは筋肉痛が起きやすいことです。エキセントリックな収縮によって筋肉の微細な損傷や炎症が起きやすく、その結果としてトレーニング後の1~3日程度筋肉痛が残るのですが、エキセントリックな収縮を強調するほど、この現象が顕著になるのです。

とはいえ、それは慣れるまでの1~2週間の間。3週間も継続すれば筋肉は慣れていき、筋肉痛はほとんど起こらなくなります。筋肉痛の発生を最小限に抑えるために、最初の1週間はエキセントリックな収縮を2秒におさえ、1週間ごとに1秒ずつ延ばしていってください。

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筋肉痛は長いと3日ほど残りますが、エキセントリック・トレーニングは2~3日の休息を挟んで週2回で効果があるので、筋肉痛が発生しても、ちょうど治まった頃にトレーニングの実施日が訪れるはずです。

多少筋肉痛が残っていても、生理学的にはトレーニングを阻害するものではありませんが、心理的に苦痛に感じるようであれば休息をもう1~2日延ばしても構いません。継続して体が慣れてくれば、やがて筋肉痛は起こりにくくなるので安心して取り組んでください。

イラスト:竹口睦郁

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提供元:筋力UPを狙うなら「上げる」より「下ろす」が大事!|東洋経済オンライン

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