2022.04.13
「余計な一言」を言ってくるあの人が考えている事|ナジャが教える「負の感情」との付き合い方
余計な一言がある人への対応は?(写真:中田浩資/ligua franca)
ドラァグクイーン界のトップスターで、タレントのナジャ・グランディーバさん。情報番組のコメンテーターからラジオのパーソナリティまで幅広く活躍していますが、仕事で付き合う人の中には「余計な一言」を言うタイプも。日々いろいろな人と付き合う中で、どう負の感情をコントロールして、穏やかな心を保つかを書籍『毎日ザレゴト~人と比べて生きるには人生短すぎるのよ』より一部抜粋して紹介します。
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ショーの合間に起きたハプニング
ドラァグクイーンにどんどんはまっていった私は、仲間と一緒に「LIPs」っていうチームをつくってショーイベントをやり始めたの。小さな会場を借りて、自分たちで舞台をつくって。その極々初期の頃だったと思うんやけど、舞台の後ろにカーテンをひいて、そのカーテンの後ろを楽屋代わりにしてたの。
慣れないショーで、とにかくみんなバッタバタ。そしたら、ある子が着替え中にカーテンに引っかかって、そのカーテンがバサーッって落ちたの!(笑) 着替え中の姿がお客さんに丸見え。私なんかパンツとブラジャーだけだったのよ。
ショーをやってると、こういう恥ずかしいことって結構あるのよ。羽織っていたガウンをかっこよくセクシーに脱ぐシーンがあったんだけど、脱いだらサロンパスを2枚、背中に貼ったままだったの(笑)。背中が凝ってたからサロンパス貼っていたんやけど、そのことを忘れててそのまま舞台に出ちゃったのよ……。セクシーなシーンなのにお客さんが妙に笑っているからおかしいなあと思っていたんやけど、そりゃ笑うわな。
忘れられない事件がもう1つあるわ。ある子がすごい素敵な衣装を着てたんやけど、ヌーディーな色の服に黒いレースがあしらわれてて、まるで裸にレースがついてるようなめっちゃセクシーなレオタード。
その子が本番直前にトイレに駆け込んで、ようやく出てきたと思ったらすぐ本番。上に着てたコートを脱ぎ捨てたら、かっこいいレオタード1枚になるっていうシーンやったんやけど。ちょうどおまたのところに残尿で世界地図ができてたのよ。もう笑いが止まらなかったわ。
人の失敗も自分の失敗も、プライドを傷つけたり、自分が傷ついたりすることがあるかもしれないけど、素のままでいると大して傷つかないし、落ち込むこともない。むしろ笑いにできる。人の失敗って蜜の味って言うけど、案外自分の失敗もそうなのかもね。
子どもの頃から父親に怒られたことって一度もないの。物静かでおだやかな人だったから。そういうところ、父親に似たのかもしれないわね。
でも1回だけ、めっちゃキレたことがあるの、私。友だちのマグダレナさんとオーストラリアのゲイパレードに行ったとき、細かいことはあんまり覚えてないんやけど、なぜか20ドル札の取り合いになったの。引っ張り合いになって。もう頭にきて、グーでどついてやった。そしたら私の指が骨折したのよ(笑)。20ドル札の取り合いで骨折。もう痛いやら、腹立つやら、笑えるやら。
私、身体がデカいから強そうに見えるかもしれないけど、実はケンカってしたことないのよ。でも、マグダレナさんにだけは、なんかイラッとするときがあるのよね。たぶん距離が近いんやろうな。あー、思い出すだけでも、笑えるわ。
このマグダレナ事件も笑い合って仲直り。あとにも先にも、私が激怒したのはこのときだけ。マグダレナさんって今、広島に住んでるんだけど、大阪に来るとだいたい私のところに泊まるの。
で、「8時からごはんに行くで」って言ってるのに、出かける5分前くらいからシャワー浴びて準備し出すのよ。絶対に間に合うわけないやん! 何回注意しても毎回そうだから、「この人には何を言ってもしゃーないなあ」って思うねん。
怒るのもしんどいし、期待もしない。それが一番の解決策やと思う。
余計な一言を言われたら…
私がおしゃれなウィッグやアクセサリーをつけていたり、きらびやかなドレスを着ていると、いつも褒めてくれる人がいるの。それはうれしいんやけど、気になるのがいつもひと言多いってところ。
あるとき、私がお気に入りのドレスを着てたら、「めっちゃきれいなドレスやん。でも、丈があと10センチ長かったらもっとよかったのに」って言うの。新しいウィッグをつけてたら、「おしゃれなかつらね。でも、もう少し明るい色やったらもっとよかったのに」って。せっかく褒めてもらえていい気持ちになっていたのに、余計なひと言で台無しよ。
でも、疲れるから怒らないの。つねに「おっしゃるとおりです」と言って、同調するようにしてる。
あるとき、お気に入りのイヤリングをしてたら、またその人に「めっちゃええやん。でも、もうひと回り大きかったらもっとよかったのに」って言われたの。当時、私はアクセサリーのリメイクにはまっていたこともあって、言われたアクセサリーをひと回り大きく作り替えたのよ。
そしたらその人、大きくなったアクセサリーをつけてる私を見て、「めっちゃええやん。でも、ちょっと大きすぎひん? あとひと回り小さかったらよかったのに」って。どっちやねん!
この人、人のことなんか何も見てなくて、ただ口グセのように余分なひと言を言ってるんだなあと思ったら笑えてきたわ。
何気なく言われた言葉にモヤモヤすることがあっても、一喜一憂しなくていいと思うわ。自分が気にしているほど、相手は気にして発言してないから。
干し芋食べながら、だらだら過ごしていたいのよ
毎週火曜日にABCラジオの『ウラのウラまで浦川です』って番組に出させてもらってるんやけど、一緒に出てるメインパーソナリティの浦川さんって人がすごいのよ。政治や経済のことを話したと思ったら、全国各地の名所や鉄道、デパートの話から下ネタまで、話題の守備範囲がめちゃくちゃ広いねん。
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だから、私は「へー! そうなんですか」とか「さすが詳しいですねえ」とか合いの手を入れたり、時々「それってどういうこと?」とか聞いてみたり。そんなことしてるうちに、気づいたら番組が終わってんねん(笑)。すごいやろ?
私は、どちらかというと聞き役で、相手からいろいろ話を聞くのが好き。相手が冗舌になって気持ちよく話して盛り上がる、それが楽しいねん。水商売やってた頃に身に染みついたんやと思うわ。だから、ラジオの仕事って好きやねん。気楽にだらだらと世間話をする感じやから。最終的には都会で暮らしながら、ラジオの仕事を気楽にやれてたらいいなあと思うわ。
私って、そこまで仕事に人生を捧げようとは思ってないねん。お店で働いてた頃も、後半は週2、3回しか出勤してなかったし。今もできることなら働きたくないって思ってる。家のソファでゴロゴロして干し芋食べながら、YouTubeを観たり、ファッションショーを観たり、ドラマを観たりして過ごしたいのよ。
夢も希望もないように見えるやろ? 夢も希望もないねん(笑)。だからって悲観してるわけじゃないの。特別大きな夢も希望も、過剰な期待もしていないぶん、何気ない毎日が幸せに思えるのかもね。
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提供元:「余計な一言」を言ってくるあの人が考えている事|東洋経済オンライン