2022.04.22
利用エリア外でもお得、「Suicaパス」上手い使い方|乗り越し精算活用、通常往復より800円安区間も
JR高崎線の電車。「のんびりホリデーSuicaパス」の範囲は神保原駅までだが、高崎まで乗り越しても通常往復よりお得だ(写真:Jun Kaida/PIXTA)
首都圏のJR線が土休日に2670円で乗り放題となる「のんびりホリデーSuicaパス」。SuicaやモバイルSuicaに書き込んで使うタイプのフリーきっぷで、エリア内の普通列車(快速含む)の普通自由席とりんかい線、東京モノレール全線を利用でき、在来線特急や普通列車のグリーン車も料金を払えば乗車できるお得なパスだ。
ゴールデンウィークなどの日帰り旅行に便利だが、利用範囲が高崎線は神保原まで、宇都宮線は自治医大まで、東海道線は小田原までと、高崎や宇都宮、熱海といった駅が含まれず、その点がなんとも惜しい。
ところが、そういった利用範囲外の駅へもこのパスを購入したうえで乗り越し精算したほうが、通常の往復運賃より安く行ける場合がある。Suicaなので精算は自動だ。しかも、節約技の1つであるきっぷの区間分割(運賃の安い電車特定区間内で区間を分割して乗車券を購入)よりも安くなるケースが多い。
そこで今回はこのような区間について、通常の往復運賃、区間分割して乗車券を購入した場合、のんびりホリデーSuicaパス(以下、パスと表記)を利用して乗り越す場合を比較してみた。エリア外でもうまく使うと安く往復できるこのパスの利用価値を紹介したい。
新宿―高崎間往復が800円も安く
まず紹介するのは新宿―高崎間の往復だ。実は最近、筆者はこの区間を分割購入した乗車券で利用したのだが、後になってパスを購入したうえで神保原―高崎間を乗り越し精算したほうが安いことがわかり、ちょっと悔しかった事例だ。
この区間は、通常の往復運賃だと3960円。北浦和で区間を分割して乗車券を購入(電車特定区間の大宮で分割しても北浦和で分割しても高崎からの運賃は変わらない)した場合は、新宿―北浦和間往復800円、北浦和―高崎間往復2680円=合計3480円である。これでも通常往復運賃より480円も安い。
だが、パス(2670円)だと高崎線内は神保原まで利用でき、乗り越しとなる神保原―高崎間は往復484円が自動で精算されて合計3154円と、区間を分割した乗車券より326円、通常より806円も安い! 筆者としてはかなり悔しいところである。806円も浮くとなれば、通常往復と同じお金で片道だけグリーン車(事前料金なら800円)を使うこともできる。
【東京・新宿―高崎間】
通常往復3960円
<パス利用>
2670円+神保原―高崎間往復484円=3154円(通常より806円安い)
東京―高崎間も同様である。この区間も通常の往復運賃は3960円、北浦和で区間を分割した場合は東京―北浦和間往復960円、北浦和―高崎間往復2680円で合計3640円。一方、パスを使うと、こちらも神保原―高崎間往復484円を足して合計3154円で、通常より806円、区間分割した乗車券よりも486円安い。
東京―宇都宮間も通常の往復運賃が3960円だ。この区間は大宮で分割して買っても東京―大宮間往復1140円、大宮―宇都宮間往復2680円で合計3820円と140円しか安くならないが、パスを使うと自治医大―宇都宮間の往復660円を足して合計3330円。通常より630円も安くなる。新宿―宇都宮間も往復3960円で、こちらは大宮で区間を分割して買うと新宿―大宮間往復960円、大宮―宇都宮間往復2680円で合計3640円。だが、パスだとやはり合計3330円と、新宿発でも通常より630円、区間を分割した乗車券よりも310円安くなる。
【東京・新宿―宇都宮間】
通常往復3960円
<パス利用>
2670円+自治医大―宇都宮間往復660円=3330円(通常より630円安い)
今年春で「房総料金回数券」が廃止され、特急料金の節約ができなくなってしまった房総方面への新たな節約術としてもパスを活用できる。
新宿から特急「新宿さざなみ号」を利用し、君津で普通列車に乗り換えるとマザー牧場最寄りの上総湊まで行ける。この区間を運賃のみで比較すると、通常は往復3960円のところ、パス利用なら君津―上総湊間往復660円を足しても合計3330円で、630円も安い。千葉で区間を分割して乗車券を購入すると、新宿―千葉間往復1640円、千葉―上総湊間往復1980円で合計3620円だが、こちらと比べても290円安い。
伊豆方面への日帰り旅行にも
日帰り旅行にちょうどいい伊豆方面でも同じ方法が使える。
例えば東京―熱海間は通常往復3960円だ。だが、パス利用なら2670円にエリア外の小田原―熱海間往復836円を足して合計3506円と、通常より454円も安い。乗車券を分割して購入する技を使った場合、大船で分割して買うと東京―大船間往復1640円、大船―熱海間往復1980円で合計3620円だが、パス利用だと区間分割と比べても114円安くなる。
「サフィール踊り子」のプレミアムグリーン車(撮影:尾形文繁)
特急「踊り子」を使う場合は、別の節約技も組み合わせればよりお得だ。東京から熱海まで「踊り子」に乗ると特急料金は1580円だが、品川から乗ると距離が若干短いため1020円となり、片道560円安い。運賃と併せて往復1574円もお得になる。ちなみに、特急「サフィール踊り子」のプレミアムグリーン車は東京からだと特急料金・グリーン料金の合計が6160円なのに対し品川からだと4000円で、片道だけでも2160円も安く利用できる。ぜひ合わせ技として活用したい。
【東京―熱海間】
通常運賃:往復3960円
<パス利用>
2670円+小田原―熱海間往復836円=3506円(通常より454円安い)
【「踊り子」特急料金】
東京―熱海間:1580円
品川―熱海間:1020円(東京発着より560円安い)
もう少し足を伸ばして伊東まで行く場合もお得だ。東京―伊東間は通常往復4620円、区間分割だと東京―大船間往復1640円+大船―伊東間往復2680円=4320円で安くなるのは300円だが、パスだと2670円に小田原―伊東間往復1364円を足して4034円と、586円も安くなる。
このほか、新宿、千葉、船橋、海浜幕張、大宮、浦和、柏、海浜幕張、北千住から伊東へ行く場合も試算した。特に千葉県や埼玉県の東京寄りのエリアからだとかなりお得になる。
【新宿―伊東間】
通常往復4620円
<パス利用>
2670円+小田原―伊東間往復1364円=4034円(通常より586円安い)
【千葉―伊東間】
通常往復6160円
<分割購入>
千葉―大船間往復2900円+大船―伊東間往復2680円=5580円
<パス利用>
2670円+小田原―伊東間往復1364円=4034円(通常より2126円安い)
【船橋―伊東間】
通常往復5280円
<分割購入>
船橋―大船間往復2200円+大船―伊東間往復2680円=4880円
<パス利用>
2670円+小田原―伊東間往復1364円=4034円(通常より1246円安い)
【大宮・浦和・柏・海浜幕張―伊東間】
通常往復5280円
<パス利用>
2670円+小田原―伊東間往復1364円=4034円(通常より1246円安い)
【北千住―伊東間】
通常往復4620円
<パス利用>
2670円+小田原―伊東間往復1364円=4034円(通常より586円安い)
要注意!絶対安くなるわけではない
ここまでの例を見ると、パスと乗越精算のほうが、区間を分割して乗車券を買うより必ず安くなるようなイメージを抱いてしまいそうだが、実はそうでない区間もあるので注意してほしい。
「鉄道最前線」の記事はツイッターでも配信中!最新情報から最近の話題に関連した記事まで紹介します。
フォローはこちらから ※外部サイトに遷移します
例えば東京―銚子間の往復は通常4620円だが、途中の幕張で区間を分割し、東京―幕張間往復1140円+幕張―銚子間往復3040円とすると計4180円と440円安くなる。一方、パス2670円+成東―銚子間往復1540円だと4210円で、こちらのほうが30円高い。もっとも30円の差でしかなく、Suicaのパスなら改札機で自動精算されるのでこのほうが楽ではある。
だが、私鉄との競合により特定運賃を設定しているような区間を含む場合はやっかいだ。例えば新宿―甲府間だ。同区間の通常往復は4620円。だが、京王線と競合する中央線の新宿―八王子間は割安な特定運賃区間なので、八王子で区間を分割して新宿―八王子間往復980円と、八王子―甲府間往復3040円に分けて買うと合計4020円と600円安くなる。
これに対し、パス2670円+大月―甲府間往復1716円だと計4386円で、通常に比べ234円しか安くならない。もちろん、これでも普通に切符を買うより安くなるので損というわけではないし、区間分割はどこで分ければいいかをいちいち調べるのも面倒だ。だが、やっぱり600円も安くなるなら……と思う方は分割購入を検討したほうがいいだろう。
また、のんびりホリデーSuicaパスは、新幹線については特急券を追加購入しても利用できない。もし新幹線も使いたい場合は紙の切符「休日おでかけパス」(2720円)を使う必要がある。
いかがだったであろうか。物価上昇意識の高まりからゴールデンウィークでも旅行を控える人は多いかもしれないが、そんなときこそ、今回のような近場へ安く日帰りで出かける方法は使えるのではないだろうか。ぜひ楽しみながら実践してみていただきたい。
【あわせて読みたい】※外部サイトに遷移します
提供元:利用エリア外でもお得、「Suicaパス」上手い使い方|東洋経済オンライン